からだに恥をかく体操〜えんぴつみがき〜 -165ページ目

運営方針

さて、只今おれは暖房装置の一切無い部屋で尋常じゃないぐらい震えながらこのメールを打っている。これからの今後のこのブログの内容を少し書いておこうと思い指をポチっている次第だ。

今現在アラクネを継続的に書いているので、それ以外は書かない。と、断言も出来ない。が、書いたとしてもそれらの回数は減る。でも何かリクエストあればすぐ書く(ねえよ)。優柔不断か!(()が邪魔したな)ああ、震えてうまく文字が打てない。

そして反則みたいだけどもアラクネについて、

今呆れるのは早いぞ!とだけ言っておこう。



もう箇条書きで終わらせたいw

アラクネ(4)

腕が、変だ。腕が無い…。右腕が…。いや違う、ある。あるわ。変な方向に曲がっているだけ。なぁんだ。変な方向に曲がっているだけか。なぁんだ。変なの。…って。

マユミはパチリと両の眼を開けた。薄暗闇の向こうに白い天井と照明。見慣れた部屋だが自分の部屋ではない。ミシモの部屋だ。実家の部屋だ。右腕の異物感を確認する。マユミの隣、マユミの右腕を腕枕にしてホノカが寝ている。右腕の感覚がおかしいのは痺れていたからだ。「とんだハネムーン症候群ね」、そう呟いて、マユミは深呼吸をした。床に敷かれた布団の中。隣のシングルベッドではミシモが寝ている筈。マユミはゆっくりホノカの頭から意識の通じぬ右腕を引き抜くと、がばっと背中を起こした。

状況を整理する。少し体がだるいだけで頭は痛くないし吐き気もしない。二日酔いは無さそうだ。まだ酔っ払っているからか、ウイスキーで酔っ払ったからか。

ぐっすり寝ていた所をみると寝ゲロも吐いていない。胸を触る。ブラジャーは外している。そして見たこと無い服を、いや、この服は通っていた高校のジャージだ。ミシモのジャージ。下着は、履いてない。隣で寝息をたてている者が男で無いことを再度確認し、ふぅーっと渇いた息を吐くと立ち上がる。ミシモはベッドの上に居なかった。

勝手知ったるミシモの家。部屋を出てトイレへ。便座に座ると、昨日自分がしたこと、されたことが、所々、映画のフィルムを切り抜いたみたく頭の中で再生される。抜け落ちた記憶を手繰る。その記憶はアヤに背中をガンガンとストンピングされながら、カラオケ店内に持ち込んだ二本目のトリスをストレートノーチェイサーで飲んでいるところでぷっつり潰えていた。

また何かやらかしたに違いない。後悔するなら飲まなければいいのにな、マユミはうんざりしながら刺激臭のする便を流し、台所へと向かう。頭と喉が渇いている。

台所には誰も居らず、冷蔵庫を開け、スポーツドリンクをコップに注いでいると、ドタドタと三回建てのミシモの家の階段を降りてくる人物の足音が聴こえた。

ああ、おばさん怒っているかなぁ。

マユミの心配をよそに、足音の人物はミシモであった。ミシモは喪服を着ている。まだ寝ていないのかな、などとマユミがぽかんとミシモを酔い明け眼で見ていると、

「ああ、なんだ、とにかく、早く準備しないと焼きが終わっちゃうぞ」と、ミシモが言う。

「へ?今何時ですか?それと私の眼鏡と携帯と喪服はどこですか?それと昨日私は何をしましたか?」マユミが痛飲した時の羊飼いは決まってミシモだった。

「十時、葬儀はもう始まってる。急げ。お前の備品は私の部屋の机の上。喪服はそこに掛かっているから。下着も」

リビングの壁には確かにマユミとホノカの喪服が綺麗に掛けられている。ミシモのおばさんが掛けたに違いなかった。なんて迷惑なんだ、と、マユミが下を向くと、

「急げ。ホノカはまだ寝てるの?まずいぞ。あ、あと、お前が昨日何したかはアヤに訊くのがよい。ホノカぁ!」

ミシモがホノカを叩き起こす荒業の騒音を聴きながら、ぼーっとしてスポーツドリンクをゆっくり飲み干すと、こんなことしてる場合じゃないじゃない、と、尻に火がつき、急いで喪服に着替え始めた。

着替えている途中、マユミがちょうど全裸になっている時、ホノカがリビングにやってきた。

「…マユミ、まだ酔って」

「へ?」マユミは下着を履こうと猫の如く身を丸めている姿勢で停止した。

「覚えちゃいないよ。とにかく今は急げ。それとも今の姿のまま表にほっぽりだそうか?」見つめ合い停止している二人にミシモが着替えを促した。

「せめて一時間早く起こしてくれれば、ミシモだけばっちりして」ホノカが当然と云えば当然の文句を言うと、

「私だってさっき起きたんだよ。散々騒いであんたらが寝たのが六時。こりゃ寝たら起きれないなと私は上で映画観てた。全く退屈な映画でさ。そして気がついたのがさっき。わかった?急げ」ミシモの号令の下、急ピッチで作業は続けられた。マユミの携帯電話は何故か真っ二つになっていた。しかしマユミはあまり衝撃を受けない。さもありなん。やりかねないしやられてもしょうがないことをしたのだと一瞬で悟ったからである。

「オールなんてしてる場合じゃなかったな」

「お前が言うなぁ!」

「面目ないです、はい。ところでおばさん達は?」

「昨日の通夜に行ったんだよ。今日は旅行でどっか行った」

「やっぱりオールなんてしてる場合じゃ」

「黙れこの椎茸!」

「しいたけ?」

葬儀は街の小さな葬儀場で行われている。ミシモの家から走って三分程だろうか。三人は髪の毛に寝癖をつけたまま、結局ホノカは赤い髪のまま、やぼったい体と乱れ髪を振り乱し、アセトアルデヒド混じりの息を切らして走りつづけ、なんとか焼香に間に合ったようである。

葬儀場の横で、葬儀場の案内人が訝しげに見守る中、膝に手をついて嗚咽混じりに乱れた息を整えている様は、端から見れば故人の死を悼み泣き崩れている多感な女子に見えなくもない。

「しまった!香典忘れた」

マユミが受付にてようやくそのことに気がつくと、三人はまた、それぞれの実家へと走り出した。


兆し

我、回復の兆しを見たり。しかし、ダウナーの渦にまかれていると無駄に明るい話を書くな…。多分アナルおじさんを書いた時がちょうど精神的に均衡だったのではないかと思う。ほんとどうしょうもねえ奴だ。


ここで試験に出ないであろう日本史豆知識を。


日本史上初の年号は言わずと知れた「大化の改新」の大化であるが、大化の次の年号が白雉(はくち・びゃくち)であることは知られていな……………知ってるか……

アラクネ(3)

「乾杯ね。乾杯。それとも献杯かな」

運ばれてきた四つのジョッキと一杯のアイスティを前に、アヤがついついしゃしゃり出た。この娘は秀才であるのに学習能力が無いな、と、マユミは思い、また、三つ子の魂百までか、と、思った。

「おやおや、またお子様がでしゃばりましたね。お子様に乾杯も献杯もあるまいに、あ、あるまーに」マユミが目をアヤから伏せながら言う。

「しつこい!あるまーにって何?駄洒落?思いつきで言わないでよ!しょうもないよ!しつこいししょうもない!やっぱりあんたそんな子だったわ!学校で何を教わってきたのよ!中学生からやり直しなよ!」

アヤが夢中で、楽しそうに、喚いている隙にミシモがビールを一気飲みした。

「おい!なんで?乾杯の音頭は?」

アヤが疑問をミシモに叩きつけるその隙に、マユミとカナコもミシモの後に続く。

「ぷはぁ」

アイスティの中に出来たガムシロップの澱みをストローの上を指で押さえてはまた離し、神経質な上下運動を繰り返してかき混ぜるホノカを見つけたアヤは、

「ホノカが最後だからね」

と、言い、目の前のジョッキをその膨れた頬一杯にして一気に飲み干した。

「へ?何が?」

呆気にとられたような返事をしてホノカはストローを吸った。

「甘っ!なにこれ」ホノカは苦いものを口に入れた子供のように顔に皺を寄せ舌を出した。その顔はまるで無邪気な天使のようで、この場に男が居ればイチコロだな、と、マユミは思った。

「ちゃんとかき混ぜろよ!」

カナコがホノカの赤い髪をぐしゃぐしゃにする。

「こうすりゃいいのに何ちんたらやってんの」

「…なるほどね」

「なるほどねってホノカ、あんた何を納得したっていうのよ」

「いやぁ、カナコの言う通り初めからぐちゃぐちゃにしちゃえばよかったなって。なるほど。コペルニクス的転回だわ。コペ転ね。コペ転。ありがとう」

「あのねホノカ、このことをあんたに注意するのは、そうね、八回目よ八回目。いい加減にしてよね」

「それは、ご苦労様です」

「…まあ、いっか。ところで、みんな知ってると思うけど」

カナコはヒロフミの死に様のことを話し出した。みんな知ってると思う、と、したのは、ヒロフミの死に方が珍奇的猟奇に彩られていて、ピーピング趣味のマスコミに注目を浴びたからだ。とはいえ、事件性がなく、且つ、どうやら死んだ者がキ印であるらしいことがわかると、マスコミは一斉に手を引き、大衆食堂の日替わりメニューのように、次の日には世間からも忘れ去られていたが。

「そのことはここじゃなくて、どっかに行ってから話すべき」今にもヒロフミの死について知っていることを声を大にして喋り出そうとするカナコをミシモは制止し、辺りを見渡した。ここは地元である。八割方埋まっている座席に座っているのは、恐らくそのほとんどが、知り合いか知り合いの知り合いの範疇にある人物達であろう。ただでさえ人の、特に地元の人間の興味を惹く事件である。ミシモはヒロフミの死についておかしな噂話が広がることは構わないと思っているが、その噂話の発信源にはなりたくなかった。

「そっか、そうだよね」とにかく話したくてしょうがなかったカナコは自身を恥じるようにしゅんとなった。

「ま、そのことは後でじっくり伺うけどね。でも今は、ほら、壁に耳あり、障子に」ミシモは言い終わる前にマユミに目配せをする。

「愛のメモリー」

…………。

「メアリーでいいのに。マユミはどこか奇をてらって失敗するのよね」と、カナコが静寂を破った。

「ああ、わかるわかる。卒業アルバム見た?クラスのおもしろ担当だったくせして普通のことしか書いてないのよ?修学旅行が楽しかったとか立派な大人になりますとか。ふざけてるのよこいつは。それでいて失敗してるの。素直に本来のはしゃぎっぷりを書けばいいのにさ。逆に反対のこと書いて。一生残る思い出さえも奇をてらって失敗。天邪鬼なのよ。求めたら引いて引いたら構って欲しくて。波打ち際みたいな奴なのよ。大体、障子に愛のメモリーってどういうことよ」と、アヤ。

「そりゃ太陽の季節的な」マユミがそう言うと、

「あ、そうだ。ラッキーホールって知ってる?こないだ調べたんだけどさ」

と、ホノカが話題を変える。千変万化の雑談は女の特権である。

話はそれから幾度も幾度も終わり無き転換を繰り返し、マユミ達の空白の時間を埋めていく。気がつけば夜も半ばまで過ぎ、初雪は霙からぼた雪へと変わっていた。

「今日はオールでしょ」カナコが言うに及ばず、皆その覚悟である。

「不謹慎にも程があるねぇ」と、マユミ。

「楽しみたいくせに」とアヤ。

「しかし、今の時間帯に喪服来た乙女達が歩いてたら、黒いマリア様みたいね。明日になったら近くの学校の七不思議になってるかも。いや、逆に喪服は男の欲情を煽るっていうから、モテモテ?喪服に欲情は全人類のDNAに刻まれているのよDNAに」と、ホノカ。

「カラオケか、明日眼が腫れたら泣いたからってことになるわな」と、ミシモ。

「その前にちょっとコンビニ寄るぞ」

マユミがそう言うと、

「気をつけなよアヤ、マユミが本格的に酔っ払うと手がつけられないよ。ああ見えて普段マユミは周りに気を使って自分を抑えているからね。好き放題しているように見えて、その実、心の中に自分を演じていることからくるストレスが溜まっているのよ。理性と記憶が無くなった時、あいつの中の獣が解き放たれた時…ああ、中学高校大学と、私がどれだけ苦労したことか。恐ろしい恐ろしい。ほんと、気をつけなね」ミシモはニヤリと表情を作りアヤに言った。

「何で私だけに忠告するのよ!」

アヤの声は空しく夜の街に響くと、すぐに雪に吸い込まれていった。


見るなよ

ああ、嫌だ嫌だ。自分の全てが嫌だ。