商品企画の実践に役立つ本
ここまでの回で触れてきたように、「顧客の未満足ニーズをコアコンピタンスを使って充足する」 ことが、儲かるビジネスをつくるための法則です。
そのためには、「どういう未満足ニーズ を、どういうコアコンピタンス で充足するのか」という「ビジョンを持ち 」、「ビジョンを共有する」 ことが必要です。
しかし、数字の実績のある既存市場に向けた商品を企画・推進することに比べ、需要を統計数字でつかめない潜在市場に向けた商品を推進することは、意思統一を図りにくく、困難が伴います。
では、その困難をどうやって乗り越えて進めればいいのか?
それを指南してくれるコンサルタントや広告代理店はありますが、最低でも数百万円、外資系の有名コンサルなどに頼むと億のお金がかかってしまいます。
なので筆者は、なんとか本で勉強できないかと、役立ちそうな本は大体(Amazonで検索しうる範囲では)あたってみました。
ですが正直、マーケティングについては読みきれないほどの本がありますが、商品企画の進め方を直接指南してくれる本は、あまり見当たりません。
(それが、このブログをはじめたきっかけでもあります)
その中では、桶谷功氏の書かれた「インサイト 実践トレーニング」は、進め方がステップを踏んで書かれており、実践的に役立つ本のうちの1冊です。
桶谷氏の「インサイト」関連の本は2冊あり、2005年に発行された「インサイト 消費者が思わず動く心のホットボタン」で、「カスタマーインサイト とは何か?」が述べられていて、この本は、2008年に「インサイトの探し方」を述べたその「続編」的な本です。
両方を読めばより理解は深まりますが、1冊読むとしたら、手っ取り早くより具体的な問題解決方法の書かれている「実践トレーニング」のほうをお勧めします。
- インサイト/桶谷 功
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- 「思わず買ってしまう」心のスイッチを見つけるための インサイト実践トレーニング/桶谷 功
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ビジョンを共有する
前回 お話しした「ビジョンを持つ」ことができたら、次にしなければならないのが「ビジョンを共有する」です。
「これだ!」という「未満足ニーズ」をみつけて、「自分たちの強みをこう使っていけば、新しいビジネスを築けるに違いない」というイメージが描けたとします。
次にはそれを、ビジョンを実現するために一緒になってやっていく人たちにも、同じビジョンを持ってもらわなければなりません。
大きな会社なら上司や営業部門や設計部門。小さな会社なら、パートナーや金融機関なのかもしれません。
「商品企画」という仕事で最も重要で最も難しいのが、ここのポイントです。
せっかく「未満足ニーズ」を見つけたとしても、潜在ニーズは数字で証明できません。
市場規模の統計を示して「この市場はこんなに大きいのだから参入しましょう」とか、「A社のこの商品はこんなに売れているのだから、うちもやりましょう」というほうが、遥かに楽です。
しかし、既存市場のサイズが大きいということは、ライバルが多いということ。激しい競争の中に飛び込んでいくことになり、売れたとしても利益を得ることは困難です。
現実には、世の中の新商品の99%は、売れているもののフォロー商品です。
「商品企画」という仕事の人たちにも、競合商品の売れ筋を分析して、「これより安くすれば個売れます」というような「企画」をして、仕事をした気になっている人たちも、残念ながらたくさんいます。
むしろ、「未満足ニーズ」を見つけてそれを開拓することが仕事であると自覚している人のほうが少ないかもしれません。
それは、たとえ新たなニーズを感じ取ったとしても、ニーズの大きさ・強さを数字で証明することが難しいために、必ず反対する人が出てきてしまうから。
そうしていくうちに、数字で証明しやすい既存市場の売れ筋商品のフォロー企画ばかりをするようになっていってしまう。
しかしそれでは、商品企画としてすべき仕事をしたことにはなりません。
必要な人たちと「ビジョンを共有」してこそ、仕事をしたことになります。
なのでそのためには、会議室で「企画会議」をして、数字を並べているだけではだめで、「これはイケル」という「感覚そのものを共有する」ということが重要になります。
そのために一番良いのは、説得すべきキーマンを、「現場」に連れて行って、「イメージを共有する」ことですが、それがかなわない場合でも、数字や言葉だけではなく、現場の画像や動画などを使って、できるだけあなたが「これは行けそうだ」と感じたその場の空気を伝えること。
そこにどこまでの説得力を持てるかが、商品企画としての最も重要なポイントです。
「ビジョンを持つ」ということ
商品企画を進める際に、まず議論になるのが「市場があるか?」ということです。
が、この「市場がある」「市場がない」という話は、往々にして噛み合わない議論になりがちです。
前回の「シンガポールのラーメンブーム」 を例に取れば、3年前の「まる玉」進出までは、シンガポールのラーメン市場の大きさは、日本人の数で決まっていました。
しかし、現在ではシンガポール人の多くがラーメン好きになっていますから、市場規模は何十倍にも大きくなっていることになります。
が、4年前の時点で議論したとしたら「市場規模がこれだけしかないのに進出しても仕方がない」という話になってしまう。
が、「儲かるビジネス」をつくる法則は、「未満足ニーズxコアコンピタンス」つまり、「潜在ニーズ」を「強み」で満たすことであるので、「市場」を見るときに、「存在しているもの」だけを見ていてはだめで、「存在するはずなのに、まだ存在していないもの」を見ることが必要です。
が、この「潜在市場」を数字で測定することは不可能で、「想像する」しかありません。
例えば、アジアから日本に来ている留学生が「日本のラーメンはうまい!」言っているのをテレビで見た時に、「それならラーメンをアジア市場に持って行ったらビジネスになるかもしれない」ということを思いつけるか。そしてそれをインタビュー調査などを通じて検証しながら、ビジネスの「ビジョン」に昇華できるか。
そのビジョンが「未満足ニーズをコアコンピタンスで満たす」 ものになっているかどうか。
すべてはそこから始まるのです。