「使わないけど使える刀が欲しい」

 

こういうコンセプトで注文打ちで刀を作ったり外装を揃えたりしてきました。

 

使える刀を作るうえで大事だけど見逃されがちなのが「茎の長さ」なのではないでしょうか。

 

成瀬関次は刀の故障の大半が柄であったと書いていて、茎の短い刀は柄が壊れやすいので良くないと書いています。「折れた柄を見れば茎の長さがわかる」とまで書いています。

 

もっと古くは水心子正秀も茎の短い刀はダメだと書いていたと思います。

 

茎が短いというのは具体的に何センチ以下なのか。そもそも刀の茎の長さって普通どれくらいなのか。それがわからなければ話になりません。

 

というわけで、調べてみました。

 

 

 

 

↑このお店の刀は珍しく茎の長さが書かれています。これを見て今回の内容を思い付きました。

 

 

 

まず最も需要が多そうな2尺3寸~2尺4寸くらいの刀の茎長について。刃長の平均値がこれくらいになるように65~75センチの刀の数字を適当に抜き出してみました↓

 

 

刃長の平均  71.1センチ

茎長の平均  19.2センチ

 

茎の長さは最長24.8センチ 最短16.4センチ

 

かなり開きがありますね。

 

この数字をみる限りでは「刃長が長い刀は茎が長い」というわけでもないようです。

 

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次に刃長60センチ前後の「片手打ち」と呼ばれる片手使用の刀も調べてみました。刃長54~65センチの刀のデータです。こちらは数が少ないです。

 

 

 

刃長の平均値が59.6センチ

茎長の平均値が15.6センチ

 

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↑濃州堂のカタログから

 

刃長に対しての柄の長さの目安です。武道だと流派とかによって柄長が異なるかもしれません。

 

しかしそれ以前の問題として、柄が壊れないようにするには刃長ではなく茎の長さに合わせて柄を作る必要があるはずです。

 

茎の長さと柄の長さの適切な割合などはあまり情報がなくてわからないのですが、中村泰三郎氏の著書に「柄が8寸なら中心は7寸前後が適当 」と書かれているそうです↓

 

茎7寸に対して柄8寸であれば、茎長の約1.14倍

 

もしくは単純に茎の長さプラス1寸(3センチ)

 

 

上の表で挙げた刀の中には「刃長72.3センチ・茎長16.5センチ」の刀がありますが、この刀の茎長さに合わせた柄長は茎の1.14倍なら18.8センチ、プラス3センチなら19.5センチ。

 

刃長72.3センチ(2尺3寸9分弱)の刀の柄長は濃州堂のカタログの表に合わせれば8寸3分:約25センチです。でも茎長を考えると25センチでは長すぎて柄が壊れやすいかもしれない。

 

 

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こんな事を考えたり調べたりしたのは、現在注文打ちで作ってもらっている刀の刀身が刃長59センチ・茎長17センチと刀匠から伺っているのですが、柄の長さがどれくらいが適当なのかがわからなかったからです↓

 

 

 

濃州堂のカタログの数値も2尺1寸までしか書かれていませんから。

 

まあ、「刀身サイズに対して一般的な長さでお願いします」といえばそれで大丈夫だとは思うのですが、この寸法の大脇差の一般的な柄長がそもそもどれくらいなのかがよくわからないので気になります。

 

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