徳島大発ベンチャーの「D-2」が、デロリアンでありポインターでもあった件
「その他」のブースに進む前に閑話休題、
少々変態度高め(褒め言葉)な「乗り物」の深堀りをしておきましょうか。
それは「Tokyo Future Tour2035」エリアの片隅にひっそりと(?)、しかし異様な存在感を放って展示されていました。
一般的に想像する「近未来のモビリティ」といえば、こんな感じですよね。
空にはドローン、地上は自動運転車。スマートでクリーン、日常に溶け込んだ風景…
「そのうち、貨物を運んでるドローンに人も乗れるようになるんでしょ?」
「空飛ぶクルマって言っても、結局はデカいドローンじゃん」
そう思って「コレジャナイ感」を抱いている全ての大人たちへ
お待たせしました。「コレ」です。
と、言われても困るレベルの完成度ですよね…
なんだこのバラックはと
私ですらそう思いましたよ。
しかし注目していただきたいのはそこではなくて
これぞ、
BTTF(バック・トゥ・ザ・フューチャー)世代が夢見た「空飛ぶクルマ」なんですよ
やはり「クルマ」と名乗るからには、タイヤがあって道路を走れなきゃね・・・
⚫︎タイヤで道路を走る。
⚫︎⚫︎そのタイヤが「ギギギギギ、ガシャン」と変形して下を向く。
⚫︎⚫︎⚫︎ホバーだかジェットだかで空を飛ぶ。
すなわち「空を飛ぶ=翼をつける(飛行機化する)」ではなくて、
「車体そのものを何らかのチカラで無理やり浮かせる」というアプローチ。いやあ、好きだわあー
この試作機は、そのロマンを現代の技術で(未来の夢の技術ではなく)具現化したものでした。
1. タイヤが90度、直角に回転! まさにBTTF2のデロリアン
まず実演を見て目を奪われたのが、その変形機構。
地上走行モードから「飛行モード」へ移行する際、4つのタイヤがグイッと90度、真横に倒れます。
こう動いて、完全に車輪が下を向き、揚力ファンへと早変わり。
あれ、これって「アレ」じゃん
そう、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART1』でのドクの名台詞、
「道? これから行くところに道など要らん(Roads? Where we're going, we don't need roads.)」
が脳内で再生されますよね?(画像はネットからお借りしました)
劇中のデロリアンは「ホバー・コンバージョン」という架空技術で浮きますが、現実の『D-2』は「ホイールの中にプロペラを仕込む」というもっとプリミティブな技術でこれを再現。
映画では未来感の演出だった変形を、「タイヤのスペースをそのまま推力発生装置にする」という機能美として実装している点に、思わず拍手~♪
2. 真の揚力発生は「車体の下」。これはデロリアンに見せかけたポインター(TDF PO-1)
しかし、すぐに違和感に気づきます。
「このタイヤのプロペラだけで、車体重量を支え、あまつさえ飛行することができるのか?」と。
実は、このクルマの真のエンジンは、車体の「下」にありました。(車輪のプロペラも推力に貢献していて、飾りではないとのこと)
車体中心部を貫くように、巨大なホバーファンが2つ鎮座しています。
ここで思い出すのはBTTFではなく
『ウルトラセブン』のウルトラ警備隊専用車
「ポインター(TDF PO-1)」ですよね!
当時の設定資料を紐解くと……
車両コード: TDF PO-1
ベース: クライスラー・インペリアル 1957年型
特殊装備: バリア、ミサイル、「ホバー機能」
そう、ポインターは「車体下部からのジェット噴射」により、ホバリングが可能という設定でした。
「え、そんなシーンあったっけ?」と忘れている方も多いかもしれません。
それもそのはず。ポインターが劇中でホバー機構を使用した回数は、全49話(※諸事情により欠番となっている第12話を含む)のうち、たったの2回しかないのですから。
(写真はネットからお借りして、見やすいように明るさを修正しています)
第22話「人間牧場」: 海面をホバー走行
第25話「零下140度の対決」: 雪原を突破
設定上は「飛行時速800km」等のスペックがちゃんとありましたが、昭和の特撮現場では「人が乗った車を飛ばす」なんて予算のかかることは大人の事情により難しかったんでしょうね。
しかし、令和の『D-2』は違います。ポインター同様、車体の下にファンを積んで浮くのです。
3. なぜ今「変形」なのか? 開発者のリアルな回答
この車両を開発したのは、徳島大学発のベンチャー企業「株式会社TSUNAGI」。
ガンダムにあこがれてロボット研究者になった人は、
キャプテン翼にあこがれてサッカー選手になった人くらい多いのではないかと密かに思っている(もちろんその前の世代では鉄人28号やアトムがその責を担っていたことは言うまでもありません)のですが、このクルマもそんな香りがプンプンします。
しかし、もちろんそれだけではないはず。(流石に)
と思って調べてみると
その本当の(表向きの?)目的は極めて真面目な「災害救助」でした。
被災地では道路が寸断されて車は通れない。
ドローンでは運べる物資が少ない。
そこで「行けるところまではタイヤで走り(省エネ・大量輸送)、道がなくなったら飛ぶ(障害物回避)」というハイブリッド=変形機構が必要だったのです。
フィクションの「かっこよさ」に見えた構造は、実は「人を助けるための合理性」の塊でした。(と、見える)
さて、ここで開発者の方に聞いてみました。
「このバラック……いや、試作車、実際どのくらい浮くんですか?」
「3m以上はいけます」
「え、すごい。3mって言ったらもう浮上じゃなくて飛行じゃないですか!でも、このむき出しの車体で3mって、ものすごく怖くないですか?」
「はい。怖くてその高さまでにしています」
……これはリアルだ、正直すぎる!!
予算の都合で飛ばなかったポインターとは違い(いや、今も予算の影響も大きいとは思いますが)、こちらは「生身の人間の恐怖心」または安全上の法的配慮がリミッターになっていました。実際、航空法も関与してるとか。
推力だけならもっとイケるらしいので、どこまでイケるか興味はありますよね!
「じゃあ、あんたが乗ってみろよ」と言われそうですが
ただ、特筆すべきこととして、
説明してくださった研究者の方からは
良い意味での「マッドサイエンティストのはしくれ」の香りがこれまたプンプンしました。
もしジャパンモビリティショーに「イグ・ノーベル賞」的な部門があれば、間違いなく受賞していたでしょう。(写真はネットからお借りしました)
BTTFの夢にTDFのロマン、
そして災害救助のリアル。
そんな楽しい展示がクローズアップされないのはあまりに惜しい、
そんな気持ちで丸々1話分を費やしました。いかが?