第1147回「サヴァールによるベートーヴェン交響曲全集完結!第6番〜第9番」 | クラシック名盤ヒストリア@毎日投稿中!!

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 みなさんこんにちは😃2020年10月に発売されたジョルディ・サヴァールとル・コンセール・デ・ナシオンが録音したベートーヴェン交響曲第1番〜第5番は多くの人々に衝撃を与え、一時期取り寄せ状態にまでなり入手困難なほどになったが、その後再販され今でも根強い人気を誇っている。それから約2年経ち、両コンビがその続きを発売させた。今回収録されているのは第6番〜第9番。今回でサヴァールとル・コンセール・デ・ナシオンによるベートーヴェン交響曲全集は完成したこととなる。今回はその第6番〜第9番の4曲をみていきたいと思う。


「ジョルディ・サヴァール指揮/ル・コンセール・デ・ナシオン」

ベートーヴェン作曲:
交響曲第6番 ヘ長調作品68「田園」

交響曲第7番 イ長調作品92

交響曲第8番 ヘ長調作品93

交響曲第9番 ニ短調作品125



 ピリオド楽器によるベートーヴェン演奏は今日においてそれほど珍しいものではなくなりつつある。その中でサヴァールとル・コンセール・デ・ナシオンによるベートーヴェン交響曲全集はそれに一石を投じるような名盤になると私は考える。ピリオド楽器での演奏でも指揮者やオーケストラによってはよりアプローチが変わるわけだが、今回の演奏では全体的に筋肉質過ぎず、強すぎるアタックやアーティキレーション、ダイナミクスではない。どちらかといえばかつてブリュッヘンが18世紀オーケストラと録音したベートーヴェン演奏に近いと聴いてきて感じた。


 ベートーヴェン:交響曲第6番「田園」、2020年7月18〜21日録音

・・・ピリオド楽器による演奏ということもあるためピッチは低めになっているが低すぎないし、先ほども触れたように強すぎる演奏ではない。しかし、第4楽章の嵐が来るシーンでのティンパニや弦楽器のトレモロに関しては危機迫るような緊迫感のあるダイナミクス変化となっているので、それを聴いた瞬間の驚きと言ったら言葉を失ってしまうほどである。そして何よりそれ以外では木管楽器と弦楽器が中心となって世界観を作り上げてより牧歌的かつ田園的な美しさに満ちた素晴らしい第6番となっている。一つ一つのメロディが愛らしく、聴きやすいのでどんどん聴き進めることができる。今回この曲を聴いて思い出したのは初めてこの曲を聴いた時の感動を久しぶりに思い出すことができた。最近聴いた「田園」の中では特に素晴らしかったと思う。


 ベートーヴェン:交響曲第7番、2020年7月18〜21日録音

・・・ベートーヴェンが作曲した交響曲の中でも特にポピュラーなこの曲。今回の演奏では、軽快さや推進力などのエネルギーに加えてやや固く強めのサウンドが加えられている。弦楽器群のいらないものを削ぎ落としたかのような研ぎ澄まされた音色は他のベートーヴェン演奏などと近い要素ではあるが、細かいダイナミクス変化やアーティキレーションの違いが非常に個性的なようにも思える。テンポはそれほど速すぎていないので聴きやすいのも良い点だろうか。また、SACDハイブリッド仕様の高音質盤ということもあり、よりこの曲を存分に楽しむことができるようになっている。


 ベートーヴェン:交響曲第8番、2020年10月10〜11日録音

・・・第7番と第9番の間に挟まれる交響曲のためそれほど積極的に聴かれることがないかもしれないが、今回の演奏では普段は見ることができない部分を見ることができる演奏となっているため非常に楽しむことができる第8番となっている。全体的に推進力のある前向きなテンポでどんどん進んでいくのだが、特に第3楽章が凄い。躍動的で存在感のあるチェロは聴きごたえ抜群なものとなっている。オーケストラ全体のダイナミクスも細かく変化するのに加えて一つ一つの音は非常に俊敏なものと言えるだろう。第1楽章から形が統一されていることもあって第4楽章では聴いていて爽快感を覚えるかのような速いテンポで演奏されるため、より情報量は多いと言えるだろう。


 ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱付き」、2021年9月30日,10月1日録音

・・・ピリオド楽器による「第九」もそれなりの数演奏を聴いてきたが、第1楽章から完成されたその空間には鳥肌が立ちながら思わず驚かされる場面の連続にどんどん吸い込まれていったのは言うまでもない。弦楽器のトレモロの存在感も明確かつ素晴らしいダイナミクスとなっているのに加えて、SACDハイブリッド仕様ということもあってダイナミック・レンジの幅広さは非常に素晴らしい。何より演奏時間が61分というもう少しで1時間をきる勢いの演奏だったということ。かつて同じピリオド楽器でいえばガーディナーによる「第九」は全体的に尖っていた上にテンポもはやかった覚えがある。サヴァールの演奏は第1楽章、第2楽章ともにぐんぐん突き進んでいくアプローチが取られており、やや暴走気味にも聴こえるかもしれないが大迫力の演奏であることは間違いない。第4楽章もややその傾向があるが、徐々に落ち着いていき最終的にはいつも通りの形にテンポは落ちている。合唱や歌手の伸びやかで美しい歌声はこれまで聴いてきたどの「第九」とも当てはまらない美しい響きとなっている。それに対してやや攻撃的なオーケストラのサウンドが混ざり合うことでより一層面白い「第九」が出来上がっている。


 サヴァールとル・コンセール・デ・ナシオンによるベートーヴェン交響曲全集は今回で完成し、次はシューベルトが予定されているという非常に興味深いのだが、他の管弦楽曲もぜひ録音してほしいと私個人として思ったところがある。とはいえあくまで願望に過ぎないので今は過去に発売された第1番〜第5番とのセットでサヴァールによるベートーヴェンを楽しみたいところだ。いずれにしても今後の予定が気になるコンビであることには変わりない。


https://tower.jp/item/5280517/ベートーヴェン:-交響曲第6番-第9番