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【報告】講演会 戦争する「普通の国」へ?

【報告】講演会 戦争する「普通の国」へ?
安保法制を徹底解剖する
塚田晋一郎さん


5月9日、国連・憲法問題研究会講演会『戦争する「普通の国」へ?安保法制を徹底解剖する』を行った。講師はピースデポと集団的自衛権問題研究会で活動する塚田晋一郎さん(ピースデポ事務局長代行)。

塚田さんは「国別軍事費を見ると、日本はどう見ても軍事大国。武器輸出のトップ5は米、ロ、独、中、仏。武器輸出三原則撤廃で日本も武器輸出へ。


安倍首相たちは「わが国を取り巻く安全保障環境の急速な悪化」という言い回しをよく使う。周辺の安全保障環境というのは多国間で形成される。このような言い方は、「日本はいい国なのに周りが悪い」という冷戦思考そのもの。


この2年半、安倍政権がやったことは、13年11月、日本版NSC設置、国家安全保障戦略、防衛計画の大綱・中期防。12月6日特定秘密保護法。14年4月1日武器輸出三原則撤廃。7月1日、集団的自衛権閣議決定。10月ガイドライン改定中間報告。12月、特定秘密保護法施行。15年1月、軍事偏重の宇宙基本計画決定。3年連続増加の防衛予算。2月、政府開発援助(ODA)の外国軍支援解禁の閣議決定。4月27日、日米ガイドライン改定。5月14日安保法制閣議決定。


集団的自衛権の新3要件で新たに武力行使可能となる新事態が存立危機事態。日本は多くを輸入に頼っているので、なんでも存立危機事態になる。新3要件は歯止めにならず、国民が気づかず、明示されないまま、自衛隊がずるずると海外へ出ていく。無制限の武力行使につながりかねない。

安保法制の問題点は「多層的違憲性」。第一に立憲民主主義の否定。第二に法規範の優位性の無視。3つ目は一票の格差問題。14年12月総選挙では2割の有権者しか、自民党に投票してないのに自民党が議席の6割を占めている。


集団的自衛権と集団安全保障は混同されることも多い。個別的あるいは集団的自衛権行使は安保理決議に基づく集団安全保障措置に切り替わらないといけない。そういう点も、現在は全く話されていない。
集団的自衛権の名の武力行使は大国の他国侵攻の口実。ソ連のアフガニスタン侵攻。アメリカのグレナダ侵攻。湾岸戦争、アフガン戦争、イラク戦争。

全ての国が集団的自衛権を持つとされたが、実際は乱用されてきた例外的なもの。集団的自衛権を使う国は、決して「普通の国」ではない。
日本が憲法解釈を変えて集団的自衛権を使えることとなった場合、アメリカと一緒に地球の裏側まで行って、海外で戦争する国に日本がなる。


97年ガイドラインでは、平素、日本有事、その間の周辺事態という3分野。4月に改定された15年ガイドラインは、日本の「『積極的平和主義』に対応し、米国のアジア太平洋地域へのリバランスと整合する」。ガイドラインによって安保条約の極東条項の死文化の度合いが進んだ。


与党合意で、武力攻撃事態、存立危機事態、重要影響事態、国際平和共同対処事態という4つの事態がもりこまれ、武力攻撃事態以外の3つの事態が新たに「発明」された。既成事実化されようとしている。
安保法制では10本の法律が「平和安全法制整備法案」として一本。海外派兵恒久法が「国際平和支援法案」。

公明党の要望で入った「歯止め」は実際には何の歯止めにもならない。
日本有事に至らない段階で自衛隊が米軍・他国軍を守る。日本が平和国家であった最たる所以である、「専守防衛」からの逸脱になる。
他国軍への支援活動は、①武力行使との一体化を防ぐための枠組みがあること、②原則国会の事前承認があることの2つが要件とされている。実際はたがをはめようがない。「原則、国会の事前承認」ということは例外がある。


「国際平和支援法案」には4つの要件もやはり歯止めにならない。

最初に、戦後初めて日本人が戦闘行為で他国民を殺し、自分たちも殺される状況を生むのは、集団的自衛権の行使というよりも、PKOなど「国際協力」の名の下におこなう行為だろう。

与党合意では在外邦人救出がある。安倍首相は、テロリストに拘束された邦人を救出するために自衛隊を使うとの趣旨の発言をし、自衛隊の新聞である「朝雲」からも批判された。


アフガン・イラクの失敗がISをつくり出した。安保法制は失敗から何も学ばず、180度真逆のことをやっている。
国会議席から言えば、強行採決をすれば何でも通ってしまう。しかし、絶望していることにも意味はない。反対は言い続けて、ちょっとでも止めるために努力していく。そういった姿勢が、いま私たちに問われている」と講演。


質疑応答では安保法制だけでなく、公明党はなぜ賛成か民主党政権の評価などについて答えていました。


講演要旨は、新聞テオリア33号(2015年6月10日)に掲載。
講演全体は報告集を発行予定

戦争する「普通の国」へ?~安保法制を徹底解剖する

国連・憲法問題研究会講演会
戦争する「普通の国」へ?~安保法制を徹底解剖する


講師

 塚田 晋一郎さん(ピースデポ事務局長代行、集団的自衛権問題研究会研究員)


日時

 2015年5月9日(土)午後6時15分開場、午後6時半~9時


会場 文京シビックセンター3階会議室A
  (後楽園駅 ・春日駅)
http://www.city.bunkyo.lg.jp/sosiki_busyo_shisetsukanri_shisetsu_civic.html


参加費 800円(会員500円)


連絡先 東京都千代田区内神田1-17-12勝文社第二ビル101研究所テオリア
TEL・fax03-6273-7233
email@theoria.info



戦争する「普通の国」へ?~安保法制を徹底解剖する


 安倍政権は集団的自衛権を行使するための安保(戦争)法制を今国会で成立させようとしています。昨年7月の集団的自衛権行使「合憲」の閣議決定を「法制化」するためです。政権は統一地方選挙後の5月半ばの国会提出、今国会での成立をめざしています。
 安保関連法制は、自衛隊派兵恒久法の制定、周辺事態法・武力攻撃事態法・PKO協力法・自衛隊法などの全面改定など、自衛隊の海外派兵と海外での武力行使を大幅に拡大する内容になろうとしています。
 安倍政権が制定を目指す安保法制にはどのような問題があるのか。集団的自衛権問題研究会で活動する塚田晋一郎さんに講演してもらいます。 (2015年3月)


塚田 晋一郎 つかだ・しんいちろう NPO法人ピースデポ事務局長代行、集団的自衛権問題研究会研究員。
1983年、東京都生まれ。明治学院大学国際学部卒。2008年から、ピースデポで核軍縮や沖縄の米軍基地問題等の調査・研究に従事。2014年から、NGO関係者・研究者・ジャーナリストによる「集団的自衛権問題研究会」でも活動中。ピースデポ『イアブック核軍縮・平和』刊行委員。「オスプレイ配備の危険性」(岩波書店『世界』12年7月号)、「戦後日本初の海外軍事基地」(同12年10月号)、「2013年の世界軍事費支出」(同14年6月号)などを執筆。


【報告】日本軍「慰安婦」問題―何が問われているのか

国連・憲法問題研究会講演会
日本軍「慰安婦」問題―何が問われているのか

2月7日、講演会「日本軍「慰安婦」問題―何が問われているのか」を行った。講師は梁澄子さん(日本軍「慰安婦」問題解決全国行動共同代表)。


講演では「2014年8月5日付『朝日新聞』の特集を関 する事態にうんざりしていると思う。朝日新聞による「慰安婦」問題特集の後、『慰安婦はなかった』という言説がインターネットでも、国会 でも続いている。
吉田証言に疑問があることはかなり以前から判っていた。朝日新聞は安倍政権下だから、『特集記事』をやらざるをえないところに追い込まれた。


英ガーディアン紙は『日本は、ナショナリストの安倍首相のもと、「南京大虐殺」、戦争捕虜の 処遇、慰安婦の強制など、自国の現代史において論議の的になる事例について、問題を小さく見せようと試みている』と報じた。
安倍首相や右派の人たちの言い方だと、朝日新聞は国際世論や隣国の外交政策も左右できる存在 ということになるが、そんなわけがない。

日本の立場を悪くしているのは政治家の発言と政府の間違った「対外発信」。
『官憲による暴力的な強制連行』がなければ日本政府に責任はないと主張してきた日本政府自ら が、国際世論の常識を刺激した。国際世論の常識は、女性たちが意に反して軍人たちの性の相手をさせられたのであれば、たとえ連行過程が人 身売買であれ、甘言によって本人たちが了解して行ったものであれ、それは女性に対する重大な人権侵害だというもの。
保守派の在米ジャーナリストも『軍による強制連行はなかった』という訂正に成功しても、全く 『日本の名誉回復にはならない』。そのように主張することで、21世紀の現在の日 本という国の名誉を著しく損なうと指摘している。


日本軍「慰安婦」問題を国際世論化したのは、被害女性たちの勇気ある告発とその後の闘い。私 も30年以上前に吉田氏の本を読んだが、その時は運動を始めていない。
慰安婦問題の運動を始めたのは金学順さんら被害当事者が立ち上がったから。
慰安婦の運動は、右派が主張するような『反日運動』ではない。戦時下における女性への暴力を 根絶し、ひいてはあらゆる暴力をなくして世界平和を求めるもの。


慰安婦のハルモニたちは、戦時下の性暴力被害に苦しむ女性たちを支援するために「ナビ基金」をつくり、コンゴなど戦時下の性暴力被害に今も苦しむ女性たちを支援している。
ベトナム戦争時の韓国軍の性暴力の被害への支援、在韓米軍基地村の米軍慰安婦の裁判も行って いる。日本が加害者の問題だけを取り上げているのではない。
日本軍「慰安婦」問題解決には、朝日新聞の主張にあるような「けんか両成敗」的な考え方では解決できない。まず加害者が加害事実を認め、認めた事実に基づいて被害者が受け入れられる謝罪をすることが前提」


質疑応答では、証言をどう見るか、慰安婦問題への思いなどさまざまな意見が出された。

講演録はテオリア31号=2015年4月号、32号=15年5月に掲載予定