全国を旅して回る昆虫好きな心優しい青年、えり沢泉。彼が出くわした事件の真相を鮮やかに解き明かす様を描いた「セミかえる」「サーチライトと誘賀灯」に続く第三作。

信州ではへぼと呼ばれるクロスズメバチを捕獲する名人に弟子入りした泉は、ハンターが狩りをする山で起きた不幸な銃撃事件の真相を見抜く。

知り合いの墓参りに出掛け、雨宿りにはいった花屋でもてなされた泉は、一年前に訪れた少女が欲しがった季節外れの花の意味を解き明かす。

海外でピアニストをしてなくなった。実の父親の遺品から一枚だけ紛失した楽譜の謎を解き明かし、ピアニストになった遺児に父の曲を教えてやる。

北海道で埋蔵文化財の整理の手伝いをしていた泉は、発見された白骨の謎を解き明かす。

不幸な猟銃発砲事件のその後。名人の葬儀に出掛けた泉は、棺桶に入れられた木彫りの仏像の謎を解き明かす。

花屋での出会いから一年後再び訪れた泉は店主が娘に変わっていたため、前の店主はなくなったかと勘違いしたが、実は。


交渉人とは特殊な警察官で、立て籠り犯や誘拐犯と、電話で話をして、互いを理解し、自首させるために働く警察官。五十嵐さんには交渉人遠野麻衣子シリーズが三作あるそうだが、いまだに未読。その主人公がどうして生まれたのかを描いた前日譚といえるのが本作。

私大を首席で卒業し、国家公務員試験に合格した遠野が選んだ警察庁。

幼い頃に強盗に目の前で祖母を殺されトラウマになっていた彼女は、それを克服すべく警察にはいった。

しかし、いまだに男女格差が厳しい警察界、出世飲み込みもなく悩んでいたときに声をかけられた。警察庁から希望して警視庁の特殊捜査係りに移動した先輩キャリアの石田警視。アメリカで交渉人制度を学び、交渉人育成をすることに。警視庁、所轄を問わず人材を選び、研修を行うことになり、警察庁からは遠野が選ばれたと、上司から言われた。男女差をなくすための臨時的な措置で、三ヶ月の研修が済めば、警察庁に戻れる、と。

こうしてさまざまな警察官七人が石田警視から研修を受けることになる。最初は関連する学問の専門家から講義を受ける日々。

そして、そのあとは石田警視から過去の事件の見直しをしながら、交渉人のあるべき道を学ぶことになる。

警察官ではあるが、警察に有利に話を進めてはいけない。犯人と対話して、互いを理解し、より良き道を考えていく。そのために交渉前には、出きるだけ犯人の人となりを調べ上げることが必要。

研修をしながら、石田は不適格者を容赦なく追い出す。本人にはどうすることもできない声質により追い出されたものもいる。男性としては高い声で、普段は気にならなくても、交渉時には相手を刺激するかもしれないと。

自信をなくしやめたものもいて、最後に残ったのは遠野を含めて三人。

その三人は折しも進行中の特殊詐欺の頂上壊滅捜査に加わることになる。石田は特殊犯捜査の班長でもあったから。

科学的な支援により、下っぱの動静は警察に筒抜けだが、彼らを捕縛するのではなく、彼らの上のものを把握し、逮捕することが目的。あるいはアジトを見つけ、証拠品の押収を目指した捜査。

慣れない尾行などで苦労する遠野。

一人が監視中に殺され、警察内部に内通者がいると疑われ、混乱する。

最後には、遠野は相棒だった警部補を疑い、説得し、自首させる。

最初の交渉と言えるか。

研修を終えた遠野はキャリアとして警察庁に戻らす、交渉人になることを決意する。

いわば、現代版仕事人かな。現行の法律のもとでは、証拠も得られないし、断罪することもできない犯罪者を私的に裁くハングマン。

警視庁捜査一課の刑事春原瑠衣。父親と二人暮らしだったが、その父親の社員が事故死。どう見ても車道に突き落とされた殺人だが、目撃者もいないし、防犯カメラの範囲外。さらに同じ課長職のものが、地下鉄の階段を落ちて死亡。こちらも突き落とされたかと思われたが、目撃者はいなくて、捜査は難航。会社に何か問題があるかと、父に尋ねてもはっきりとは言わない。どころか現場責任者の父親までもが、鉄骨の落下事故により、死亡。身内の捜査には加われない瑠衣は捜査からはずされる。

そんなときに自宅を東京地検特捜部が自宅捜査にあらわれる。どうやら中堅ゼネコンの父の会社は、裏金を作り、政治家に渡していたらしい。三人の殺人はその口封じではないか、しかし、証拠が全くない。

そんな彼女に接触してきたのは、もと刑事で探偵だと名乗る鳥海。まともに調べては埒が明かないから、彼は異常な手段で証拠を見つけ、密かに始末しているという。刑事としては何もできないことに歯噛みしていた瑠衣は、ついに彼に協力することに。父親の死亡保険金五千万円を、鳥海と相棒、三人の犠牲者の意足で分けることにする。

敵は会長とボディーガードも勤める秘書。しかし、隙が全くない二人。しかし、ついに、ハロウィーンの夜、二人が歩いて、人混みのないところに止めた車まであるくことをキャッチする。

会長は自分が処刑したいと条件をつけていた瑠衣。変装した二人を襲い、まず秘書を処刑。秘書と同じ仮装、ピエロ姿の瑠衣は会長を人気のないところに誘い、処刑。

殺人までおかして敵を打った瑠衣だが、今後どうするんだろう?知らぬふりしていきる図太さはあるのか?そんなことが気になった。