筆の重さを感じるようになってしまって、なんと一年余りが経過してしまいました。
今後は、もっと気楽に書かせていただきますので、よろしくお願いします。
こども心に「美空ひばりは歌が上手いと思うけど、裕ちゃんはけっして上手いとは言えないよなぁ」という感想がありましたね。
しかし、年を重ねるに従って「実は裕ちゃんは、とても歌の上手い人だったんだなぁ」と思うようになりました。こどもの頃、素人っぽいと感じていた彼の歌声は、実は決して張り上げないけどソフトな歌い方で、とても魅力的なものだったんですね。
ある本で見かけた『裕次郎 歌の人気ランキング』では、
①北の旅人 ②赤いハンカチ ③夜霧よ今夜もありがとう ④ブランデーグラス
⑤恋の町札幌 ⑥二人の世界 ⑦夜霧の慕情 ⑧粋な別れ ⑨泣かせるぜ
⑩わが人生に悔いなし
となっておりましたが、特に好きであった訳でもない裕ちゃんのこの10曲、驚くべきことに全て知っておりました。
話はまた中学生時代に戻りますが、3~4人の友だちと下校途中に在るひとりの家に寄り道したものです。そこで当時人気抜群でカッコいい裕ちゃん歌を誰からともなく歌いだします。「赤いハンカチ」「錆びたナイフ」「夕陽の丘」などなど…想い出ですね。
♫アカシアの 花の下で あの娘が窃っと 瞼を拭いた
赤いハンカチよ
怨みに濡れた 目がしらに それでも泪は こぼれて落ちた
♫北国の 春も逝く日 俺たちだけが しょんぼり見てた
遠い浮雲よ
死ぬ気になれば ふたりとも 霞の彼方に 行かれたものを
♫アカシアの 花も散って あの娘はどこか 俤匂う
赤いハンカチよ
背広の胸に この俺の こころに遺るよ 切ない影が
詞・萩原四郎 曲・上原賢六 1962(昭和37)年10月
その頃は、当然歌詞の意味など考えもせず鼻歌まじりで歌っていただけです。
そして今、改めてこの歌を聴いて歌ってみると、これが遠く過ぎ去った青春時代の蹉跌なり、過ち、悔恨を歌っていることを知りました。
この歌の良さが心に沁み始めるのは、青春を懐かしいと思うようになってからでしょう。
舟木一夫さんは、ご自分のコンサートでもこの歌を歌われるようですが、その感想を次のように話されました。
「かけ離れた世界かと思いきや、実際経験したところにスコーンと入ってくるんですね。若い時には、誰もがどこかで経験してると思うんです。
あそこであと一歩踏み込めていたら。あそこであと一歩引けていたら。そのあと一歩が
青春の中では届かない。踏み込めない。
あと一歩と言う悔いみたいなものが残るでしょ?
それが良い形になって年を重ねていけるわけで、青春時代の傷は、ないよりあったほうが良い」と。