からだに恥をかく体操〜えんぴつみがき〜 -63ページ目

冬と貧乳とヒンズースクワット

早くも、早くもだよ。早くもバレンタインが迫ってるね。おれには。おれには早くも迫ってるんだよバレンタインが。おれにはこれしかねえ、おれにはこれしかねえんだ。おれにはこれしかねえんだよおれにはこれしか。

おれなんかほら、ヘビースモーカーだし酒を飲めば友達なくすし精神年齢小五だし、たまになんか叫ぶし本読まないし映画観ないときに限ってポップコーン食うし、偏頭痛持ちだし生命線短いしたまに泣くし、すぐくたびれるしめんどくさがりだし長風呂するしいつも同じ服着てるし、明日の予定もろくに立てねえし昨日なにやったかもうまく思いだせないしヒゲ生えねえし、貧乏じみたオナニーするしもう長いことおっぱい揉んでねえしマックで頼むの決まってるし、似合わない生き方に憧れるし好きな人に彼氏いるしで、おれにはこれしかねえ、これしかねえんだよ。

おれにはバレンタインにげた箱二度見するしかねえんだ。今から二度見するしかねえんだ。机の中を手探りするしかねえんだ。今から準備するしかねえんだ。心構えを作るしかねえんだ。男なんてプラスドライバーなんだよ。汎用性に欠けてやがる。


今日良かったこと、チョコをちょこっとくださいな、と口に出すに至らなかったこと。

最近再投稿してるもの

おもしれえ。思わず頭から再投稿してしまいそうだ。

ならはじめからそうしろよ!

しかし、ほぼまるっきり内容を覚えてないのは何故なんだぜ?。書いたのおれなんだぜ?。何故なんだぜ?。最近怖いぐらい思い出を忘れてくぜ?。このままいくとおれどうなるっていうんだぜ?




最近あった良かったこと、ある一件以来おれを遠ざけていた猫と仲直りしたこと。


再投稿してもいいかな?(自問自答)

なんとなく再投稿、アラクネ(10)

バラバラに再投稿する行為になんらかの意味があるのか?。


以下
“再度の出棺が済み、焼き上がりを待つ間、今度は本格的な昼食が用意されていた。カズタカは迷うことなく上座の、明らかに遺族達が座る一角に座し、タケハルも続いた。ヒロフミの両親と併せ四人の不可侵な塊になった。マユミ達は下座も下座に陣取り、少ない列席者には広すぎる部屋に、ぽつんぽつんと、いくつか人間の塊が出来た。後にカズタカは上座に座った理由を、「いやぁ、ここだけの話、なるべく目立たないよう奥の隅っこに座ってたらさ、いやまったく。焦ったね。すっかり上座下座なんか忘れてた。気がついた時には、時既に遅し。凄い後悔してる」と、言い放った。どうやらそれは本心で、上座に座ったのは決して義侠心や哀悼の意や列席者の少ないヒロフミの両親を気遣った訳でもなく、単なるケアレスミスだったようである。タケハルはカズタカになんとなく続いたとのこと。

この雰囲気なら。

献杯が済むと、マユミはアヤに謝った。静かに素直に謝意を述べる。ここぞとばかり、しんみりしている周りの空気を利用するという計算も働いた。その謝罪は、マユミの計算通り、受け入れられた。安心したマユミはコップに注がれたビールをぐいっと飲み干し、アヤに睨まれた。

焼きが終わって、列席者は炉の前に集まる。遺骨を骨箸で拾うからだ。マユミは何とはなしに外に出た。暖房の為かビールの為か、少し火照った体に突き刺さる冬の冷たい空気が心地よかった。雪の降り注ぐ空を見上げる。安い眼鏡に雪が当たる。目に水が入った時などにたまに見えることがある、昔、理科の教科書で見たアオミドロの拡大図のような、自身の眼球内の体液の流れ越しの空。一面灰色の空模様の中では煙突から出たであろう煙を認識出来なかった。この時代、もう煙など出ないのかもしれないが。

斎場の人間が粛々と遺骨を頭蓋骨とそれ以外に分け、作業が始まった。マユミは遺骨に色があることに少し驚いた。棺に入れられた花々の色素が伝染ったのであろうか、赤、緑、黄色、色とりどりの薄いチョークのようである。水分の無くなった遺骨は骨箸を通して、乾燥したカルメ焼きのような、軽石のような、陶器の割れた面のような、がさついた感触を、おかしいかな、マユミの口内に伝える。嫌な感触だ。アルミ箔を噛んだ時のよう、背中の産毛が逆立つ。

最後に頭蓋骨を骨壷に納め、封印し、葬儀は終わった。その瞬間、ヒロフミの母親がとうとう壊れた。今まで、涙も枯れ果てた呈をしており、感情という感情が死んだ如く不気味な程静かに佇んでいたのだが、突然鈍牛のような、うおぉうおぉ、と、その小さな体のどこから出ているのかと思うような低音で泣き喚いた。もはやそれは人の声ではなく、地獄の門番が死者を呼ぶ声のようである。狂い泣き、膝は折れ、髪を引きちぎり、真珠のピアスを引きちぎり、止めようとする夫を払いのけ、耳から振り飛んだ血でところどころ赤く染まった顔を殴り、夫の腕に噛みつき、歯が折れ、口周りを真っ赤に染め、隙あらば床を正拳に握った拳で叩く。ぐちゃぐちゃである。それを見ていた列席者の一人の赤い顔をした中年男が、「遺伝したんだな」と、呟いた。それを聞いてしまったミシモとカズタカがその男を睨みつけた。男は「ああ、うむ」と、言うと、スタスタと場を後にした。

なんとか、係員と夫が狂い叫ぶ妻を、昼食をとった部屋に連れ込むと、ヒロフミの母親に呼び留められた格好であるマユミ達は、帰るわけにもいかず、無言のままロビーで、ただ時が過ぎるのを待っていた。カズタカとタケハルは係員と共にヒロフミの父親に付き、部屋の前で待機している。彼らが付かざるを得ない程、人が居ないのだ。

「混乱に乗じて、あのおっさん殴っときゃよかったな」

雰囲気を変えようと、ミシモが先程の無礼な男のことを話すと、

「じゃあ、今から一緒に殴りに行こうか、って、ははは」

と、マユミが力無く笑う。

「あんたらこの場でよくそんなことが言えるわね」

アヤが人非人に対して言うが如く、蔑みを込め、吐き捨てるように言った。その眼はうっすら涙が溜まっている。勿論、ヒロフミの死によるものではなく、この騒動の衝撃によるものである。

「ああ!?てめえ、ふざけんなよ!いい子ぶりやがってよぉ!お前なんだよ!この場にふさわしくないのは!みんな頑張ってんのにお前だけどこに居るんだ!」

ミシモがキレた。決して喧嘩っ早いミシモではないが、あまつさえお世辞にも喧嘩が強いと言えないのだが、侮辱されたと感じた時には誰であろうと向かっていくのがミシモである。アヤに近付くと、左手で胸倉を掴み、右手を弓なりに引いた。その拳は握りしめられている。グーで殴る気だ。

マユミが、一発殴ったら止めよう、と、妙に冷静に状況を観察していると、突然視界に黒い大きな物体が現れ、ミシモに抱きつくような体当たりをした。カズタカだ。勢い余ったカズタカは、それでも器用に、ミシモを抱きかかえながら背中から落ち、ミシモと繋がっていたアヤも巻き込まれ、三人の人間の塊はくるくると二回、床の上を転がった。

「待て待て、それはまずい。普段なら他人の厄介ごとは歓迎なんだが、今日はもうややこしさが渋滞してる。ていうか、大丈夫か?」

カズタカは半笑いで、寝っ転びながら尚アヤを蹴ろうとしたミシモを制した。アヤはもうだらだらと涙を落としている。

「なんなのよ!」アヤが叫ぶ。

「ここは一つ、私を殴って怒りをお治めください」ミシモの様子を観察し、その様がどうやらキレた状態から脱したようであると判断したマユミが、立ち上がったアヤの前に躍り出る。

「あんたのせいよ!」

「ええ?私ですか?」

バチッ。アヤは思いっきりマユミの頬をひっぱたいた。マユミは殴られ慣れている。酔っ払った翌日、迷惑をかけた女友達にボコボコにされたこともある。それに女子校時代、ミシモとプロレスにはまり、連日の如く、プロレスごっこをしていた時期がある。プロレスは相手に手加減を加えるものだが、まだマユミ達がプロレスをリアルな格闘技だと思っていたということもあるが、総じて「プロレスごっこ」はガチンコで行われるものである。ひっぱたかれる耐性は十分持っていた。

「うーん、私のせいかぁ?」痛いことは痛いが、マユミにショックは無い。冗談で言ったのだが本当に殴られる準備もしていた。

「あんたが変なこと言うからぁ」ひくひくとしゃくりあげながらアヤが言った。

「あー、ま、なんだ。各人言いたいこともあるだろうが、今日はもう帰れ」

カズタカがズボンをはたきながら言う。

「っと、その前に」

カズタカは内ポケットから六通の封筒を取り出した。表には筆ペンで書かれたであろう達筆な字で、マユミ達それぞれの名前が宛名書きされている。

「あっ、何それ?」ホノカが興味津々で身を乗り出した。

「鈴木、お前はバカ犬か?はたまた三歩歩いたら全てを忘れる鶏か?なぜそこまで精神の急ハンドルをきれる?」

「あっ、そうか、ごめん」ホノカはそう言うと、一歩下がった。

「まあいいけどさ。それで、おばさんがお前らを呼び留めたのはこれを渡すためだ。ヒロフミからの遺書的なものらしい」

「なんだ遺書か」

「ホノカ!」カナコがアヤの頭を叩く。

「ごめん」

「もはや凄いとしか言えねえな。しっかし、ま、あれだ。そうだ。お前ら帰れ。俺達はまだ少し残るから。何かあったら俺かタケハルに連絡してくれ。ま、特に何も無いだろうけどな。じゃあ、仲良くしとけよ」

カズタカは半笑いのまま階段を上って行った。アヤが一人斎場を出て行くと、じゃあね、と言葉無く別れの挨拶を済まし、カナコとホノカはアヤを追った。残された形になったミシモとマユミ。

「しっかし、しっかし、ま、あれだな。二人してアヤとの関係が泥沼になっちまったな」

ミシモがカズタカの口調を真似て笑った。

「なはは。しっかし、アヤ達何に乗って帰るんだろ?同じ電車に乗ったら気まずくない?」

「どっかで甘いものでも食べようか」

「そりゃいい。今日は色々ありすぎた。昨日からかな」

「無理してでも甘いもの食わなやってられない。厄介なものもあるしさ」

「あー。わかるわかる」

決して苦い顔をしないよう、笑い合いながら二人も斎場を後にした。降りしきる雪の中、甘いものを食える場所を目指して。

次の日、菱山カナコが死んだ。


続”
以上




ああ、いくら再投稿を重ねたところで、最終回が適当なんだよなこれ………ていうか、基本、最終回が適当だよね。最近に至っては開き直ってるし。ああ、思い返せば、これで最終回を適当にやる快感を覚えたんだなあ…………。あと、会話ね。会話の合間に情景や心理描写をほぼしないというね。だって、めんどくさいじゃん。

関係ないけど、今日、当たり付き自販機で見事当たったよ。そしたら近所の犬がワンって鳴いたよ。それだけ。

アノマニスからの脱却(7)

「は?」
「は、じゃねえよ!。なにが呪いだよ!。いやさあんたが勝手に惨めに死んでくれるのは結構なことだけど!。あんたがオヤジにそれだけ嫌われてるなら、あんたはもう死んでなきゃならねえんだ。なりふり構っている場合じゃねえよ!。殺すだろどうやったって一秒でも早く!」
「だから、私は」
「まだわからねえのか」

レイはポケットからタバコを取り出して、火をつけた。

「いいだろう。ことのついでにおれの推論を述べてやろう。いいか、あんたはオヤジの子なんだよ。これは文学的な事実ってやつだ」
「は?」
「だから、は?、じゃねえよ。あんたはオヤジの息子なんだよ!」
「何をそんな無茶苦茶なことを」
「まあ、そりゃあさ。それこそ遺伝子でも調べりゃ、結果に一致は見られないかもしれない」
「違うじゃないか」
「いいから黙って聞いてろタコ野郎。でもな、オヤジはあんたを自分の子だと思ってんだよ。それこそ、神見の子のようにな」
「………私の母親が、神見のように?」
「それは知らん。ただの不倫関係かもしらん。でもな、おれがオヤジなら、そのあんたの親を殺した事故ってやつで、あんたも一緒にさよならだよ。生かしておく価値が、論理的意義がまるでねえ。おかしいだろ。どう考えてもおかしいだろ。それに、現状だよ。あんたは死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ言ってるけどよ。どうして今生きてるんだよ」
「だから、それはあまり派手にやらかすと」
「教団最大の不安因子とも呼べそうなあんたを放ったっきりそのままにしておく奴なのかよあいつは」
「それは、だが」
「導かれる答えはひとつなんだよ。あんたはあのオヤジの子だ。たとえあらゆる意味合いからその事実が違っていても、文学的にはそれが正しい。なぜならあんたのその半生と、今生きているその事実があるからだ。だから殺されない」
「そんなの、無茶苦茶じゃないか」
「無茶苦茶もくそもないんだよ。あんたはそれを信じ、語る権利がある。過去を思い返してみろよ。思い当たる節のひとつやふたつあるんじゃねえか?」
「そんなまさか………」

佐井九はそう言ったきり、両手で頭を抱え込み、黙り込んだ。

「そんな落ち込むような問題でもないだろ。生きてるだけマシってもんだ。ま、じきに死ぬらしいけどさ」

レイは塞ぎ込む佐井九を冷たく突き放した。優しくしてやる道理はない。

「私は、私は最近ずっと、こんなことを考えていたよ」

両手で頭を抱え込んだまま、佐井九は語り出した。

「死んだらどこに行くんだろう。死んだら、どうなるのだろう。そんなことばかり考えているんだ」
「おいおい、何をくだらねえ。それこそ、そんな時こそアノマロカリス教の出番じゃないか」
「アノマロカリス教では、死んだら、その魂は迫り来る進化の果て、生命爆発の糧になる、と教えているよ。アノマロカリス教では宇宙は生命体であり、そこに還って、次の生命に宿る準備をする。その世界には、ノアの方舟のように宇宙創世から生まれたありとあらゆる生命体の“形”が標本のように並べられていて、そこを管理しているのが生命爆誕の象徴たるアノマロカリス。生前、悪いことをした奴は、アノマロカリスを信じなかった奴は、分別され、そいつらの餌となって食われ、生命の輪から永遠に外れるとされる」
「ま、ありきたりな輪廻転生物語だな」
「私は、これを信じていた私は、決して死を恐れはしなかった。教団の教えに殉じることを恐れはしなかったし、私が殺した人々は、きっと後の世で新たな生命体になり、幸せになると信じていた」
「ずいぶんと手前勝手なことで」
「だが、私はもはやアノマロカリス教が偽りに満ちたものであることを知っている。信じられるものをなくした時、私は死ぬのが怖くなった。死んだらどこに行くんだろう。私が死んだら、私という存在はどうなるのか。それからというもの、私を取り巻くこの世界が、まるで作りもののように無機質なものに見えるようになった。私はなぜ生きているのか、なぜ生まれたのか、なぜ意識を持って日々行動するのか、なぜ苦しむのか、なぜ死ぬのか、死んだらどうなるのか、なぜ人間なのだ、歴史とはなんだ、どうして人間は人間なのだ、町を行く人々にも人それぞれ個別の意識があり、皆が皆どうして今現在この世界で考え、行動しているのか、そんなことばかり毎日毎日考えていたよ」
「言わせてもらうが、そういうことは普通、中学生あたりに一通り経験して、適当に済ましておく疑問だぜ?」
「そういうものなのだろうな。私には、それがなかったよ。そして、答えもでない」
「当たり前だ。答えなんか出た日にゃ変な宗教屋さんに逆戻りだぜ」
「ああ、そうだな。しかし、なんとなく、なんとなくだが、少しわかったことがある」
「あんのかよ、なんだよ」
「それは、死んだら何にもないということだ。死んだら、死後の世界もなにもない。ただただ無なのだ。私という存在が過去から未来永劫消え去る。それが死というものなのだと。私という世界の終焉、それはまるで宇宙の広がりのその先のように、何もなくなるということ。私は怖い。私が考え、日々積み重ねてきた私という存在が、未来永劫消えてなくなる。消えてなくなるのだ!」
「だから急に騒ぐな!。あんた我思う、故に我ありって言葉知ってるか?。中学生の時習わなかったか?」
「死こそ永遠であると、そう思ったこともあったが、違う。その考えこそ、死後も意識があるということなのだ。死は永遠ではない。点だ。続きはしない。そこですべてが終わりなのだ。それでも、それを理解していながらもなお、私は、死んだらどこに行くんだろう、死んだらどうなるのだろう、それを考えずにはいられない。と同時に、死んでしまいたいと、願っている………」
「だからなんなんだよ」
「馬鹿馬鹿しいと、君は笑うかい?」
「知るか!、おれはあんたをこの手でぶっ殺してやりてえぐらいなんだよ!」
「だったら、それをしても構いやしない」
「それだよ!、おれがあんたをやらない理由はそれなんだよ!。お前は勝手にどっかで苦しみながら生きて死ね!」
「…………ありがとう」
「いや、なんでだよ!?、なんでそう言われなきゃならねえ!」
「君と話していて、私は決めたよ」
「は!?」

佐井九は頭を上げて、レイの目を見た。レイはそれにのまれた。

「先代が私の親である、考えたこともないようだが、確かにそれは事実であるかもしれない。君と話していて、私は、なぜだか楽しかった」
「は!?」
「私を苦しませていたすべてを、私に認めさせてくれた気がする」
「………駄目だこいつ。根っからのアホだ………」
「ありがとう」
「うるせえバカヤロー!!」
「私は、生きることをやってみる」
「じゃあ殺す!」

レイが火のついたタバコを佐井九に投げつけたあと、しばらく、ふたりは沈黙した。らちがあかないと、レイは教団本部に向かうことにした。帰りしなに佐井九はレイにこういった。

「我思う、故に我あり。君はそう言ったね。だが、やはり死んだら、きっとそんなこともなくなる」
「なんなんだよあんたは」
「私はひとり、自分が自分でない者を知っている。その子はたぶん、自分を殺して、その殺した自分という存在を求めるそれだけの為に生きている」
「………神見のことか?」
「あの日あの時、彼女は死んだといえる。だが、あの赤い小さな安っぽいイヤリング」
「安っぽいって言うな!。結構したんだぞ」
「彼女はああなっても、君からもらったそれを決して外そうとはしなかった」
「……あっそう」
「これは私の推測だがね。彼女が快楽を求め続けるその理由、それはもう一度、真なるオルガスムスを求めているのではないかね?。性的欲求のみが満たされるものではなく、心から愛しく思い、初めて経験したそれを求めているのではないかね?。快楽の果てに自分が甦ると、本能的に感じ動いているのではないかね?」
「……なんだよ。おれが神見と一発やったら世界は元通り、めでたしめでたしってなるとでも言うのかよ」
「まだ、彼女は死んではいない。私はそう思っている」
「……あっそう」
「君は神見と会って、どうするのだ」
「………さあね。考えたこともねえ。おれはオヤジを殺したいだけだ」
「そうか。…君は、私と同じだな」
「どこがだよ!。一緒にすんなハゲ!。死ね!」
「これを持っていきなさい」
「ああ!?」
「我が家にある武器になりそうなもので、持ち運び易いものといえば、これだけだろう」

佐井九の手にはキンカンの瓶が握られていた。

「………まあ、もらっとく」

それがなんの役に立つか、まあ、無いよりかはマシだろう。

「一縷の望みにかける気があるのならば、君は神見を抱くんだ。いや、抱いてやって欲しい。神見はずっと君を」
「うるせえ!!」

そう言って、レイは佐井九とおさらばした。

電車に揺られながらレイは、抱けるもんならそうしたいが、とばかりに、その用をなさない自分の息子をじっと見つめていた。

果たして、レイが言ったように、佐井九はオヤジの息子だったのだろうか。その謎はついに闇中を漂うことになった。なぜならば、レイが投げたタバコの火の不始末により、まもなく佐井九の家は火に包まれ、佐井九は、何を思ったかしらないが、火に飛び込んで死んだからだ。目撃者の証言によると、佐井九は火に飛び込む寸前、薄く笑みを浮かべていたという。そして当のオヤジは、既に息をしていないからだ。

そんなことは露知らず、レイは教団本部最寄り駅まで息子を見つめる。




なんとなく再投稿。アラクネ(27)

急に思い立ち、再投稿。アラクネ強化日曜日ですね。でもなんで(27)からなんだ!!。




以下
“ここではなんだと店を出た残りものの二人。

「どこ行く?俺はろくな人生を過ごしてねえからこんな時に行くぴったりの場所なんて知らない。選択肢が俺んちしかねえ」

「死んでも嫌だ」

「そうだろうな」

「あそこに行くぞ」

「…ってどこだよ。歩くの早いなお前」

「君が社会のリズムから取り残されてるだけ」

「痛いです非常に痛いです心が」

「落ち着け。心を痛めて死んだ奴はたくさんいる」

「いるから駄目なんだろ!」

「ところでいくら金持ってるの?ちょっとジャンプしてみ」

「かつあげかよ。いやそこはすっかり慣れちまってるが、この歳になって小銭を対象としたかつあげされるのかよ」

「いいからジャンプして何か風船的なものを捕まえてそのまま空へと上がって上がって上がって上がって行き…」

「行き、なんだよ。カラスにでも」

「つつかれずに?」

「え?カラスにつつかれずに?じゃあ、東京タワーのてっぺんに」

「刺さることもなく?」

「ヘリコプターのプロペラで」

「切り刻まれることもなく?」

「クレージーで評判の飛行機野郎が捨てた火のついた葉巻が」

「煙を出しながら隣を通過して?」

「月光に導かれて飛んで行く蛾の群れに」

「突っ込むこともなく?」

「ハイジャックされたジャンボジェットの」

「乗客に手を振り?」

「降り注ぐスペースデブリの矢を」

「きれいなもんだなと眺めて?」

「衛星軌道上に漂うライカ犬の魂がって俺どこまで空の旅を続けてんだよ!早く撃墜してくれ。風船おじさんか俺は」

「ああ、そうですね、あなた変態おじさんですものね」

「おじさん踏襲しちゃったよ。せめてお兄さんにしてくれ。若いぜ、俺。ここだけの話なんと、お前と同い年だ」

「なるほど、合わせると風船変態おじさんおじさんですね」

「なんで合わせた!?おじさんおじさんってなんだよ。お兄さん抜けてるし」

「グリーン担当だものね」

「色分けされるってことは風船変態おじさんおじさんって戦隊ヒーローなの!?おじさん二人しか見当たらないけども」

「グリーンと赤色2号の二人」

「一人着色料で染められてるんですけど!体に悪いな!なんつうか自然に染めたげて!」

「で?」

「で?ってなんだよ」

「金は?」

「あ、ああ、金な。残り二万とちょっとだな」

「お、なかなか持ってるじゃない」

「使い切ると公共料金どころか生活費も払えなくなるけどな」

「じゃあ、そういうことで」

「どういうことだよ!」

「いいじゃない別に使い切ったってさ。構わないよ私は」

「そりゃそうだろうな!」

「あんたもそのつもりなんじゃないの?どうせ自棄になって暴走したいんでしょ。すぐに死ぬからなんてさ」

彼女は今どんな顔をしているのだろう?カズタカは店を出てからずっとミシモの自分と比べれば遥かに小さい背中を見ている。足早に歩くミシモはさっきからその顔を見せない。顔を見せたくないからわざと足早に歩いて前を行くのだろうか?そう思ってカズタカはひどくセンチメンタルな気持ちになった。

「…急に真面目か。いや、まあ、そんなとこも無きにしも非ず。いや、違う。今日は違うんだ俺は。違うんだ」

「なに?」

まさしく、自棄を起こしている。いや、自棄を起こしたい。カズタカは身も心も一度ボロボロになりたかった。精神に嵐を求めていた。わけのわからぬこの状況、精神状態を号泣の嵐で一度ぶっ壊して、その先に何かを見つけたかった。おそらくは、希望。

「今日は、俺は、俺はさ、俺は本音を吐露したいんだよ。白状したいんだ。その為に呼び出したんだ」

「声震わせて喋るな、気持ち悪い」

すっきりとした声で、ミシモは言った。

「…すまん」顔を上げ、後頭部越しにミシモと同じ空を見る。

本音。それを常にひた隠しにして生きてきた。本音を言えばそれだけ無意味な闘争に巻き込まれると、誤解を生んで誰かを傷つけると、底の抜けた中味の無い缶カラであるカズタカは本音もどこ吹く風の如く素通りさせてやり過ごしてきた。成長するにつれいつしか本音の風も吹かなくなり、いつも曖昧に、微妙に生きてきた。本当の自分をさらけ出したくなかった。

そんな男が漫画家を目指しているなんて変な話だが、作品に鬱屈している本音を仮託させたかったのだろう。しかし、どんな漫画を描いても、仮託させるべき本音の風は渺々たる大海原の遥か彼方へ行ってしまって、ついぞ吹くことはなかった。表現したいもの無き表現者など善良で私利私欲の無い政治家のようなもので、糞の役にも立たない。しかし、それが今吹いている。幼き日に吹いた懐かしき風、母にわがままを言った時、キャッチボールで兄に泣かされた時、行きたくなかった外食先でふてくされて父に怒られた時、いつでも思うままに吹いていた風が今、心の中にびゅうと吹き荒れている。こんなの初めて。どうにかなっちゃいそう、であった。

「怖いんだよ、死にたくねえんだ」

アイドンワナダイ。強がりも排除した正真正銘、本音。カズタカの、いや、二人の精神は死刑執行を待つ日々を送る受刑者に似る。しかしどうしたら罪無き罰を、悔い無き悔いを、受け入れ、改めることが出来るというのか。やりきれぬ。ただやりきれぬ。この気持ちを何にぶつけろというのか。どう昇華させろというのか。わからない。

「……」

何か応えることもなく、無言で歩き続けるミシモ。カズタカは無言で後をついていく。

突然、

「走れ」

小さく号令を発し、ミシモは走り出した。言われるがまま走り、後を追うカズタカ。五十メートル程直進したろうか、ミシモは交差点の角を曲がると、壁際に立ち止まり、唇に伸ばした人差し指を当てている。

静かに。

カズタカは荒れる呼吸に苦しみながらもジェスチャーの意味する通り、出来うる限り静かにした。そのミシモの顔はいたずら好きの妖精みたくにやついていた。

少しして、ミシモは来た道に戻り出る。

金魚の糞のようにふわふわと後を追ったカズタカの目の前を、向こうの生け垣辺りを一心に見つめる作業着姿の男が通り過ぎた。一瞬の出来事であったが、確かに見たことある顔。

その向こうで、ミシモは腹を抱えて笑っていた。

「あー、この歳になってやる鬼ごっこはもはや痛快ね」

「あいつ、あれだろ。ウデムシの時の」

「そう、ファミレスに居た奴、あいつなかなか可愛い奴でさ。気づかれてることに気づいているのかいないのか、最近律儀に朝から晩まで私んちの前に居るのよ」

「毎日?」

「そう、ホノカから鞍替え」

「ああ、ストーカーな。しっかし、どこかの記者には見えないおっさんだがなぁ。第一、記者ならさ、何か訊きたいことあるなら直接俺達に訊けばいいじゃないか。何度かあったろお前も、なんつうの、突撃されたっつうの?」

「さあね、どうでもいいじゃないそんなこと。あいつが何者かもどうでもいいわ。警戒心の強い野良猫にエサやってる感じ。今のだって尾行を警戒したわけじゃなくて、あいつの驚いた顔が見たかっただけ私は。そして傑作だったなぁ。人間焦ると歩くリズム変わるのね。タタンってなってさタタンって。なはは」

「しっかしよぉ、そういうことは初めに言っといてくれよ」

先程までカズタカに宿っていた沈鬱な雰囲気は吹き飛んでしまった。

「大丈夫、もしか乱闘騒ぎになっても、お前は初めから戦力に数えてないから」

「なるほど。男として多少腹立たしくもあるが、正しい計算だ」

ミシモは再びカズタカの前を歩き始めた。

「そして、もしかお前が凶刃に倒れても」

「私は構わない、か」

「誰も構わない、よ」

「それは、ひでえな」

「あー、そうか」

「なんだよ?」

「さっきからなんかめんどくさいなぁって思ってたら、そうか、あんたと喋っているからか」

「おい、気を抜けば今にも泣き崩れてしまいそうな俺に言うセリフか」

「めんどくさいからさ。お前はさっきみたく塞ぎ込んでてくれる?ほれ、泣け泣け。泣き崩れてもアスファルトだけはあんたを支えてくれるよきっと」

「きっとって憶測の入る余地無いだろ。アスファルトに。しかも置いていく気満々だな。いや、財布だけは抜き取っていく勢いだ」

「……」

「何か言え!……」

「……」

しばらく無言で歩き続けた二人。本来なら立場は逆じゃなけりゃ、カズタカはそう思うと同時に、どうしてミシモはこうも強くあり続けることが出来るのだろうと思った。本当はお前も弱いところがあるのだろう?当たり前の安っぽいセリフが浮かんだが、人間として、もはや最低限ではあるが男として、口には出さなかった。言ったとしても、「だから何?」とミシモは自然に言いそうだし、そして猛烈に怒られそうだし、そう言われたら二の句が告げない。俺の腕の中で泣きたいのはカズタカである。

「着いた」

立ち止まったミシモは指を差した。そのぴんとした指の指し示す先とは、

「尾形、お前、お前は…どこまでもか!」

「どこまでもよ」

ミシモは大型電器店で、暇なのよね、と、ゲームソフトを何本かと、こんな機会でも無けりゃ買わないとばかりに、高めのドライヤーを買って、お疲れ、と言ってさっさと帰っていった。もちろん、カズタカ払い、ポイントカードはミシモ持ち。

懐はざんないことになったが、カズタカは元気になった気がした。生きる指針というものを得た気がした。どこまでもか?どこまでもよ。それだけのやりとりでカズタカはミシモに救われたのである。



続”


わけわかんないね。(27)だし。