からだに恥をかく体操〜えんぴつみがき〜 -9ページ目

勇者と段々崩壊していく世界

冬らしい曇天の空の下、立ち並ぶ枯れ木の合間をすいすいと疾駆する者が二名。いまや魔物の巣と化した要塞都市トッツクポーリにほど近い森の中、魔物と遭遇し、戦闘を余儀無くされ、頃合いをみて戦闘から逃走した武道家マリネと盗賊だ。
マリネは、先ほど魔物と遭遇した場所からずいぶんと走ってきたが、ほとんど呼吸を乱していない。地方の山村生まれで、山の中で育ち、また、武道家として山の中で日々鍛練を積んできたマリネにとって、この、逃げ足、は一番の武器だった。相手が誰だろうと、どんな状況だろうと、山や森の中にさえ逃げ込めさえすれば、幼馴染の武道家フナムシをのぞくと、誰も自分に追いつけない。絶対の危機に瀕しても、走れさえすれば、逃げきる絶対の自信があった。生き抜くことに全力を尽くす、それが師匠から学んだ武道の奥義だった。先ほどの得体の知れぬものとの戦闘は、生き抜くことに全力を尽くす武道家にとって、危機だった。幾度か手を合わせ、相手の力量が己よりはるか格下であると確信に至っても、その意識は変わらなかった。
枯れ木のバケモノがいた。素手から火の玉を放つ奴がいた。羽もないのに宙に浮いている奴がいた。魔物、の存在と大まかな容姿はある程度知っていた。が、珍妙とさえいえる容姿や、全く理屈の届かぬ怪奇な技の数々を目の当たりにしたのだから、いち早く遠くへ逃れたいとするマリネの選択は、当然のことだった。
手から火を出す奴がいた、ならばあたり一面を焼け野原にするような技を使える奴がいるかもしれない。それに…。木々の間を縫うように駆けながら、マリネは前方後方上下左右を常に警戒した。
前を走っていた盗賊が体力の限界から脚を止めたのは、距離にすれば戦闘になった場所から数キロほど離れた地点だ。マリネにしてみれば物足りない距離だったが、初めて目にする魔物との遭遇、戦闘による体力及び精神の消耗、その上に少なからず恐怖に縁取られた逃走である。全力疾走に近い速さで道無き道を駆けてきたのだ。常人ならばはたして如何程の距離を稼ぐことができたか。この小柄で痩身な女盗賊もまた逃げ足に自信があるだけのことはある。
「もう、大丈夫だろう」
ハアハアと息を切らし、木立を背にしてへたり込む盗賊に、マリネは本音を言うことなどできなかった。
「バケモノ、だね」
少し息が整ってきた盗賊がいった。
「ああ、バケモノに間違いない。あれらをバケモノと呼ばずして何をバケモノというか、おれには思いつかん」
「違うさ。あんたのことだよ。あんだけ走って、息も乱さないなんて」
うなだれながら盗賊はいった。
「逃げ足には自信があるんだ」
マリネがそう言うと、盗賊は、
「あたしもそれだけはかなり自信があったんだけどねえ」
と、いって、顔をあげると、マリネに微笑んだ。
「さて、悪いけどひとつ休ませてもらうよ」
そう言うと、盗賊は肩掛けカバンから先ほどの戦利品を取りだした。
「二冊目、か」
早速、盗賊は冒険の書をぱらぱらとめくりはじめた。
「おかしいねえ」
冒険の書を見始めてから少しして、ぽつりと盗賊が言った。
「どうした?」
そう言って、マリネは冒険の書を覗きこんだ。
「いやなに、書かれてることは別になんともないんだけど、ほら、よく見てごらん。おかしいだろ」
マリネは冒険の書を受け取ると、言われた通りじっくりと観察した。書いてあることは、確かに、フナムシから託された冒険の書と似たり寄ったりらしかった。数ページ流し読みをしていると、マリネは盗賊が何を言いたいのかわかった。
「やけに、きれいだな」
「そう。表紙やら外側はこんなに赤黒く血で染まっているのに、中身にゃ汚れどころか染みのひとつも見当たらない。これを持ってた奴が、魔物になってからもきれい好きで几帳面だったともおもえないしねえ」
「ひょっとしたら、何か特殊なインク以外では書けないものなのかもしれないな。だから汚れにくいのかもしれない。ペンを貸してくれ」
「そんな紙があるのかねえ。普通の紙にしか見えないけど」
盗賊はカバンからペンを取りだし、ペン先を外側にして、体温計のように数回振った。
「っと、その前に。あんたの冒険の書は、きれいだっかしら」
「きれい、なはずだよ。おれのは箱に入ってたしな。比べてみるか」
マリネはフナムシから託された冒険の書を取りだした。
「このとおりだ。きれいなもんさ」
「ふーん。何か書くならそっちに書きなよ」
「なぜだ?」
「これはあたしが盗ってやったんだ。落書きなんかつけたら価値が下がるだろ?」
ニンマリと笑う盗賊に、これだから盗賊は、とマリネは大げさにため息をついた。
「普通に書きこめるな」
「言っておくけど、インクはそこいらのインクだからね」
「…そっちのだけがおかしいんじゃないか?」
盗賊は数瞬、手に持った冒険の書をもの惜しげに見つめた。
「わかったよ。やってみな。好きにすればいいさ。あんたがいなきゃ手に入ったかわからん品さ。好きにすればいい。誰にいくらで売れるかもわからないし。あーもう。こんなもん盗って損したよ!」
へんに子供じみた拗ね方をした盗賊に、マリネは、悪い悪い、と言いながら、ぽんと盗賊の頭に手を当てた。盗賊はマリネの手を払いのけることはなかった。普段の盗賊を鑑みて、手を払いのけられると思っていたマリネは、それが少しうれしかった。このまましばらく頭を撫でてやるのも悪くはないかもしれない、そう思ったのも束の間、マリネは不意に別れた彼女ウルシが嘘をついている姿が頭に浮かび、そういった気分は失せた。
「っと、ではそういうことで、遠慮なくいただきます」
あたかも悩み事を隠すようにおちゃらけながら言って、マリネは盗賊の持つ冒険の書に手を伸ばした。マリネが視線を盗賊から冒険の書に移した時から、盗賊はじっとマリネの顔を探るように見ていたことをマリネは知らない。
マリネの手が冒険の書に触れた。その時、
「あっ」
二人が同時に驚きとも困惑ともとれる声を発し、冒険の書を落とした。
そうなるのもしょうがない。冒険の書が突如として発火したのだ。メラメラと燃えさかる炎は、一瞬にして冒険の書を包んだ。
二人は即座に土を被せたり、カバンで覆ったりして鎮火に及ぼうとしたが、炎は消えることなく冒険の書を跡形もなく消しさった。
魔物との遭遇、戦闘をも経験し、海千山千の存在に近くなった二人も、これにはしばし呆然とした。突然冒険の書が燃え出したことも、その炎を消すことができなかったことも、灰すら残らなかったことも、常軌を逸していた。
しばらくたち尽くしたのち、武道家はぶんぶんと手を縦に振りだした。
「怪我したんじゃないだろうね?」
真剣な顔をしてマリネは、
「手から火を出す奴がいただろ?。おれもそれができるようになったんじゃないか?」
と、言った。
「冗談を…」
やってる場合か、盗賊は言いかけて、はっとした。
「まさか、あんた魔物になっちまったのかい!?」
自身の推察に盗賊は驚愕の表情を浮かべた。手から火を出せるとしたら、それは魔物以外にない。
「えっ、おれ魔物になったの?」
盗賊と比較するのがバカらしくなるほどのマヌケ面で、手をぶんぶんとふりながらマリネはこたえた。マリネはとても真剣に火の玉を出そうと手を振っていたが、むろん、マリネの手から火が出ることはなかった。
「…冗談をやってる場合かい?。ほれ、今度はフナムシ君ので試してみな」
「あ、ああ」
無二の親友フナムシが残した遺物のひとつが燃えてなくなることなんてまったく考えていない様子で、マリネはおもむろに冒険の書へ手を伸ばした。
「まて!、やっぱり今度はあたしが触れる!」
マリネの手が触れるすんでのところで、盗賊は待ったをかけた。
「あたしが持っていた冒険の書に、あんたがさわったら燃えるのはわかった。とはいえわからないことだらけだ。試せる物もこれひとつっきゃない。あたし、あんた、あんたの持つやつにあたしがさわる、の順でさわってみよう」
落ち着きを取り戻したマリネは、よく考えた。この冒険の書はフナムシから託されたものには違いない。さっきのようにかんたんに燃え尽きてしまっては困る。おそらく冒険の書にまつわる話をメッセンジャーであった剣士に託されていたのだろうが、剣士はマリネに伝える前に果てた。マリネは考えた。誰かが手にとっただけで燃え出すなら、自分はもちろん、盗賊、ウルシ、が手にとっている。遡ればこれに綴っていた兵士、それからフナムシと剣士だってさわっている。これらの人物間で書の受け渡しだってしている。燃え尽きた冒険の書にしたっておなじだ。何かきっかけがあったから盗賊の冒険の書は燃えたのだ。だとすれば何が。
長い沈黙を破り、武道家は盗賊に、
「きっと冒険の書に何かを書き入れることで、所有者、のようなものが決まる仕掛けなんだ。そんでもって冒険の書はひとり一冊しか持てないようになってるんじゃないか?。おれがこっちの冒険の書に書き入れたから、おれがこれの所有者になった。他の冒険の書にさわったから燃えた。この件の前後を考えるに、理屈はわからないが、そう考えられるんじゃないか?」
「冒険の書が所有者を識別してるってのかい?」
「ああ、そうなるな」
「わけはさっぱりわからないが、考えがあるならやりな。あたしは特にないからさっきああ言ったんだ」
「考えってもんじゃあないが、他の冒険の書の所有者にさわられなきゃ燃え出したりしないってことになるな。とりあえず、おれが持ってみる」
マリネは冒険の書を手にとった。冒険の書が炎に包まれることはなかった。
「ま、とりあえず、おれがもっときゃ大丈夫ってことだな」
マリネがそう言って盗賊に笑いかけた直後、冒険の書は、淡く青白い光に包まれた。
「なっ」
またしても同時に声をあげた二人。冒険の書は地に落ちた。だが、今度は燃えたりしなかった。青白い光に包まれると、その淡い光は静かに消えていき、もとと変わらない冒険の書だけがのこった。

整理ついでに

私による私のための主な登場人物の整理。少ないけど。
レベルはふんわりとドラクエっぽい感じでてきとーにつけてみた。整理というか暴露。ただ進行中ということであんまり細かくは書かない。


武道家…名前はマリネ。男。27歳だったか。マリネが名字なのか下の名前なのか、しらない。そもそも名前が姓名でわかれる世界なのかもしらない。
Level…40ぐらい。そうとう強い。頑張ればソロプレイでラスボス倒せそうな感じ。裏ボスはソロじゃきつい感じ。ただ魔物相手の戦闘においては、経験値、が足らない。全員そうだけど。そう、経験値、が足らんのです!!

彼女…名前はウルシ。ママにはウシと呼ばれてた気がする。年齢はしらない。二十歳以上武道家より年下。武道家の彼女だっけど彼女ではなくなる。
Level…1。今現在ほぼただの村人。他は特になし。あ、バカなんだった。

盗賊…名前は秘密。ウルシには仮にコマイと呼ばせようとしてる。年齢は29だったか。いわゆるよくあるロリババアか合法ロリ。小柄、貧乳、喫煙者。吸ってるタバコを男にあわせる癖がある、っていうのの前フリ的なやつを書き忘れて、唐突にその設定が出てくる人。
Level…15ぐらい?。いや私が知らないのだから他に誰が知っているというのか。ちなみに一般的な兵士や武芸者のLevelは10ぐらい。かなり強い兵士で20ぐらい。すっごく強い奴で30ぐらい。なので、盗賊はそこそこ強い部類の人。達人とかそんなとこにいる人で40ぐらい。いざとなったら逃げる気満々なため近接戦闘員というよりは後方支援する人。

フナムシ…名前はフナムシ。27歳で。
Level…43ぐらい。武道家よりも少し強い。ということはものすごく強い人。武道家の幼馴染で武道家。同じ武道家の弟子。ってなんだこの武道家狂いの文は。最初の方で死んだ。ちなみに武道家とパーティを組んだ剣士のLevelは35ぐらい。こっちもかなり強い。こっちも死んだ。フナムシも武道家もこと生死をかけた戦闘にはLevelに見合わないほど慎重を期すタイプなので、盛り上がりにかける。

魔王…年齢知らん。名前も知らん。
Level…強いんじゃないかと思う。


タムラ…過去の人。天才軍師的なやつ。

このくらいか?。私が覚えておかないといけない人たちは。

最後のまさかの

ようやっと、本編、がはじまるという…なんか…ね…
(-.-;)y-~~~

昨夜、物語の根幹部をかんがえて納得いったものがあったのですが、きれいさっぱり忘れました。助けてサムソンティーチャー。

勇者と段々崩壊していく世界

私は元気で楽しくやっています。心配しないでください。
と、記した家族宛の手紙を持って、私は城下町に向かった。城下町に行くのは子供のころに学校の社会科見学でいった以来だ。
盗賊の計らいで、元剣士が城下町の宿までついてきてくれることになった。宿も、盗賊が用意してくれた。
道すがら手紙をだして、宿に着くと、あとはひとり部屋で待機する。夕方過ぎに盗賊が顔をみせにくるというからだ。
盗賊は、言いはしなかったけど、きっとマリネと一緒なのだろう。マリネも城下町の宿を、盗賊に世話してもらったに違いない。
でも、たとえ私が盗賊を問いつめても、盗賊はけっして口を割らないだろう。誰にもマリネの居場所を教えない、という盗賊の仕事は明日まで生きているからだ。マリネに会うのにずいぶんと遠回りをするけど、私は世話になった盗賊とそのルールに敬意を払うことにした。
部屋で剣の素振りや剣を持つ佇まいのチェックをしていると、来客があった。もちろん盗賊だ。
もう一度確認だ。
と、いって、籐で編まれた椅子に腰掛けた盗賊は、あすの算段への理解を私に問うた。
城に行く時はフードを目深に被り、眼の下までマスクをつける。盗賊も同じかっこをする。若い女だからと周囲になめられ、無用ないざこざや偏見をもたれないためということもあるが、これは私と盗賊が、二人組の応募者、になるためという目的がある。盗賊は戦闘の腕にそこそこ自信があるらしく、腕の立つものの連れ、ならば面接や技能試験があった場合でも落とされる可能性は低くなるだろう、という算段だった。
審査にパスすると、しばらく集団で訓練があることは私も知っている。そうなると私が全く戦えないことがバレるだろう。ただ私の目的はトッツクポーリに攻めこむことではなく、ただマリネに会いたい、というだけだから、国の審査さえ通ってしまえばよかった。それさえパスすれば、城の中でマリネに会える。マリネはここまでやって来た私をどう見るだろうか、笑みを浮かべてくれるだろうか。怒るだろうか、無視をされるだろうか。盗賊の、もしあたしと離ればなれになった場合にはどう行動するか、等の問いに暗記した答えを口にしながらも、私の頭の中はマリネに会えるということでいっぱいだった。
最後に私の造られた経歴を暗唱し、盗賊の確認はおわった。
…マリネはちゃんと来るのかな?
私は何度か盗賊と話すうち、彼女の希望通り、すっかりしどけない言葉遣いで話すようになった。
必ず行く。
盗賊はにやっと笑って言った。
マリネのことを考えているうちに、私は、明日マリネは城に来ないんじゃないか、と、急に底知れない不安にかられていた。盗賊の言葉をきいても、不安は晴れなかった。
そんな私を察したのか、盗賊は、
あたしのとこにあいつが来た頃なら他の選択肢もあったが、いまのあいつには正式採用を狙うはっきりとした理由があるんだ、だから必ず行く。
と、いった。
その理由は…言えないんだよね。
私は何かきくと、悪い言えない、とこたえる盗賊に慣れていた。今度もきっと盗賊のルールに抵触する内容だと思った。だけど、盗賊は、
言えるよ、
と、私の想像を裏切った。
全部を知る必要もないが、もしあんたがあいつのために何かしたいというなら、知っておいた方がいいだろう。まあ、私のためでもあるんだけどねえ。
そう言って盗賊は苦笑した。
マリネと盗賊、ふたりのため?
おっと、そうにらまないでくれ。誤謬をうむ言い方だったね。そんなんじゃないんだあたしらは。いいかい。私とあいつの目的は違う。ただ目的に至る手段が、いろいろと調べてみると途中まで似ていてさ。ひとつ分かれ道に来るまで互いに協力しようってなったのさ。お互いでかいヤマだしねえ。
それで、私はなにをすればいいの?
さっき言ったようにそれは言える、けど、
盗賊はじっと私を見据え、
知ったら、つらいよ?
と、いった。
卑怯だよ。私が、知りたい、って言うってわかってるくせに。
その知りたいって気持ちがただの好奇心や解けないクイズの正解が知りたいって感じの気持ちだったら、知らないほうがいい。そんな軽いもんじゃない。なにも知らないまま明日あいつとあって話して、そのあとあんたらがどうなるかは知らないが、あたしはそれが、一番近い、ハッピーだと思う。
…やっぱり卑怯だよ。盗賊は。
おっと、今からあたしのことをコマイと呼ぶ癖つけときな。明日になって盗賊だなんて呼ばれたらめんどうだからねえ。
盗賊は一度私に向けた視線を切ると、しっかと向きなおって、
で、どうする?
と、きいた。
私の意思は変わらなかった。
知りたい。マリネのためになるんなら。
わかった。いい覚悟だねえ。
盗賊はそう言ったあと、きゅっと笑って、
つらいことはつらいだろうけど、ほんとはそこまで大げさな話じゃないんだよ、
と、いった。
…つらいことはつらいんだね。
ああ。あいつと話す機会をちょっと先延ばしにするってことになるからねえ。
…先延ばしにする価値があるってことだよね?
ま、うまくことが運べば謝罪の手土産にはなるんじゃないか。…話が前後したね。事情を知れば、あんたはそれをやろうとすると思ってたんだ。手土産になるからね。あたしにとっても有益な行動だから、協力する。それでも、確実、ってわけじゃあない。うまくいかなきゃ完全に無駄足さ。
でも、やるよ。会えるのは決まってるわけだし。
…あたし達は例の、冒険の書、をいくつか手に入れておきたいんだ。
…あれだけもったいぶったくせにすごく唐突に語り始めるんだね。もう決めたからいいけど。なんでそんなものを?
んー、ちょっとめんどうな話になるからねえ。そこはあとにしよう。要はあんたにひとつ冒険の書を用立てて欲しいのさ。つまり、あたしとあんたは別々の班、パーティに入って、監視役の兵士から冒険の書を奪うのさ。こんな危なそうなこと、あいつ、武道家はあんたになんか、というよりも女子供にさせないだろうよ。
でも、とう、コマイにはさせるのね。
ははっ、あたしはあたしの目的のために動いてるんだ。あいつのこまっしゃくれた主義なんて関係なしさ。それに、あたしは盗賊だ。いざという時の逃げ足にゃ自信がある。そのことをあいつは知っているからねえ。
マリネと会ってから、冒険の書集めに協力する、じゃダメなのかな?
そんなことしたらワガママなくせにへそ曲がりなあいつのことだ。きっとめんどうになるよ。わかるだろ?
…そうね。きっとケンカになる。
いつ冒険の書を奪うか、はまだ決まってない。状況次第ってやつさ。遅くともトッツクポーリに入る前ってのは決まってるがね。ま、あたしがサポートするんだ。そうむずかしいことにはならないよ。
…わかった。信頼してるよコマイ。
よし、そうと決まればいくつか合図と、離ればなれになった場合の待ち合わせ場所を教えとかないとねえ。


盗賊が部屋を出て行った頃には、真夜中になっていた。
眠れないかな、と思っていたけど、睡魔は確実に迫ってきている。
寝て起きたら、やっと、マリネを、見つけられる。マリネの姿を見たら、私はどうなるのだろう。盗賊との約束があるけど、盗賊には悪いけど、思わずかけよってしまうかもしれない。でも、私は臆病だから、盗賊の後押しがなければ、盗賊が、話すなら今だ、と合図を送ってくれるまで、マリネに近づけもしないかもしれない。
マリネは私を見たら、どんなことになるだろう。驚くだろうか、喜ぶだろうか、怒るだろうか、呆れられるだろうか。バカと呼ばれるだろうか。また、死ね、と言われるだろうか。マリネは私に二度と会いたくないのではないだろうか。そうだった時、私はどうすればいいのだろうか。
ともかく、明日、明日になれば、私は一歩前に進める!。いいことだ!。それはいいことなんだ!
油断をするとすぐに高まる不安を置いてけぼりにするよう、私は強く念じた。部屋のオイルヒーターは熱されているが、部屋の空気はどことなく肌寒い。私はふとんをひっかぶって、明日の朝日が私を照らすまで、暗闇の中にいることにした。



第二部おわり

街角の恋人たちに捧ぐ物語

勇者と段々崩壊していく世界
という物語をうだうだと書いています。題名に偽りありありで、ファンタジー的な要素皆無の明るくキャッチーなラブコメです。もう少しで終わりそうなので、みなさんひとつ気軽に読んでみてくださいね。


私はほぼ読んでないのですが。