この空間を構成しているのは、それこそ、小さい頃から大事にしてきたものばかり。
それはお母さんから譲り受けたものもあるし、
自身の思い出が詰まったものもある、長い長い時間を内包していました。
単にあちこちから古い物を集めたのではなく、全ては自分のもの。
そういうものが発する空気でしか作れない空間がここにはありました。
伊與久さんが一冊の本を差し出しました。
それは伊與久さんが小学校二年生の誕生日に贈られた本で、
当時の素朴なプーさんがまた可愛らしい。
今でも大事にしている本で、
一人でふらっと来るようなお客さんが、本を手にして静かな時間に浸っている。
本を読んでいるうちに、まるで本と現実の境界がなくなるような、
物語の世界に入り込んでいく感覚は、
この空間で本を開くからなのだと、辺りを改めて見回していた。。。
2014年1月に旭町三丁目にオープンした、「三丁目カフェMoco」さん。
お店があるのは、川越駅西口から真っ直ぐ進んでウェスタ川越を過ぎ、
16号線を越えて、市立川越高校を横に見てさらに真っ直ぐ進んでいく。
旭町三丁目までやって来ると、ビッグ・エーがある交差点に辿り着く。
交差点を公園に沿って右に直角に曲がると、郵便局が見えてくる。
郵便局の手前から右に入っていくと、いよいよ猫が乗っている看板が目に入ってきた。それが目印。
看板に導かれるように奥に進んでいくと・・・温もりある可愛らしい建物が目の前に。。。
なんだか、本の中に出てくるような建物が現実に現れて自然とうきうきしてくる。
表通りにあるわけでもなく、曲がって、奥へ、という行程が、逆に期待感を高め、
辿り着いた感、見つけた充実が心に拡がっていく。
場所柄、地域の人がここを目当てに多く見え、ママ友の集まり、シニアの常連客、
地域のコミュニティのようになっているカフェです。
駅から16号線を越えると個人カフェ店が見当たらなくなる一帯で、
夜空に一個輝き瞬いているような存在がMoco。
郵便局がすぐ近いこともあり、
あそこから猫の看板を見かけて誘い込まれるように建物に辿り着く人も多いそう。
手作りのドアから、さあ、いよいよ、物語に吸い込まれていく。。。
外観で思わせたイメージは、中に入るとさらに濃く拡がっていきました。
店内の雰囲気は、レトロ感があり、絵本の物語に迷い込んだようでもあり、
時間の流れ方がぐっと緩やかになっていった。
オープンから二年のお店なのに、この落ち着いた時間、
まるで数十年経ているかのような空気は、
「自分の宝物」と語る、数十年経ているものたちがそこかしこから醸しているものでした。
雑貨に、本に、ピアノに。。。
カフェに合わせて新品を用意したというものではなく、
それぞれが長い時間を宿したものたちで、ずっと大事にしてきたものたち。
例えば、同じ本であっても、
過ごしてきた場所と時間によって、一冊の本は風合いという名の個性を身につける。
そういうものたちがここには溢れていました。
プラス、この雰囲気は、自分たちによる手作りから生まれたものだからこそ。
お店は、水道の配管と照明の配線以外は全てが手作りで、
お店を開く前になんと半年もかけて作ったのだそう。
全てを自分の思うままに、この空間自体がやはり、作品であり物語だったのです。
Mocoの伊與久(いよく)さんは猫好きということもあり、猫をモチーフとした雑貨や絵も店内を彩っている。
猫好きを知る友人がプレゼントしてくれた絵も掲げられていました。
メニューは、生トマトで作ったトマトカレー、生トマトカレーうどん、
昔なつかしい喫茶店のナポリタン、それぞれランチセットもありドリンクをつけられる。
トマトカレーはMocoオープン以来の不動の人気で、生トマトを使っているフレッシュ感があります。
他ではなかなかお目にかかれないトマトカレーうどんは、
うどんを食べ終わったらライスを投入すると、カレーとしていただけるというお得さ。
トースト、ピザトースト、ホットサンド(ベーコンチーズ・手作りあんこ)、
デザートには、アイスクリーム、手作りケーキ(チーズケーキ・ガトーショコラ)が。
それ以外にも、
あつあつじゃがいものチーズ焼き、
サイボクハムのソーセージ盛り合わせ、
まるごとカマンベールチーズ、
さっぱり豆腐サラダ、
健康志向のナッツ盛り合わせ、
あつあつおでん(冬期のみ)、
ふわふわそばがき、といったメニューもあります。
カフェにおでんがあるのが、なんとも面白く、
お酒の種類もあるMocoでは、日本酒片手におでんを頬張るのも日常的。
地域の人の食べたいものも意識しているところが、地域のカフェらしい。
旭三丁目の人たちも、自分たちの地域でできたこのお店、
チェーン店ではなく個人店を応援しようと、
旭町三丁目の詩吟の会の人たちが、忘年会に40周年の記念の会に、
暑気払いの会にもMocoを選んで使ってくれたのだそう。
また、近くに新宿小、武蔵野小、大塚小学校がある場所なので、
小学校育成会などの集まりにもMocoは選ばれている。
店内では、入口の横にハンドメイド作家さんの雑貨の展示販売コーナーもありました。
Mocoが地域のコミュニティと言えるのは、2階に上がったらより感じられるはず。
そう、Mocoには2階もあるのです。
階段から2階に上がると、そこは人が集まる場。
レンタルルームとして使用することができ、
飲食物持ち込み自由の冷蔵庫付き、1時間2000円の時間貸しのフリースペースとなっているので、
たくさんのご馳走と飲み物を用意して和気あいあいと寛ぐことができます。
さらに、伊與久さんがこの2階に特別な想いを込めた使い方として、
「チャイルドサービス」というシステムがあります。
お店を始める前は、子育て支援のNPO法人を立ち上げることも考えていた伊與久さんにとって、
その時の想いが今ここに結実されていると言ってもいい。
入園前の子どもがいる親子なら、2時間程度の利用で、
使用料なしでカフェとして2階で過ごすことができます。
ママ友の集まりでよく利用されているのだそう。
カフェで寛ぎたいと思っても周りの目があって行きづらいと感じるママは多い、
ここなら2階を個室として利用できるので、周りを気にする必要も無く、
授乳、子どもを寝かしつけることもできます。
予約制で、飲食はお店のもの、ただ子どもの食べ物の分は持ち込みOKとなっています。
チャイルドサービスは子育て支援であり、地域のコミュニティとなるよう願いが込められたもの。
2階の使われ方としては、2016年2月24日には、この2階で、
Mocoで作品を展示販売もしているW+chuckleさんによる1dayショップが開催され、
手作り小物雑貨、入園用品、ベビー用品を求めて、たくさんの方が訪れていました。
(2016年2月24日W+chuckleさんによるMoco2階での1dayショップの様子から)
ちなみに、Mocoでお馴染みのW+chuckleさんは、
ウニクス川越で開催されているにぎわいマルシェに毎回のように出店している作家さんで、
2015年12月に小江戸蔵里で開催された「ままここ市」にも出店していて、
ベビー・チャイルド用品が人気の作家さんです。
(ウニクス川越にぎわいマルシェより)
(「第5回ベビー&キッズ マルシェ ままここ市」2015年12月5日開催
http://ameblo.jp/korokoro0105/entry-12104390125.html )
Mocoでは、伊與久さん自身が音楽を聴くのが好きということもあり、
店内で音楽コンサートを定期に開催しているのも特長。
これまで、尚美学園大学の学生によるコンサートや
伊與久さん自身が習っている三味線の先生のコンサートなどを開催してきました。
尚美学園の学生さんたちのコンサートがまさにそう、
音楽を開催するというより、音楽が向こうからやって来るようなところがあるのは、
この雰囲気の店内に、ピアノを置いてあることの意味、人に起こす心の影響というのは、小さくない。
ふらっとやって来た尚美の学生さんは、ここで過ごしている時にピアノの存在が目に留まった。
雰囲気に染まっていく中で、ついに思い切って伊與久さんに切り出したのだそう。
「クラリネットを演奏しているのですが、ここで演奏させてもらえませんか」
そうして、あれよあれよと話しは弾んで、
尚美の学生によるクラリネット、ホルン、ピアノによるコンサートが開催されていきました。
その時のコンサートが、Moco初の店内コンサートとなりました。
初めての開催には、そんなエピソードがあったのです。
その後も学生さんたちは、一昨年Mocoで開催されたクリスマスコンサートにも出演してくれて、
Mocoとは、このピアノとは関係が続いていきました。
一台のピアノが空間にあるだけで、にわかに物語が始まっていく、
それがのちのちコンサートに繋がっていくような壮大なものでなくても、
Mocoで過ごすお客さんの中には、
「ピアノを弾かせてください」と申し出る人は、実は意外に多いのだという。
今までのMocoの音楽の集大成的な一日になったのが、昨年のクリスマスコンサートでした。
2015年12月19日、開店2周年企画クリスマスライブ。
3部構成という濃い内容は、
第一部:三味線藤本流師範・藤本秀ゆりさんによる端唄
第二部:尚美大学生さんによる、クラリネットとピアノの演奏
第三部:中山タケシさんによる、懐かしのフォークソング弾き語り
ライブ後には、ビンゴゲームとじゃんけん大会も行い、
Mocoを慕っているお客さんが大事な時間を過ごしました。
これから開催される歌とピアノのコンサートも、Mocoにとっては念願の開催。
2016年4月2日「スプリングコンサート」。
出演は、歌が門脇麻里子さん、中村友理香さん
ピアノが平山佳奈さん、張替香穂里さんという4人によるコンサートが行われます。
Mocoでコンサートを開催したのが、2015年3月のことで、一年ぶりの開催です。
(2016年4月2日「スプリングコンサート」当日の様子)
さらに、びっくりするようなライブが5月に予定されている。。。
5月14日(土)、お笑い芸人ユリオカ超特Qさんによるお笑いライブ
なぜ、ユリオカ超特QさんがMocoに??旭町三丁目に??と不思議に思った人もいると思いますが、
ユリオカさんが以前Twitterで「全国出張します」と呟いていたのを伊與久さんの娘さんが見つけ、
応募してみたら?とメールを送ってみたところ、
なんと本人から連絡があり、Mocoに来ることになったのだそう。
その企画というのが、『おでかけ超特Q~全国ツアー、47の素敵な街へ~
カフェ、レストラン、バー、居酒屋、あるいは個人宅もOK! ユリオカ超特Qが全国へ出張いたします!』
というものだった。
全国ツアーの一つの会場として選ばれたのが、三丁目カフェMocoでした。
お笑い芸人が川越に、ということであれば
1700席のウェスタ川越大ホールで大々的なイベントは開催されていますが、
この場所にプロのお笑い芸人が来て、ライブをする、どんな雰囲気になるでしょう。
すでにユリオカさんは打ち合わせにMocoを訪れていて、
その場で動画を撮影して告知もスタートしています。
カフェがたくさんある川越の中でも、カフェでお笑いライブというのは川越初ではないでしょうか。
店名にも入っている川越の旭町三丁目は、
住宅街という地ですが、ハンドメイド作家に音楽家に、いろんな人材がいる地域でもあります。
川越駅からここまで来る途中の道、旭町一丁目には、
アートフラワーの「Gris blue(グリーブルー)」さんがある。
(「Gris blue」アートフラワーで暮らしを豊かに彩る
http://ameblo.jp/korokoro0105/entry-12018174345.html )
また、お隣新宿町には、「キャンドルスタジオ川越TwinTail」さんがあり、女性の活躍が目覚しい。
(「クリスマスWORK SHOP2015」&「第5回Kawagoe canndle Night」
http://ameblo.jp/korokoro0105/entry-12106473433.html )
旭町三丁目といったら中でもやはり、旭町三丁目の川越まつりに懸ける熱気は外せない話しでしょう。
旭町三丁目には信綱の山車があり、
川越まつりでは町内曳きで大塚新田の頼朝の山車と町内で曳っかわせを魅せることもあり、
また、なんと、旭町三丁目から16号線を越え、川越市街地まで山車を曳いてくることもある。
川越まつりの中でも、特に遠方からやってくる山車として知られています。
これだけの距離を山車を曳くというのは、地域の半端ない熱がないとまず無理です。
(2012年川越まつり、本川越駅前にて、
新富町一丁目の家光の山車、二丁目の銀獅子の山車と
旭町三丁目の信綱の山車三台による曳っかわせ)
(2013年川越まつり旭町三丁目の信綱の山車より。山車はこの時よりまた少し豪華になっています)
はっと、目が覚めるように、辺りを見回す。
ついつい本の世界に入り込んで夢中になっていた。
いや、この空間に吸い込まれていたのか、そのどちらもでしょう。
しっかりと意識を取り戻しても、
でもやっぱりまだ物語の中にいるように感じることが、安心感にもなっていた。
見上げると、伊與久さんが、かつて川越で収録が行われたテレビ番組
「ちびっこのどじまん」のちびっこ審査員として出た時に貰った人形が、微笑んでいました。
カチ、カチ、カチ。
柱時計が、きっと一秒より少しゆっくりとした速さで一秒を刻みながら、
ゆったりとした空間が待っている。。。
「三丁目カフェMoco」
川越市旭町3-5-24
(1階カフェ)
昼:11:30~17:00(ランチタイム11:30~15:00)
夜:18:00~22:00
(20:00以降はご予約制、20:00まで電話予約、または御来店下さい)...
火休
049-270-1610
駐車場あり
公共交通機関:川越駅西口から西武バス「今福中台行」か、「営業所行」か、「南大塚駅南口行」で、
旭町バス停から徒歩3分。
http://ameblo.jp/3cafe-moco/