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『風の遺産』(新田次郎)

 『風の遺産』(新田次郎)

―あらすじ―
 偶然がもたらした伊村と蓉子との邂逅。乾徳山、鷹取山、丹沢……。二人は共通の趣味、登山を通して深く関わりあっていった。蓉子は夫から疑惑の目を向けられつつも伊村と冬の谷川岳に挑む。猛吹雪で七日間閉じ込められた彼らを待ち受ける残酷な現実とは? 精緻な心理描写が光る異色山岳小説。



 恋愛小説でもあり、複雑な人間関係を描いた作品です。すっきりと終わらないラストを含め、実に大人向けの作品と言えるでしょう。昭和30年代の作品と言うこともあり、時代背景や登場人物の考え方は現代とズレる部分もありますが、これはこれで味。

『職人』(再々読)

 『職人』(永六輔)

―あらすじ―
 職人による、職人ならではの哲学の数々。インタビューや現代日本への痛烈な批判をも収録した、現代にも色褪せない1冊。



 職人の方々による一言が述べられていますが、まさに金言の如し。仕事への意義、意味を再確認させられます。一文ゆえに朴訥に感じられる言葉もありますが、それらも背景あってのことでしょう。仕事へのあり方に悩む人々への手助けになるのかなと。しかしさすがに内容は現代の日本と乖離してきていますね。

『時限病棟』

 『時限病棟』(知念実希人)

―あらすじ―
 病院で目覚めた主人公。なぜ自分は病院にいるのか。おぼろげな記憶によると何者かに拉致された記憶があり、そして病院には同じような境遇の4人がいた。そして狂気に満ちた脱出ゲームが始まる。



 『仮面病棟』も続編ですが、あまり繋がりはありません。やはりこのスピード感。一気に読めてしまいます。

『線は、僕を描く』

 『線は、僕を描く』(砥上裕將)

―あらすじ―
 両親を交通事故で失い、喪失感の中にあった大学生の青山霜介は、アルバイト先の展覧会場で水墨画の巨匠・篠田湖山と出会う。なぜか湖山に気に入られ、その場で内弟子にされてしまう霜介。それに反発した湖山の孫・千瑛は、翌年の「湖山賞」をかけて霜介と勝負すると宣言する。



 題材が水墨画ということで、「身近でない」と敬遠されてしまう作品かもしれません。が、読んでみると実に読みやすく、小説のお手本のような作品です。小説をあまり読んだことがない人にもお勧めしたい作品ですね。

『鷲ヶ峰物語』

 『鷲ヶ峰物語』(新田次郎)

―あらすじ―
 長野県に位置する鷲ヶ峰。そこを訪れた男女7人グループは山頂にあった石地蔵に興味を持ち、軽い気持ちで石地蔵を持ち帰る。が、それは想像を決する不幸の始まりであった。(表題作「鷲ヶ峰物語」)他全5編収録。



 全体的に、もう一歩踏み込んでほしいというのが正直なところです。「鷲ヶ峰物語」に関して言えば、もっと納得できる解決法は無かったのか。環境問題に対する啓発的な作品なのかもしれませんが、この結末はご都合主義ではないのか。面白くないとは言えませんが、諸手を挙げて称賛できるかというと疑問が残ります。まずまず面白し。

『トム・ソーヤーの冒険』

 『トム・ソーヤーの冒険』(マーク・トゥエイン/訳:大久保康雄)

―あらすじ―
 遊ぶことやいたずらが大好きな少年、トム・ソーヤー。友達と海賊ごっこをしたり、好きな女の子の気を引こうと頑張ったり、毎日を楽しく暮らしていた。そんなある日、彼は真夜中の墓地で殺人を目撃してしまう。



 有名な作品であり、子供のころに児童向け文学作品として読んだ記憶がありましたが、今回改めて原作を読んでみました。読んでみると、何とトムの自由で腕白なことか。とは言え、今となってはトムの保護者(伯母さん)の視線で読んでしまいますね。

『富士山頂』

 『富士山頂』(新田次郎)

―あらすじ―
 昭和38年。台風観測のため、富士山頂の測候所に巨大レーダーを建設する計画が動き出した。が、建設場所が富士山の山頂ということもあり、レーダーを輸送・設置する期間や方法はかなり限られていた。



 筆者の体験談(実際にレーダー設置の仕事に関わっていた)とのことで、政治的な問題や現地での苦労などが具体的に書かれています。どっしりとした読み応えのある作品でした。

『四段式狂気』

 『四段式狂気』(二宮敦人)

―あらすじ―
 ストーカーに悩むマユリ。友人のギンちゃんに相談する彼女に対し、マユリのことが好きなリョウタも彼女のストーカー問題に頭を悩ませていた。そんな中、マユリの部屋の窓に謎のメッセージカードが。



 最終的になかなか気持ち悪い終着点にたどり着きました。多少人を選ぶ印象ではありますが、活字ならではの面白さがあったようにも思えます。

『仮面病棟』

 『仮面病棟』(知念実希人)

―あらすじ―
 とある病院に、ピエロの仮面をかぶった強盗犯が籠城する事件が起きた。ピエロは自分が傷つけた女性・愛美を治療するよう、病院にいた外科医の速水に要求する。更には速水たちは人質として監禁されてしまった。



 このスピード感。事件の舞台となった病院の闇が明かされる展開以降、一気に物語が加速します。終盤の展開も含め、読書が苦手な人におすすめの作品ではないでしょうか。

『聖職の碑』

 『聖職の碑』(新田次郎)

―あらすじ―
 大正2年8月、長野県にある中箕輪(なかみのわ)尋常高等小学校では、修学旅行として伊那駒ケ岳への登山が行われた。が、天候が嵐となり、37名のうち11名の死者を出すこととなった。木曽駒ヶ岳大量遭難事故を元にした作品。

 

 

 YouTubeの遭難事故動画で初めてこの事故を知り、本作品を取ることになりました。私はこれまで著者の作品以外にも数々の山岳小説を読み、悲惨な事件は幾度も見ましたが、中でも本書はいたたまれない作品の一つと言えるでしょう。年端もいかない小学生や、彼らを守ろうとする大人たちが何人も犠牲になっていく様は、事件の生々しさを伝えてくれます。

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