『真夜中のマリオネット』
『真夜中のマリオネット』(知念実希人)
―あらすじ―
女医の秋穂は、婚約者を失った――婚約者はバラバラ殺人にて殺され、遺体の一部は失われていた。何とか職場に復帰した秋穂だったが、交通事故で重傷を負った少年・涼介が運ばれてきた。刑事から、彼がバラバラ殺人事件の犯人だと教えられるが、一方で涼介は無実を訴える。果たして真実は。
流れるようなスピード感と、最後まで飽きさせない展開。一気に読んでしまいました。しかしそれ以外に感想はありませんね。
『超・殺人事件 推理作家の苦悩』(再読)
『超・殺人事件 推理作家の苦悩』(東野圭吾)
―あらすじ―
税金対策に悩む小説家は、会計事務所の所長である友人に相談し、購入物の領収書を経費として処理する策に出た。連載小説の中にハワイ旅行や自宅の改築を組み込むことで、それらの税金を何とかしようとするが果たして(超税金対策殺人事件より)。他7編の短編を含む、ブラックユーモア満載の短編集。
約10年振りの再読です。当時の出版業界を皮肉ったような自嘲したような内容ですが、10年前と変わらずに楽しめたあたりは少なからず喜ぶべきことかと。この小説が予見した(皮肉った)未来はまだ訪れていないとみてもいいのでしょう。
否。10年前と変わらないということは、それだけ出版業界において、歯止めになるような大きな動きがなかったとも言えます。全国各地の書店は減少し、書籍の価格はとどまることを知らずに上昇。いずれは本書のことを笑えない状況が来るのでしょう。
『駒音高く』
『駒音高く』(佐川光晴)
―あらすじ―
将棋に関わる7人。趣味で将棋を指すお婆さん、プロを目指す中学生、将棋新聞の記者…それぞれの将棋の世界を描く短編集。
短編集と思わずに買いましたが、どの話も読みやすくてすぐに読み終えてしまいました。私は将棋があまり分からないのですが、それでも十分に楽しめる作品ばかりです。派手さはありませんがサラッと読める短編集であり、子供から大人まで人を選ばずに読める良作といったところでしょうか。
『三国志名臣列伝 魏篇』
『三国志名臣列伝 魏篇』(宮城谷昌光)
―あらすじ―
三国志の魏で活躍した、程昱、張遼、鍾繇、賈逵、曹真、蔣済、鄧艾の7人を描く短編集。
個人的に楽しめたのは、曹真、蔣済、鄧艾の3名です。魏王朝が司馬氏に奪われていくという時代の流れの中で、彼らは如何に人生を歩んでいったのか。悲しい結末になる人物も多く、読んでいて涙を誘われます。
『23分間の奇跡』
『23分間の奇跡』(ジェームズ・クラベル/訳:青島幸男)
―あらすじ―
とある小学校のとある教室。朝のホームルームに、新しい先生が突然やって来た。その先生の話はとても分かりやすく…
これほどに短い文章で、これほどにおぞましい作品があったとは…海外小説の翻訳作品ですが、意図してなのか文章量に対して余白が多く、それがまた独自の空気感を出しています。本書のレビューでは「洗脳」という言葉が多く使われている印象ですが、個人的には、洗脳の一言では言い表せない気持ち悪さがありますね。また、この小説は少なくとも日本人には書けないタイプの小説だと感じました。愛国精神や宗教など、日本人にとって希薄な内容も含まれているあたり、海外小説ならではの面白さがあります。
『沈黙のパレード』
『沈黙のパレード』(東野圭吾)
―あらすじ―
ある事件の犯人として逮捕されながらも、証拠不十分として無罪になった男がいた。その男は19年前にも別の事件の犯人として逮捕されていたが、やはり無罪となっていた。期せずしてその男が死を迎えるが、その死は。
一言で言えば、読ませてくる作品ですね。読みながらタイトルの意味や犯人像がそれとなく浮かび上がってきます(オチが見えてしまう気がする)が、そうありながらも最後の最後まで驚きと救いを隠しているのは見事としか言いようがありません。答えは「沈黙」なのか。
『栄光の岩壁』(上下巻)
『栄光の岩壁』(新田次郎)
―あらすじ―
戦後間もなくの日本。18歳の時に冬山の八ヶ岳で遭難し、凍傷により両足指を失った竹井岳彦。しかし彼は山を諦めることなく、指のない足で数々の冬山へと挑戦していく。
足の指を失っても山への情熱を燃やし続けた主人公。たとえ指を失っても、友人を失ってでも冬山に登ることを諦められない。その情熱が読み手にも伝わるような作品です。山の魅力を伝えてくれることもありますが、「自分の好きなことに一途になるの大切さ」、そのようなことを教えてくれる作品でもあります。
ただ1点、本作に出てくる悪役(小悪党)が余りにも苛つく人物なので不快になります。こういった悪人を出すことで主人公との対比を狙っているのかもしれませんが、それにしても幾度となく登場しては主人公たちに不幸を招く様がくどい。主人公の人の好さに呆れてしまいます。
『旅屋おかえり』
『旅屋おかえり』(原田マハ)
―あらすじ―
スポンサーの名前を言い間違えた(と思われた)ことから、主人公は唯一のレギュラー番組を失ってしまった。途方に暮れる主人公だったが、旅が好きなことを活かし、旅行代理人を始めることにする。
『キネマの神様』に続けて、同著者の作品を読みました。やはり読みやすく、『キネマの神様』以上に爽やかな読後感です。何と読みやすい文章であろうか。また、私自身も旅行が好きということもあり、より楽しんで読めました。
『キネマの神様』
『キネマの神様』(原田マハ)
―あらすじ―
39歳独身の歩は、社内であらぬ噂を流され会社を辞める。時を同じくして父が倒れ、父に多額の借金があることが発覚した。家を整理する中で、歩は父が映画の評論をまとめていることを知る。そこから映画雑誌「映友」と繋がりができ…
読みやすく、読後感も爽やかな作品です。あれよあれよという間に憧れの雑誌社と関りを持つようになったり、終盤での一波乱と感動とハッピーエンドという、フィクションのお手本のような作品です。主人公たちが映画好きということで、映画に関する説明が端々に出てきますが、それらは飛ばしてしまっても本筋には関係ありません(好きなことに対して真っ直ぐなんだとういうことが分かっていれば問題なし)。
と書くと褒めているように思いますが、個人的な感想としては、「本書はあくまでフィクション(作り物)」という印象を拭えません。本書中盤から大まかな展開が読めてしまい、結果としては予想の通り、「一波乱と感動とハッピーエンド」で物語が集結しました。流し読みで30分ほどで読めてしまいました。
『華岡青洲の妻』
『華岡青洲の妻』(有吉佐和子)
―あらすじ―
江戸時代中期の和歌山。武家の娘である加恵は、医師の華岡雲平に嫁ぐこととなった。雲平は遊学中ではあったが、義母との仲も良く、加恵は華岡家を守っていた。3年後、雲平が家に戻ってきたことにより、義母と加恵との間には不穏な空気が流れるようになる。
本書の存在は10年以上前から知ってはいたのですが、読む機会がないままに年月が経ってしまいました。約250ページという短さながら、嫁姑間で行われる水面下での骨肉の争い。直接的な対立ではなく、あくまで水面下であることが、より争いの恐ろしさを表しているように思えます。また、時代背景こそ江戸時代ではありますが、現代日本に通ずる部分でもあり、それが何度も映像化されている理由なのでしょう。