再読だと思うが、最後まで読めた。

東京の大学で民俗学を専攻する女子、藤崎千佳。高校生の頃に読んで感動した柳田国男の「遠野物語」。それを手に持っていたことで声をかけられたことがきっかけで、民俗学の准教授、古屋神寺郎の講義をきき、研究室に入った。

偏屈で変人と噂される古屋だが、足が悪く、ステッキをつく身だが、現地におもむき調査することをやめない。先輩の博士課程の院生でイケメンの仁藤は、前には時々、古屋の調査旅行についていったが、今はもっぱら藤崎が同行する。荷持ち運び。古屋の毒舌にも負けない鈍感な?藤崎だが。

最初に訪れたのは弘前。今は辺境の地だが、かつては船便の集散地で栄えた。途中に野暮用だといい、馴染みの温泉旅館に立ち寄る。十年前になくなった研究者仲間で妻の実家だった。岩木山の麓にある。飛行場に向かうエスカレーターの不幸な事故に因り、妻はなくなり、古屋は片足を失う。手術すれば歩けるようになると言われるも拒否した。どんなに遠くても飛行機には乗らない。妻との繋がりを消さないためか。

学会に出るために訪れたのは京都。そこで二人が出会ったのは。絵を描くために鞍馬の紅葉を見に来たという日本のステッキで立つ青年。あとでその両親と出会い、聞かされたのは、その青年が昨年なくなっていたこと。二人が邂逅したのは?

信州の大学で頼まれて講義をした古屋は帰り道に、伊奈におもむく。始まりの木と呼ばれる巨木を見に。途中何度も長電話をする古屋は寒さのために足が痛み、病院へ。大学では民俗学講座の廃止が取りざたされ、教授からの電話が来ていた。講座廃止の話は、招待してくれた昔の研究者仲間でもある言語学教授のお陰で立ち消えとなる。

博士課程の研究のためにフィールドワークしている先輩の仁藤のもとを訪れた二人。飛行機を使わず、二日がかりでの電車旅。呆れる仁藤。

四国巡礼の地。藤崎は大師を見かけたかも。念仏に引かれていった山のなかの霊場。そこで偶然病で倒れた巡礼者を見つけ、助ける。

都心にありながら、明治以来の古い住宅街が残る藤崎の大学。古い神社や寺も残る。古屋が馴染みのその寺には、樹齢六百年の垂れ桜の巨木が。古屋が学生時代から二十年の付き合いがある老僧。実は余命わずかな状態だった。身辺整理のために病院から戻った老僧は、古屋と最後の酒盛り。その時彼らだけが目撃した枯れたはずの桜の満開の様子。夕日が指した錯覚か?でも建物が林立した狭間にある寺には夕日が差すこともないだろう。まるで老僧を見送る化のように咲き乱れた桜。夢かうつつか。


神は信じるものではなく、感じるものだった。古来の日本人が感じていた神様の存在。それが失われたとき、日本はどうなるのか?そういう方向を定めた上での、過去の日本を研究する民俗学。庶民が感じていたものを追体験することで、別の日本の明日を考えていく。

そろそろ秋らしくなってもいいのに。

朝晩はいくぶん涼しいが、日中は猛暑つづきで、バテバテ。


仕事帰りに県立図書館。

五冊返却。うち一冊は読まずに返す。

小説ではない本。借りないでおこうとしながら、毎回一冊は借りてしまう。今日もまた一冊、小説以外の本を借りてしまった。

今日借りた本


池永陽

「珈琲屋の人々  宝物を探しに」

双葉社、2015


「珈琲屋の人々  ちっぽけな恋」

双葉文庫、2015


「珈琲屋の人々  どん底の女神」

双葉文庫、2021


「下町やぶさか診療所  いのちの約束」

集英社文庫、2020


田中優子

松岡正剛

「江戸問答」

岩波新書、2021



珈琲屋シリーズ第五作。

東京の総武線沿いにある商店街にある珈琲屋。かつて地上げの乱暴により、女子高生が自殺した。それを自慢する首謀格の男に暴力を加えて、殺したことにより、逮捕され服役した行介の店。地上げから商店街を守ってくれたと、彼を非難する人はいない。

人を殺したことを気にして、人並みの幸せを拒否する行介は、かつての恋人冬子が、嫁ぎ先から強引に離婚してまで、出戻ってきたのに、よりを戻すことを拒否し、いまだに彼らは友人のまま。

人を殺したことがある、そんな行介に引き付けられる訳ありの人々が、商店街に、珈琲屋にやってくる。

そんな人々のさまざまな事情を描いていくシリーズ。

商店街に新たにできたおでんや、女将の理央子が美人で評判となるが。なぜか、心の奥に秘めたものがある様子。

行介の刑務所仲間だった順平が、同じ町内にやってきて、珈琲屋の常連となる。その順平が理央子に一目惚れするが、実は彼女の狙いは順平だった。

その事情とは?