ヤンソンスは過去にレニングラード・フィルともベルリオーズの「幻想交響曲」は来日ライヴ時に演奏しているが、以前の録音とはまた違う姿を見せてくれる名演となっている。音質も非常に良く聴きやすいということもあってヤンソンスが作り上げる「幻想交響曲」と「イオニザシオン」をそれぞれ楽しむことができるのは至福の時と言ってもいいくらいだ。
ベルリオーズ:幻想交響曲、2013年3月7,8日ライヴ録音
・・・この美しくしくもはかない物語をダイナミック・レンジの幅広さによってより一層美しさが極まった形で演奏がされている。残響もしっかりと取られていることもあって弦楽器や木管楽器がのびのびと美しい音色を奏でている。今回の演奏はレニングラード・フィルとの来日ライヴと比べてもややゆったりとしている印象で、テンポに関しても激しく変わるという場面はそれほど少ない。むしろやや遅いくらいで、それがあることによって各楽器はたっぷりと歌い上げることができるようになっている。特に第3楽章がその傾向にある。有名な第4楽章では金管楽器による多少の活気が加わるものの、どこか不気味な音色をしている。そしてその流れは第5楽章に入ってからより一層増す形となる。全ての楽器が奏でる音がまがまがしく鳥肌が立ってしまいそうなくらいに不気味でただただ恐ろしい。終結部に関しては盛り上がっていきダイナミックに締め括られるが、ダイナミクスやアーティキレーションの緩急でこれまでとは違う「幻想交響曲」を作り上げたことは間違いないだろう。
ヴァレーズ:イオニザシオン、2010年7月1,2日ライヴ録音
・・・この曲自体聴くのは大学の授業中にこの曲を聴いた時以来のこと。今では打楽器アンサンブルは大変多くの種類が存在しているが、この曲は西洋音楽として最も古い打楽器アンサンブル作品である。ヴァレーズの作品自体大量の打楽器を使用する曲が多いこともあってこういった曲も自然と聴きやすい気がしている。不規則なリズムやサイレンの音、不協和音など「騒音」とも呼ばれたまさにヴァレーズの代表的な作品の一つといえるだろう。演奏として細かいダイナミクス変化はもちろんのこと、細部まで聴き込むことができるのはライヴ録音ながら非常に素晴らしい。
近年ベルリオーズの「幻想交響曲」といえばピリオド楽器による演奏や第4楽章のリピートありなどの演奏や録音が非常に増えたが、たまには今回のような録音もいいなと聴いていて思った。ヤンソンスによる独自のアプローチは以前のレニングラード・フィル時と比べてもバイエルン放送響との演奏の方が安定感もよりあったと思う。また、現代音楽も少なからず指揮をしているヤンソンスによる「イオニザシオン」に関しても貴重な録音でなおかつ高音質盤ということで親しまれること間違いないだろう。
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