血縁関係,敵味方の関係が複雑ですが,ストーリーを振り返ってみました。
百姓夫婦の家で源氏の葵御前をかくまっています。葵御前は後の木曽義仲となる胎児を身ごもっています。かくまっていることを,百姓夫婦が子供として育てていた小万の夫,軍内が平家に密告します。平家からは実盛(さねもり)と瀬尾(せのお)が使わされます。最初は敵と思われていた実盛は見方をします。瀬尾は一旦帰ったそぶりをしながら,陰に隠れて家の中の出来事を見ていました。葵御前の子供が男だったら源氏の血筋を絶つため殺すと言います。一方,小万は源氏の正統な証となる白旗を守るためしっかりと握りしめて湖に沈みます。そのとき,実盛がその腕を切り落としていたのです。それが百姓夫婦のもとに戻ります。葵御前には男の子が生まれます。瀬尾はそれを聞き取り,再び家に入ってきます。実盛は源氏に理解を持っていて,「腕が生まれた」とごまかします(イラスト)。結局のところ瀬尾も味方だったのです。小万の子,太郎吉が瀬尾を殺そうとしますが,瀬尾はわざと殺されます。そして首をとらせ,手柄を上げたとして,ここで生まれた将来木曽義仲となる子の家来になります。
今回もいくつか新しく知りました。「瀬尾の戻り」という言葉があります。瀬尾が悪人かと思っていたら善人だったということです。水戸黄門でお銀が「裏切ったのではなく,表がえったのだ」と言うシーンを思い出しました。瀬尾が死んだ後,話をそちらに移すのに舞台としては死骸が邪魔になります。黒い幕で隠して舞台袖に引っ込みます。この黒い幕を「消し幕」と呼ぶのだそうです。黒子もそうですが,黒い布などは観客には見えないという設定になっているのだそうです。瀬尾が孫に首をとらせたところでひっくり返り首がころりと転がります。幕見席からは瀬尾役の尾上松緑の首と作り物の首とが両方見えてしまいました。両方が同時に見えないような倒れ方をしたのだと思いましたが,この倒れ方も芸の内だったらしいです。座ったまま後方にひっくり返る「平馬返り(へいまがえり)」というアクロバティックな演技だそうです。あれがアクロバティックな演技とは感じなかったのですが,よく見ればそうだったのかも知れません。
