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COPE (KU Plankton Lab)

絶滅危惧研究室の営みをつづるブログです

こんばんは。主宰です。

 

外洋域乗船実習の報告第4弾となりましたが、天候・海況が非常によろしく、首席教員としては予定通りに進みますのでたいへんありがたい次第です。

本日も、美しい日の出を見ることができ、順調に海洋観測が進みそうです。

この実習において、優先順位は低いものの重要な任務が1つあります。それは、以前に同じ海域で実施した海洋観測で回収できなかった観測機器を回収するというものです。長崎大学水産学部の長崎丸を使って同様な海洋観測を実施しましたが、乱流強度を測定する観測機器が海中で何かにスタッグしてしまい、どうやっても取れないので浮体を目印にして置いたままになっていました。この実習では、それを回収するという任務があります。この任務はなかなかたいへんで、①広い海で目印となる浮体を探索すること自体困難、②台風・時化などで浮体自体が残っているかどうか不明、③浮体が見つかったとしても観測機器がどのようなものにスタッグしているかわからないので単純に牽引できない、などなど様々な問題があります。このため、実習前に何回も協議を重ね、関係者に様々な機材を借用・準備を依頼しています。

まず、浮体を残した観測点付近に到着したので、乗船者全員で船の一番高いところに登って監視します。オレンジ色の浮体なので目立つはずですが、残念ながら発見できませんでした。

しかし、音響装置を使って海面下の様子を探ってみると、海底付近に高さ数十メートルにも達する怪しげな影がいくつも発見されました。探している観測機器よりもはるかに大きな物体なので、トロール網のような漁網がこの海域にたくさん投棄されているのではないかと考えられました。水中ドローンを借りてきたので、投入してどのような様子か観察したいものですが、こんな巨大な物体にスタッグしたらこいつもとれなくなるので投入を断念しました。スタッグしたままになっている観測機器は非常に高額なので回収したかったのですが、さらなる損失と事故を避けようという決断となり、回収はしないことになりました。

次の観測地点に向かおうとしたところ、巡視船・艦船・戦闘機のようなものが見えました。この観測地点で、不審にウロウロしていたせいですかね。日本は島嶼国なので、陸地にいると領土問題などに疎くなりがちですが、こういった国境付近ではそういう問題を間近で感じます。

 

ネットニュースより

共同訓練「フリーダム・エッジ」
アメリカ軍の原子力空母「ジョージ・ワシントン」など3か国の艦艇7隻のほか、ステルス戦闘機や哨戒機などが参加し、弾道ミサイルや潜水艦、戦闘機などに対処する訓練を東シナ海で行う。

おはようございます。主宰です。

 

沿岸域にもどってきたので、インターネットが繋がるようになりました。

 

実習が始まってから風が急速に強くなって時化回避しましたが、天候・海況が回復して海洋観測ができるようになりました。時化を予想するのが難しいので、今のよい状況でなるべく海洋観測・係留系設置回収を済ませる予定です。

この実習において、最も優先順位が高く、危険を伴う業務は係留系設置・回収です。非常に重たい機材を取扱うので、危険が伴います。船橋と甲板で連絡を密にして協力しないと、予想しない事故が発生したりします。このため、首席教員は実習生たちの安全確保、首席航海士は甲板作業の安全確保に細心の注意を払います。

現在、実施している大型研究プロジェクトでは、沿岸水と黒潮水の混合による生態系の応答を解析しています。このため、沿岸水と黒潮水が混合する海域に海洋環境を長期間にわたって監視・測定する機器を設置しています。これらを係留系と呼びます。日本だけでなく中国・韓国の漁船が頻繁にトロール操業を行う海域なので、着底するトロール網にかからないように設計された装置を設置しています。

甑島周辺に入れた係留系と同様に、回収時に浮上する浮体が一番上についていますが、浮体の中に流れを測定するための音響装置が入っています。ちょっと異なるのは、信号を送ると浮体が切り離されるのですが、錘となる部分にロープが繋がった状態になっているので錘も回収する係留系となっています。

回収するには、①浮体切離、②浮体回収、③錘回収、の順に行います。浮体回収においては、海表面でゆらゆらと揺れている浮体に近接して鉤を浮体にかけることに熟練の技と経験が必要ですが、かごしま丸の甲板員はこれを易々とやってくれるのでとても助かっています。次に浮体を吊り上げて前部甲板に回収しますが、100キロの浮体が錘と繋がっているので、筋力のある作業者が何人もつかんでいないと海にもっていかれそうになります。つかんでもらっている間に浮体と錘を繋ぐロープを素早く切り離し、ウィンチロープに繋ぎなおします。

あとは、このロープをウィンチで錘までまきとるのですが、200キロの錘と練習船の揺動によってロープにかなりの負荷がかかります。昨年、この負荷によってロープが切れてしまい非常に危険でした。事故に至らなかったでよかったですが、負荷のかかっているロープ・重機設備には近づくなという首席航海士・教員からの説明は守ってほしいものです。ようやく、おもたい錘を回収して作業終了。何事もなく終了することが一番大切です。

本日は、緊張感がありかつ体を使う業務だったので、とても疲れました。早めに就寝して、明日からの海洋観測に備えたいとおもいます。

こんばんは。主宰です。

 

いよいよ、外洋域乗船実習(洋上セミナー)が開始して2日目となりました。出港時よりも天候・海況がやや悪く、風・雨が強くなってきました。陸近くに逃げているので、ささっと報告します。

今日の仕事は、甑島周辺に係留機器を設置するほか、設定された複数の観測点において海洋観測を行うことです。設置する係留系は、甑島の西方海域を南下する海流を測定するためのもので、数か月もの間測定後に来年回収する予定となっています。係留系を設置する地点は甑島の北西部にあたりますが、甑島をまわると有名なナポレオン岩が見えました。

切り立った岩を側面からみると、帽子をかぶったナポレオンに似ていることから名づけられたようで、甑島の観光名所のひとつです。

回収時に浮上するように浮体が一番上についていますが、その中に流れを測定するための音響装置が入っています。海底から海面に向かって超音波を発信し、海中の粒子に反射して戻ってきた超音波を感知することで、海中の流れを測定します。また、その音響装置の下には切離装置がついており、回収時に確実に錘と音響装置との間が切れるような装置を取り付けます。

こういった係留機器は長期間設置するため、確実なセッティングが必要です。動作確認・シャックルの締め具合など、細部にわたって入念に確認します。もし、何かが間違っていると回収することができず、多額の機器購入費用、多大な労力と時間、そして貴重なデータを失うからです。

本日は早めに作業が終了したので、船内でいくつかのセミナーを実施しました。まずは、乗船者の自己紹介するアイスブレーキングのためのセミナー1。単位を取得するための大学院生たちが、学歴・職歴・研究テーマなどを自己紹介します。

なおちゃんも単位取得のための乗船実習生として参加しているので、自己紹介をしてもらいました。

この乗船実習では、他の研究機関から多くの研究者が乗船します。この機会を利用して、乗船してきた若手研究者に、学歴・職歴・研究内容などのご紹介をしてもらうことにしています。研究者・技術者を目指す大学院生たちのキャリア形成を考えてもらうため、セミナー2という位置づけでお願いしています。今回は、沖縄技術大学院大学から参加されたオムさんに、ご講演を依頼しました。

セミナーをやっているうちに、どんどん時化てきました。若干船酔い気味です。酔い止めを流し込んで、船酔いを止めました。そんな中でも、つむちゃんは船酔いもせずにパソコン仕事をしているので、びっくりしました。来年の流れ藻観測に乗船してもらう予定ですが、たいへん頼もしくなりました。

最後に、昼飯の紹介。かごしま丸のごはんはとても美味しいと学生から高評価ですが、本日の昼飯はハヤシライス+サラダ+フルーツヨーグルトでした。雨・風が強くなってきたので、暖かいハヤシはいつもよりも美味しく感じました。時化てきたので控えめにしたのですが、夜食にするために少し取り置きしておけばよかったとおもいました

こんばんは。主宰です。

 

いよいよ、外洋域乗船実習(洋上セミナー)が開始となりました。比較的、暖かく穏やかな海況で出発することができました。乗船者は、鹿児島大学10名、愛媛大学4名、東京大学2名、沖縄技術大学院大学1名、九州大学1名の混成チームです。同時に、船舶免許取得を目指す実習生も乗船しています。

今回の乗船実習では、沿岸域から沖合域を横断する観測線を設定し、沿岸水と黒潮水の混合メカニズムやそれに伴う海洋生態系の応答を調べることを目的としています。かなり様々な海洋観測・標本採取があるのですが、概略的に説明すると以下のようになります。

観測点に到着すると、まずTurboMapという研究機器を使って乱流強度を測定する観測を行います。乱流強度は栄養塩供給と深い関係があるのですrが、どのような海域・観測点で乱流が強いのかを調べます。

次に、CTD-CMSという研究機器を使って、海洋環境の鉛直分布を測定する観測を行うとともに、様々な深さの海水標本を採取します。どのような海洋構造があるところに栄養塩や植物プランクトンが多いのかを調べます。

次は、Twin-NORPACネットという研究機器を使って、動物プランクトン標本を採取します。先述した海洋環境において動物プランクトン量がどれくらいあるのかを調べます。

最後に、Smith-McIntyre採泥器という研究機器を使って、海底の泥を採取します。海中で生産された物質がどれくらい海底に沈降しているかを調べます。

うちの研究室のミッションとしては、卒論生の海洋観測・標本採取の習熟も兼ねています。つむちゃんは、来年の2月に私と一緒にかごしま丸に乗船し、流れ藻観測をしなければなりません。このため、独りでも業務や船内生活が円滑にできるように乗船してもらいました。乗船経験豊富な学生に教えてもらいながら慣れていきますが、1日ですっかり習熟することができました。教えるほうも親切で丁寧にやってくれるし、教えられるほうも真摯で賢いので、研究室主宰としては非常に助かります。

 

まだ乗船実習は始まったばかりですが、海洋観測・標本採取・標本処理は学生たちにまかせておけそうです。私は首席教員という役目があるので、今後の天候・海況に応じたスケジュールを船長と調整したり、甲板作業の進め方を首席航海士と相談する必要が頻繁にあります。学生たちが自立してくれるので、こちらの業務に専念できそうです。いつもありがとうございます。

こんばんは。主宰です。

 

海洋観測乗船実習2・国際学会・新卒論生配属などのイベントが次々と過ぎ行く中、修論生・博論生向けの外洋域乗船実習(洋上セミナー)を実施することになりました。円滑な実習運営と研究標本採取のため、研究室メンバーでかごしま丸に機材運搬・艤装を行いました。

今回の乗船実習では、沿岸域から沖合域を横断する観測線を設定し、沿岸水と黒潮水の混合メカニズムやそれに伴う海洋生態系の応答を調べることを目的としています。海洋観測乗船実習2と同様に、単なる教育目的の実習ではもったいないので、研究室で必要な遺伝子解析・生化学分析のための標本を採取するほか、共同研究を行っている愛媛大学・九州大学・東京大学・沖縄科学技術大学院大学の研究者・学生と共に、海洋観測・標本採取を実施します。

日本は世界屈指の研究船・練習船数を有する国で、この利点を活かした海洋科学研究が実施されています。しかし、前回も説明したように海洋観測や標本採取する機会は非常に限られていますので、長い時間をかけて用意周到に準備を行います。洋上では調達できないので、研究目的に合わせて様々な機材・消耗品を必要十分に、そしてあらゆる状況に対応させて準備しなければなりません。このため、艤装を経験した卒論生・修論生はこういった計画力・思考力などが醸成され、社会人として必要な素養が磨かれます。実際、私はこの能力のおかげで円滑に業務できていると感じることが多々あります。

みなさんが艤装を円滑に進めてくれたので午前中に終了となったのですが、午後に水中ドローンの操作試験をすることになり、昼飯をはさむことになりました。今回も、定番となっているターミナル食堂でいただくことにしました。

やっぱりたくさんのメニューで迷うので、選択に困らないわがままが具現化された日替わり定食をいただくことにしました。

前から調査済みの卒論生は、今回桜島シリーズ(ちゃんぽん・うどんそば・カレー)に挑戦。顔よりも大きな器に入った特大メニューでした。

毎日来てるの?っていうくらい選択がおしゃれなやつもありました。

この乗船実習には「時化娘」が参加していないので、天気・海況もよさそう。季節外れに暖かい海を楽しんできます。