イム・ホンジョンと韓国交響楽団によるブルックナー交響曲全集を取り上げる最終日となる今回、第7番から第9番の有名は三大交響曲を聴く形となる。ここまで取り上げてきた交響曲はどれも個性的な演奏が多く、新しいブルックナー像をイメージさせてくれるようなものが多かった。今回取り上げる3曲も同じように度肝を抜かされるものとなるか?それともスタンダードを貫いたわかりやすいブルックナーとなるか?一曲ずつみてこう。
ブルックナー:交響曲第7番、2014年11月21日ライヴ録音
・・・ハース版やノヴァーク版が第7番でも存在しているが、今回演奏で使用されているのは第7番と記載がある。そのためブルックナーを愛する我々としては非常に懐かしく、聴き覚えのある演奏と言えるかもしれない。全体的にまろやかかつ濃厚で優しさに包まれた音作りがされている。いわゆるパワープレイは基本的にほぼ感じられず、和音の重なりや残響など美しい音色などが重視されている印象が強い。そのため豪快さにはかけるがシンプルで親しみやすいサウンドが展開されているため、最初から最後まで素晴らしい流れを持ってきてスッキリと聴き終えることができる。
交響曲第8番、2015年12月15日ライヴ録音
・・・ブルックナーが作曲した交響曲の中でも一番人気度の高い名曲中の名曲である。個人的に今回の演奏を聴いて、非常に懐かしい気持ちになった。それはハース版が使用されているということもあるのかもしれない。豊かで全体的にまとまりのある奥深いサウンドにはカラヤンや朝比奈隆らの演奏でよく聴いたが、今回の演奏でも同様のサウンドを堪能することができる。少々パワー不足ではあるものの、全体の完成度としては非常に高い位置にあるのではないか?と聴いていて感じる。何より金管楽器群の音圧にキツさを感じることがなく、幅広いまろやかな音色が全てを包み込んでいる印象と言えるだろう。
交響曲第9番、2016年12月1日ライヴ録音
・・・ブルックナー最後の交響曲にして未完成に終わった作品である。今回使用されているのはオーレル校訂版で、ブルックナーが本当に書いた部分を再現しようと試みた一番最初の校訂版とされている。テンポの緩急もありつつ全体の作りとしては落ち着きのあるゆったりとした穏やかなテンポがベースとなっている。それによりオーケストラ全体の音色もなめらかで慈愛に満ちた優しい形がとられている。弦楽器群はスケールのある演奏が行われていることもあって、個々の歌い上げる凄さには驚かされることは間違いないだろう。何より統一された木管楽器、弦楽器とパワープレイを一切感じさせない金管楽器のサウンドが魅力的な演奏と言える。
最後に取り上げた第7番〜第9番はどちらかといえば往年の時代におけるブルックナーの交響曲をイメージすることができた気がする。そのためどの曲も聴いていて非常に懐かしく感じた。第1番〜第6番までは非常に個性豊かな演奏が多かったと思う。久しぶりに聴いたブルックナー交響曲全集はそれほど時間がかかったような気もしておらず、どの曲もしつこさのない状態で聴き終えることができた。このコンビによる録音は少ないようだが、その中でもブルックナーを聴くことができて大変満足している。
https://tower.jp/item/4574979/Bruckner:-9-Symphonies