前にも書いた事があるのですが、改めて刀剣研磨の種類について書いてみます。
ざっくり言うと、以下のように徐々に目の細かい砥石で研磨していきます。
下地研ぎ
金剛砥
↓
備水砥
↓
改正砥
↓
中名倉砥
↓
細名倉砥
↓
内曇砥
仕上げ研ぎ
刃艶・地艶
↓
拭い
↓
刃取り(化粧研ぎ)
あくまで、ざっくりです。
以上を踏まえて、、、
① 試斬用の研ぎ・白研ぎ・居合研ぎ
試斬用の研ぎ。斬るだけなら一番よく斬れる状態らしいです。改正砥か名倉砥くらいまでかけられた状態が多いようです。刀身表面が白くて肌も刃文も見えない状態。通常は鍛え肌も刃文も見えませんが酸を使って刃文だけ見えるようにもできるようです。
薬品(硝酸)で刃文を見えるようにする事もできるようです↓
②白研ぎ・居合研ぎ・下地研ぎ
https://www.kenma-miura.com/process-01/
内曇砥までかけられた状態。刃文・鍛え肌が見えるようになります。白研ぎというとこの状態を指す事が最も多いような気がします。地が白く刃が黒い。
③差し込み研ぎ
https://www.tokugawa-art-museum.jp/secure-image/4793/
磁鉄鉱や対馬砥石の粉末を油で溶いたもの(差し込み)で刀身を拭います。そうすると刀身が変色して地が黒く刃が白く見えるようになります。江戸時代の一般的な研磨方法。
伝説では本阿弥光徳の創始とされるが実際には16世紀後半頃から行われているらしい。元々は刃取り(化粧研ぎ)を行わないが、現代の差し込み研ぎでは刃文に沿って刃取りされる事も多い。
江戸時代初期頃の記述で、「刀といえば昔は地を白く刃を黒くしたものだが、今では刃を白く地を黒くする」というの見た記憶があります。
お客様の依頼で「差し込み研ぎ」に直してほしいと。
— 研師 臼木良彦 (@matasichi) April 21, 2026
1枚目は研ぎ直す前のいわゆる化粧研ぎ。明治以降出来た技法。
2枚目の画像が差し込み研ぎで研ぎ直したもの。
差し込みは差し込みぬぐいを用いて、刃中は白くせず刃文をそのまま忠実に浮き上がらす技法で、江戸時代まで基本このような仕上げでした。 pic.twitter.com/iFGCE0JRMq
名古屋の徳川美術館所蔵の刀は江戸時代から研ぎ直されていないため全て差し込み研ぎという事で有名です。

④美術研磨
現在一般に言われる刀剣研磨の事。伝説では本阿弥平十郎成善の創始とされるが真偽不明。江戸時代後期に生まれたとされますが普及したのは明治以降。差し込み拭いではなくて酸化鉄を油で溶いたもの(金肌)で拭いをかける(金肌拭い)。金肌拭いをかけると地も刃も黒くなるので、拭い後に刃取り(化粧研ぎ)で砥石でこすって白くして刃文を見えるようにする。

↑白い部分が刃取りされた所。白い部分が刃文なのではなくて、白の中に見える青黒い所が刃文。青黒い部分がハッキリ見える事を「刃が冴える」というっぽい。
刃取りによる効果
— 日本刀研師 沖島 大喜 (@togishi_oksm) November 30, 2021
左は刃取り前、右は刃取り、磨き後
地の黒さは同じです。しかし、右の方が黒く見えませんか?
刃を白くする事により地鉄は黒く冴えて見えます。逆も然りで地を黒くあげておくことで刃が白く冴えて見えます。
バランスも考えないといけませんが、刃取りにはこのような利点があります😊 pic.twitter.com/2VY9SVA135
↑拭い後に刃取りされていない状態がどういうものかわかります。
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ほとんどの場合、刀剣研磨といえば④の美術研磨の事を指します。注意が必要なのはそれ以外の研磨を依頼する場合です。
つまり、白研ぎ・居合研ぎ・差し込み研ぎ等
これらは名称としてはよく使われがちなのですが、どのような研磨を指すのか人によって解釈が違っている場合があります。
上掲の①を白研ぎという人もあれば②を白研ぎという人もいる。①や②を居合研ぎと言う人もいれば、これらとは違うものを居合研ぎという人もいる。差し込み研ぎと言っても刃取り(化粧研ぎ)をする場合もあるし、しない場合もある。
プロであっても、例えば同じ用語でも流派が違えば違う意味を指すのかもしれません。正解が存在しないのだと思います。便宜上、自分で適当に名前をつけて仕事をとっている人もいそうに思います。コンクール出品レベルの美術研磨を「最上研磨」として別メニューにしている研師もいます。
これらの研磨を依頼する場合は事前にどういうものを指しているのか確認した方が良いと思います。



↑私のこの刀、美術研磨よりも安かったので「居合研ぎ」で作ってもらいました。しかしその居合研ぎがどういう研磨を指しているのかがイマイチよくわかりません。拭いをかけない状態までの研磨だと思っていたのですが、金肌拭いをかけて刃取り(化粧研ぎ)をしていない状態でしょうか。刃文が見えるよう酸で多少エッチングされているのかもしれません。
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〇付け焼刃

↑この写真の刀には実は焼刃がありません。砥石でこすって白くしているだけです。これを「付け焼刃」と言います。火事で焼けた刀や芝居で使う刀など用いたのではないかと聞きます。
〇鞘店研ぎ
江戸時代以前(慶長期)から鞘店研ぎという安い研ぎでは金肌拭いをかけていたといいます。差し込み拭いではなくて。
https://www.mokuzai-tonya.jp/05bunen/zuisou/2006/03nihontou27.html
これらを合わせて考えると、現在の美術研磨のルーツは安い鞘店研ぎに出して金肌拭いをかけられて刃文が見えなくなった刀に対して、付け焼刃の要領で刃文を描いた所からはじまったのかな等と思うのですが、いかがでしょうか。
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16世紀以降、なぜ刀身に拭いがかけられるようになったのでしょう? 純粋に美観のためなのでしょうか?
差し込み拭いは黒錆びの成分で、金肌拭いは赤錆びの成分だと聞きます。元々は黒錆びの成分を刀身につけて赤錆びが出るのを防ぐためだったのでしょうか?
錆び防止のために黒錆びをつけるというのは、鉄鍔では古くから一般的に為されています。
なにかと疑問は尽きません。
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