「ふるさと再生日本の昔話」で「嫁の剃髪」という演目がありました。見ているとそれは落語「大山詣り」の「日本の昔話」版でした。仲間で喧嘩をよくする男がいて,一旦は今年の大山詣りには彼を外そうということになりましたが,「喧嘩を始めた者は坊主にする」という約束で大山詣りに出かけました。結局はその男,酒に酔って暴力をふるいます。その男が寝込んだところで,皆が男の髪をそってしまいます。皆は男が起きる前に帰路についてしまいます。遅れて起きた男は自分が坊主にされていることに気づき仕返しをすることにしました。駕籠に乗り,皆を追い越して長屋に戻ります。そこで,「他の皆は船がひっくり返って死んでしまった。おれは弔いに髪をそった。奥さん方も坊主になって冥福を祈った方がよい」と,うそをつき皆の髪の毛をそってしまいます。落語では「け(毛)が(怪我)がなくてよかった」が落ちとなります。

 「日本の昔話」は現在進行中の番組ではありませんが,毎週新しい昔話を考えるのは大変だったと思います。その中で落語を題材にするのは良いアイディアだったと思います。ただ,内容はちょっと子供向きではないように思いますが・・・。

 落語「青菜」では,お屋敷で一休みしている植木屋が隠居さんから声をかけられます。「大坂(昔の話なのでこの字でよいと思います)の友人からもらった柳蔭ですが、良かったらおやりなさい」と言われて植木屋は飲み始めます。「旦那,この酒は直しと言いませんか」、「そうです。大坂で柳影、こちらで直しと言いますな」という会話がありました。どんな酒か機会があったら味見をしてみたいと思っていました。酒売り場で見回しても見つかりませんでした。たまたまアマゾンで見かけたので買いました。口コミでは,「落語『青菜』で聴いたのでどんなものか興味があった」というのがほとんどでした。

 

 「お直し」ともいうのは,酒を飲みやすく直したという意味らしいです。本みりんとコメ焼酎をブレンドして作られるそうです。甘いです。アルコール濃度が20%と高いです。雰囲気を考えて江戸切子に入れて飲んでみました。アルコール度数が高いので舌に当たった感じはブランデーのようにも感じられました。ちょっと濁っています。そのせいと,甘いところから甘酒のような味もしました。酒には弱いので,少しずつ飲んでいきたいと思います。デザートワインと考えれば食後に飲むのがよいのかもしれません。

 

 PCが壊れ,裏表先代萩の最後の幕の原稿がなくなってしまいました。折角なのでこの記事を作り直しました。

 お家乗っ取りをたくらむ二木弾正は結局細川裁判によりたくらみが明らかにされました。弾正はこの裁判で追及した渡辺外記に恨みを持ちやけっぱちになり外記を襲います。場所が幕府の問注所のため,刀を抜くことはどんな場合も禁止されています。弾正はやけっぱちなので刀を抜きますが,外記は抜けません。そこで扇子で身を守ります。しかし不意打ちによりすでに致命傷を負っています。弾正の額の傷は,御殿床下の場で鼠に化けていた時,男之助の鉄扇に打たれた時の傷です。この歌舞伎では扇は鉄製と木製(竹製?)の両方が出ました。前者は戦いを前提にした扇であり,後者は平時の普通の扇です。外記は必至で受けるので扇はぼろぼろになったことでしょう。

 前の記事で述べたように,本当は細川裁判の場を観たかったです。このたくらみが明らかになるのは連判状で,前の幕では弾正が奪っていたのです。そののち,その連判状が裁判でどのような形で現れるのか見たかったです。

 この歌舞伎の題目の裏表先代萩の裏表とは、大名家の場面と庶民の場面が交互に出てくるということです。この場は庶民のお裁きで裏に相当します。山名宗全は陰謀派なので、乳人正岡の姪のお竹を犯人に仕立てようとします。そこに細川勝元が証拠を持って小助が犯人であることを明らかにします。AIによると、お竹が濡れ衣を着せられて自害するバージョンもあるらしいです。今回観たバージョンが、ここで書いた通り爽快な結末となりました。悲惨な結末よりこういう方が良いですね。

 今回座った桟敷席は前日に取ることができたことをすでに書きました。その時2席空いていました。いつも座るやや後ろの方と、前から3番目の所でした。今回は、すっぽんの良く見えるところですっぽんを観察したいと、前から3番目のところをとりました。すっぽんと言うのは、花道の前の方にある昇降する台です。床下から役者がせりあがるとき、すっぽんが首を出すようだということで名づけられたそうです。すっぽんを使った場面は床下の場で二木弾正が連判状を奪って御殿の床下に潜り、男の助と争って鉄扇で額を割られた後です。ねずみ姿ですっぽんから一旦消えた後、二木弾正の姿に戻ってせりあがってきました。ここで見得を切る場面でした。このすっぽんは妖怪や化物など妖しい者が出入りするのに使われるそうです。前から3番目の桟敷席から見下ろすようにしっかりと観ることができました。

 歌舞伎座四月の大歌舞伎の桟敷席はすでに書いた通り、前日にも予約できました。しかし、5月分について調べてみると全く空きがありませんでした。襲名披露があるからでしょうか。ただ、今日調べてみると2か所だけ空きが見つかりました。劇場側で特別な会員用に、最初はブロックして需要がないことが分かった時点で開放するのかもしれません。今後の空き状況を観察していきたいと思います。

 ねずみに化けた二木弾正が連判状を正岡から奪い床下に隠れると、そこには男之助がいました。陰謀派におとしめられ失職しひそかに床下から幼君を見守っていたのです。鉄扇でねずみの二木弾正の額を打ち傷つけます。それでも二木弾正は連判状をもったまま逃げ切ります。この場もストーリーとしては不要な場だったと思います。2人の戦いが見せ場だったということだけのようです。

 魯山人のドラマを偶然に同時期に観た話をすでにしました。これと同様偶然に、落語で先代萩のことを聴きました。文化放送の志の輔ラジオ落語DEデートで録音した8代目雷門助六の七段目の落語でした。まくらで、歌舞伎好きの男が犬を先代萩の男之助のように踏みつけてみえを切りますが、犬が吠えます。男は「芝居心のない犬だ!」と言い切ったという話です。

 こちらは時期が重なった話ではありませんが、落語「将棋の殿様」の“てっせん”を思い出しました。今回の歌舞伎では男之助が持っていました。落語では殿様が都合が良いようにルールを変えて家来と将棋をして、負けた家来の頭を“てっせん”を打ち付けます。この落語を聴いていて“鉄線”かとも思いましたが、鉄扇だろうと理解するようななっていました。実際この歌舞伎で鉄扇がでてきました。実戦にも使える扇のようです。

 お家乗っ取りを謀る仲間が管領一行として毒の入った菓子を見舞と称して幼君に食べさせようとします。幼君が食べなければならなくような状況になったとき、乳人正岡の子が食べてしまいます。幼君に食べさせなくする忠心からだったのです。毒薬で苦しみだしますが、一行の中の八汐がそれをごまかすために不届きものとして短刀で殺してしまいます。八汐は正岡が取り乱さなかったのを見て、「お前も仲間だったのか」と連判状を渡します。実はこれは図り事で、正岡の本当の様子を確認するための芝居でした。八汐が見えなくなったところで正岡は嘆き悲しみます。それをそっとうかがっていた八汐は正岡を襲いますが、逆に殺されてしまいます。正岡としては息子の敵討ちができたのです。その際、大きなねずみに化けた二木弾正が連判状を奪って床下へと隠れます。幼君側としては敵の全容が分かるところでしたが、また奪われてしまいました。

 幼君鶴千代は毒殺の危機に瀕していました。乳人正岡はそれを防ぐため出された膳を食べさせないようにしていました。息子千松は毒見係としてともにいました。鶴千代と千松はおなかが空いてたまりません。正岡は、その場にあった茶の道具を使ってご飯を炊こうとしていました。そこに、管領がお見舞いと称して毒入り菓子を食べさせに来るのです。

 NHKドラマ10の「魯山人のかまど」で魯山人がロックフェラーをもてなすのに、茶の道具を用いてご飯を炊いて差し出す場面がありました(ドラマではありますが、史実に基づいた出来事だったのかも知れません)。偶然にも、この歌舞伎を観た後でそのドラマを観ました(ビデオだったので放映は先でしたが)。この歌舞伎は昔から何べんも上演されていると思います。もしかしたら魯山人がこの歌舞伎(もちろん今回の歌舞伎ではなく)を観ていて自分の料理のヒントにしたのかも知れません。

 一幕第2場からいよいよ本題に入ってきました。お竹は父親のために医者の道益に借金をしようとしますが、道益の下男、小助のたくらみの下、借用証書を書かされます。道益が足利の幼君の毒殺の薬を用意する見返りとして200両を受け取ったのを小助は見ており殺害して奪い、お竹を犯人に仕立てようとたくらんでいたのです。そして道益は小助に殺されます。200両のうち2両をお竹に渡し、残りは殺害の際に破られた、血の付いた袂の布に包んで縁の下に隠します。これより前の場面で犬が草履を床下に隠して困るというシーンがありました。これが伏線なのでしょう。198両は犬が咥えて、お竹に無心に来た父親の花の売り篭の中に持って行ってしまいます。この犬(役者がき着ぐるみを着ている)が登場した時、笑いが生じました。ちょっとちんけな感じの笑いと思いました。この後の幕で、父親が正直者で、198両+2両を届けたことが悪事を暴くことになるのです。

 小助がお竹に借用証書を書かせたのと、お竹の下駄を隠したのがお竹に罪をかぶせる工作だったのですが、ちょっと理解しにくかったです。