勇者と段々崩壊していく世界
炎ではない何かに照らされている太い柱に支えられた広間に出ると、その奥に二匹とひとりがいた。体が恐ろしく肥大して角など生やしている怪物、おそらくウルシ。灰がかった黒い肌にコウモリのような翼を生やして、これぞ悪魔といった容貌の仮初めの魔王。そして、2匹の後方に、柱に隠れ身を隠す鎧に身を包んだ剣士。どちらかの国の勇者だろう。
「おい」
「ああ」
小声でやりあったマリネとカムラの思惑は一致した。
あの剣士に仮初めの魔王のとどめを刺してもらおう!、ラッキー!
ふたりはもともとこういうやつらだ。
行動は早かった。ウルシだったものが魔王をガンガン攻撃しているので躊躇している暇もない。マリネは音もなく剣士の背後に忍び寄ると、羽交い締めにし、口を塞ぐ。
「おれは敵じゃない。魔王を倒しにきた。よくわからねえがいまはチャンスだろ?、おれたちで隙を作るからとどめをさせ。、協力してくれ」
剣士の耳元でマリネはやさしく言った。
身動きが全く取れなくなった剣士は、後ろの者との実力差を痛感したのか、おとなしく首を縦に振った。最悪死んでも蘇ることができる男だ。自身になにがあっても問題ないとの判断もあるだろう。
魔王の弱り具合を見計らい、柱の影に溶け込んでいたカムラが嵐の呪文を唱え、怪物にぶつける。怪物の攻撃が止まり、怪物は呪文の飛んできた方向を見やる。
暗がりから姿を現したカムラの姿が蠢き師匠の姿になろうとすると、怪物が唸りをあげて体から波動をだした。カムラはへんげできなかった。
怪物はゆっくりとカムラに向かって歩き出した。怪物の注意が魔王からかむらにかわると、いまだとばかり、マリネと剣士が飛びだして魔王に向かう。
マリネとフナムシの邂逅だったが特に何か起こるわけでもなく、マリネが剣士をカバーし、剣士は魔王にとどめをさした。
「移動の呪文を!」
仮初めの魔王が倒れたとほぼ同時に、剣士の体は渦に包まれた。
ウルシだったものはそれに強い反応を示し、空気を切り裂かんばかりに吠えた。口からでるものは言葉というよりも、まさに空気の振動だ。
移動の呪文が発動する。
三つの命が剣士を取り巻く渦に吸い込まれていった。
たどり着いた場所は、マグマの海だった。海の上に浮かぶように岩場の橋ができていて、その端っこにマリネたちは現れた。向かいの端、60mぐらい離れたところに、黒い球体が見える。
カムラは即、渦巻く魔力に自身の魔力を注ぎ、渦を維持する。渦はある種の結界になっており、先のフロアより空気を吸い込み続け、結界内に満たしていく。でなければこんな場所でまともな呼吸はできない。できるのはウルシとタムラの進化の秘宝コンビぐらいだ。
ウルシが黒い玉に向かって歩を進めるのを確認し、ふたりは胸を撫で下ろす。ウルシだったものは同種の存在にしか興味を示さない。立ち塞がりさえしなければ、ふたりのことなど羽虫よりも眼中にないだろう。知ってはいたが、攻撃を受ければ一網打尽に帰すこの場面は緊張した。
「あとはあいつがタムラをぶっ倒して、おれたちがあいつを倒すだけか」
「ここからはなにが起こるかわからないけどねえ」
こそこそと話すふたり。別にこそこそと話す必要はないのだが。
「あー、ありゃまっすぐ向かってますねカムラさん」
「なにを実況してんだいあんたは」
「ちょっと暇かなと」
「あたしは必死なんだよ!、代わるか!?」
「すみません」
「あいつが斬り込んだら、防熱の呪文を張るから、息を止めて接近、あいつが黒い玉になる前の隙をついて即殺、即離脱だ。わかってるよな?」
「はい。すみませんでした」
「だいたいお前はさっきまで死んでたくせに緊張してるだとは生意気だ」
「すみません。さっきもそうですが、なかなか死なないもんだなあと」
「今日だけで二回死んでるんだよあんたは!、そういや、だいたいあんたはあたしに感謝の言葉を述べたか!?」
この辺りで、ウルシは凍てつく波動を放出した。一瞬で黒い玉は剥がれ落ち、肉のかたまりに手足がついたようなものが現れた。
「いくぞ!」
ふたりは手はず通りにかけ出した。
タムラは動かない。もはや純粋な呪いのかたまりに近い。
ウルシが肥大化した腕を振り上げ、タムラに叩きつける。肉のかたまりは引き裂かれ、続くウルシの豪打で粉砕された。
その瞬間、マグマの海が煮え立つように激しく噴き上がる。
ふたりは立ち止まり、荒れ狂うマグマの海に世界の崩壊を覚悟したが、それは杞憂に終わる。マグマが急速に、消えていったからだ。視点を変えるたびに見る場所のマグマがぱっと消失していく。
残るはウルシだったものひとつ。
ふたりは再びかけ出した。
だが、遅かった。
ウルシの体から黒い霧が噴出されはじめると、あれよあれよという間に覆われた。
この事態にふたりは思わず、息を吹き出した。慌ててウルシが鋼鉄の呪文を唱える。マリネは、一呼吸する間に、倒れた。マグマが消えたとてやはりまともに呼吸ができる環境ではないらしい。
しばらくその場でじっとしていたカムラだったが、なにも起こらない。自分は動かないし、黒い玉は黒い玉のままだし、マリネは死に続けている。自身の魔力の減少を悟ったカムラは、鋼鉄の呪文を解き、マリネに触れ、離脱の呪文を唱えた。
カムラが無事にトッツクポーリ議事堂前に着くと、トッツクポーリを覆っていたタムラの魔力を感じることはなかった。生命以外、もとに戻ったのだ。
「どうする?」
「どうしよう」
マリネを蘇生させて、事情を説明すると、ふたりはまた小声でこそこそと話しだした。
「とりあえず、大丈夫そうだった」と、カムラ。
「そう、ならいいな」と、マリネ。
空き巣に入った先で別の空き巣と遭遇し、互いに金品を盗む前に逃げ出した泥棒のような心境にある。いや、不発弾を爆破処理しようと爆破のスイッチを押したら爆発しなかった時の爆発物処理班の気持ちか。いや、むかつくやつにコーヒーの代わりに墨汁の入ったカップをだしたら平然と飲まれおかわりを、とそんなことはどうでもいい。
ふたりがとりあえず出した結論は、すぐには世界は崩壊しないのではないかということだった。世界を破滅させるだけの力を溜めるには、タムラのように長い時間がかかるはずだ、と。ウルシはタムラと違い呪いのアイテムをこの世界に残しているわけではない。
「それなら、この先ここらを監視をしてりゃいい、のか?」と、マリネ。
「そうだねえ。下手したら何か異変が起こるのは何百年もあとだけど」
「地下の調査も必要だな」
「掘るってのかい?、そりゃ無茶だ。深すぎると思う」
「そりゃそうだ。だいたいおれたちが監視するっていっても数十年だろ?、そのあとどうすんだ。この地に伝承でも残すっていっても、誰もまともにゃ扱ってくれないだろうなあ」
「あの黒い玉を掘り出さないと、よく伝わって仮説で終わるだろうねえ。人っていつ来るかわからない危険に対して案外のんきに暮らすものだしねえ」
「穴掘ってるだけじゃ金も稼げないしなあ」
「国家事業にでもするしかないってことかねえ」
「国なあ…」
「国かあ…」
「なに!、トッツクポーリの地に魔王が現れた!?」
「はい。一夜にして国が落ちた模様です」
「なんと!、魔王の仕業に間違いはないのか?」
「すべて伝説の通りと聞いています」
「ぬう、まさか伝説が真実だったとは。よりにもよってワシの世に」
「陛下。こうなったら勇者をたてることが賢明かと」
「伝説通りに、か。とはいえ、勇者とはなんぞや」
「陛下のご先祖様であられますが」
「仮面の姫の伝説ではない。当時勇者とは一体どのような制度に基づき旅に出たのか、ということだ」
「失礼しました。早急に調べます。とりいそぎ私の記憶でよければ、勇者の特徴などについてお伝えいたしますが」
「よい、話せ。ワシの先祖だと遠慮するでないぞ」
「はい。まず勇者は、正確には勇者パーティと呼ばれる勇者一行でありますが、各地を主に徒歩で回っています。おそらく回りながら修行をこなしたのでしょう。各地の村々に勇者が悪党を倒したという伝承が残っています」
「ほう。長い旅になるようじゃ。ならばそれなりに金を持たさないといかんな」
「その必要はないかと」
「なぜじゃ」
「勇者たちは敵を倒しながら金を手に入れていたようです」
「ほう。なるほど。賞金首に似た制度があったのじゃな。修行の一環というわけか」
「そう思われます。それと勇者たちにはどうやら、なんと言いますか」
「よい、忌憚なく申せ」
「はい。勇者には泥棒や空き巣を働いていた形跡があります」
「いかんじゃろそれは」
「失礼いたしましました!」
「いやお主の言いように向けた言葉ではない。どういうことであるか?」
「勇者たちが村にやって来て食料やタンスの中身を盗まれた、との記述をいくつかみた覚えがあります」
「ぬう、ではこうしよう。ワシも好きで先祖を貶めたくはない。勇者にはある程度他人の持ち物を勝手に使ってよい特権があったことにしようぞ。当時は各地の修行に必要なものを現地で調達する過程でその特権が必要だったのじゃろう。うむ。そうじゃそうじゃ。そうに違いない。よって今回の勇者にも同じ特権を与える」
「よいのですか?」
「度を越した物はいかんだろうが、たいていのものは後から国が損失を保障すればよいだろう」
「なるほど」
「他には?」
「なんでも勇者本人は旅の道中、はい、と、いいえ、しか喋らなかったと」
「なんじゃそれは。そんなことがあるのか?」
「魔王を倒し世界を救うという過酷な使命を全うするためには、苛烈な意思による判断が求められるもの。時には犠牲を伴う判断に差し迫ることもありましょう。おそらくそのような場面で最善の選択をするための工夫かと」
「王であるワシが言うのもなんじゃが、リーダーとは孤独なものよのう」
「それから」
「まだあるのか」
「いえ、これは特徴と言うべきものというわけではないのですが、勇者たちは滅法強かったと」
「それはそうじゃろう」
「ですので、我が国の勇者一行は自然と決まってしまいます」
「そうか。みなまで言うて欲しくないのじゃがな」
「まず、この国一番の武道流派から二名」
「あの忍者の兄弟じゃな?」
「はい。そして、やはり、先代勇者と同じく」
「言わんでくれ、できるなら行かせたくないんじゃ」
「お父様!」
「シムラ!?、いつからそこに」
「そんな楽し、いや、そのように厳しい使命を帯びた旅なればこそ、王族が率先して行動しなくてはならないのでは?」
「お前は旅にかこつけて腕を比べてみたいだけじゃろ」
「この国は武道の国ですよお父様。ここぞという時に王族が武を示さねば、民は王についてきません。それに私も武道家のはしくれであり、勇者の子孫。この身に流れる血が旅に出ろと言ってきかないのです」
「まったく、とんだおてんば姫に育ってしまった」
「なにより盗み放題と聞けば、血が騒いでしょうがない」
それはおてんばどころじゃないじゃろ、王は嘆声をもらした。
おーわーりー
勇者と段々崩壊していく世界
盗賊を前にだし、武道家が下がる。
「それは見ましたよ。ねえさんが受け、あなたが必殺の一撃を繰り出す。その策がつうじるものかどうか」
マリネには、勝算があった。
相手の不意をついたといえばそれまでだが、自身が放った寝起きの打撃をくらった師匠は、本来の師匠ほど強くない。この女はあの人ほど相手の動きを見極めて動けるわけではない。武の動き自体は自身の方が上。それなら隙を作ることは可能。作戦通りに体が動けば、かならず会心の一撃を当てられる。
「これは奇策じゃねえんだ。口を動かすかおれを気絶させるかしかしなかったが、戦うことに関しちゃ天下一の親から授かった、勝ちの決まった策だ。バレてたってつうじるさ。変える必要はねえ」
「お前を、許せないんだあたしは」
「せっかく治してあげたのに。ねえさんはちっともわかってない」
「黙れ!」
カムラに、おちつけ、とマリネは言い、
「時間がないんだろ?、おれたちにびびってるのか?、かかってこねえなら、こっちからいってもいいんだぜ?」
と、ミムラを挑発した。
「はったりは聞き飽きていますよ」
外で風が吹いた。入りこんだすきま風で、灯りの炎がかすかにゆらめく。
勝負は一瞬で決まる。そして、このなかのうち二名が死ななければ勝負は終わらない。三人の三人のなかのひとりだけ、生き残って欲しい人物の想定が違うのだが。
雲の切れ間から月がでたのだろう、教会のステンドグラスが淡い光を帯びた。灯りのゆらめきが落ち着く。
月の光を浴びて、しびれを切らしたように盗賊が動いた。ふたりの作戦は待ちに徹することを旨としているわけではない。相手に攻撃を出させることを旨としている。
盗賊が一歩踏みだしたとき、既にミムラが落ちていたナイフを拾ったのをマリネは見た。見ることができた。
盗賊もそれを見ただろうが、ためらいはない。かまわず二歩目を踏みだす。
そこにミムラが詰め寄る。
そのとき、武道家は盗賊を殴っていた。強くもやさしく、盗賊を半身分ずらすように。
ミムラのナイフが盗賊と入れ替る形で飛び出してきた武道家の胸に刺さる。武道家はナイフを引かせず、そのままミムラの体に抱きついて固めた。
崩れた体勢からその光景を見た盗賊は、やるせない気持ちになった。しかし、行動は早かった。この場でやるべきことを、盗賊はした。ミムラに向かって地を蹴った。
空気の対流が起こり、炎が大きくゆらめく。
盗賊のナイフが月の光に鈍く光る。
マリネは血がしたたりおちようとするミムラの口に、指を突っ込むと、そのまま押し倒し、ふたりの全体重をミムラの後頭部に乗せた。
押し倒されたミムラの体はもにょもにょと蠢き、もとの体にもどった。
力の抜けたミムラの体は柔らかく、〆られた豚のようにぐてんと横たわり、何度か肺から血とともに空気が抜けた。
「おしまいだ」
マリネはそう言うと、ミムラの傍らに身を翻して、倒れた。
ミムラのナイフは、マリネの心臓に突き刺さっていた。
ああああ、と言葉にならない声をだし、カムラはマリネによろよろと歩みよった。
なぜ、どうして、こんなはずでは、こんな覚悟では。
「師匠は、こうしろって、あのとき、教えてくれた」
弱々しく声をだすマリネの口から血が溢れた。
血止めを、と自分に言い聞かせるよう言ったカムラに、マリネは無駄だと伝えた。みるみるうちにマリネの顔から生気が失われていく。
「あんまりだ!、ちくしょう!、お前はあたしを救いたいんじゃなかったか!、死ぬのはあたしだろ!」
マリネはか細く、
「僕は」
と言ったあと、ちいさくほほ笑んで、
「救われた、と言ってくれ」
と言った。その後カムラがなにを言っても、マリネの返事はなかった。
しくしくとカムラは泣いた。しくしくしくしくと、声をあげるでもなく、カムラはマリネを抱きしめながら泣き続けた。倒れる両者から流れ出た血が、カムラの靴下を赤く染めあげる。それでもカムラはしくしくと泣き続けた。
いつからかカムラの荷物袋が、青く淡く光り出していた。どこかでミムラの冒険の書が燃えたのだろう。冒険の書がいつどのように所持者の死を判断するのかはわからない。だが、ミムラは死んだのだ。
夜が明けるころ、カムラはおもむろに立ちあがり、幽鬼のようにふらふらと歩いて、袋から冒険の書を取りだした。冒険の書はいまだに淡く光っている。
ミムラの死によって上書きされた冒険の書の表紙に、いままでになかった文字が浮かんでいた。
カムラはぽつりとその文字をつぶやいた。
「さとりの書」
冒険の書が放つ光が、一層強くなった。
カムラはまるで冒険の書に吸い込まれていくような感覚になった。
光が消えると、カムラは知った。呪文のすべてを。そして、妹の一部を。
「こんなの茶番だよ。こんなの勝ちのきまったゲームじゃないか」
カムラはまたぽつりとつぶやいた。枯れたと思った涙がまた目に溢れてきた。
妹が世界を救うために呪いの冠に奪われた最初のものは、家族と悲しみ。悲しみをなくした妹が、どのようにして呪いから姉を遠ざけていたか。法の目をかいくぐる詐欺師のようにしてどのように呪いを騙したのか。カムラは知った。
自身が呪われた者となった以上、ミムラが生きている限り呪いの力はカムラを諦めず、また新たに生きている姉を糧に呪いを利用せざるを得なかったミムラは、最終的に自身の死をもって、カムラがタムラだったものに奪われてしまうことを避けるしかなかった。ミムラが最後に呪いによって与えられたものは、一部の記憶を冒険の書に移すこと。姉への伝言だった。
師と弟子により呪いを欺きつつ、呪いの施術者と対象者は消えた。カムラに力を残して消えた。
カムラは、妹を許せない。いままで思いつづけてきた感情をいきなり逆さまに変えることは難しい。ゲームに夢中になっている子を案じて唐突にゲームのリセットボタンを押す親の行為なんかは、子からしてみれば憎しむより他はない。親と子、逆の立場になればわかるというものだが、逆の立場になるためには子の成長や経験が必要だ。あなたのため、と言われても、その場で、ありがとうとなるものではない。
だが同時にカムラは、大人なのだ。妹の行いに理解や納得をするだけの知識や経験がある。この相反する行き場のない感情をカムラはひたすらにつらいと感じた。
マリネの横に座り、カムラは蘇生の呪文を唱えた。回復の呪文を唱えた。
マリネの傷が塞がり、顔の血色が良くなってゆく。すこしして、マリネは目を開けた。
「どうなっている?」
目覚めたマリネにカムラはバカと言って、抱きしめた。
マリネはわけがわからず、こっそりと刺された傷を確かめようとしたが、こんなときに乳をまさぐろうとしていると勘違いされたら嫌だなと思って、やめた。
しばらくして、落ちつきを取り戻したカムラは事情を説明した。事情の説明というよりも、感情を独白したといった方がいいかもしれない。
「妹はこのまま?」
合間にマリネが訊いた質問に、
「無理なんだ。ミムラの一部がさとりの書として生きているから。それに生き返るとまた呪いが復活して、奪いそこなったあたしが奪われる」
とカムラが答えたとき、悲しげな表情になっていたことを本人は知らない。
「呪い、か。じゃあ殺されるためにわざわざ師匠の姿になったってことか?」
「わからない。勇者の覚醒もあったし、ミムラにかけられた呪いはあたしを奪おうとするだろうし、殺される気を保てたのか、殺そうとしたのか、殺される状況を作ったのか、わからない」
「そうか。じゃあ本気でおれたちを殺しにきてたことにしてくれよ。そうじゃねえとあの野郎を負かした気になれん」
「負かした?」
「師匠だよ師匠。一度あの野郎を負かしてやりたかった」
「あんた、親だと言っていたよ?」
「うるせえ」
「それに、よくて相討ちだろうねえ」
「いいやそれはちがう。戦って生きてりゃおれの勝ちだ。これでおれは免許皆伝だ」
「それでいいならいいけど」
大まかに事の成り行きを理解したマリネは、下がったカムラのテンションを無理矢理にでもあげようと、明るく話しをした。とはいえ、師匠が死んでから一日も経っていないことを考えると、明るく話してはいるがマリネもそのことを明るく話しでもしないと自分をなくしてしまうのだろう。それに、すぐにふたりは大きな選択をしなければならない。
「さてと」
あぐらをかいて座っていたマリネが立ちあがった。
「大丈夫か?」
「大丈夫どころか、快調だ。そろそろ行こう」
「どこに?」
「仮初めの魔王のとこ」
「ダメだ!」
カムラは、ミムラの計画を隠しきれなかった。ミムラがふたりに世界を救うためになにをして欲しいか、を。マリネも、その協力内容に自身の死が必要とされることを薄々勘付かないほどバカではない。
「カムラ、おれはお前を救いたいんだ」
「だったらやめてくれ!、このままでいい!」
「それはちがう。お前を救うには、お前の妹も救わなければならないんだよ。お前のなかにある妹から託された願いを、お前が死ぬまで気に病んで生きていかなけりゃならないなんて救われねえ。たとえ明日には世界が崩壊したとしてもだ」
「こんなもの願いじゃない。呪いだ。あたしを呪っているんだ!」
「それが呪いなら、やっぱりもとを断たなけりゃならんだろ。おれはお前を救いたい」
「仮初めの魔王と戦ったら勝っても負けても死ぬんだぞ!」
「もう二回死んだしなあ。ついでに世界も救えるんだろ?」
「世界なんてどうでもいい!」
「お前が生きる世界をおれが守る」
「こんなに居心地のいい世界を知ったあとに、またひとりになれっていうのか」
「それにさ、おれはいまや免許皆伝の師範格だ。弟弟子も守らなきゃならない。どっちみち、魔王に抗うぞおれは」
師の仇をとる。親の願いを叶える。そう言われるとカムラに言葉がない。
「カムラ、いまのおれなんて人生のおまけを生きているみたいなものだ。別におれが死ぬって決まったわけじゃないんだ。やってみなけりゃわからねえもんだ。気楽にいこうぜ」
長い沈黙のあと、
「わかった」
とカムラは言って、ふたりは口づけを交わした。
「よし、腹は決めさせてもらった。師匠さんの敵討ちだちくしょう!、ギッタギタにしてやる。移動の呪文を唱えるぞ!」
「まて、威勢がよくなったのはいいが、建物の外に」
カムラは移動の呪文を唱えた。
飛び上がったふたりは、教会の天井に勢いよく頭をぶつけて、落ちた。もんどりうって身悶えるふたりは、
「…首の骨が折れるかと思ったよ」
「思ったよじゃねえよ!、すげえ痛えよ!、下手したら死んでたぞ!、なんてまぬけな最期になるとこだったんだ!」
「死ななかったんだからいいだろ」
「よくねえよ!」
などと頭を抱えながら言い合って、そのうち目と目が合うと笑いあった。
「こっちだ」
トッツクポーリに着くと、カムラが道案内をしはじめた。どうやら着いたところは街の中心にある広場らしい。
しかしふたりの行く手に魔物が立ちふさがる。
なんだかよくわからないピエロみたいな奴、腕の形をした氷のかたまり、斧を持った機械、宙に浮くカマキリ、緑色の肌をした人型、帽子をかぶったモグラ、岩石でできた大きな人形、ピンク色の象等々。
以前の盗賊と武道家なら、手間どっただろうが、なんせいまや盗賊は呪文が使える。
「どうせ誰もいねえんだ。ぶっ放せカムラ」
「屁をこく感覚で言うな。二度と言うな」
盗賊は手からほとばしる閃光を出し、あたり一面をなぎ払った。魔物は一掃された。
「…なあ、少なくないか?」
マリネが疑問を口にする。着いたとほぼ同時にどこからともなく現れた魔物たちが、いま倒してからというもの一匹も姿が見えない。
「ああ。早く進もう」
仮初めの魔王は街の中心から少し奥まった場所にある議事堂の地下スペースにいる。タムラはそのさらにずっと下の地下、というよりももはや別世界にいる。
「どうやら先客がいたようだな」
ふたりが進むにつれ、夥しい量の魔物の死体が見えてきた。どの死体も原形をとどめていないと思われるほど粉砕している。
「のんきに言ってる場合じゃないよ。この数このやり方、間違いなく勇者、ウルシだ。まずいね」
「あちこちに散らばってる体液がみずみずしい。たぶんそんなに遅れてきたわけじゃない。おれの後ろにこい」
もし暴走しているウルシが仮初めの魔王を倒したら、ウルシが次の仮初めの魔王になる。そうなったら世界は救えない。ミムラの知識では、タムラはその身を凍れる時の秘宝と呼ばれる禁呪で固め、その身の守りはミムラが使っていた鋼鉄の呪文のさらに上をいくという。そのタムラにダメージを与えられるのは、ウルシだけだ。同種のものが発する凍てつく波動のみ、凍れる時の秘宝を無効化することができる。波動の発する衝撃の波が、凍れる時の秘宝を解除する際の発音なのだ。だから決して、ウルシに仮初めの魔王を倒させてはいけない。
だが、仮初めの魔王の命がタムラに続く道に繋がっている。仮初めの魔王が倒されると、瞬時にタムラから魔力が送られて、仮初めの魔王を倒した相手を次の仮初めの魔王にする。タムラと次代の仮初めの魔王が魔力によりつながっている間、そこに魔力の渦ができるらしい。その渦の近くで移動呪文をつかうと、タムラの魔力に引き寄せられ、さかのぼるようにしてタムラのいる場所までいけるという。
「なあカムラ」
「なに」
「おれの姿を見たら、あいつまたいまとは違った感じになるんじゃないか?」
「もうお前が誰だかも、誰であっても生きてるか死んでるかぐらいの違いぐらいしかないだろう。いまのあいつの頭の中にあるのは、ただの衝動なんだよ。絶望により引き出された破壊の衝動のかたまりだ」
「そうか。気が楽でいいな」
議事堂の階段を駆け下りる。周りの壁に傷のついてない場所が見当たらない。
階段の途中で、のこぎりで弦をひくようなまがまがしい音と衝撃がふたりを襲った。
足を急がせる。
小さじいっぱいのなんちゃらについて
怒りを覚えるとはこのことだ
しかしふと思い出す。当時、なんだこれ…、というものを書こうとして書いたのではなかったかということを。期待だけを裏切るようなギャグを。
それがテーマ???の誕生だったのではなかったかと。
意味がわからない。
過去記事について
おもしれえとおもひました
このブロクの過去記事、変な会話じゃなく物語の方、をなんとなくちょっとずつ読んだのですよ。変な会話のやつはこの世から消えてしまえばいい。
けむ猫
レザーがでてくるあたりを読みました。おもしろいなあと思いました
アラクネ
ふたりめの女が犠牲になる前あたりを読みました。おもしろいなあと思いました。
テーマ「?」にあるアノマロカリス教のやつ
最後のを読みました、ザ・ホースマンのくだりがおもしろいなあと思いました。
テーマ「モヤモヤとか」の初めの方にある~風シリーズらへんのやつら
丁寧語でかかれてるやつがなんとなく感がなんとなくでていておもしろいなあと思いました。カフェオレお化けあたりもなかなかおもしろいなあと思いました。
いま投稿中のやつはなにがおもしろいのかわからない。あと一回か二回で終わるけど、なにがおもしろいのかわからない。見づらいし、同じ言葉ばっかり使うし、なにがおもしろいのかまったくわからない。どうしよう。どうしようじゃあねえよ。こういう浦鉄のコミックのあとがきみたいなの嫌いじゃねえかよお前。
それぞれ書き方違うから、いま書いてるのがつまらないからといって諦めてはいけない。私の書いたものを読んだ人妻にバカにされたい。見下されたい。人妻以外は読まなければいい。人妻必見のものになればいい。昼下がりの人妻に笑ってもらいたい。昼下がりの人妻の暇つぶしにつきあいたい。人妻の、って人妻という単語を検索するやつはほぼ男じゃないのか?、いやいまはそうじゃないはずだ。と考える私は人妻。