からだに恥をかく体操〜えんぴつみがき〜 -145ページ目

アラクネ(29)

ひきつり笑いのドールの顔が歪み、ハンマーヘッド・シャークのように扁平になった。姿形もぼろを纏った醜い男の姿に変わっている。

「さまよえよえよえよえよえよえよえよう。さまよえよ武者カズタカ。喜びは悲しみを引き立たせる香ばしい煙に過ぎないさ。悲しみは喜びを上回るパレードなのさ。人生は大理石と泥から出来上がっている。だろう?この世で最も美しいものは最も無用のものである。たとえば、孔雀と野の百合をみよ。だろう?人生の喜びとはなんぞや、人生の喜びとはすなわち、無用の悲しみなのさ。さまよえようさまよえよう武者カズタカぁ彷徨ぅ」

「なんなんだよ!これは夢じゃないのか!?」

「そう、これは夢さ。泣き笑いのまほろばさ。現実であって現実でない曖昧な夢さ。究極の癒やし。それが夢さ」

言葉が妙に胸に響きやがる。俺の意識を奪われてたまるか。そうは思えど、抗えない。

「武者カズタカ。お前は脚になる。アラクネ様の脚になる。それはさまよえる喜びさ」

「お前は、誰なんだ」

力無く呟くカズタカ。

「俺が誰か。俺は俺であって俺じゃない。俺はただの脚さ。生きてなんかいやしない。昔は生きていたがね。七人の女を殺したのさ。とても鋭利な刃物で切り裂いたのさ。ああ、ぷつりぷつりと石榴の実のようにあり。鮮明なる赤を纏う肉。ぷつりぷつりと石榴の実のよう。ああ」

感嘆を込めて、扁平男は喘ぐ。そして、

「しかし、今はただの情報でしかないがね。アラクネ様の脚さ」

と、憎々しいほどすらりと言った。

それから男は佐藤ヒロフミ、菱山カナコ、土師マユミ、己タケハル、鈴木ホノカ、野崎アヤの死について朗々と語った。

「お前もだ。お前もだ武者カズタカ。アラクネ様の愛は惜しみなくお前に与えられるだろう。そして、惜しみなくお前から命を奪うだろう。お前ならばわかる。お前こそは言っていることとやっていることが違う男だからだ」

「そんなことを信じろと言うのか」

カズタカは力無き頭で必死に何かを見つけようとしている。

「懐疑は方法である、か。悩ましき人間よ。さまよえる人間よ。だがしかし、これこそは右往左往することなき本道さ。与えられる喜びを、悲しみを、ただ知ればよい」

男はくるりくるりと片足を軸にして二回、回り、

「これを見よ」

と言った。そして男はすっと黒い空間の中に吸い込まれて消えた。取り残されたカズタカは呆然とぼつぼつと逆立つすね毛を見ていた。

「お前も噛むか?」

急にそう話しかけられ、そのすね毛視線を上げざるをえなかった。そこにはやたらめったらにがたいのよい迷彩ズボンを履いた上半身裸の大胆な顔立ちをしている白人男性がいた。首にはいくつかのドッグタグ。何かをくちゃくちゃと噛んでいる。

「ほらよ」

男は手に持っていたバターのような塊から、ひとくち分、ちぎって投げた。それはカズタカの開けっ放しの口に見事入った。

「ハハハ、大丈夫。たとえ火にくべたって爆発しない代物さ。甘くてうまいぜ。男のガムさ。くちゃくちゃ」

男がそう言って口の中のものを噛むと、ボオンと爆発が起こり、首から上が吹き飛んだ。首からぴゅうぴゅうと血を吹く男の手がパントマイムで壁を表現しているようにすりすりと動きながら扁平男のように消えた。カズタカはあわててプラスチック爆弾のかけらを口から吐き出した。

「自由でいたいのさ僕は。なにものにも縛られていたくない。唯一僕を縛るものは、そうだな、時間だけだろうか」

消えた軍人のあとに現れたものは亀甲縛りで吊された男であった。

「ふふん?何か言いたげだな」

当たり前だろ。麻痺をきたした思考ながらも反射的にカズタカはそう思った。

「これが自由。これこそ自由。ああ自由。自由の名の下、一体どれほどの犯罪が生まれたことか。うう」

吊された男はそう言うと、射精して、消えた。

「ああ、人はなぜ死ぬのかしら」

次に現れたものは地味な着物姿の若い女だった。

「人はなぜ死ぬのかしら。あなたわかる?人と人とはなぜ出逢うのかしら。あなたわかる?二人の生命の重なり合った部分になぜ愛は生まれいずるのかしら。あなたわかる?でも、素敵。素敵ね。それって素敵なことなの。あなたわかる?初めは処女の如し、終わりは脱兎の如し。あなたわかる?ズキューン」

女は手に持ったピストルで頭を撃って死んだ。ピクピクと痙攣する女のはだけた着物から陰毛がちらりと見えた。その陰毛は薄くてらついていた。

「僕は女さ」

次に現れたものはバニーガールだった。ちゃんとうさぎの耳をつけている。しかし、がたいは男のそれであり、ハイレグから漏れた金玉が網タイツでむぎゅとかわいそうな状態になっていた。

「僕は女なのさ。だけど、女に生まれたからといって男を愛すとは限らないように、僕は女を愛す。男の体を持ち、女の心を持ち、女を愛する。これ以上の幸せがあるだろうか」

そう言うと、「彼女」の陰茎がにょろにょろと動き、布を突き破った。

「弱き者よ、汝の名は女だ」

彼女は陰茎をナイフで切り取り、血しぶきをあげながら消えた。

カズタカは肩に重みを感じ、後ろを振り返った。

「な?」

扁平頭の男がそこにいて、笑みを浮かべ同意を求めていた。

なにが、な?、だ。

しかし、カズタカはわけがわからないながら、

「はあ」

と、応じた。曖昧に応じてしまった。

扁平男はにやりとほくそ笑むと、

「そうさ。お前は認めよ。抱かれよ。ただ愛のまにまに。これは盲亀の浮木と心得よ。事実を知らず、責任をとることなしに批判を言う者よ」

「たとえば」

そう付け加えることがカズタカの最後の抵抗であった。

「俺は何を認めるというんだ?」

「ああ、どこまでもどこまでもさまよえる傀儡よ」

どこまでも。その響きも今のカズタカにはむなしい。

「お前は認めよ。ただ認めよ。何を。心の底から生きていたいということを」

「そんなの」

「ありさ。卑怯だとでも言うのかい?生と死に取り憑かれたさまようお前が悪いのさ」

認めれば死、そして認めなくても、生きたい心を否定すれば待っているものは、死。

「認めよぉ。与えられる喜びを知れぇ」

武者カズタカは力無くこくんと頷いた。

「ほう、お前はそれを望むか。さもありなん。確かにそれは与えられることであろう。では安心しておやすみよ。忘れられることも喜びのうちさ。ふふふ」

武者カズタカの死後出版された日記は、その猟奇的な死に様と相まってサブカルと呼ばれる人々に愛され、細く長く売れ続けたのであった。



男と女の手荷物事情

いや、ブログネタに参加してねえけど。だって面倒くさいんだものあれ。おれ記事投稿する時ちょっとずつ書いてストックさせてっからさってどうでもいいか。その割に内容煮詰めてねえのなお前。あら?それ書いといてなんでこれ書かなかったの?ってのばっか。

ええ、では一句。頑なにバックパックを背負うどブス。うん。覚悟が違うよね。それともどこまでお前如きが気を遣ってんだって話か?ま、いずれにせよ彼女はこけても受け身とらないよね絶対。顔面からいくから。ごっつうんいくから。顔面ブロックで体力無駄に消耗させるゲームボーイ世代じゃない?おれって。あれ?このネタ、本当のボツネタの使い回しか?それとももう使われてたのをおれが無意識にチョイスしたか?まあいいや。使われてたら本当にごめんなさい。

持つべきだの持たざるべきだのベッキーだよだのの二元論二極論に興味はないがってあれ?おれの目がおかしいのかな?なんかノイズ入ってってはいはい、あとでお菓子買ってあげるから坊やは家で大人しくしていてね。わかったよママ、お菓子はタマゴポーロがいいなってうあああ!…おれは持つよ。だって彼女が手をぷらぷらさせてる姿見たいから。男だからなんやかやじゃなくてただそれだけの理由。何をちょっと素敵っぽさ出してんだよおれ!あれだからね。素敵じゃないから。視姦的思考から見て、だからね。視姦的思考ってなんだよ。ある意味でおれのエゴを押し付けてんだよね、手荷物は押し付けられてるんだけどみたいな(!)。最悪。うん。手持ち無沙汰な女性はいいよねぇ。ちょこまか動かしたり指組んだりしてさぁ。怒張もんだよねぇ。あとなんつっても手荷物はパタパタ小走りの大敵だからね。かかと擦る感じの小走りの大敵だから。満足にパタれないじゃん手荷物あると。お前、全女性がパタると思うなよ!つうかパタるってなんだよ!うん。さようなら。

アラクネ(28)

あのミキちゃんをレンタルさせれば、些かの儲けが、この前アシスタントに行ったあの人なら一万、いや、七千、いや一回四千円で、いける。

そう考えながら上を向いて歩くニコニコの男、たかられからの帰り道。

早速メールを打つ、「三ヶ月無使用ドール(殺菌済み)一回三千円でどうですか!?プラス五千円でオプション可」

俺は何をやってんだ。

微笑み交じりのむなしさが去来し、男は打ち立てのメールをすぐに消去した。

やることがある。明日にも、やることがある。明後日にもやることがある。何だ、俺は生きているじゃないか。死にたい死にたいと妖怪人間みたく叫んでばかりで、本当は心の底から生きていたいだけじゃないか。妖怪人間も本当は妖怪であることを誇りたいんだ。毎日楽しいじゃないか。日々はこんなに輝いているじゃないか。死が迫っている?何を馬鹿な。知るかそんなもん。あいつらにゃ悪いが魔が差しただけだろ。人間魔が差せば大抵のことはするからな。どこまでも俺は俺だ。どこまでもどこまでも俺は俺でいいんだ。宇宙へ出ると人間は骨密度が低くなると云う。それをどう受け止めるかの問題だ。体は怠けるように出来ていると受け止めるか、体は地球に生きているそれだけで頑張っているのだと受け止めるかの問題だ。それだけで奇跡。それだけでいいんだ。宇宙の誕生から百四十億年。積み上げられた奇跡。宇宙の歴史を遡ってもたった一人しかいない唯一の俺が今ここに生きている。現在進行形だぞこの野郎。現在進行形なんだぞばか野郎。止められるものか現在進行形なんだぞ。現在進行形なんだぞ。ingだぞばか野郎!あ、ingってin、gで重力の中にいるっ
てことじゃないか?じゃあ宇宙飛行士はどうなるんだ?って知るかばか野郎。生きてやるんだ俺は。生きているだけで幸せじゃないか。止められるものか。宇宙の歴史に、情報の積み重ねに、反逆なんて出来るものか。たとえ、この世界の創造主でも、神でも、知ってるか?困ったから強制リセットするなんてガキの所業だぜ。わはははは。

夕暮れ迫る街角、バスに揺られる人々。いつもは無機質に見えるその顔々が男にはどこを見るではないその表情に何か意味があるのではないかと思えた。

あの人達が死んだら、あの人達が生きていた情報はどこへ行くのだろう。クオークになって誰かに受け継がれるのかな?

カズタカは部屋の扉を開けた。部屋は真っ黄色だった。やけに黄色い夕陽が部屋を照らしていた。

カーテンは閉めていたはずなのに。

そうは思ったものの、残念金になるものはもう売ったよ、と、すぐに机に向かった。黄色く輝くミキちゃんがカズタカの後頭部を見つめている。

観音開きの作画の続きをしようとGペンを握る。

「うわ」

驚いたカズタカ。

M字のアップ。開かれた脚、真ん中にぐじゅぐじゅ。後ろにたわわな胸、原稿に映るその姿が牙を剥き出しにした大蜘蛛の姿に見えたのだ。

カズタカはふぅっと息を吐くと、描きかけの、普通の、原稿をぐしゃぐしゃに握りつぶし、後ろに放り投げた。原稿玉はミキちゃんの顔に当たり、ぽとりと床に落ちた。夕陽の日溜まりに捨てられた原稿からもやっと煙が上がり、ミキちゃんの股に吸い込まれて行ったことをカズタカは知らない。

「そういや寝てないからな」

呟いたカズタカの脳裏に、

「最近寂しいわ」

浮かび上がる言葉。

サッカーで裏をとられたディフェンダーのように後ろを振り返るカズタカ。ミキちゃんはいつも通りリアルな表情で佇んでいて、カズタカはいつも通りどきっとした。ベッドの下に誰かいるかもしれない、そうも思ったがベッドは部屋に無い。

「ま、疲れは別問題だ」

「憑かれているよの」

カズタカは脳みそを振り払うかのように頭を回し、「寝るか」と呟いた。

電気を点けっぱなしにして万年床に横たわる。徹夜明けの体は、普段ならなかなか寝付けないのだが、疲れた体にやる気をはらんだ時、意思と裏腹に眠気はやってくる。静かに。ミキちゃんのしばらく使われていない股に、ジグモの巣が張っていた。

「認めよ、さすれば与えん」

脳みそにストローをぶっさし、それを通して語りかけられたかのような声が聴こえ、かぷりと瞳を開けたカズタカ。華奢な四つ脚の椅子に座っていた。

「随分久しぶりね」

目の前に現れた女が言った。しかし、声はハゲタカを擬人化したようなえもいわれぬしわがれ声であった。

「あ、ミキちゃん」

女はミキちゃんだった。

「ご無沙汰じゃない?私のぬくもりに飽きたの?」

「ああ、いや、そういうわけではないのだが、その、なんて言うか」

人形相手でもしどろもどろに応じる男の悲しさ。

「あんなに愛してくれたじゃない」

「ああ、ま、なんつうか。ていうかミキちゃんそんな声なの?俺の中のイメージでは」

「赤ずきんに毛が生えた、だろう。ふふふ」

「さすが、長い間一緒に生活してると分かり合えるもんだねぇ」

「お前の中のイメージにあるその理想の声は母親が若き日の声だとしてもかい?」

「うわぁ、やめてくれ。君の口からそういうこと言わないでくれる?だけどそうなの?本当に?」

「感じるのよ。武者カズタカ君。帰るのよ。胎の中に。暗く寄せられた世界の中に」

「はぁ、ま、俺が君のレンタルを思いついてしまったことに怒っているなら、それで夢枕に立っているなら謝るしかないけど。ごめんなさい。あれ?夢枕ってこれ夢か?」

「夢の中ではいけない?してはいけない?あなたのお仕事じゃない」

「なるほど、夢魔、か。それだと俺、からっからになるまで精力吸いつくされて死んじゃうだろ。そのこと知らなかったからひとつ夢の中でしか出来ないようなこともしてるだろうけど、またそのからからになってもやめられない悦楽を味わってみたくもあるけども、人形が肉体を伴い主人に尽くすなんてまさしく俺の仕事だけれども、申し訳ない。却下で。君とはまた現実で逢おうぜ。それじゃ駄目かい?」

「どうせあなたはすぐに死ぬのだからいいじゃない。最後ぐらい」

そう言われ、ぞっとしたカズタカのすね毛が逆立つ。

「死ぬだと?俺が?」

「そうよ。すぐに死ぬわ。決まっているの。キャハハ。悲しい?」

「決まっている、だ?俺もあいつらみたく腹を裂いて死ぬっていうのか?」

「そう。アラクネ様のお墨付き」

「アラクネ様?」

「蜘蛛の女王アラクネ様お墨付き。お墨付き。お墨付き。お墨付きだぞこの野郎!キャハハ」

けたけたとから笑うミキちゃんにカズタカは初めて恐怖を抱いた。

「お墨付きだと?決まっているだと?そんなことお前だかお前らだかが決めるなよ!俺の問題だ!俺が決めんだよんなこたぁ!」

精一杯の強がりも、リアルな中にツクリモノの冷たい表情を浮かべ笑うミキちゃんの、どしゃぐしゃの声にかき消されていた。




何かを好きになる度に嫌いなものが生まれていやしませんか?

おれが敬愛してやまないよ○こさんのブログ。アメブロ小説カテゴリにそれはある。なんと御歳○○歳。敬愛しているといっても一方的であり一切の連絡を取っていないが。それにしても最近…ま、そこには触れないでおこう。
やはり凄まじい。覗く度におれはおれの薄っぺらい言葉を恥じる。あのお話がもしか完全フィクションだったら(プロフィール含め釣りだったら)…おれは嘘つきなのでそう考えてしまうのだが、もしかあれらが全て嘘だった時、おれ、このブログやめるだろうな。はじめの一歩で言うなら鷹村に出会っちゃった感じで。また、おれのつまらなさって小手先如何の問題じゃねえんだなって気付かせてくれる。大事よねこれ。ポジティブに考えてさ。自叙伝でもフィクションでも、もう彼女には直木賞を差し上げて然るべき。芥川賞もついでにあげるべき。
それにしてもおれの劣化は凄まじい。過去のおれおもしれえ。何考えてたんだろ。しかし何一つ身についちゃいねえな。恐ろしい。

ふと思ったこと

元マラソン選手の某谷口浩美さん。
あの顔の傾き。彼のちんちんがあの顔とは逆曲がりだったら…それは凄いファンタジーだと思うんだ。バランスとってる的な。みんなもそう思うでしょ?傾いてんの谷口氏でよかったっけ?
なぜこんなことをふと思ったかというと、曙が…何も言うまいよ。
さて、乱発もいい加減にしないと。あれがめんどくさいからついつい。