川越style「café+kitchen 北風と太陽」北風と太陽を浴びながら全部正解全部いい | 「小江戸川越STYLE」

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「時が人を結ぶまち川越」
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川越の現場で様々なまちづくり活動にも従事しています。
「小江戸川越STYLE」代表:石川真

きたかぜ と たいようが ちからくらべをすることになりました。
きたかぜはいいました「ぼくはどんなものもふきとばすことができるんだ。つよいのはぼくのほうだ」
たいようはいいました「いやいや、きみはたしかにちからもちだけど、ちからだけではね・・・」
「では、あのたびびとのふくを どちらがぬがすことができるかやってみよう」
きたかぜは、たびびとにむかって おおきくいきをふきました。
たびびとのふくをぬがそうと、ちからいっぱい 
ブォーッ ブォーッ
北風と太陽が、どちらが強いかで言い争っていました。
議論ばかりしていても決まらないので、それでは力試しをして旅人の着物を脱がせた方が勝ちと決めようという事になりました。
北風が、始めにやりました。
北風は思いきり強く、
「ビューッ!」
と、吹きつけました。
旅人は震えあがって、着物をしっかり押さえました。
そこで北風は、一段と力を入れて、
「ビュビューッ!」
と、吹きつけました。
すると旅人は、
「うーっ、寒い。これはたまらん。もう1枚着よう」
と、今まで着ていた着物の上に、もう1枚重ねて着てしまいました。
北風は、がっかりして、
「きみにまかせるよ」
と、太陽に言いました。
太陽はまず始めに、ポカポカと暖かく照らしました。
そして、旅人がさっき1枚よけいに着た上着を脱ぐのを見ると、今度はもっと暑い強い日差しを送りました。
ジリジリと照りつける暑さに、旅人はたまらなくなって着物を全部脱ぎ捨てると、近くの川へ水浴びに行きました。
 

「時間を受け入れ、それと共に変化していくこと」

店主の岩上さんは、ぶれることなく泰然としていた。

オープンの時に考えに考え、色んな意味合いをこめてつけた店名でしたが、今、改めて考えると、自身の考え方、いや、それ以上に生き様がまさに北風と太陽で、自身とこれだけイコールになるお店、店名は珍しい。

時に北風にさらされ、時に太陽に照らされ、

「いい時もあるし悪い時もある。それの繰り返し。

全部が正解、全部いい」

これまでの経験が、その人を北風と太陽にしたのだ。

改めて9年、北風と太陽の物語を噛み締めるのでした。

 

2009年9月にオープンしたのが、「café+kitchen 北風と太陽」さん。

お店があるのは、県道川越日高線沿い。連雀町交差点~松江町交差点の間、隣は壺焼き芋の「平本屋」さん、三井病院の道路向かいにあります。

川越に個人店のカフェが徐々に増えてきた頃にオープンしたお店で、既に地域に根差したお店なので、知っている人も多いと思います。

「café+kitchen 北風と太陽」

川越市松江町1-23-3

11:30~15:00(L.O.14:30)
18:00~23:00(L.O.22:30)

月曜日休

 

お店は隠れ家的な雰囲気で、しっとり落ち着ける空間。

2人テーブル席に4人テーブル席、カンター席がある店内、窓際は自然光が入り、外の景色を眺めながらのんびりと過ごすことができます。

北風と太陽のメニューはイタリアンとメキシカンをベースにして、創作料理が並ぶ。

ランチでは、北風セットがパスタ2種類から、太陽セットがバターチキントマトカレーかタコライス。

その他に日替わりメニューもあり、ポークジンジャーなどのメニューが登場する。

旅人セットは本日のドルチェとドリンクのセットです。

 

 

 

 

北風と太陽の発する独特な世界観は、一言でいうなら、温かみを感じさせるスチームパンク。

無骨だけどどこかホッとするような空気が流れ、忘れていた何かを思い出させてくれるような世界。

スチームパンクは、産業革命期、機械文明と人間社会が今振り返るとちょうど良いバランスで融け合っていた世界をテーマとし、機械はまだアナログ感を残し、人間も機械と仲良く共存していたような時代。当時の機械が今からするとレトロ感に溢れたカッコいいもの・カワイイものに見えて一つのジャンルとして人気が定着しているのが今。

例に挙げられる「天空の城ラピュタ」、「風の谷のナウシカ」、「スチームボーイ」などの作品世界がまさに北風と太陽の岩上さんの大好きな世界。

それに、忘れてはならない、「ONE PIECE」も大好き過ぎてフィギュアなどが店内を彩っているのも北風と太陽の世界を広げる。(*アニメは単なる例に過ぎません)

それを伝えるお店の顔のような存在になっているのが、外壁面に設置されている鉄板。まず、入口に大きな鉄板がお出迎えするお店というのが珍しい。これがあることで、単にお洒落なカフェと表現されることから一線を画しているのだ。

鉄や鉄の錆びた風合いが好きで、また、木でもなんでもむき出し素材が時間と共に朽ちていき、時間が作り上げる雰囲気が好きでお店作りに採り入れている。

今でこそスチームパンクは人気ジャンルで定着していますが、これを9年前に発想していたことが、さらにそれをお店作りに採り入れてしまうということが、当時はかなり斬新でした。

店内の客席にそびえ立つ、鉄の柱。

お店入ってすぐに目に入る40年前の鉄骨の柱は、北風と太陽にとって、シンボルツリーならぬ、シンボル柱と言えるもの。

岩上さん自身、「うちのお店の象徴のようなもの」と柱を愛でる。

普通に考えたら、入口にある柱はお店にとってあってはならない邪魔なものと捉えるはず。

しかし、お店の象徴と断言するのは、マイナスをプラスに利用する発想の転換があり、もともと「木」の柱に鉄加工を施し鉄と見まがう柱としているのだ。スチームパンクの世界を深める、実に効果的な柱になった。

ここにこの柱があったからこそ、北風と太陽の世界が深まる。

なくてはならない場所に、なくてはならない柱が、このシンボル柱だったのです。

北風と太陽は、今から5年前にも記事にしたことがあります。

あれから5年、この5年で北風と太陽の岩上さんをより知る機会が多くなり、改めて編集し直します。

感覚的に書いていたことから、店主の心の内側に触れ、言葉を聞き、その積み重ねが、どうしてもあの時の記事を書き直したくなったのが今回。

(Yahoo!などの検索サイトで「川越 〇〇」で検索すると川越styleの記事が出てくることが多い情報インフラとなっているため、書き直したいというのも動機)
川越style

川越style

(2013年の北風と太陽)

あれから5年経って思うのだ。あえて風合いを出さずとも、鉄板は時間の分だけ錆び、テイストではなく本物をまとい、北風と太陽の物語の世界観を深めているのだ、と。

今でこそ、お店の雰囲気を、スチームパンクと言えばある程度伝わるようになりましたが、5年前に取材した際に岩上さんと話しをしていた中で、この世界観をどう表現すればいいのか、伝えればいいのか、かなり悩んだことを憶えています。

スチームパンク、という言葉が今ほど一般化されていない状況で、このテイストを伝える。

鉄やそれが錆びた風合いが好きといっても、そのまま書いただけではきっと岩上さんの考える世界は伝わらない。

「こういう事ですか」

「いや、こういう感じですかね」と例を引っ張ってきたり、雲をつかむように言葉を出し合い、なんとかいい言葉で表現できないか、二人で共同作業のようなやり取りをしていた。

「こういう事ですかね?」

「もっとこういう感じかな」

着地点がなかなか見つからず、そんな時に・・・店内でふと目jに入ってきたものがあった。。。


こびとづかん??そして本棚で見つけた・・・

 



風の谷のナウシカ。お店に散らばる断片を切り口にして、お互いの認識が一致していった。

ああ、素材が自然に錆びていく感じが好きなんだという話しになり、ジブリが好きという話しになり、ラピュタが好き、そして蒸気機関!に、飛行船などの乗り物、巨神兵など機械だけどどこか温かみを感じさせるアナログを残している世界としっくり繋がっていった。

それが、岩上さんが考えるお店の世界。

こういう想いから作られていたというのは、やはり、じっくり聴いてみないと分からないこと。

オープンから時間が経ち、お店はいい具合に時間分の経年変化の風合いを得て、どこか懐かしいような空間に仕上がってきた今。

 

オープンから9年。

川越は個人店が多い街ですが、9年続いているのは凄いこと。

9年という月日は、赤ちゃんだった子が小学校にあがるくらいの時間で、カップルが夫婦になり、子どもができて家族で来るようになり、と人の成長を見守ってきたような9年でもあった。特に北風と太陽はリピーターが多いお店で、店主とお客さんの距離が近い分、家族のような感覚でお客さんの変化を見続けてきたのだ。

お店をやっていなかったらこんなに人の人生に関わることはなかったかもしれない、岩上さんは今、しみじみと感じている。

北風と太陽の岩上さんは、川越生まれ、育ちの生粋の川越人。

隣は実家のクリーニング店「くりいにんぐ いわかみくん」で、創業80年にもなる老舗店。現在の住所は松江町ですがもともとは連雀町の行政区画に入っていました。

(ちなみに、北風と太陽に居ると遠くからクリーニング店のコンプレッサーの音が聞こえてくる。それがなんともスチームパンクを深めるのだ)

連雀町と言えば、川越の中でも特に個性豊かな人が住まう地域として知られ、この地にどっぷりと浸かり空気を吸いながら過ごしてきた岩上さん。

実家のクリーニング店で6年ほど働いていた時期もあり、その後、飲食の世界に興味を持ち飛び込んでいった。

知り合いのつてで働いたのが、清澄白河にあるナポリピッツァで知られる屈指の人気ピッツェリア、「ベッラ ナポリ (BELLA NAPOLI」。

ベッラ ナポリのピッツァは、「そこのピザは、今までのピザの概念が吹っ飛ぶくらい衝撃的な美味しさのピザだった」。

ここで働きたい、熱意をぶつけて採用されたのだった。ベッラ ナポリで2年ほど働き、修行を積んだ。

その後は本場イタリアで働くことも考えたが、様々な経験をし、社会の中でどう身を置いていくべきか悩んだ時期に突入する。悶々とする日々を送る中で、悩むなら行動してしまおうと、腹をくくって出した答えが、自分のお店を開くこと。

「地元川越で自分のお店を開こう」と、2009年に夫婦で「北風と太陽」をオープンしました。

オープンを決意し、オープンまでの道のりが激動、内装工事などは業者に頼まず仲間と共に自分たちの手で作っていった。そう、手作りで作ったお店なのだ。

店内を見回してみると、手作りならではの感じが伝わり、それが北風と太陽の良さに繋がっていることに気付く。

タイルも一枚一枚自分たちで貼ったという手間の掛けよう。

ちなみに、タイルにも北風と太陽の意味を込めていて、カウンター席のタイルが太陽、洗面所のタイルは北風、それぞれ少し色合いが違っているのだ。

川越style

長いプレオープン期間に、今のカレーなどを試作を重ね、周りの人の意見を聞きながら固めて行ったものなのだ。今振り返ると、このプレオープンが北風と太陽の土台を固めたものと言えるかもしれない。

 

昼のランチメニューがお店の導入部だとしたら、北風と太陽の料理を存分に感じられるのが夜の部。

ランチのカレーやパスタ、タコスもディナーにありつつも、創作的な料理が幅広く提供されるのだ。

 

岩上さんが5年前に口にしていたことがありました。

「冬限定で、グラタンやラザニアを提供したい」、「グラタンは自分自身がめちゃくちゃ好き」、力をこめて語っていた。

なぜ、グラタンやラザニア??

小さい頃からグラタンが好きで、好き過ぎて自分でグラタンを作ってみようと思い立ったのが小学2年生の頃。初めて作った料理がこのグラタンだった。

小麦粉、牛乳、バター・・・シンプルな材料でなんでこんなに美味しいものができるんだろう、「まるで魔法に見えた」。

素材の鮮度勝負とは違う、煮込んだりという行為が料理らしく好きで、今でもグラタンや煮込み料理が好き。

それに、岩上さんにはラザニアに対する特別な思いがある、川越人は憶えているかもしれない・・・

新富町二丁目の脇道にあったイタリアンレストラン「パポーネ」。

もう10年以上前に惜しまれながら閉店しましたが、岩上さんはパポーネのラザニアがとにかく好きで、ある時から、「あの味を再現しよう!」とパポーネのラザニアを再現する日々が始まっていった。

試行錯誤の結果、つい2年ほど前に、「これぞパポーネのラザニアだ!」と再現することに成功。

現在は事前予約のパーティーメニューにラザニアを入れており、何よりこれを目当てに楽しみにしている人が多くいる。

(北風と太陽のラザニア)

こんなメニューがあったなんて、こんなストーリーがあったなんて、深く入り込んでこそ知る、北風と太陽の知る人ぞ知る隠れメニュー。

今後は、季節を意識して冬にグラタンやラザニアがレギュラーや限定で、登場させる構想もあります。

(常連客とは家族のような関係に)

北風と太陽の岩上さんで、外せない話しと言えば、やはり、川越まつり。

岩上さん、さらに岩上家といえば、川越まつり。

川越まつりに関わる人で、岩上さん、岩上家を知らない人はまずいないくらい。

連雀町にとって、町内の象徴のような家が岩上家なのです。

連雀町という、川越の中でも川越まつり熱が熱過ぎる町内ゆえ、さらには岩上さんの父も祖父も川越まつりに昔から関わり、太田道灌の山車制作に関わっていたのだから生粋の祭り人。

連雀町では(あるいは川越でも)レジェンド的な人が連なる家系ゆえ、それはもう岩上さんも幼少の頃から川越まつりにはどっぷり漬かり続け、川越まつりの英才教育を受けて育ってきたのだ。

連雀町の山車曳行では、岩上家の前で山車を停め山車の正面を向けて挨拶しているということに、町内の位置づけが伝わるでしょう。

(「川越まつり」2017年10月15日夜の部 川越人意地とプライドの雨中山車曳行と曳っかわせ

https://ameblo.jp/korokoro0105/entry-12321168321.html

 

岩上さんが属する連雀町の川越まつりの会、連々會は2018年に創立30周年を迎えました。

(川越style「川越まつり 連々會創立30周年記念式典」川越東武ホテル光琳の間2018年6月2日

https://ameblo.jp/korokoro0105/entry-12380911195.html

 

(連雀町 連々會懇親会)

 

北風と太陽としてイベントというと川越まつりが最も重要なものでありつつ、他のイベントに出店することも多く、川越青年会議所の事業には毎年のように参加しています。
2016年9月22日川越市営初雁公園野球場で開催された、「小江戸川越初雁フェスin HTSUKARI STADIUM」では、肉をテーマにした食エリアに出店。


(川越style「小江戸川越初雁フェスin HATSUKARI STADIUM」川越青年会議所
https://ameblo.jp/korokoro0105/entry-12204021257.html

川越青年会議所の大事なキャラクター、時の鐘の妖精「時の鐘マン」も、北風と太陽の出店を応援していたのだった。

『タコライスやメキシカンチキンが大人気なこちらのお店からは『絶品!炙りステーキのメキシカンタコス』を販売予定だぞ。炭火で炙ったハラミステーキをトルティーヤにたっぷりのせて玉ねぎたっぷりのサルサソースでほおばってみよう!ちょっとピリ辛でおいしいぞ!更にお好みでパクチーもトッピングできるんだぞ~。北風と太陽さん曰く「夫婦ならではのコンビネーションでがんばります!」とのこと。当日は二人のコンビネーションにも注目だ!』

 

2018年5月川越運動公園で開催された川越青年会議所の「トキメキ川越未来博2018」では、「食」も注目で、現在の川越で活躍する人気飲食店が出店するエリアを作っていました。

北風と太陽ももちろん出店。

各飲食店は、お店の売れ筋メニューを提供すると共に、『未来の川越』にちなんだ限定商品」を提供していました。限定商品は人気投票をしてもらい、その反響から実店舗でのグランドメニュー化を検討してもらおうという趣向。未来の新メニューを来場者が創るという体験を通して、街に関わる意識を高めようとした。

(川越style「トキメキ川越未来博2018」川越青年会議所 2018年5月19日 川越運動公園

https://ameblo.jp/korokoro0105/entry-12378061100.html
③『北風と太陽』さん

・当日限定メニュー SABAケッタ
・その他販売メニュー 北風と太陽ブリトー、ジャワティー

 

そして、今度の予定としては、2018年12月2日(日)ウェスタ川越・ウニクス川越で開催される、「くらしをいろどるFarmer's Market」に出店が決定し、大きな話題になっていくことでしょう。

 

オープンから9年、川越にしっかりと根を張ったお店は、いつしか、何事にも動じない、受け入れる度量の広さを手に入れていた。

「いい時もあるし悪い時もある。それの繰り返し」

時に北風を浴び、時に太陽を浴びながら、入口のあの鉄板は、次の5年でどう変化していくだろう。

 

「全部正解、全部いい」

 

「café+kitchen 北風と太陽」

川越市松江町1-23-3

11:30~15:00(L.O.14:30)
18:00~23:00(L.O.22:30)

月曜日休