若旦那が茶屋で出会ったお嬢さんに一目ぼれして恋患いにかかってしまう。お嬢さんの手掛かりは,お嬢さんから渡された,短冊に書かれた崇徳院のうた。若旦那の友達がそのうたを手掛かりにお嬢さんを探して回る。一方,お嬢さんの方も恋患いにかかって店のものが探し回っていた。探している2人が床屋でたまたま会い,自分の方に連れて行こうと争いになり,鏡を割ってしまう。互いに,見つけたお礼がかかっているからだ。オチは,崇徳院のうたをもじって,床屋の主人に「割れても末に買わんとぞ思う」と言い訳をする。

 崇徳院は,他に笑福亭仁鶴,二代目三遊亭百生など3人の噺を聴いていますが,それらではお嬢さんが短冊に崇徳院のうたを書いて,若旦那に渡します。扇游さんのは,桜に結んであった短冊がたまたま風で落ちてきたのをお嬢さんが拾い,若旦那に渡します。こちらが自然だと思います。恋患いになるほどのお嬢さんが,そんなに積極的に,「末には一緒になれる」などといううたを書いて渡すでしょうか。たまたま風で飛ばされた短冊のうたを見て,自分の心持を表していると思い,そっと置いていったのが自然だと思いました。