先週,歌舞伎座に「世界花結詞」を観に行ったとき,「芝浜革財布」をやっていることを知りました。これは,落語で有名な「芝浜」の歌舞伎版です。世界花結詞は第1部で2幕構成です。こちらは第2部ですので,改めてチケットを買う必要があります。私が歌舞伎をよく観に行くようになったのは,落語の影響です。これを見逃すわけにはいきません。十二月大歌舞伎がかかっている間に観に行く必要があります。1週間しか開いていませんでしたが,ネットでチケット予約したところ桟敷席をとることができました。中国人観光客が減ったせいでしょうか。こんなに簡単にチケットが買えるとは思いませんでした。入ってみると2席ずつのところ私の隣は空席でした。さらに私より後ろの6席も空席でした。ただし,5, 6席目は撮影機器が入っていたのでもともと使えない席となっていました。桟敷席はいつもならペットボトルを立てて置いておいても良いのですが,「今日は撮影があるので,ペットボトルは横にしてください」という注意がありました。とにかく2席の桟敷席を一人で独占でき楽でした。

フグ鍋を食べようとするが,命がおしい。乞食が来たので分けてやって乞食が死なないか確認することにする。その後乞食を見たら大丈夫そうなので食べてしまった。しかし実は,食べていなかった。その後,乞食は恵んでくれた人たちが死んでいないか確認に来る。「なら安心して食べられる」と言う。毒見させるつもりが毒見させられたという噺です。

 最初の場面で,二人でお互いどちらが先に食べるかというやり取りが楽しめました。乞食がまだ食べていないのに誤解して食べたときの食べる姿も目に浮かぶようでした。また,毒見させるつもりがさせられたという噺の逆転もうまくできています。私の好きな演目の一つです。

 寄席の楽屋にはネタ帳があるそうです。誰がどういう演目を演じたかを前座さんが書き入れる帳面です。寄席には「先に上がった演者と同じネタや、似た内容のネタをやってはいけない」という不文律があるそうです。そのため,噺家さんはネタ帳を見て,前の人と被らない演目を選びます。以前にこれを破ったような寄席がありました。一人が古典落語を語った後,別の噺家がその演目のパロディーをやりました。これはあらかじめ打ち合わせてやった感がありました。今回はそうではない感じがしました。春風亭三朝さんが「やかん」を演じました。知ったかぶりの大家が,色々な語源を説明します。戦国時代に急襲があり,あわてて,近くにあった水沸かし(やかん)を兜代わりにかぶって戦いをします。そこに矢が飛んできてやかんに当たって「カーン」と言ったので,以降,水沸かしをやかん(矢カーン)と呼ぶようになったと説明する噺です。三朝さんの高座の後,三遊亭圓歌さんが「夜間工事中」を演目をやってしまったのです。夜間工事で,土を掘ると埋まっていたやかんが工事器具に当たり,「カーン」と音がすることから「やかん」だと言う噺です。圓歌さんの「夜間工事中」は「やかん」のパロディーです。圓歌さん,やらかしてしまったのではなかと思いましたが,「パロディーだから演じる」という意思があったからかも知れません。

 歌舞伎に行ってきたばかりですが,12月中に寄席を見たいと行ってきました。1月は顔見世公演なので,落語自体は楽しめませんので…。歌舞伎座はチケットが取りやすくなりました。中国人観光客が減ったためかもしれません。一方寄席は日本語や日本の最近の話題を知らないと楽しめないので外国人はほとんどいません。そのため客が減ることはありません。2階席には生徒さんの団体が占めていました。1階席は満員でした。私の隣にでかい人が座り,私の席の20%以上はみ出てきていました。私は苦しくて横向きになったりしましたが,隣席の人は全く気を使ってくれませんでした。他所に移りたかったのですが空きがありませんでした。

 この演目は斬新で,ペンライトで応援することを推奨していました。またイヤホンガイドも推奨していました。それには理由がありました。「ライトを赤にしましょう」とか,指示が出るのです。また,大向うの掛け声もそのタイミングと掛け声の屋号の指示をしていたのです。まだオーソドックスの歌舞伎を楽しみたい私としては戸惑いがありました。ペンライトを使わない場面でも,あちこちでチカチカし,ちょっと気が散りました。ペンライトは1本3,500円の買い取りです。私の隣の中年の女性は2本も買ってあり,少し高い位置にある桟敷席に立って両手で振って楽しんでいました。ちなみにフィナーレでは撮影が許されました。この企画はもう何年もやっているそうで,これだけは観るという人がたくさんいるようでした。

 平将門の息女七綾姫(アニメキャラクターの初音ミク)と藤原純友の血をひく鬼童丸は、物の怪たちと力をあわせ源氏への復讐をたくらみます。しかし,結局は失敗に終わります。七綾姫は殺害されてしまいますが,悪霊のようになって復活します。それを退治する話へと変わっていきました。

 中村獅童が,「歌舞伎は江戸時代の庶民の娯楽であって,当時は新しいものをいろいろ取り入れてきた。同じように今から未来に向けて新しいものを取り入れても良いだろうとして,企画した」という旨の説明をします。予告では龍が観客席を飛び交います。しかし,現在の技術では無理なのでしょう。舞台収支に渡って初音ミクは平面のスクリーンにしか現れませんでした。今の技術ではこのような企画にはまだ無理があると思います。いっそのこと,初音ミクは平面でしか活動できないことにして,他の登場人物が平面の世界に引き込まれていくような筋にしたらどうかと思います。

 直前に歌舞伎座の桟敷席の予約ができました。桟敷席は2人ずつのドアが付いています。席は西桟敷6の2でした。ドアを開けると男物の靴がありました。隣には女性もおり,夫婦で間違えて座っているのかと思いました。こういう時は係員に伝えて処理してもらうのが良いです。係員がノックして私の席に座っている人に話しかけました。夫婦ではありませんでした。男性が出てきて,1等席の方に移動しました。どうやらその男性は6-2席だったようです。こちらは西桟敷6の2なので間違えたようです。ちょっと紛らわしい席の番号の付け方です。

 米子駅から米子空港まで鬼太郎列車に乗りました。境港市に水木しげるロードが完成したのに合わせて運行が開始されたとのことです。ほとんどの列車が鬼太郎のラッピング車両となっています。車内アナウンスも,ねこ娘などの声優が行っていました。各駅に鬼太郎の登場キャラクターの別名が付いていました。米子駅は“ねずみ男駅”でした。車内アナウンスはいっそのこと,次の駅の別名の妖怪についてもっと説明しても良いのではないかと思いました。そして,各駅には妖怪ごとのちょっとした企画を作り,観光客をすべての駅に降ろすようなことをしたら境線ももっと盛り上がるのではないかと思いました。

 足立さんのコンセプトに「庭園も絵画」というのがあるようですが,それを実現させた部屋がこれです。窓を掛け軸に見立てて,庭園を見せています。仏壇は足立家が実際に使ったものだそうです。うまくできていました。ちなみにこの時は外が非常に明るいため,カメラでは仏壇が真っ暗になってしまいました。窓を除く室内の露出を修正しました。人間の眼というのはよくできていますね。こんな処理をしなくても,この補正した写真のように観察できますから。

 これは屏風に描かれた絵です。前に書いた上村松園の師,竹内栖鳳の屛風画です。渋沢栄一が火念品として人にあげるため,竹内に制作依頼したそうです。しかし,何回催促しても,本人が「どこどこが気に入らない,修正したい」と先延ばしにし,遂に納品できなかったという曰くのある作品だそうです。芸術家の気性は難しいと感じます。

 これは海岸の雨上がりの情景を描いたものだと思います。漁師の使う籠が繊細に描かれていいるのと対照的に柳の葉が抽象的に描かれ,そのコントラストが「自然と共存する日本の風景」を描き出しています。柳の葉は「たらしこみ」という技法で描かれています。濡れた地に墨,絵の具を垂らして自然にできるにじみを利用した技法だそうです。絵の下手な私は小学校の頃,写生で前に塗った絵の具が乾く前に次の筆を当てたために滲んで困ったことがあります。プロはそういう現象まで技法に取り入れているのには驚きます。漁具,柳,燕,背景の色がとてもバランスよく感じました。

(AIによるスケッチ)