これまで数多くの漁港や市場を回ってきて、「一番お薦めの漁港食堂は?」と聞かれたら、神奈川県の「平塚漁港の食堂」と即答し、「一番楽しい漁港は?」と聞かれたら、宮城県の「閖上漁港(朝市)」を挙げるでしょう。そして「一番気に入ってる漁港は?」と聞かれたら、間違いなくここを選びます。
遡ること12時間ほど前、福島県のある居酒屋で店主と地元の漁業について話をしていました。震災以降、福島の漁業はあまりにも衰退したこと。漁港街のお店でありながら、地元で獲れた魚を出すことはほとんどできないんだと、そんな嘆きを聞きました。
ただそれでもまだ福島にも元気な漁港があると。その代表的な一つとして教えてもらったのが、今回紹介する相馬市の松川浦です。
何が他と違うのか?この時に聞いたのは「一つひとつの漁師の経営規模は小さいけれど、家業として受け継ごうという強い意欲がある」「未来を真剣に考えた漁業をしている」と、そんな話でした。
過去に相馬(松川浦港)は2度ほど行ったことがあるのですが、そんな話を聞いた以上、もう一度ちゃんとその空気感を感じるべきだ!と即座に予定を変更して、翌日は朝イチから相馬に向けてレンタカーを走らせました。
初めて(2020年12月)ここへ来たときに驚いたのが、「なまこ壁」のデザインで統一された市場(相馬原釜地方卸売市場)や漁協の建物の数々。メイン棟だけでなく、超広大な敷地のほぼすべてがこの外観。その美しさは見事でした(上下2枚は2022/12/25訪問時のもの)
2020年の訪問時はちょうど水揚げ漁船が次々に着港していて、かなり活気があった時間(当時はまだ"試験操業"の時期でしたが)。
市場の外では水揚げされたばかりのシラウオを、漁師の家族の方々が選別している様子も間近で見れました。(味見したくてたまらなくて、話をしながらじ~と見ていたけど、とても「ください」とは言えず。「食べてみて」とも言われませんでした笑)
そのすぐ近くにある「浜の駅 松川浦」は、「浜の駅」と銘打つだけあって水産物の品ぞろえがとても充実していて、店内もとてもきれいで賑わいがあったこと。相馬の四季の魚について詳しく解説した、とても丁寧で分かりやすい冊子を置いていたこと。
こんなでっかい「たらこ」が、こんなに安い値段で売られていて、その迫力にびっくりしたりと。良い施設だなあと繰り返し感じていました。
それなのにこの時は、「浜の駅」内の飲食店には目もくれず。。。道の駅にありがちな、付け焼刃的な飲食店なんじゃないかと勝手に決めつけ(ごめんなさい)、近くの人気店「たこ八」さんでお昼を取りました。
▲この時に食べた「ホッキ三昧」2,090円
しかし相馬の漁師さんの本気度を聞いた以上、そして「相馬復興市民市場」と名付け、"相馬市、相馬商工会議所、地元水産加工業者など8団体による官民合同会社"で運営している以上、そんな中途半端なもの出すわけがないと、今回は店内の「浜の台所くぁせっと」を迷うことなく目指します。
万全を期して開店時間の30分前に着くも(土日祝は10:30オープン。施設自体は9時から)、行列の心配は杞憂に終わり、店内をぶらぶら
水産商品の充実ぶりは変わらずで、目の前の港(原釜港)で水揚げされたことを示す"金ラベル"が貼られた魚が、多種多様に並び
地域商品コーナーにも力を入れ、相馬ブランドをしっかりアピール
松川浦の"あおさ"を使った商品もたくさんありました(「かける あおさ」を一つ購入してきました)
弁当類の充実ぶりも特筆もの。いずれもめっちゃ豪華で、容器の中ぱんぱんに魚介ネタが入ってる。近所に住んでたら、毎日のように買いにきそう!!
今回あらためて「街の魅力をしっかり生かしているいい施設だなあ」と再確認したところで、開店10分ほど前に再び「浜の台所くぁせっと」の店頭へ向かいます。この時点の先客は12名。
レギュラーメニューはこの通り。看板メニューは「そうま海鮮九曜丼」と、「漁師のまかない丼」っぽい。
使っているおさかな類の詳細もしっかり掲示。
氷見、福浦、平塚、保田、塩釜なども同様ですが、どんな魚種を出しているのかをしっかり表に出してくれると、漁港の食堂に来たって実感がわいて、好感度も上がります。
こちらは「本日の一品」紹介コーナー。ここでも"相馬産"の表示が並ぶのが嬉しい。実は「タラの白子ポン酢」にも相馬産と書かれていたのですが、お店の人と話をしていた時に「あ!今日は相馬産の入荷が無くて、北海道産だった」と、こんな修正が入りました笑。このあたりの正直さや迅速な対応は、逆にイメージがあがります。
この日一番目を引いたのはこちら「ホッキ三色丼」。地元産だし旬だし、見ためからして楽しそうだし「これ一択だな」と。
ちなみに店内でも、活きのホッキガイを販売中です。
そして、出てきたのがこちら!!どどーんと、ホッキ盛りだくさんの大迫力。これで幾つのホッキガイを使っているんだろう?とお店の人に聞くと、5つとのこと(もっと多いかと思った)。
お店の前線の人が、即座に「5個」と回答するのは凄いなと感心していたら、さっきのメニューにも書いてありました笑。それでもちゃんと現場一人ひとりに共有されているのはさすが。あら汁を単品で頼んだら、「(追加ではなく、セットの味噌汁からの)変更にしたらもっと安くなりますよ」とすぐに変えてくれたり。当たり前のことではあっても、それが瞬時にできる対応力は嬉しくなります。
3種類のホッキを味わいながら「何が一番好みかなあ」と自問自答していたけど、それぞれに味わいが違って魅力がある。模範的な回答だけど、どれも同じように好きということで笑。でも東京だと、煮ホッキはあまり出てこなくて珍しいかな?
そしてあら汁。貼り紙に書いてあるように、中身が超盛りだくさん。魚種もかなりあると聞きましたが、メモするのを忘れました。。。
そして本日のメニューからもう一品。水ガレイの唐揚げ400円。もともと高くはない魚とはいえ、二匹で400円は安いなあ。まさに漁港隣接の食堂だからこそ味わえる一品。
さらに「おびすやの海苔の佃煮」を追加で(小鉢で100円)。車じゃなかったら、お酒を飲みたいところ。。。
と、満腹になったところで「浜の駅 松川浦」を退出します。そして向かったのがこちら、旧松川浦漁港。
フォルムを同じくする白い漁船が、整然と並ぶさまはハッとするほど美しく
一方で、大阪御堂筋のタクシーも真っ青な「4列駐船」。見てるだけでも楽しくなる風景です。
そしてもう一つ。松川浦で好きな風景がこちら。松川浦大橋を渡って小さなトンネルを抜けた先
鵜ノ尾埼灯台の方へ坂を上がっていくと、見えるこの風景。"海の中道"ともいえる展望が広がります。(相馬に来るたびに、毎回同じところを登ってる笑)
そして"中道"が終わった後に現れる、相馬双葉漁協の直売所を訪れ、いろいろと物色したあと
「相馬双葉漁協で水揚げナンバーワン」という貼り紙に惹かれて、ヤナギダコを買って帰ります。
この後は、請戸漁港から浪江、双葉の町へ。震災復興関連施設を目指します。