<2016年1月閉店>古本カフェ「Agosto」二年経って拡がった世界 | 「小江戸川越STYLE」

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川越の現場で様々なまちづくり活動にも従事しています。
「小江戸川越STYLE」代表:石川真

蓮馨寺向かいにある古本カフェ「Agosto」さんが1月いっぱいで閉店することになりました。

ただいま閉店セールが行われているので、ぜひお店に伺ってみてください。

Agostoのものたちは今後どこで手に入れればいいんでしょう。

ある意味形見的に、Agostoのものを分け合って大事にしてもらいたいです。


Agostoの緑さんは、以前からお店を営業しながらyogaインストラクターとしても活動し、

さらにジャズダンスインストラクターとしても川越で活動を始めています。

お店との両立に悩んで、最終的にインストラクターの道一本に進むことになりました。

これからはそちらの活動を取材に行くこともありそうです。

「Love Life Yoga」

http://monieluwak.wix.com/love-life-yoga


見納め的に写真に収めてきました。

















Agostoは画期的なお店でした。

それはオープンから今も変わらず、価値は新鮮であり続け、揺るぎない。

一つ一つの物に対するセレクトの感性は他のどのお店も真似できないもので、

いや、例え同じものを揃え並べられたとしても、

Agostoに流れるあの精神性を感じさせる空気までは真似できない。

あの凛となるような空間、精神性。

そこに惹かれ、用もなくふらっと立ち寄ることが多かったし、

川越Farmer'sMarketでは、エクササイズだけではない本質的な哲学を伝道する人だと、

yogaのインストラクターをお願いしました。

yogaはこれからも緑さんに頼むつもりです。

Agostoには緑さんがいた、緑さんがセレクトしたものがあり、

緑さんがお店に立つから、Agostoだったんです。

もう二度と川越にこういうお店は生まれないんじゃないか、

うっすら、しかし実は本気でそう思っています。

何度も言いますが、「物」だけではないんです。


これも今だから遺しておきますが、2013年にAgostoがオープンしたばかりの時の写真です。

川越style


川越style


川越style
(当時は蓮馨寺に向いた窓も客席でした)


Agostoのことは閉店に合わせて記事を削除することも考えましたが、

しかし、Agostoを検索するとこの記事が上位に表示され続けているし、

Agostoのことを書いた記事は自分にとっても大切にしているもの。

川越にこういうお店があったことを記憶だけでなく、形として遺しておくことで、

今後いつか誰かがこれに触発され、違った形で何かを始めるかもしれない。

そこもうっすらですが、期待をする部分です。

だからある意味資料的なものとして、この記事を遺そうと思います。

冒頭で閉店のことを記載したあとに、以下Agostoの記事はずっと遺していきたいと思います。

☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*


1958年発行の「婦人生活」。

その12月号の特集は、

『防寒毛糸あみもの』『昭和三十四年版家計簿』でした。。。
川越style

そっと中を開いてみると、目の前に広がったのは昔の日本人の生活風景。

こんな時代があったんだって、

面白くてつい見入ってしまう。

雑誌の後ろを見てみると、当時の広告がありました。
川越style

『ファンデは指先でポンポンとお顔につけ軽くノバすだけで、

とても自然な色白の美しさです。

お好みの色一個でもちろん十分ですが、

この頃2色を使って立体化粧をなさる方がグンとふえました。

鼻が高く見えるからです。』


この「婦人生活」は、自分の足で探し歩いて見つけてきたものだそうです。

神保町の古本屋、古本市場などをコツコツ回っては一冊ずつ揃えていったもの。

そうして集めた、何十年もの前の雑誌が揃っていた。
川越style

昔の写真に昔の文章に昔の生活に、

『女性誌』を通して見る昔の日本の姿というのも違った見方で面白い。

いつの間にか、本の世界に没頭してしまうお店。。。



通りで入り口の扉から中を覗き見て、
カウンター席が空いているとつい扉を開けてさっと座り込んでいる。
注文するのは大体コーヒーかハーブティー。
ゆっくり飲みながら緑さんと話し、過ごしていると、気がつくとそれこそ何時間も経っていた、

なんていうことはしょっちゅう。

お囃子のことから、夏に開催する川越Farmer'sMarketのことまで、時間を忘れて話しこんでしまう場所。

自分にとっても、いや、なにより川越にとって貴重なお店です。


蓮馨寺の山門から横断歩道渡って向かいにあるのが、

古本カフェ「Agosto」です。
このお店も、4月29日の川越ハンドメイドの雑貨市の会場の一つとなっています。

(目の前の蓮馨寺は桜の名所としても有名)













店内には貴重な古本が数多く並び、
何十年もの前の家庭雑誌に女性向けの実用書など、
そのセンスあるセレクションもAgostoの魅力。
中には大正時代の本もあったりして、
大手チェーンの古本屋とは一線を画するポジションを確立しています。

古本の中でも、女性向けの本というのは特に希少です。

料理にしても育児にしても実用書にしても、今全然残っていないものなんです。

なぜかというと、

戦争で本が焼けてしまったという側面もあるし、

火を起こす燃料として使われていたそう。

(立派な文学書は大事にされて。。。)

女性のための本を大切にしているのもAgostoです。

川越style


川越style
上は雑誌「暮しの手帳」。これは今でも刊行続いてますね。

一冊の目次を書き出してみます。

■おそうざい十二ヶ月
いかと鯛の湯びき、かきの味噌汁、ちくわの炊き込みご飯
いかとほうれん草の切りごまあえ
■輪のオムツがよいか、四角いオムツがよいか
■スパゲチは好きだがミートソースを作るのがめんどうという人に
■センタク機の糸くずをどうしよう
■買い物車を使ってみて
■嫁入道具の三面鏡を2DKに持ちこんだら何が起こったか
■ナショナルとシャープの69年型クーラーをテストする
■マーラーの交響曲<大地の歌>はどの盤を買ったらいいでしょうか
■亭主アンド女房学校
■スープ西洋料理はじめから その8


お店は古本屋さんとして買い取りも行っていて、
ドリンクを注文すれば、椅子やソファに座って店内の本を読むことができます。
お店に入ってすぐに感じる、「あれ?」。

他のカフェの風景とは違うことにすぐに気付き、

それは座席の配置が独特なのでした。

実はAgostoは、ゆっくり本を選んで読んでもらいたいと、

背中を向き合う形になるように席を置いているんです。

そんなことを考えるお店ってなかなかない。

こういうタイプのお店が川越にあることが、今の川越の文化度を示しているかのよう。

それまでは雑誌「BRUTUS」にあるような、都内や全国にある

個性的な本屋、古本屋特集を見ては羨ましく思っていましたが、
今こだわりのセレクションの古本屋が川越にあることで、生活に豊かさを感じます。


よく言われることですが、本屋、古本屋というお店はお客さんが育てるもので、

例えば古本屋なら、
お店のテイストを分かっている人がどれだけ本を持ってきてくれるか。
それはお店のテイストがどれだけ浸透しているかの裏返しでもありますが、
お店に合う本が集まり、その本が好きな人がお客さんとしてやって来て、また本を持ち込んでくれる、

という個性が深まっていく循環を作れるか。
循環が上手くいっているお店が(ほとんど都内ですが)、
映画関連専門の「古本屋」や写真関連専門の「古本屋」といった形で存在していたりする。
Agostoはお店がオープンしてちょうど二年になります。
始めは古本屋という機能からいろんな本が持ち込まれ、

棚を見るとなんでもあるオールジャンル的な構成でしたが、
この二年でお店として目指す方向を定め、その発信が浸透していった結果、
お客さんによって育てられたお店の棚は、

これがAgostoのカタチといえるものが出来上がりつつあるように思いました。


二年前の4月、ここに古本カフェができる話しに、

オープンする前からワクワク楽しみにしていたことはまだ昨日のことのよう。
どうも単なる古本屋とは違うみたいだ、カフェでもある、文房具も扱う?

なんだか文化的な香りを感じて、

ようやく川越にも誕生するんだという感慨を覚えています。

見返してみたら、二年前のオープンのまさに直後にお店に行って、すぐに記事にしていました。

その時にも書きましたが、Agostoの緑さんは、

10代の終わりから、ニューヨークに一人で住んでいて、
30代でツアーコンダクターになり、イタリア方面を中心に仕事をしていました。
異国の地で美味しいものに出会ったり、
居心地の良い店をみつけたりした経験が今に生かされている。
前職は、舞台芸術に関わる仕事をしていました。

その時10年住んで大好きだという街、ブルックリンで求めた本たちがこちら・・・
川越style


二年経ったAgostoはさらに世界を深化させ、横の広がりも増し、

今や川越になくてはならないお店になりました。

ドリンクはイタリアコーヒーに、種類豊富なハーブティー、

その時だけの特別メニューもチェックは欠かせません。

Agosto特製の焼き菓子は、体に良くヘルシーなアーユルヴェーダに基づいて作られているもの。



Agostoといえば、紙の文房具の品揃えが多いことは二年前から変わりません。

大人が使う大人のための文房具、というと機能性などの追求に聞こえるかもしれませんが、

大人が使うからこそ質感や素材へのこだわり、という方向ももちろんある。

店内をぐるりと見渡すと、

「紙」というキーワードから集められた文房具が所狭しと詰め込まれています。







紙にまつわる文房具は、

紙に書くもの、紙に押すもの、紙を切るもの、紙を飾るもの、紙をまとめるもの、

紙を入れるもの、紙を包むもの、紙をしまうもの、など

生活に使う様々なものが、「紙」としてそこにある。

まずこの地域で手に入らない文房具たちが多いです。

文房具のメーカーを訊くと、耳にしたことのない名前が続々と出てくる。

谷中の「Biscuit(ビスケット)」、倉敷にある「倉敷意匠計画室」、大阪の「CHARKHA(チャルカ)」、

大手ではないけれど、質の良い温もりある文房具を作るこだわりを持っている会社で、

また、そういうメーカーを発掘して見つける眼もAgostoならでは。

CHARKHAさんは大阪のお店で東欧の雑貨やアクセサリーを販売していて、

また、オリジナル文房具も製作しているという存在。

よくそこまで見つけたな、辿り着いたなというアンテナに驚く。


倉敷意匠計画室の封筒を手に取ると、文字部分に指が当たりました。

その部分をよく見てみると、活版印刷だった。
活版ならではの風合い、肌触りが心地よく、

そうした活版印刷の文字の文房具が店内のあちらこちらに見られます。


なぜ、こういった文房具メーカーを見つけることができるのか??

それは、

「自分が文房具が好きだから、いいと思うものをとことん探す」

と笑って答える緑さん。


「それからこの文房具も倉敷意匠計画室さんで・・・」

と二年前のオープン直後から扱っている倉敷意匠計画室さん。

語り口は、本当に文房具愛に溢れている緑さんです。


カモ井加工紙の和紙のマスキングテープはAgostoの定番人気。

今お店に2015春夏バージョンがどっさり入荷していました。
新柄のマステ、欠品していた人気柄のマステなど、今春は小花柄が沢山新作として出ています。


そして、Agostoの文房具でベスト3に入る人気商品が、懐紙です。

これは男性・女性関係なく買われる方が多いのだと言います。

お菓子を包むだけでなく、ラッピングペーパーとして、あるいは便箋にも、

さらに、和紙なので油を吸うのでお化粧直しにも使えるそう。まるでハンカチのような懐紙です。


文房具だけでなく、雑貨もいろんなものを取り揃えていて、pomierさんのペンケースは、

手づくりで丁寧に作られたペンケースは、どれも一点もの。
ちょっと大人なリバティ柄は、どれにしようか悩んでしまうほど。
事務用品を入れるものこそ、気持ちが華やぐものを使いたい。


Agostoの古本カフェという枠にとどまらない、文化的な香りはこの二年で着実に深まっていて、

今各地の個性的な本屋、古本屋は自店からの積極的な発信を大事にしている中で、

Agostoの発信も目を見張るものがあります。
川越でも珍しい独自企画で今や人気企画となった「ひと箱市」は、

既に三回目の開催を終えたばかり。

ひと箱市とは、家にある段ボールなどの箱に売りたいものを詰めて、お店へ持ち込むだけというもの。

参加費を払い、あとは終了日に撤収しに行くだけ。
1日だけ参加も、6日続けて参加できました。

古本、雑誌、CD,DVDなどはもちろん、アクセサリーや雑貨、

買ったものの使っていないものや頂き物の品々、文房具などを出品するスタイルの市。
もちろん手づくりの作品も大歓迎、

服や、靴、子供用品も箱に収まれば出品でき、ちいさなフリマという感じ。
ただ、フリマのようにずっと店番をする必要はなく、天候に惑わされることもありません。
また、作品は売ってみたいけれど接客が苦手…、恥ずかしいという方も気楽に参加できるものでした。

レンタルボックスのような常時とは違い、期間限定だからこその気持ちの入れ込みようがあって、

ひと箱という小さな空間の制限は、制限があることで想像力がかき立てられる。

どういうものを、どう詰め込んで見せようか、それぞれの趣向が楽しいものでした。


さらに店内で開催しているワークショップも、Agostoの定番となっています。

『Ironna happa刺繍ワークショップ Vol.3』が2月に開催され、今回で3回目となりました。

先生が刺繍デザインの見本を見せてくれ、

初めての方も遠慮なく参加でき、初回となる方には簡単な基礎から刺繍のレッスンから始めます。
ステッチはもちろんですが、糸の通し方や枠の使い方など、
初歩の初歩をサポートしてくれるものです。
自分のペースで刺繍の練習ができるので、まるっきり初めての方も、

逆に普段から刺繍に慣れている方もそれぞれのレベルに合わせて楽しめるものです。


店内イベントとして、LiLoさんのLIVEは何度も開催され、

この雰囲気とLiLoさんの歌声は幸せなマリアージュでした。

(「LiLo live in Agosto」2015年6月14日

http://ameblo.jp/korokoro0105/entry-12040318265.html


そして、Agostoの緑さんといえば、これは外せないお話し。

お店がある連雀町の雀會囃子連に入っていることでも有名。
2014年の川越まつりでは、道灌の山車に乗り天狐の舞を魅せました。


「川越まつり2014最終日 川越人が魅せた曳っかわせ」

http://ameblo.jp/korokoro0105/entry-11942874282.html
女性の狐は川越でも特に珍しく、

女性らしいしなやかな舞で、新たな狐像を作り上げようと稽古に励んでいるところです。
お店では川越まつりの舞台裏の話しやお囃子の貴重な話しを聞くことができるのも楽しいひととき。
川越まつり以外でも、毎月第三日曜日は熊野神社のご縁日なので、

神楽殿で雀會囃子連によるお囃子を見ることができます。

2016年1月元旦には、恒例となっている雀會囃子連による門付で、

大黒天などがお店に福をもたらしていました。


(「連雀町雀会囃子連による元旦の門付」2016年1月1日

http://ameblo.jp/korokoro0105/entry-12112998070.html


また、緑さんはyogaの講師としても活動していて、

全米ヨガアライアンス認定校で、講師認定を受けています。
基本的に毎週火曜日の夜に中央公民館和室でyogaレッスンを行っているところです。
直近のレッスン情報は詳細はサイトへ。

http://monieluwak.wix.com/love-life-yoga

2015年は川越水上公園近くにある最明寺では、朝yoga、夜yogaを開催していた。

(「お寺で朝yoga」×「坐禅会」最明寺とAgosto緑さんのコラボイベント

http://ameblo.jp/korokoro0105/entry-12052482340.html


ちなみに、7月12日に蓮馨寺境内の広場&講堂で開催する「川越Farmer'sMarket」にも

Agostoさんには力強い応援を頂いていて、連携していくことが決まりました。

「川越Farmer'sMarket」

http://ameblo.jp/kawagoemarket/
川越Farmer'sMarketのことはまた後日お知らせしますが、
7月開催に向けて準備の真っ最中です。
Agostoには、食や料理、自然といった本がたくさんあるので、
マーケットに合わせて川越Farmer'sMarketフェアと題した棚を作ってもらう予定です。


また、Agostoさんから

「マーケットが始まる前に境内で朝yogaやったら気持ちいいんじゃない?講師やってもいいよ」
ということで、緑さんによる朝yoga開催も決まりました。
これは木々があるところでやると気持ち良さそう。

今後の展開を楽しみにしていてください。


緑さんが本棚に近づいて、一冊の本をそっと取り出した。
その本は、昭和6年の本でした。

「この本はね、親の本棚から出てきたもので、捨てるのももったいないし、

うちに買い取って欲しいと持ち込まれた本なの」

「『捨てるのももったいないし、大手チェーンの古本屋に持っていくのも違う、

Agostoに引き取ってもらうのがいいんじゃないか』って」


お店をことを分かってくれる人が増えていること、

それこそが、この二年間の成果なのだと思います。

Agostoは、今日4月12日で川越に誕生してちょうど二年になりました。

次の一年でまたどう展開していくのか、楽しみにしています。


「古本カフェAgosto」
川越市連雀町8-2-2



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