僕の会派の長は以前中村泰三郎氏に師事していたそうで、つまり僕からすれば中村泰三郎氏は大師匠に当たる。
そのため、著書も買って読んだ。
この著書の中で斬れる刀についての言及があったはため、転載する。
・拵えは肥後拵えで柄頭が丸金具なのが良い。
・体格身長次第だが、刀の長さは2尺3寸~2尺4寸止まり、柄が8寸なら中心は7寸前後が適当。
・刀身が重く感じられる場合は柄に鉛を入れてバランスを取る事。
・刀の身幅は元幅1寸1分。物打ちは8分~9分止まりが斬れ味にすぐれる。
・反りは5分~6分止まりが良好。
・二つ目釘穴を推奨、目釘が一本折れても二本目釘なら安心。
・元重ねは2分程、物打ち1分5厘弱が良い。
・鎬高の刀の斬れ味は、堅い物を斬る場合には良いが、柔らかな物は吸い込みが悪く、例えば据物斬りの藁などは斬れ味が半減する。
それに比べて鎬の低い刀は刀身の身幅にもよるが一般に斬れ味も良い。
据物斬りの藁の吸い込みがよく、斬れ味満点である。
ただし手の内を誤れば刀身を曲げることになる。
武用刀として実戦には鎬の高いものが適していても、据物斬りの場合には、明確に斬れ味に差が出る。
一方竹斬りの場合は、鎬が高くても斬れ味はあまり変わらない。鎬高は弾力性も強いので竹斬りには適している。反対に鎬が低いのは弾力性がないので竹斬りには不適当であり、刃筋と手の内を誤ると刀身を曲げることが往々にしてある。
要するに堅いものに対しては「出刃包丁」を、大根や菜っ葉には「菜斬り包丁」を使うと思えばよい。
なお、鎬が刀身の中央になるのは思わしくなく、棟の方にあるのが力学的に考えても斬れ味が良い。
・樋を掘ると腰が弱くなる点に注意
・刀身重量は800グラムまで、それ以上は刀法上、思わしくない。
・刃紋は身幅の4分の1が適当で、大乱れは刃がもろく折れやすい。斬れ味も悪い。直刃が一般に斬れ味が良い。
・焼き温度は刀匠の技術にもよるが、強い焼きは美術的にはともかく、折れやすく刃がもろい。ただし、気候の温度が高い時には少々カバーされる。弱い焼きは刃がまくれ鈍刀であるが、気候も零下15度以上の凍りついた場所では比較的良好である。
・同じ刀匠でも斬れ味が違う事があるため注意すること。
・暑さ寒さによる斬れ味の変化にも注意すること。
・歴史的に価値のある古い刀を据斬りに使用しないように。
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中村泰三郎氏に直接お会いしたことは無いが、戦争経験者なので実用刀と試斬刀を分けて考えていた事が分かる。
うちの長が一度だけ聞いたそうだが、中村泰三郎氏は戦時中に人を斬った事があるようだ。
人の筋肉や脂肪は巻き藁を斬る感触に結構近いとの事で、現在主流の畳表巻きの方が固く感じるそうな。
あと、曲芸のような斬り方がお嫌いだったらしい。
色々と考えさせられます。