●キャラについて語る200題【ヴァレンタイン】

01:身長/体重
150cmみまん/蝉の抜け殻ひとつぶん
02:字のうまさ
へたくそ
03:絵のうまさ
抽象的にしか描かない
04:歌のうまさ
声が掠れて音程外れるけど、不思議と聞きづらくはない
05:視力
良好
06:香り
花の蜜よりかすかな甘さ
07:声質
一音いちおんをくっきり喋ってるけど、音の輪郭がにじむ、
音としては聞き取りづらいけど、意味は伝わる(テレパスと似て非なる)
08:髪質
ふわふわ
09:美人(美形)度
少女よりの無性別顔
10:プライド
よくわからない
11:ハマっていること
写真をとる
12:チャームポイント
白いからだ
13:甘党辛党
甘党
14:自己紹介の内容
にがて
15:最近の悩み
忘れたくないひとがいっぱい
16:嘘の内容と上手下手
へたくそ
17:給料(小遣い)の額
体でいただいてます(にこにこ
18:特技
子犬のように懐く
19:寝相
寝ない
20:最長不眠時間
寝ない
21:平均睡眠時間
寝ない
22:パジャマ
たぶんワンピースタイプの すとんって着れるから
23:鞄の中身
背中の穴は四次元ポケット
24:いつも身につけているもの
あなたからの愛
25:休日の過ごし方
エブリデイホリデー
26:毎日の習慣
ラァネの寝顔をながめて名前を呟く
覚えてることの確認
27:集めているものと所持数
写真はとりためてる ポラロイド
28:心から気を許している人
覚えて忘れてを繰り返すけど、らぁねさんとからんらんとか、アンくんとか、ギギちゃんもえーてつさんも
29:会ったことがないけど気が合いそうな人
モナちゃんとかうまくいきそうだなって勝手におもっています
30:本気で嫌っている人
今のところ出会ってない
31:警戒する人への態度
だんまり
32:尊敬する人
フィロさん 強くていろいろしってる
33:客観的に見た性格
色でいうと薄ぼんやりとした白
34:他人に持たれている印象
こども
35:プレゼントしそうなもの
花冠とか キスとかハグならいつでも(にこにこ
36:貰うと喜ぶもの
苦手なものでなければだいたい
37:お礼を言うときの言葉と態度
「わあ!ありがとう!」子犬のごとくしっぽふる
38:謝り方
「ごめんなさい」耳がたれるあれ
39:足の速さ
はしれない
40:勘の良さ
勘はあたるけど、具体的にどんなものかわからないから他人には説明できない
41:器用さ
繊細ではある
42:礼儀正しさ
良くも悪くも皆平等 らぁねさんだけちょっと敬語
43:涙もろさ/泣く頻度
よく泣く子
44:大人度/子供度
こども
45:オシャレ度
らぁねさん任せ
46:ロマンチスト度
現実感を持ってない
47:負けず嫌い度
皆無
48:子供好き度
みんなすき
49:他人の外見を気にする度
らぁねさんは美人だとおもうけど、皆どこかしらきれいだとおもう
50:ツンデレ度
ご主人様がツンデレなんで
51:知名度
エルシオの一部では有名かもしれない
52:気持ちが顔に出る度
出っぱなしだけど、しゃべらない時はもっといろんなことをかんがえてる
53:ボケ度ツッコミ度
つっこみできない
54:ワガママ度
おねだりといってほしい
55:友人が愚痴ってきたら
よしよし
56:旅行するなら
らぁねさんがいれば
57:疲れたときは
らぁねさんにひっつく
58:他人にされると嫌なこと
前の自分と比べられること
59:恐れていること(もの、人)
上記と、なにもかも忘れてしまうこと
60:言われ慣れていること
「おぼえてないの?」
61:無人島に三つ持って行くなら
「3つじゃたりない! らぁねさんは なにをもってくの?」
62:秘密の数と内容
ないしょはないしょ
63:実現不可能な願い
「このままずっと ここにいられたらなあ ああ、でも ここもにせものだから 本物のらぁねさんたちに会いたいよ」
64:神や悪魔の存在について
「ぼくたちは ぼくたちの殻を 信仰しているから そういうの よくわからないの」
65:幽霊の存在について
「ぼくは殻なの ヴァレンタインのゴーストだよ」
66:虫嫌い度
おら虫!
67:好きな時間帯
昼下がりと、寝顔をながめる夜
68:現在までの経歴
エリュシオの抜け殻の一族。同じ素体から分岐進化した分身とも双子ともいえるテッカニンの分体をもつ。
どちらが本体というものはないが、テッカニンが主な権利を主張している。
月の満ち欠けで痛んだ殻の体を作り変えると同時にその体で培った記憶を失う。詳しくは名簿にて。
69:幼少時代
素体であった頃をそう指すならば今とそう変わらないまま実体をもっている。
70:二年前
エリュシオで岩の社に見張りのない軟禁状態で祀られていた
71:黙っているときの雰囲気
人形のよう
72:トラウマやコンプレックス
記憶関係と、すかすかな声と、体温のない体
73:暑がり寒がり
暑がり
74:目と髪の色
薄桃色がかったくすんだ白金髪、ブラウニーの瞳
75:似合わない服
ボンテージとか
76:怪我する頻度と原因
ヒント:HP1
77:スタイル/体つき
未完成な女子と男子のあいだ(女性寄り
78:服の選び方

79:喧嘩を売られたら
買わない売らない逃げ出さない
80:将来の子供の数
ご希望であれば
81:何歳まで生きそうか
あと20年が限度かな
82:機械操作

83:自信
劣等感
84:自分の好きなところ
好きと言ってもらえた所ならすこし
85:自分の嫌いなところ
だいたい
86:好きな/嫌いな季節
あまり
87:好きな/嫌いな色
あまり
88:世界一綺麗だと思うもの
らぁねさんの髪
89:一度は言ってみたい台詞
「貴方のこと これからずっと 忘れない」
90:一度はやってみたいこと

91:動物に例えると
子犬
92:色に例えると
ぼんやりした雪原のなかの白いちいさな獣
93:使えそうな魔法
いたいのいたいの とんでけ
94:驚いたときに上げる声
「わあ!」
95:笑い声
「ふふふ」
96:よく行く店/場所
らぁねさんのいくところ
97:よくする表情
にこにこ/きゃっきゃ!/しゅん..
98:よく取るポーズ
両手を広げてハグのお誘い
99:漢字一文字で表すと

100:キャラに合う四字熟語を作るなら
月記殻語
101:好きな音楽
アンビエイト/ポストロック/ミニマル/ドリームポップ
102:好きな/嫌いな言葉
悪意のない言葉がすき
103:好きな/嫌いな天気
殻が濡れるけど雨が好き
104:好きな/嫌いな食べもの
基本的に花の蜜とかでいい燃費。甘いの好き!
105:好きな花
かすみ草からマンドラゴラまで
106:好きな/嫌いな動物
爬虫類からマンドラゴラまで
107:好きな作品の傾向(小説、映画、美術etc。「シリアスな映画が好きそう」みたいな)
曖昧な形だけど意味のつよいもの。
108:好きな/嫌いな飲みもの
炭酸とかアルコール弱そう
109:悩みができたら
もじもじして聞きにいく
110:運命の存在について
ぜんぶ終わった時に気づくこと
111:自分の容姿への感想
「背中の穴は 自分じゃみえないんだ
誰かにさわってもらって やっとわかるの 僕が僕の証拠」
112:自分の能力への感想
「戦えなくてごめんなさい..ちがうところで 役に立ちたいのだけど」
113:恋への興味
「恋と愛と 理解はできるんだけどね ぼくにはあんまり 関係ないかなあって
ぼくは無性別だし みんな好きだもの」
114:恋をしたときの様子
ふわふわしたままだけど色々欲しがる
115:恋をしたときのアプローチ方法
無意識にほしがる。スキンシップとか愛情のある行為とか。ものよりおもいで。
116:異性への耐性
ヒント:無性別
117:モテ度
こども
118:性的なテクニック
教育予定です
119:告白するときの言葉
ゆっくりまくしたてて抱きついて離さない
120:フェチ(マニア)
髪と体温
121:愛し方
死ぬまで側に
122:甘え方
子犬のごとく
123:一途さ
一途であるがある意味浮気性
124:体の丈夫さ
HP1
125:体力
HP1
126:記憶力
新月に忘れる
127:リーダーシップ
皆無
128:社交性
やりたいまま
129:下着

130:誕生日と血液型

131:教え方

132:詳しい分野

133:これのためなら死んでもいい
「ぼくは ヴァレンタインが死ぬまでは 死ねないから」
134:体温(平熱)
なし
135:世間知らず度
文字もかけない
136:外出頻度(ペース)
ご主人様の仰せのままに 庭程度ならいつも
137:声の大きさ
騒音に掻き消えそう
138:ゲームの強さ

139:化粧

140:ご飯を一緒に食べる人
らぁねさんとかWoEのみなさん
141:物を買うときに重視する点
残るものかおいしいもの
142:心の中で認めている人
「それって 恋とか愛とかと どうちがうの?」
143:気の合う/好きなタイプ
だいたい平気
144:合わない/嫌いなタイプ
悪意をもって虐げるひと
145:色々な相手への二人称(目上、部下、友人、敵etc)
きみ 貴方
146:寂しがり度
けっこう
147:ドジ度
けっこう
148:好みじゃない物を貰ったら
よろこぶ
149:カラオケに行ったら
マイクで人前で歌うとかがらじゃないんで...
150:上機嫌なときの様子
朝までステップ刻む 君が笑ってくれるなら~♩
151:不機嫌なときの様子
しょんぼり
152:(学生だった場合に)入りそうな部活
保健室通いの園芸部
153:つい他人にやっちゃうこと
ハグしようとする
154:実は嫌いじゃない人

155:周囲からの人気

156:常識人度

157:他人の目を気にする度
よくわからない
158:可愛いもの好き度
すき
159:考えを口に出す度
半々
160:冷徹度
マイナス
161:執着心の強さ
ないなあ
162:持病

163:純情度
まじりっけなし!
164:腹黒度

165:本(書類)を読むスピード
文字は勉強中
166:起きたら最初に
らぁねさんを探す
167:告白されたら
「うん ぼくも貴方が好きだよ!」
168:精神の強さ
ある意味したたか
169:敏感な場所
背中のふちと腰の羽
170:読んでいる雑誌
おかあさんといっしょ
171:必殺技
背中から中の人の手
172:雑学の量
あまり
173:恋愛遍歴

174:S度/M度
M
175:好きな数字

176:料理の腕
あるていど
177:運動神経
皆無
178:部屋の様子
あまり物をもたない
179:癖
瞬きをせずじっとみる/なぜ?と聞く
180:口癖
「~なの」「わあ!」「なぜ?」
181:あだ名
マイブラとか
182:メールアドレス

183:メールの内容と文体

184:(学生だった場合の)得意教科/苦手教科
美術家庭科/体育
185:性経験
売約済みなんで
186:腕力
なし
187:趣味
うたをうたう
188:お金の使い道
体でいたd(
189:起床・就寝時刻
ねない
190:家族構成
両親と両親の殻と自分の分体
両親の殻とヴァレンタインに面識はない
191:怒り方
まくしたてる
192:酒の強さ
すぐだめになる
193:RPGのキャラだった場合の職業
密教の生贄
194:頭の良さ
覚えれば頭いい
195:運の良さ
今がマックス
196:もしも現実にいたら
変な宗教の信者の両親に軟禁された少年
197:コーヒーの飲み方
紅茶派
198:自覚してない欠点
悪い事に目を瞑る
199:ここ一週間で一番幸せだったこと
「(いっぽうてきに)らぁねさんとぎゅってしたの!」
※舞踏会らへんにかってにだきつく
200:キャラへのメッセージ
幸せなって、幸せにしてね



あざーした!!

配布元:TOY



iPhoneからの投稿
(7/7から8までのおはなし)
(ss)









世間のさえずりなどしらなかった。
透明な輪郭にそって撫でる指で紡ぐ様な細い記憶はもはや自分の記憶なのかもわからない。
他人から教わる自分は自分であるが誰よりも知らぬ他人である。
時折漠然とした圧倒的な衝動に耳を塞ぎ自身の残響に怯えた。
欲しかったのは肯定である。

















外は雨だ。
ぱたりぱたりと雨粒の音が聞こえる。部屋は暗く月明かりも届かない。
新月は何時だっただろう。
見えない月を追うことは地界のころに似ているが、不順であったことはない。
ヴァレンタインが自身の左手をみやる。
子供のような幼い瞳は、昼間のような活気をもたず憂げに陰をさしていた。

視線の先のその手は暖かい他人の手に包まれていた。
ゆるく手を握れば、慣れて体温と感覚の同化したようなぬくもりに違和感が生じ、互いの手が同化していなかったことに安心し少し残念にもおもう。

「どうかしましたか」
雨音の中に、密やかな低い声が投げかける。
声をかけられ少し顔を傾けたヴァレンタインだが、視線はそのまま、アラーニェに握られた自身の右手を眺め、息を吐く様に言葉を繋ぐ。
「ラァネさんの手と ぼくのて くっついちゃったかとおもったの」
「そんなことある訳ないでしょう」
「うん ばらばらのままでした」
「当たり前です」
「くっついても たのしそう」
「不便なだけですよ」
無感動な声だが、言葉程にアラーニェのトーンに棘がないことにヴァレンタインは俯いて小さく笑う。




そこはアラーニェのベッドルームだった。
ベッドの縁にアラーニェが座り、そのベッド脇に沿うようにヴァレンタインの座るロッキングチェアーがある。
ACカンパニーで揺れ椅子に一目惚れしたヴァレンタインがねだって買ってもらったが、ヴァレンタイン自体に重さがないためほとんど自力で揺らすことができず、ヴァレンタインが頬を膨らませた代物だ。
元々ウッドデッキにあったが、アラーニェの部屋に入っても怒られなくなった辺りから、気付けば勝手にヴァレンタインが引っ張ってきていたのである。


ベッドから数歩あるけば庭に接する大きな窓がある。天井から床までの一面の窓だ。ヴァレンタインはこの窓が好きだ。
お互い見つめ合うことはしない。握った手を介して感情が伝わればいいのに、とそう思ったのはヴァレンタインのほうだった。
お互い、うまく言葉を見つけられないで夜が過ぎていく。



「あなたには紅茶をいれられなくなります」
あなたの好きなケーキもつくれませんし、と、揺れる視線でアラーニェが呟く。
持て余した気持ちのやり場に戸惑って、背けるように握っていたアラーニェの指が緩む。

きっと、黙ってしまった自分に対して、傷つけたと思って焦っているのだろう、とヴァレンタインは結論づける。
音をたてないロッキングチェアから少し身を乗り出して、ヴァレンタインが少し浮いたアラーニェの手を追いかけるように、彼の小指に指を絡める。
ぱたりぱたり、と窓を打つ雨の音を聞きながら、ヴァレンタインは、自身ができるいちばんの柔らかい笑顔をアラーニェに向けた。


「ラァネさん いいの」
ひとつ呼吸をして、またきゅっと小指を擦る様に握る。
「むりしないで ぼく あしたもここにいるから おやすみなさい しましょう?」
ね、と首を傾げて主に促した。
「ラァネさんのねがお ぼく すきです」



ね、ほらほら、と促されるまま、何か言いたげに口を開いたアラーニェをベッドに押し込むと、両手で膝を抱えるようにしてヴァレンタインが椅子に座り直して笑った。
「ふふふ!ラァネさん ねちゃえ ねちゃえ」
「今日はいやに強引ですね」
「たまには いいでしょう?」
「またそうやって窮屈そうに」
「いいでしょう 好きなんです」
「だからベッドを買ってあるのに」
「眠らないのに あんなにひろいところで ひとり さびしいもの」
アラーニェが眉をひそめた。

あ、また、とヴァレンタインが苦く笑う。
言いたい事がある顔をしている、とおもう。でも言わないのは、自分が言えなくしているのだろうか。
ちくりと胸が痛む気がした。
何かを耐えるようにアラーニェが目を閉じた。




「手を」
ぼそりとぶっきらぼうに呟いたアラーニェに首を傾げると、もう一度同じ言葉を繰り返される。
ヴァレンタインが手を差し出せば、先ほどより強くアラーニェの手に握られ、そのままベッドの上まで軽くひっぱられた。
「勝手に離さないでください」
目を閉じたまま、アラーニェの手はしっかりとヴァレンタインの手をシーツに押し付けるように握る。
ヴァレンタインはそれを、泣きそうな笑顔でみていた。
「おやすみなさい ラァネさん」
















眠るつもりがなかったのだと、ヴァレンタインは主を推測する。
ここ数日はずっとそうで、その原因は自分にある。自分の記憶のリセットの日付がずれてしまったからだ。
「前」の自分がどうだったかは知らないが、ずれることは万に一つもないことだとは分かる。
それは地界の月の支配下にある限り・自分が地界のヌケニンである限り、変わらない事実だった筈だ。
こんなことはおかしいと、自身のコアが叫び、けれど胸をつくのは安堵と不安と、少しの期待。
期待はやがて溜め息に変わるのだと自分自身がよくわかっている。

以前の新月で、主はひどく動揺したようで、この度の新月を迎えるあたりから、夜はヴァレンタインの手を握って眠るようになった。
ヴァレンタインはそれを、嬉しいと思う反面で、苦しくもあった。



きっと目を瞑るだけのつもりだったのだろう、しかし無意識に握る手が緩み出した。アラーニェは浅い眠りにつこうとしている。
薄く開いた唇から吐息のように何かを言ったようだったが、ヴァレンタインには聞き取れなかった。
その様子を眺めながら、また椅子から身を乗り出し、ヴァレンタインがアラーニェの頬を空いている手の甲でなでる。
見つめるヴァレンタインの瞼も、ゆるく伏せ気味であった。






「ねえ ラァネさん
あしたもぼくは ここにいます
でも あしたのぼくは いまのぼくでは ないんです」



背中の淵が 燃えるように熱い
何かが抜けていくような虚脱感に瞼が震える



「あなたがくれたもの みんながくれたもの
例えば椅子や写真だとか いっぱいあるのだけど

ぼくは えらんでもっていられないから
それだけが とても 悲しいの」



この瞼をいま閉じてしまえば
それで終りだと知っている
閉じそうになる瞼を必死に耐えて言葉を紡ぐ



「あなたが離したくないのは ねえ いまのぼく?
それとも 離してしまった まえのぼく?
つぎのぼくにも そうやって 手をにぎろうとおもえるかな」




次の自分が 今の自分より幸せであれるのか
今の自分は 前の自分より劣っているのではないか
皆が名前を呼ぶ自分は それはいつの自分のことなのか


写真に映る大切な人が明日には知らない誰かになる
それに次の自分が 今の自分に嫉妬も不安も覚えずにいられるかわからない
それでも



「ぼくはね ずっとひとりなの
地続きでは おぼえていられないけど ぼくのコアは ずっとここに ひとつだけ
だからね それだけ ぼくよりずっと 忘れないでいてほしいんです」



僕が僕に嫉妬してしまっても 僕が僕を嫌になっても
僕が僕をわからなくなっても
貴方は僕が だれかを 知っていてほしいとおもう
欲しいのはそう、僕は僕であるという、誰かからの肯定



「だいじょうぶ つぎのぼくも きっとあなたを すきになるよ」


だって僕は ずっとおなじ ひとりだけ










浅い呼吸のまま、ヴァレンタインが揺れ椅子から乗り出し、眠るアラーニェの耳元へ顔を近づける。
耐えられぬ虚脱感に瞼を閉じ、力の抜けそうな腕をつっぱって、雨の音に消えそうな声をたゆたせた。



「もう会えないよ さようなら ラァネさん」


次のぼくにもやさしくしてね、と、そう言ったつもりだった。
その言葉は音を持つことなく、ヴァレンタインは背中に大きな鼓動を感じ、
そこでヴァレンタインの意識は終わった。





































かたん、という堅い音でアラーニェの意識が浮上した。
眠るつもりなどなかったのに、と目をこすり、こすった手に違和感を感じ、気付いた刹那に愕然とした。
その手は確かにヴァレンタインの手を握っていた筈だった。

がばりと身を起こせば、揺れる無人のロッキングチェアと、微かな雨の匂いに混じるさらに微かな甘い匂い、それと暗い部屋に不可思議に煌めく無数の光の欠片。
ベッドから飛び降りようとして慌てて踏みとどまった。
ロッキングチェアの足下には、淡く霧散を始めた獣の抜け殻が転がっていたからだった。


呆然として先ほどまで握っていたと思っていた手を眺める。
掌にはさらさらと流れて溶ける光の粒子が踊っていた。












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記憶リセットの瞬間、アラーニェさん@inuさんお借りしました。
あんまり考えてなさそうだけど、内心はとても複雑で、嬉しいとか、幸せとか、好きだとか、そればかりではない。
ひとに教えてもらう自分は自分であって自分ではないし、何度忘れても名前を呼んでくれる皆が大好きだけど、
皆が呼んでくれるのは、今の自分ではないんだろうな、と思うことも多い。
前の自分も今の自分も次の自分も愛してほしい、と思う反面、今の自分だけを愛してほしいともおもう。

そういう矛盾をもった不安を毎回抱えて、毎回忘れてしまうのは、いいことなのかわからない。
ただ誰かに、前とか今とか関係ない、ただただ漠然としたものでいいから、存在に対して絶対的な肯定をしてほしいのです。
という話。

…………でもあり、前半ただのいちゃいちゃみたいになって本当すみませんでした土下座




(ss)
(5月おわりごろ)





アラアネさん、と、口のなかで呟き,喉の奥に飲み込んだ。
かれこれそれを7回と繰り返し、その前にラァネさん、と2度繰り返し、その前にはあの、と5回繰り返している。
何と呼べば振り向いてくれるだろうかと考え、何と呼んでいいのかと気付き、頭を垂れてしまったのだ。
子供っぽくていけない、とヴァレンタインもおもうが、いかんせん彼の名は言い辛いのだ。
言い易い名を呼ぶことを咎められはしなかった。だがあまりいい顔もされなかったことを思い出す。そして少し寂しくなる。

この感情を昔も感じていた気がした。どこだったのか分からないが、きっとヴァレンタインと一緒にいた頃だ、と、ヴァレンタインは自身と同じ名前と同じ顔をもつ彼女を思い出す。
何度記憶を上書きしても、彼女のことだけは、忘れられない。
いや、忘れないように、魂が叫んでいるのだ。


浅く呼吸をしながら、目を閉じる。
大丈夫、きっと、と、何回と唱えた呪文を繋ぐ。
魂とは美しく、そして厄介だ。
宙に浮く透けるような足に力をいれ、腕の感触を確かめるようにドアの取っ手に手をかけ、ゆっくりと目をあける。
この扉を開くことは、明日に繋がるのだと言い聞かせながら、ヴァレンタインにとっては少し重たいドアを開けた。







「いつまでそうしている気ですか」

小さく唸ったヴァレンタインは、更に俯くことしかできない。
咎められたんじゃないと分かっていても、敏感になってしまった感情は相手の言葉の端々から全てを探ろうとしてしまう。
やがて相手がつくため息も、四度目になろうとしている。
ドアの前で立ち尽くすヴァレンタインを、アラーニェは眉間に皺を寄せてみていた。

なんなんだ、と問うのは簡単だったが、答えが返ってくるのは難しかった。
口をきゅっと結んで部屋に入ってきたこの獣は、意を決したような瞳をしながら、口を開いては、あの、だとか、その、だとかを繰り返すだけで、一向に話題を切り出さなかった。
アラーニェが用件を促すたびに怯えたように俯く姿に、段々と眉間に寄せた皺が増え、ため息もついてしまう。
足を組んで座った膝の上に重ねた手が膝を叩き出すと、この小さな獣は更に小さくなった。
ため息をつくなというほうが無理だ、とアラーニェは思うし、一般論だと確信もある。


相手が何がしたいのかわからない。
アラーニェがそう思ったのと同時に、彼(実際は彼女なのかもしれないが、それすらもよく知らない)がいつも何をしているのか知らなかったし、何をしたいのかと聞いたこともないと気付いた。

不明瞭な気分だと、5度目のため息を飲み込む。相手も自分も、互いのカードを何一つ知らないで一ヶ月を過ごしたのだ。
契約とは厄介なものだとアラーニェが立ち上がろうとしたとき、ヴァレンタインが掠れるような声をあげた。


「僕、ぼく、忘れてしまうんです。なにもかも、忘れてしまうの、アラアネさん」

彼の話し方は特有で、どこか穴の空いたようなというか、空気のぬけるような声をしている。そのくせ、頭の隅にこびりついたように忘れられない声だ。
そうぼんやり思いながら、アラーニェがさらに眉をしかめて足を組み直した。

「脈絡がないですね。順を追った説明をお願いしたいのですが。できますか」
あまり期待はしませんが、と足すと、ヴァレンタインの顔が一瞬泣き出しそうに歪んだが、気づかない振りをした。
ただ純粋に苦手そうだと思っただけであり、泣かせる為にいったのではなく、勿論嫌味として吐いたわけでもなかった。

「あと2日です この世界は 月が見える 僕の一族は 抜け殻だから 忘れてしまいます また はじめから 抜け殻になるために 殻をつくりなおします 殻をつくるとき 今の僕はきえてしまうの だから」
「ゆっくりなのはいいですが、息継ぎをして話してください」
そしてやはり意味がわかりません、と言うしかなかった。

「抜け殻とはあなたのことですか?貴方は生きているし、ヌケニンを貴方の祖国ではそう呼ぶのでしょうか」
「僕たちの素体は そう呼んでいました」
「そたい?」
「ヴァレンタインが、僕とヴァレンタインに分岐する前のヴァレンタインのこと。それと、分岐したあとに記憶を受け取った正当な過去を過ごすヴァレンタイン」
「待って。頭が整理できません。貴方は一体誰の話をしているんですか。貴方は誰なんですか」
「僕はヴァレンタインの分岐体、僕は彼女にマイ ブラッディ ヴァレンタインという識別名をつけられました」
「...理解が追いつかない」

頭を抱えるようにしてため息をついたアラーニェに、ヴァレンタインは苦く笑うことしかできなかった。
大抵のあいては、エリュシオの一部のもの以外、一族のはなしをするとこのような反応を返した。
分岐進化をする者は他にもいたが、分岐先の互いが同時に存在する者は我らが唯一なのだと知っている。
そして、それをあらかじめ知っている者は、我らがひどく閉鎖的に生きていることも知っている者だ、とヴァレンタインは胸の内で俯く様に笑った。


「...その話をおいて置いたとして、記憶をなくす云々との関係性を説明してください」
「そう ええと 分岐体の僕たちは 殻だから 抜け殻だから つくりかえなきゃいけなくて そうすると忘れてしまうから」
「だから何故そこが繋がるのか説明してくださいと言っているんです」
「だから ぼくらは抜け殻だから」
「わかりました、もういいです」
がたん、と音を立てた椅子からアラーニェが立ち上がった。


びくりと大袈裟なほど肩を震わせたヴァレンタインの横を、一瞥もくれないままでアラーニェが通りすぎた。
「あと5分でらんらんとガラッシアが来ます。応接間に通しますから、貴方はどこかの部屋で座っていてください」
「あの」
「長くなるようですから、続きは後日暇ができた時に聞きます」
がちゃりとドアを押し、アラーニェが部屋をでていく。
あわてて振り返ったヴァレンタインが手を伸ばした。

そこでふと、この指は何を掴むつもりなのかと自問してしまう。
彼の美しい輝色の後ろ髪をみつめながら、伸ばした手を見つからないように引っ込めた。

ドアを閉める直前、アラーニェがヴァレンタインを振り返ったようにみえたが、ヴァレンタインはその視線の意味を汲むのが怖く思えて、目を逸らすことしかできなかった。



月の消える新月の夜まで、あと2日だった。


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アラーニェさん@inuさんお借りしましたー
記憶をなくすことをうまく説明できなくて、するっと流されてしまうヴァレンタインと、よくわからないから後回しにしようとして忘れてしまうアラーニェさん。

これで5月はおわりかな?
来月のおはなしからデレにむかうぞー!めらめら