平渓線で「ボクの夏休み」を満喫して台北市街へ戻る。
最後に行っておきたい場所があった。

台北最大の夜市「士林夜市」。


夜市2

夜市1

人の多さは半端じゃない。
家族連れから若者の集団、デート中のカップル、
日本からの出張者と思しきサラリーマンまで、
老若男女、それぞれが「美味いメシ」を求めてこの「巨大屋台村」に集う。

辺り一面食い物の匂いが包む。
肉、魚、果物、麺、米、
煮込み、炒め物、揚げ物、
熱気と匂いが混じり合って、
強烈なエネルギーを感じる。

どんな屋台があるのか、一周回ってみる。
そのうち空腹に耐え切れなくなり、
「大腸小腸」という日本にいたら絶対に食欲が沸くはずもない名前のメシを選択。
ホットドッグのごとく、ソーセージをもち米ではさんだもの。
大腸がもち米で、小腸がソーセージなのだろうが、
ユーモアを通り越している気がする。

当然それだけでは腹を満たせず、
屋台を変え、鉄板焼の店へ。
牛肉の黒こしょう炒めと空芯菜の炒め物を注文。
ガツガツ、ひたすら食った。
当然、すべてが美味かった。

食後にパッションフルーツジュースを買った。
暑い場所で熱いものを汗流してひたすら食って、
果汁100%のキンキンに冷えたフレッシュジュースを流し込むこの快感。

国民性だろうか、あるいはこの熱気のせいだろうか、
台湾のカップルは本当にアツい。
街中、電車の中、どこでも腕や何やら色々なところを絡ませている。
密着感がすごい。
夜になるとその距離がさらに縮まる。
鼻と鼻がくっつくか、そんな距離で見詰め合っていたら、
目のやり場に困る。

やっぱりちょっと、動物的。すばらしいことだ。

士林夜市を後にして、いつものホテル近くの夜市へ行く。
そして、いつもの檸檬愛玉を売る屋台へ向かう。

連日、見るもの、嗅ぐもの、感じるもの、味わうものすべてに
できるだけ感覚を開放し切って精力的に散策したせいか、
はたまた熱射病にでもなりかけたのか、
さすがに疲れがどっと押し寄せてきたので、
テイクアウトして、風呂上りの楽しみとする。

初日に一緒に写真を撮った牛肉麺の屋台の親子は、
今日も変わらず、笑顔で客をさばいていた。

---
7月7日、七夕。

帰りは昼過ぎの便であったため、
ゆっくりと睡眠し、
9時過ぎにチェックアウトし、
バックパックを背負い、バスで空港へ向かう。

空港では通路側の席を確保するため早めにチェックインを済ませた。
空港内のレコード屋では椎名林檎の新譜が流れていた。
椎名林檎、かっこいいなあ、と素直に思う。

遅めの朝飯を食べる。
台湾風の朝ごはん。
デザートにはスタバでマンゴーパッションフルーツフラペチーノ。

最後まで、よく食った。

---
台湾を楽しむために必要なものは、
パスポートとちょっとのお金。
三つくらいの現地の言葉(あいさつ)と、
地元のものを地元流に味わうことだと感じました。

夜景

「いざ、ローカル列車の旅」
と勢いある掛け声で前回の記事を締めたけれど、
実は平渓線そのものにはあまり感激しなかったのだ。

たしかに景色は山あり川ありで自然の景観にあふれていたのだけれど、
なんというか、情緒、あまり感じなかったんだよね。
車内が混んでいたせいもあるのかな。

そんな感じでどこで降りるかも決めずに、
駅を一つ一つやり過ごしていたら、
結局終点にたどり着いてしまった。


駅2

駅1

今振り返ってみたら、
今回の台湾旅行のハイライトはこの景色。

川

森

空1

空が青くて、
森が緑で、
目に入るすべてが心にドスンと響く。

さえぎるものが何もない原風景は、とにかく暑い。
汗が滝のように流れる。
でも、すごく気持ちがいい。
アイスくわえて青空と緑に囲まれて、
亜熱帯を歩くのが本当に快感。

駅とつながった大衆食堂で昼飯を食べたとき、
英語がまったく通じなくて困っていたら、
日本語をしゃべれるおっさんが助けてくれた。

店

台湾の人は、本当にあたたかい。
南国のおおらかさがそこら中に漂っている。

あたたかさに心打たれて、
そしたら無性に歩きたくなって、
線路をさかのぼってずっと歩いてみた。

子供が水遊びをしていたり、
洗濯物がはためいたり、
俺は三重県で過ごした小学生のころを思い出した。

ヤシ

洗濯物

線路

三駅分歩いたら、
もう喉がからからで、
お気に入りの檸檬愛玉を飲んだ。
残念ながらいつもの屋台の味には勝てなかったけれど。


これだけ暑けりゃ、そりゃ犬もぐったりするよ。

犬

ハイビスカスなんて、夏っぽい。

ハイビスカス

台湾の醍醐味は、
美味いメシと、あたたかい人と、ボクの夏休みよろしくの原色の風景。
そこには、オトナがコドモに帰る瞬間があったのだ。


三十路

7時半起床、風呂に湯を張り湯船でさらに1時間寝る。
バスルームから飛び出てカーテンを空ける、快晴。
ガラス越しに、全裸で眼下の台北の街並みを望む。

というわけで、ますます動物的で感覚的になり行く毎日。
枕元の時計は9時を指す。
いい時間だ。リュックを背負って、さあ出発。

ドトールコーヒーでモーニング。
メニューにご飯物があるのにはびっくり。
コーヒーを飲んで目を覚まし、
台北駅へ向かう。

台北駅はとっても大きい駅だ。
窓口も多く、切符の買い方や行き先に迷う。

ぐるぐる歩いていたら、地下の乗り場に行き着いた。
券売機が目に入ったので、地元の人たちのやり方を見ながら、
切符を買ってみようとしたが、
そもそも乗るべき電車がよく分からない。

埒が明かないので、改札の駅員に英語で話しかける。
どうやら通じたようで、ていねいに教えてくれた。

台湾の券売機は、要領をつかんでしまえば簡単で、
日本のそれとよく似ている。
10時20分発の、準急列車が一番早いらしく、
指定席を求めようとしたがしかし満席だった。

休日の列車はたいへん混んでいるとガイドに書いてあったが、
たしかに周りはちょっと遠出をしようとする地元の人で一杯だった。

今日の目的は平渓線で小旅行。
平渓線は100年ほど前に炭鉱が栄えたときに整備された路線だ。
沿線には滝や古い街並みがいくつもあり、
古きよきいなかの風景が味わえるらしい。

平渓線の始発駅である瑞芳駅までは台北駅から1時間ほど。
ホームに降り、列車の到着を待つ。


駅

ホームは人であふれかえっている。

列車が到着。乗客は整列などせず、われ先にと乗車口に向かう。
車内は通路から連結部分まで満員だった。

動き出して数分後、車内販売が通路を通る。
車内販売といえども小さな台車に弁当を積んでいる程度だ。

俺は連結部分に近いところで立っていたので、
車窓の風景を見るには少し窮屈で、
時折身をよじり窓の外に目をやるが、
ところが期待したほどの景色ではない。

ならばと車内に目を転じ、
乗客観察に興じていた。

周りを見渡すと、地元の観光客のみならず、
さまざまな人種が乗り合っていた。

地べたに座る欧米人女性とアジア人のカップル、
若い黒人男性、中国本土からの観光客と見える家族連れと、
なかなか国際色豊かな車内だ。
日本人はほとんどいないように感じた。

なかでも、中国人観光客が多いように感じたのは、
俺が台北に到着した日、つまり7月4日に、
中国本土と台湾の直行便が就航したためだと思う。
図らずも歴史的な日に台湾訪問したのだった。

音楽を聴いたりしていたら、ほどなく列車は瑞芳駅に到着。
乗客のお目当ては皆同じ、平渓線への乗換えだ。
狭いホームの、狭い階段をぎゅうぎゅうになり移動する。

隣のホームに待っていたのは3両編成のカラフルな列車。
扉のそばに陣取り、数十分の、ローカル線旅行の始まりだ。

忠孝復興駅から忠孝敦化駅の間は台北一番の繁華街。
駅前ではそごうが存在感を放ち、
大通りにはGAP、リーバイス、アディダスなど
有名アパレルやコーヒーチェーンなどがひしめく。

裏通りには屋台からおしゃれなカフェまで、
あるいは裏原宿のようなファッションブランドが軒を連ねる。

街3

街2

街1

マクドナルド、モスバーガー、ミスタードーナツ・・・・・・
日本にあるファストフード店は、ここにはすべてある。
そういえば、俺が泊まっているホテルの地下は大戸屋だ。

台北中心部は、大都会だ。

そうそう、女子に耳寄り情報。
台湾の男子はオトコマエが多い。

主観で極論だが、
台湾の男子は三パターンに大分できる。
のび太、角田信朗、松山ケンイチだ。
のび太はおよそどこの国にでもいるであろういわゆるオタクタイプ。
格闘家の角田は、大陸系の血が濃い、昔ながらの台湾人だろうか。
そして、驚くなかれ、
なかでも存在比率の高いのが、なんと松山ケンイチなのだ。

台湾の松山ケンイチは、皆、同じ髪型をしている。
襟足、サイドを刈り上げ、前髪はやや長め。
いわば「ツーブロック」が大流行なのだ。

脱線。

で、この日は1日中歩き倒したので、
全身汗まみれで明らかに自分が臭いのが分かる。
レストランには入る気がせず、安定食屋へ。

肉そぼろご飯と空芯菜の炒め物、瓜と豚肉のスープを注文し、
腹を満たした。

飯

その後は昨日に続き、ホテル近くの夜市の屋台へ。
檸檬愛玉を頼み、そこら辺のイスに腰掛け流し込むように食う。
美味い、本当に美味い。愛玉中毒だ。

疲れで脱力しボーっと夜市の賑わいを眺めていたら、
ふっと一片の風が吹いた。

気持ちがいい。ここは落ち着く。心から。

しばらくゆっくりして、コンビニで台湾ビールとお菓子を買い、
ホテルに戻る。

ビール

ユニットバスに湯を張って、
湯船に浸かりながら眠ってしまう。

今日はよく歩いた、食べた、飲んだ。
そう、台湾では動物的な暮らし方が似合うと思う。

猫空と書いて「マオコン」と読む。
ネーミングに魅せられて、自然と足が向いた。

台北市の南の郊外の丘陵地帯。
台湾でも有名な鉄観音茶の栽培地。
90軒以上の茶農家が並び、山の上から望む茶畑は「のどか」そのものだ。

昼飯後、そんな景勝地に行ってきた。

猫空の見所の一つに、
そこへたどり着くまでの行程がある。
猫空ロープウエイだ。

MRTの終点「動物園駅」から数分歩くと、
同名のロープウエイ駅に着く。

休日ともあり、乗り場は長蛇の列。
列の最後尾に並び、少しずつ建物に吸い込まれる観光客に従い歩く。
1時間ほど並んだだろうか。ようやく乗り場までたどり着き、
8人乗りのゴンドラへ身を入れる。

2007年に開通、
約4キロを14分で結ぶ壮大なロープウエイ。
これが本当にすごいのだ。

ガタンとひと揺れし、
ロープに吊り下げられたゴンドラは山に向かって動き出す。
小高い山を一つ越えると、
そこには想像もしていなかった光景が広がっていた。

ゴンドラ

山沿いに斜面を引っ張られて登っていくのではなく、
山と山の間に張られたロープに吊るされ渡る感じ。
これにはびっくり。風が吹くと感じる恐怖。

4つ、5つの山を越えて、猫空に到着。
台湾の技術は結構すごいぞ、と感心した。

猫空は山の上にあり、空気がおいしい。
周りは緑一色で、心休まる。

お茶屋を目指し、しばし歩く。


茶店

いくつかの店を通り過ぎ、
数軒目の雰囲気のよいお茶屋を選び、
案内されるままに席に着く。
日本語を少しだけ話すお姉さんに説明を受け、
350元の地元栽培の茶葉と、やかんいっぱいの湯を注文し(100元)、
汗をぬぐいながらガスコンロで沸かされる湯を眺めていた。

茶

湯が沸騰すると、お姉さんが席に寄り、説明を始めた。

①湯を沸かす
②沸騰した湯を急須に入れる
③湯を、聞香杯と湯飲みに注ぎ、温める
④急須に茶葉、湯を入れる
⑤聞香杯に茶を注ぎ、香りを楽しむ
⑥湯飲みに注ぎ、茶を飲む

作法はだいたいこんな感じだった。
湯飲みを温めるところと、
まずは香りを楽しむことがポイントのようだ。

「7回急須に湯を注いでください」
お姉さんは最後にこう言った。

どうやら、それくらい茶を出すと、
茶葉から適度に渋みが抜け、
料理に使えるようになるという。
この時期の茶葉は食用に適し、
茶葉料理に舌鼓を打つことができるそうだ。

結局急須3杯でギブアップしたのだが、
お茶の里猫空では、
カタカタ回る扇風機の羽音を聞きながら、
遠くまで延々と広がる茶畑を眺め、
ゆっくり、のんびりと穏やかな時間を過ごしたのだった。

茶畑

陽が落ちる前に、
駅前に構える屋台で焼きそばと黒蜜入りの愛玉を食べ、
猫空を後にした。

二度目の乗車でも、
やっぱり空中ゴンドラは怖かった。

台湾を楽しむには、
三つの中国語が話せればきっと充分だ。

ニーハオ、シェイシェイ、
そして、ハウチー(美味い)だ。

そんなことが頭をよぎったのは、
永康街という台湾の美味いものが集まる地区で、
昼飯を食べたときのこと。

台北牛乳大王でマンゴースムージーを飲み涼をとり、
台北駅まで歩き、そこからMRTで二駅南へ行く。
中正紀念堂駅で降り、炎天下の中20分ほど東へ歩くとそこが永康街だ。

まだ昼前だったということもあり、
そして暑さで喉がからからだったこともあり、
日本人観光客のみならず、地元でも超人気店らしい「アイスモンスター」へ。
カキ氷の上に山盛りのマンゴーのトッピングで有名な店。


アイスモンスター1


アイスモンスター2

マンゴーのみならず、さまざまなフルーツをふんだんに使い、
冬でも行列が絶えないそうだ。


列の前にいた日本人の団体は、ほとんどがマンゴーカキ氷を頼んでいたが、
俺はどうしてもパッションフルーツが食べたくて、そちらを選んだ。

アイスモンスター3

出てきたカキ氷は、まさに「アイスモンスター」だった。
スケールがでかい。写真のパッションフルーツはそうでもないが、
隣の席の人が頼んだマンゴーカキ氷はすごい。
マンゴー三つ分は使っているのではないかという迫力。
とはいえ、パッションフルーツだって、カキ氷の上にアイスが三つ乗っかっている。
完食は厳しいかと思ったが、意外といけた。
なぜなら、美味いから、の一言に尽きる。


少し公園のベンチで休み、
地図を片手に、いざ、お目当ての「老張牛肉麺」へ向かう。
40年以上の歴史を持つここの名物は、トマト味の牛肉麺だ。

トマト牛肉麺1

休日の昼時とあって、店の前には長蛇の列ができていた。
ふだんは行列が大嫌いなのだが、
「庶民の美味いものは並んでも食う」と覚悟を決め、
とりあえず入り口で受付を済ませようとしていたら、
なぜだか「そこで待ってろ」と促され、
数分後、列を尻目に座席へ案内してくれた。

日本人だからか、一人だからか、
よく分からないが、すぐに食事にありつけた。

トマト牛肉麺2

さてさて、注文したのはもちろんトマト牛肉麺。
好物の二品がミックスされているのだから期待しないわけにはいかない。
さっそく一口。
スープもズズズ。
「美味い!」
思わず隣の台湾人に、
「ハウチー!」と声をかけてしまったほど、美味かった。
サッパリとしているのだけれど、コクもある。
月並みな表現で申し訳ないのだが、とにかく、美味いのだ。

一気に胃袋に流し込み、
「もう一杯!」といきたかったが、
振り返ると列がさらに伸びていたので、
会計を済ませ、外に出た。
しかし、本当に「ハウチー」な国だ、台湾は。

牛肉麺を食べたらまた汗が吹き出てきたので、
道すがら気になっていた露店のキウイジュースを買って飲む。
俺の好物、フレッシュネスバーガーの「キウイプロテクター」を、
さらに倍濃くした果肉のかたまりのような飲料で、これも大ヒット。
あっという間にぐびぐび飲み干してしまった。


キウイ

「ハウチー」で腹も心も満たされた俺は、
永康街を後にし、
次なる目的地、「猫空(マオコン)」へ向かった。


スリープタイマーをセットしておいたエアコンが止まり、
蒸し暑さに夜中に目が覚める。

そう、ここは亜熱帯の地、台湾。

次に目が覚めたのは朝。カーテンを開けると陽が差していた。
天気予報よ、外してくれて、ありがとう。

今日は台北の街を歩き回る日。そう決めていた。
朝から台湾料理、とも思ったが、
世界のマクドナルドにお世話になる。
ホットケーキセットはどこで食べてもホットケーキセットだった。

台北市民の足に欠かせないのは原付だ。
信号が赤になると、交差点には何十台もの原付の集団ができる。
週末だったこともあってか、カップルの二人乗りが多い。
お母さんと二人の子供の合計三人でまたがる光景もめずらしくはないし、
街から少し外れた田舎道では、
さらにそこに犬が乗るという曲乗りにも遭遇した。

信号もユニークだ。
青信号では人が歩行し、赤信号までの残り時間がカウントされる。


信号

ホテルは台北駅から近郊列車(MRT)で北に数駅のところに位置する。
朝食を済ませ、最寄り駅から台北駅まで歩いて向かうことにした。

最初の感動はセミの大合唱。
日本でいうクマゼミだろうか、
そこら中の木々から「シーシーシーシー」ものすごい鳴き声である。
ここでも「南」を実感する。

次の感動は市場の熱気。
雰囲気のよい通りを抜けると、公園の脇の細道に市場が伸びていた。


屋台

夜市とはまた趣が異なり、地面や屋台に広げられいるのは
野菜や鮮魚、肉といった食材の数々だ。


スイカ


屋台2

でかいスイカは壮観だったが、
毛をむしられた鳥が数羽丸ごと陳列されていたのには思わず目を背けた。
写真を載せるのも控えておく。

中山駅という少しひらけた地域に出た。デパートも見える。
朝から暑く、喉が渇く。
駅前の「台北牛乳大王」に入ってみることにした。
大王だなんて、店のネーミングが素晴らしい。

店に入ると、店員が笑顔で「ニーハオ」と声をかけてきた。
メニューをじっくり吟味。漢字なので、何となくは分かるのだが、
何となくだから悩む。
おそらくマンゴースムージーと思われるものを指差してみたら、
出てきたものはおそらくマンゴースムージーだった。
ただ、「牛乳大王」だけに、牛乳がたくさん入っていて、
期待したようなフルーツの味はあまりしなかった。
でも、暑いから何でも美味いのだ。


マンゴースムージー

台北市街までは空港からバスで1時間ほど。

バスターミナルへ向かい空港を一歩外に出ると体にまとわりつくすごい湿気と熱気。
これが亜熱帯か、と肌で感じる。
沖縄よりもずっと南だもんな、台湾。

市街地までの運賃は140元。
1元が4円程度だからおよそ560円。
バスや鉄道、おまけにタクシーも、交通機関は日本よりずっと安価で、
観光客向けの高級料理店を除けは、
食べ物も屋台を筆頭に庶民の味はとってもリーズナブルだ。

一方で、生活必需品以外、嗜好品の類は意外と高い。
価格競争し烈な日本の方が、例えばホテルや衣料品などはよっぽど安く、
総じて物価は日本と同等、物によってはそれ以上だと感じた。

バスを降り、すぐに道に迷う。
台湾の道は小路に入らない限りはかなり分かりやすい。
京都ではないが、「何条通り」のように区画整備されている。
なのに、迷う。

そして道を聞く。いつものパターンだ。俺は甘えている。
まあ、現地でのコミュニケーションのきっかけの一つではあるが。

台湾は中国語が公用語で、英語はほとんど通じないと聞いていたが、
こと台北に関しては、そうでもない。
ホテルはもちろんのこと、道行く比較的若い人には、充分通じた。

ホテルまでの道を聞いたのは、若いお父さん。
横には子供がしがみつき、雰囲気が良かったから話しかけた。

俺はまったく中国語が話せないので、
最初から英語で話しかけたのだが、断然向こうの返しの方がうまくて、
少し面食らった。日本の英語教育は完敗だ。

無事、チェックインを済ませると、空腹に耐えかねて、
ホテル近くの夜市へ向かった。

台湾は屋台が充実している。特に夜。
街中の至るところで屋台が密集して営まれており、
夜市と呼ばれる屋台市場では、深夜過ぎまで賑わいを見せる。


夜市

ホテル近くの夜市は小規模だが、お気に入りの屋台ができた。
滞在中、結局毎晩通うことになった屋台なのだが、
そこの檸檬愛玉(レモンアイユイ)が抜群に美味いのだ。


愛玉

愛玉の種から作るちょっと固めのゼリーで、レモンシロップをかけて食べる。
ここのお店はその上に砕いた氷をかけ、それが蒸し暑い気候にマッチする。

この日は台湾名物の牛肉麺と水餃子、それに檸檬愛玉でおなかを満たす。
しめて155元。満足だった。

そうそう、この旅でことあるごとに感激するのは台湾人のさりげないやさしさ。
檸檬愛玉があまりに美味くてがっついていたらよだれをたらしてしまい、
それを見ていた若いお兄ちゃんがティッシュをくれた。
ありがたや、ありがたや。旅していると、そういうのにいちいち感動してしまう。

屋台は衛生面であまりよくないと聞いていたが、
ふだんから駄菓子やジャンクフードで鍛えた俺の胃袋、

旅を通して一度も腹に異常を来たさなかった。

夜市を離れる前に、牛肉麺の屋台の家族と思い出の1枚。
みんな、本当に、いい顔してる。


家族

週末を利用して充分楽しめる、
ということで、会社を二日休んで台湾へ。

7月4日、日本は晴天。
一方、現地の天気予報を確認すると、
旅行期間中は終始曇りか雨とのこと。不安が募る。

路線検索すると、新宿から成田エクスプレスが走っている。
これにはびっくり。知らなかった。
新宿から空港まで1本だ。
「えきねっと」という現代的なツールを使い、
自宅で予約、最寄駅で切符を受け取る。
加えて台北の宿もインターネットで事前予約。
バックパックの旅が、いつも間にやら殿様旅行。
便利な世の中だ。

新宿に少し早めに着いたので、
旅行中の文庫本を物色。
今回の旅のお供は「オシムの言葉」に決定。
前から読んでみたかったのだよね。

成田空港ではカレーを食べただけなので割愛。
飛行機も偶然横一列が空いていたので広々使えた程度なので割愛。

台北の桃園国際空港に着いたのは19時過ぎ。
現地で両替した方がたいてい得だとは数度の海外旅行で得た知識。
入国手続きを済ませ、5万円を現地通貨に換え、
いよいよ旅の気分が高まってきた。

旅の最後の朝も、やっぱり6時過ぎに目が覚めた。窓の外は雨。プラハでは、降ったり止んだりだったけれど、結局いつも雨が降っていた。



アパートメントタイプの部屋。散らかし放題



窓の外は雨


飛行機のフライトは12時45分。時間もあったのでゆっくり荷物をまとめ、準備した。もうここまでくると、12時間のフライトへの気の重さもあり、「帰りたくない」という気持ちはだいぶ薄れてくる。帰ったらクリーニングに行って、一週間分の出来事をチェックして、などと翌日から始まる会社生活のことも頭をよぎり始める。


時間に余裕はあったが、早めにチェックアウトをし、地下鉄を乗り継ぎ、空港行きのミニバス乗り場へ向かった。プラハのルズィニェ空港は想像以上にきれいで、夜に到着したベルリンの空港より明らかに開放的に思えた。空港内で朝食を取り、木島はポストカードを送ったり、私はお土産を物色したりと時間をつぶした。


帰りの飛行機もアムステルダムを経由し、長いフライトを終え、帰宅の途に着いた。方向は違えども、二人とも成田空港からはシャトルバスを利用した。シャトルバスのチケットを買い、そこで、木島と別れた。


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一週間の夏休み、とても楽しかったです。木島と旅ができて、本当によかったです。どうもありがとう。またいつか、一緒に旅しましょうね。



プラハの最後の宿の前で


【完】