城繁幸氏が「日本の正社員をクビにするのは世界で一番難しい」ともう言えない理由 | すくらむ
2013-12-25 15:13:58

城繁幸氏が「日本の正社員をクビにするのは世界で一番難しい」ともう言えない理由

テーマ:働くルールづくり

 解雇規制緩和の問題について私が言いたいことは、すでに「解雇規制緩和は若者も非正規労働者も救わない-「解雇自由」のデンマークより首切り自由な日本」 というエントリーで紹介しています。なので、これ以上なにも言うことはなかったのですが、城繁幸氏が「一から十まで鼎談部は全部間違い」「確信犯的な詐欺だ」「平気で嘘をつく」「日本の正社員をクビにするのは世界で一番難しい」 などと言ってくるので、城氏が展開する理屈に乗っかってあげた上で「『日本の正社員をクビにするのは世界で一番難しい』とする城繁幸氏のウソ」 という検証エントリーを書きました。本来なら、濱口桂一郎氏が指摘しているように「一目見れば分かるように、日本の正社員の解雇規制は決して一番厳しくはない」「OECDが日本の正社員が一番厳しいと言っているというのはウソです。」 だけで終わりなのですが、わざわざ城氏の持論に乗っかって検証してみたわけです。


 そうすると、UNCORRELATEDさんが、「日本の正社員をクビにするのは世界で一番難しいと主張する人が見る幻覚」 「OECDに廃棄された数字を根拠に、他人が嘘をついたと主張する人事コンサルタント」 というエントリーで詳しくOECDデータを分析し補強してくださいました。


 結論は出ましたので、これで終わりなのですが、城氏は「公務員労組に学ぶ嘘のつき方」 というエントリーをあげ、相変わらず2008年のOECDデータでは、「正規雇用の「Difficulty of dismissal」(解雇の難しさ)は日本が第一位だ。」と主張しています。


 「森永卓郎v.s.城繁幸v.s.小倉秀夫という三つどもえの戦い。」 というのを見ると、城氏は4年前から今日に至るまで廃棄された昔の2008年のOECDデータを使い回して、同様の主張を繰り返して来たことが分かります。普通、新しいデータが公表された時点で、新しいデータを活用するのが当たり前の話ですが、「世界一」を吹聴し続けたい城氏にはそれができなかったのです。しかも、城氏がしがみついている古いデータは、UNCORRELATEDさんが指摘しているように、そのデータ元のOECD自身が廃棄した数字なのです。


 このことについて、POSSE事務局長の川村遼平さんが連投ツイートをしていてとても参考になるので紹介しておきます。


 今回データを調べてみて気がついたのは、08年の修正前のデータが、85年から13年までの中で最もポイントが高いということです。最大評価の「6」ポイントであるREG9が新設されたのが2008年、06?08年のREG8が下方修正されるのが09年という要因によるものです。
https://twitter.com/kwmr_posse/status/415492164328505345


 要するに、「世界一」というために最も好都合なのがこのタイミングでした。しかし、残念なことに、このときの修正前のデータを用いても、まだ「世界一」とは言えません。中国、インド、インドネシアが上位に位置しているからです。調査対象国ではなく「加盟国の中で」という留保が必要です。
https://twitter.com/kwmr_posse/status/415492393320710144


 そして幻の「世界一」を達成して以降、修正によりトップの座を譲り、現在日本は正式加盟国に限っても34ヶ国中8位です。もはや「世界一」とは呼べなくなってしまいました。いつの間にか、城さんは「トップクラス」と自説をマイナーチェンジしていきます。気付いた佐々木弁護士は流石です。笑
https://twitter.com/kwmr_posse/status/415493065457954817


(※このあとにも続く川村さんの連投ツイートはとても参考になるのでぜひお読みください)


 川村さんが指摘しているように、「日本の正社員をクビにするのは世界で一番難しい」とする城氏の根拠になっているOECDデータは「幻」だったのです。「日本の正社員をクビにするのは世界で一番難しいと主張する人が見る幻覚」というUNCORRELATEDさんの指摘どおりなのです。


 城氏が固執してやまない2008年のOECDデータを、あらためて今現在の正確なデータで、城氏が主張している正規雇用の解雇の難しさのランキングを作成したものが下表です。
http://www.oecd.org/els/emp/EPL-timeseries.xlsx


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 この表を見て分かる通り、2008年においても日本は「世界一」でもなんでもなく、OECD加盟国中10位にすぎず、オリンピックで言えば「入賞」すらしていないのです。


 それから、このOECDデータに関して、とても重要だと思ったのが、労働政策研究・研修機構(JILPT)の指摘 です。上の表にある「reg9」(「出訴できる期間」)において、日本は「6」と最も高い数字になっているのですが、この点について、JILPT は、次のように指摘しています。


 ▼出訴できる期間(REG9)


 「出訴できる期間」は、解雇通知後いつまで裁判所に訴えを起こすことができるか、ということを指す。


 OECD諸国の中には、労働関係の訴訟は、労働裁判所や労働審判所が管轄するとしている国も多い。そして、こうした場合には、出訴できる期間が短く定められている場合がある。


 指標では、期限が1か月以内の場合1点で、以下期限が長くなるに従い加点され、1年を超える期間であるときは6点と評価される。


 ドイツは解雇に関する訴訟は労働裁判所が管轄、フランスやイギリスは労働審判所が管轄している。出訴できる期間はドイツ3週間、イギリス3か月間となっている。他方、フランスでは、原則5年間となっている。


 日本の場合、解雇については、労働審判所への申立と、通常の民事訴訟の双方が可能である。そして、いずれの場合も出訴期間の制限がない。このため、日本の「出訴できる期間」の評価は、「6」とされ、OECDの平均の「2」を上回っている。


 しかしながら、解雇通知後かなりの期間訴訟を提起できるとしても、実際労働者がそうしているとは限らない。また、時間がたってからの訴訟が労働者に有利とも限らない。


 この点について、OECD自身、「出訴期間が短いほうが救済はラディカルである。」と述べている。さらに、「「不当解雇の際の原職復帰の可能性」と「出訴できる期間」の相関係数はマイナス0.39で、5%水準で有意(OECD諸国と非OECD6か国についての分析)」としている。


 上記のJILPTの指摘 を読むと、「正規雇用の「解雇の難しさ」で使うのはREG5~9」などと鬼の首を取ったように力説する城氏の空虚さがすごくよく分かります。


 結論として、昔の「幻のデータ」を根拠にした「日本の正社員をクビにするのは世界で一番難しい」などとする幻覚を吹聴するのは、金輪際やめた方がいいと、城繁幸氏にアドバイスしたいと思います。


 最後に、日本の解雇規制について「幻覚」など見ない、普通の見方と、いくつかの参考エントリーを紹介して終わります。


(byノックオン。ツイッターアカウントはkokkoippan)


▼労働政策研究・研修機構(JILPT)
経済協力開発機構(OECD)の雇用保護指標(2013)について
日本の一般労働者の雇用保護は、34か国中低いほうから10番目
有期労働者の雇用保護は、低いほうから9番目
http://www.jil.go.jp/foreign/labor_system/2013_11/oecd_01.htm


▼平成24年版労働経済白書(厚生労働省)
 日本の雇用保護指標は第1~第3指標について、またその内訳である「常用雇用要因」「臨時雇用要因」「集団解雇要因」を個別にみても、すべての指標でOECD平均を下回っており、日本は比較的雇用保護が弱い国であるといえる。
http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/12/dl/03-4.pdf


▼濱口桂一郎氏(労働政策研究・研修機構労使関係部門統括研究員)
 「日本が一番厳しいとOECDが言ってる」というのは明白なウソですが、ではそOECDの言っていること(日本の解雇規制はわりと緩い)はどこまで正しいかというと、現実よりも相当程度に厳格な方向に虚構のバイアスのかかった数字である可能性が高いようです。言い換えれば、日本の正社員の解雇規制は、OECDの言う「わりと緩い」というよりも、「もっとずっと遥かに緩い」というのが実態じゃないかと思われます。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2013/04/oecd-d7a0.html


▼ブラック企業ユニクロにつぐ城繁幸氏の解雇自由化はさらなる企業への滅私奉公・うつ病・生活保護依存ブラック企業を激増させる

http://togetter.com/li/492548


▼Q.解雇規制緩和・雇用流動化でみんなハッピー? A.正規労働者が非正規労働者の水準に落ち込むだけです
http://togetter.com/li/460354


▼ブラック企業が泣いて喜ぶ解雇規制緩和|ささきりょう弁護士
http://togetter.com/li/459287


▼ロックアウト解雇で正社員も簡単に解雇される「永遠なるリストラ」「名ばかり解雇規制」
http://ameblo.jp/kokkoippan/entry-10581930081.html


▼非正規500人分の年収得る上位層が叫ぶ「正社員の解雇規制緩和」「非正規に犠牲を押しつけるな」
http://ameblo.jp/kokkoippan/entry-10351026289.html


▼解雇規制緩和でなく劣悪な仕事なくす社会保障が必要 - 福祉国家づくりと均等待遇こそ不可欠
http://ameblo.jp/kokkoippan/entry-10348008793.html


▼解雇規制撤廃論者があこがれるアメリカの「大搾取!」
http://ameblo.jp/kokkoippan/entry-10337331954.html


▼デンマークの「解雇自由」「フレキシキュリティ」を支える組織率87%の労働組合
http://ameblo.jp/kokkoippan/entry-10383432185.html


▼オランダのフレキシキュリティ - 雇用不安のない社会へ、同一労働同一賃金、社会保障の充実を
http://ameblo.jp/kokkoippan/entry-10311829983.html

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