交渉人とは特殊な警察官で、立て籠り犯や誘拐犯と、電話で話をして、互いを理解し、自首させるために働く警察官。五十嵐さんには交渉人遠野麻衣子シリーズが三作あるそうだが、いまだに未読。その主人公がどうして生まれたのかを描いた前日譚といえるのが本作。
私大を首席で卒業し、国家公務員試験に合格した遠野が選んだ警察庁。
幼い頃に強盗に目の前で祖母を殺されトラウマになっていた彼女は、それを克服すべく警察にはいった。
しかし、いまだに男女格差が厳しい警察界、出世飲み込みもなく悩んでいたときに声をかけられた。警察庁から希望して警視庁の特殊捜査係りに移動した先輩キャリアの石田警視。アメリカで交渉人制度を学び、交渉人育成をすることに。警視庁、所轄を問わず人材を選び、研修を行うことになり、警察庁からは遠野が選ばれたと、上司から言われた。男女差をなくすための臨時的な措置で、三ヶ月の研修が済めば、警察庁に戻れる、と。
こうしてさまざまな警察官七人が石田警視から研修を受けることになる。最初は関連する学問の専門家から講義を受ける日々。
そして、そのあとは石田警視から過去の事件の見直しをしながら、交渉人のあるべき道を学ぶことになる。
警察官ではあるが、警察に有利に話を進めてはいけない。犯人と対話して、互いを理解し、より良き道を考えていく。そのために交渉前には、出きるだけ犯人の人となりを調べ上げることが必要。
研修をしながら、石田は不適格者を容赦なく追い出す。本人にはどうすることもできない声質により追い出されたものもいる。男性としては高い声で、普段は気にならなくても、交渉時には相手を刺激するかもしれないと。
自信をなくしやめたものもいて、最後に残ったのは遠野を含めて三人。
その三人は折しも進行中の特殊詐欺の頂上壊滅捜査に加わることになる。石田は特殊犯捜査の班長でもあったから。
科学的な支援により、下っぱの動静は警察に筒抜けだが、彼らを捕縛するのではなく、彼らの上のものを把握し、逮捕することが目的。あるいはアジトを見つけ、証拠品の押収を目指した捜査。
慣れない尾行などで苦労する遠野。
一人が監視中に殺され、警察内部に内通者がいると疑われ、混乱する。
最後には、遠野は相棒だった警部補を疑い、説得し、自首させる。
最初の交渉と言えるか。
研修を終えた遠野はキャリアとして警察庁に戻らす、交渉人になることを決意する。