『泥流地帯』、『続 泥流地帯』(再読)
『泥流地帯』、『続 泥流地帯』(三浦綾子)
―あらすじ―
十勝岳の噴火により全てを泥流に流されながらも懸命に生きる兄弟を通して、人生の試練とは何かを問う。
2008年に読んで以来、約15年振りの再読となりました。しかしこの作品を読んだのが15年も昔だったとは…その素晴らしさは記憶にはっきりと残っていたため、まだ数年前に読んだばかりだと思っていました。
『泥流地帯』では十勝岳が噴火するまでを、『続 泥流地帯』では噴火後の復興を描いています。いくら真面目に働いても報われない登場人物が多く、人生とは何のためにあるのかと、読みながら考えさせられました。それでもなお前向きに進んでいく主人公兄弟の力にはただ頭が下がる思いです。そしてラストシーンでは、はっきりとした描写ではないのですが、希望という未来を指し示してくれる終わり方でした。遠ざかる列車と、それらを見守る兄弟の情景がまぶたに浮かびます。
『泥流地帯』だけでは理不尽な終わり方なので、2冊セットで読むことをお勧めします。著者の他の作品ほどキリスト教色が出ていないので、比較的読みやすい作品かと。
しかしこうして再読することで、著者の作品の素晴らしさ、読書の面白さを再確認することが出来ました。昨年ほとんど本を読みませんでしたが、その情熱をもう一度取り戻したいと思わせてくれる作品でした。
『史上最強の哲学入門 東洋の哲人たち』(再読)
『史上最強の哲学入門 東洋の哲人たち』(飲茶)
―あらすじ―
釈迦や孔子など、東洋史における哲学者を紹介。
西洋の哲学史を扱っていた『史上最強の哲学入門』と対をなす東洋編です。西洋と東洋における哲学の違いの方向性や、ゴールへのアプローチ方法など、本書も非常に面白く一気に読んでしまいました。「我」や「無」など、最初は難しくて取っ付きにくかったのも事実です。が、そこを乗り越えるとあとは知の大陸が広がっています。般若心経の解説のほか、ガンダムやピーナッツ、耳などが具体例に挙がり、東洋哲学の様々な用語が解説されていきます。
前作と合わせて、素晴らしい作品に会ってしまった。
『史上最強の哲学入門』(再読)
『史上最強の哲学入門』(飲茶)
―あらすじ―
プラトンやデカルト、カントなど32人の哲学者を紹介。
約2年振りの再読となりましたが、当時感じた通り面白さは変わらず、読みだすと手が止まりません。それぞれの哲学者のエピソードや考えを、筆者独自の視点から噛み砕いて読者に伝えてくれます。また、年代順に哲学者が登場するのではなく、それぞれの主張を「真理」、「国家」、「神」、「存在」とカテゴリー分けした上で説明されている部分も新鮮に感じました。個人的に興味のある「経済」と繋がっていることもあり、アダム・スミスの話などは特に興味深く読めました。
『ポーカー・フェース』(再読)
『ポーカー・フェース』(沢木耕太郎)
―あらすじ―
著者による、日常の何気ないひと時を描いたエッセイ集。『バーボン・ストリート』、『チェーン・スモーキング』に続く第3弾。
この心地よさは何なのか。最初から最後まで、「ずっと読んでいたい」と感じさせてくれる不思議な面白さが全体を貫いています。言語化が難しいこの面白さを、もっともっと味わっていきたいと思います。
2022年のまとめ
2022年も非常に忙しい一年でした。12月からは特に忙しくなり、よく体がもったなと感じています。
そしてblogを見返してみると、「2020年のまとめ」、「2021年のまとめ」を書いていないことに気付きました。我が事ながら、一昨年も去年も忙しかったことが伺えます。
本をほとんど読まない一年でした。blogに書いていない本も数冊あるのですが、それでも10冊も読んでおりません。「7月から再開しよう」と思いつつ、9月、11月とずれ込んでしまい、読まないままになってしまいました。2年前までは毎年100冊以上をキープしていましたが、昨年は約50冊、そして今年は10冊未満…「今年の10冊」を選ぶことすら出来なくなりました。来年は頑張って読みます。まずは50冊を目標にしましょう。スマホゲームのやりすぎです。
夏には長崎・大分と、名古屋・伊勢に旅行に行きました。どちらも良かった。やはり旅行はいいものです。長崎駅ではフードコートの中に立ち飲み屋があり、九州の酒文化の一端を感じることができました。あまりお酒のイメージが強くない長崎ですらこの状況ということは、熊本や鹿児島はどうなっているのか。いずれは足を延ばしてみましょう。来年は関東に行く予定ですが、広島・尾道への再訪も考えています。
健康診断前に約一ヶ月の禁酒をしましたが、非常に素晴らしい効果が出ました。健康診断前だけでなく、恒常的に行う必要がありますが。
Best of comics 2022
本年度のランキングは以下の通り。
1―『ビジャの女王』(森秀樹)
2ー『村づくりゲームのNPCが生身の人間としか思えない』
(原作:昼熊/漫画:森田和彦/キャラクター原案:海鼠)
3―『くちべた食堂』(梵辛)
4―『姫様、拷問の時間です』(原作:春原ロビンソン/漫画:ひらけい)
5―『SPY×FAMILY』(遠藤達哉)
6―『新テニスの王子様』(許斐剛)
7―『あかね噺』(原作:末永裕樹/作画:馬上鷹将)
8―『765プロの台所』(くまみね)
9―『男の食談義』(川原将裕)
10―『HUNTER×HUNTER』(冨樫義博)
今年は何といっても『HUNTER×HUNTER』の再開です(その割には順位が低めですが…)。果たして次に読めるのは何年後か…
『国盗り物語』 3、4巻
『国盗り物語』(司馬遼太郎) 3、4巻
―あらすじ―
織田信長。その男は歴史に登場した。斎藤道三の娘・濃姫を正室とし、結果として美濃を征服する。室町幕府さえも不要とする彼だったが、一方で、室町幕府と親しい関係にある明智光秀は苦悩していた。
2021年中に何とか読み切りたかった作品ですが、力及ばず、年明けに読み終えることになりました。3,4巻は織田信長編とはありますが、実質明智光秀が主人公であり、信長の覇道を描くというよりかは、「なぜ本能寺の変が起きたのか」に焦点が当てられていたように思います。また、面白さについては斎藤道三編の方が面白かったように思いました。ただ、それに関しては私が斎藤道三のことをあまり知らなかったゆえに、道三の出世の道筋が新鮮で煌びやかに映っただけとも言えます。とは言え、全体的には道三編、信長編ともに楽しんで読むことが出来ました。
振り返れば、司馬文学も数多く読んできました。あまりメインで読んでいる著者ではありませんが、長い目で見ればいずれか鉱脈を掘り終えることになるでしょう(『坂の上の雲』や『飛ぶが如く』など長編が残っておりますが…)。
Best of books 2021
本年度のベスト10は以下の通り。
1―『氷壁』(井上靖)
2―『真珠夫人』(上下巻)(菊池寛)
3―『駿河城御前試合』(南條範夫)
4―『功名が辻』(司馬遼太郎)
5―『あなたに捧げる犯罪』(小池真理子)
6―『しづ女の生涯』(三浦哲郎)
7―『人斬り以蔵』(司馬遼太郎)
8―『クリムゾンの迷宮』(貴志祐介)
9―『墓地を見下ろす家』(小池真理子)
10―『家族八景』(筒井康隆)
今年読んだ冊数は54冊(新規48冊+再読6冊)。毎年、何とか100冊を目標に読書をしてきましたが、ついに100冊読むことが出来ない年が来てしまいました。本を読んでいない期間が約半年あったため、妥当な冊数とも言えますが。とは言え、それでも『氷壁』や『真珠夫人』など、例年のベスト10とも引けを取らない名作を読むことが出来ました。今年の特徴としては、上半期で読めなかった分を回復すべく、下半期にはイヤミスやホラー短編集を中心に多くの作品を読んだことでしょう。結果として、貴志祐介、小池真理子など、今まで読んだことのなかった作家に興味が持てたことは大きな収穫です。