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講演会 日本軍「慰安婦」問題―何が問われているのか

国連・憲法問題研究会講演会

日本軍「慰安婦」問題―何が問われているのか


講師 梁澄子さん(日本軍「慰安婦」問題解決全国行動共同代表)


日時 2015年2月7日(土)午後6時15分開場、午後6時半~9時


会場 文京区民センター3階C会議室 (春日駅・後楽園駅)


参加費 800円(会員500円)

連絡先 東京都千代田区内神田1-17-12勝文社第二ビル101研究所テオリア
TEL・fax03-6273-7233
email@theoria.info

 2015年、第二次世界大戦での日本の敗戦から70年(植民地にとっては解放70年)。日本国家の無謀な侵略戦争によって2000万人のアジア人、300万人の日本人が命を落としました。
 敗戦70年の日本社会の状況は深刻です。日本の侵略戦争・植民地支配を正当化し、戦争被害者を攻撃・中傷する言説・ヘイトスピーチがネット・メディアにあふれています。2014年夏には海外での戦争に参戦するため集団的自衛権行使を「合憲」とする閣議決定が行われました。
 日本軍「慰安婦」問題では、朝日問題に乗じて、日本国家の加害の歴史をなかったことにしようという歴史修正主義がますます強まっています。その先頭に立っているのが時の政権です。
 安倍政権は、「慰安婦」問題をいわゆる「強制連行」があったかどうかにねじ曲げ、「河野談話」を事実上骨抜きにしようと躍起になっています。夏には安倍カラーを打ち出した「安倍談話」を出そうとしています。
 だが、第一次安倍政権の時、米下院など各国議会から元「慰安婦」への日本政府の謝罪を求める決議が相次いだように、問題を連行形態のみに矮小化して「慰安婦」制度を正当化する主張が高言されているのは日本国内だけです。欧米からさえ、安倍の歴史修正主義を警戒する声が上がっています。日本軍「慰安婦」制度が女性を奴隷化し正当化できない重大な人権侵害であることは国際的常識です。
 日本軍「慰安婦」問題をめぐって何が起きているのか。そして、何が問われているのか。梁澄子さん(日本軍「慰安婦」問題解決全国行動共同代表)に話していただきます。

梁澄子(ヤン・チンジャ)
日本軍「慰安婦」問題解決全国行動共同代表、戦争と女性の人権博物館(WHR)日本後援会代表、YOSHIMI裁判いっしょにアクション(YOいっション)共同代表。通訳・翻訳・語学講師。
1990年から日本軍「慰安婦」問題に関わる。1993年提訴の在日朝鮮人「慰安婦」被害者宋神道さんの裁判支援をおこない、2007年にドキュメンタリー映画『オレの心は負けてない』製作。共著書に『海を渡った朝鮮人海女』(1988年、新宿書房)、『朝鮮人女性が見た慰安婦問題』(1992年、三一書房)、『もっと知りたい慰安婦問題』(1995年、明石書店)、『朝鮮学校ってどんなとこ?』(2001年、社会評論社)、『オレの心は負けてない』(2007年、樹花舎)等。

【報告】浅井基文さん講演「日本はどこに向かうか?-集団的自衛権行使のワナ」

日本はどこに向かうか?-集団的自衛権行使のワナ
浅井基文さんが講演

11月29日、浅井基文さんの講演会「日本はどこに向かうか?-集団的自衛権行使のワナ」を開催。


 浅井さんは「国際法上の概念としては個別的自衛権と集団的自衛権に本質的な違いがあるわけではないが、戦後日本で区別されてきたのは憲法が体現する平和国家観と国連憲章が前提としている伝統的国家観との間の質的違いに基づく」と指摘。

 続いて、戦争違法化の歴史と国際的な軍事力行使にかかわる実態、日本国憲法と集団的自衛権との関係、安倍外交・安全保障政策の問題点、私たちの憲法・安全保障問題にかかわるアプローチのあり方について話した。

 さらに「国連憲章の「国家の自衛権」という考え方は、人民主権が確立した今日、改めなければならない。「主権者(人民)の自衛権」と「国家の自衛権」との間の決定的な違いがある。9条の主語は「日本国民」で「日本国」ではない。安倍政権が狙うのは人民主権をくつがえして国家主権に日本を逆戻りさせること。だから、重要な中身の一つとして「国家の自衛権」を強調する。主権者(人民)の自衛権において、他者を守る権利である「集団的自衛権」という考え方が成立する余地はない」
 そして、図解しながら、浅井さんは「冷戦終結後、集団安全保障体制はやせ細り、集団的自衛権行使が「拡大」し続けてきた。 9条が「国家の自衛権」を認めているという通説的な理解には同意できない。定められているのは「主権者(人民)の自衛権」は否定されていないということだ。」


ポツダム宣言は大前提


 「戦後日本は、ポツダム宣言を忠実に履行することを国際社会に約束する最高法規としての憲法を定めた。憲法下の固有の自衛権は国連憲章が規定する個別の自衛権よりもはるかに制限的なものだが、アメリカの対日圧力によって、「固有の自衛権」についての憲法解釈の幅を広げる解釈改憲が続いてきた。アメリカの対日軍事圧力はアメリカがNATOで作り上げた3度にわたる戦略概念(1991年、1999年、2010年)を日米同盟においても実現するという政策に基づいて行われてきた。

 安倍政権が目指す解釈改憲は、集団的自衛権に関して1990年代以後にアメリカが勝手に拡大してきた内容をそのまま鵜呑みする。あらゆる国際的な軍事力行使に参加するのが「積極的平和主義」の本質。
 「グレー・ゾーン」問題は、安倍政権が「中国脅威論」を煽って中国との軍事対決ひいては衝突そのものをも視野に収めているということ。


 安倍政権の目指すものは戦後政治への引導渡し。国内的には「敗戦史観」を皇国史観に戻し、国民>国家から国家>国民へ。象徴天皇から元首天皇へ。日本国憲法から「自主」憲法へ。国際的には、「力によらない」平和から「力による」平和(積極平和主義)、平和外交から「価値観」外交へ。

 安倍の外交・安全保障政策はポツダム宣言の全否定であり、戦後国際秩序に対する挑戦。私たちが憲法・安全保障問題にかかわるアプローチのあり方として、戦後日本の出発点がポツダム宣言であることを確認する必要がある。平和憲法はポツダム宣言の具体化。ポツダム宣言は戦後日本の大前提であり、背馳する内容の憲法改正を行うことは、米英中露の同意なしではできない。
 戦後70年を経た国際環境は根本的変化し、普遍的価値としての人間の尊厳(人権・デモクラシー)が国際的確立し国際的相互依存の不可避的・不可逆的に進行した。戦争は違法化され、あってはならない選択肢。


 国際環境の根本的変化を踏まえて、これまでの憲法論及び「集団的自衛権行使論」(「脅威論」「抑止論」)の有効性を検証する必要がある。「中国脅威論」「北朝鮮脅威論」は虚構。「脅威論」に引導を渡す国際相互依存の不可避的・不可逆的に進行している。
 冷戦終結後の日本国内の「抑止論」は世界スタンダードからかけ離れた珍論。普遍を持たない日本の思想は、自己中心主義、他者感覚を育てられない(天動説的国際観)物事の判断が常にご都合主義となる。「憲法も安保も」「非核三原則もアメリカの核抑止力も」「安保(日米同盟)は必要だが、基地受け入れはゴメン」などの矛盾した選択が出てくる。このため国際スタンダードの歴史感覚が育たない。


 そして、21世紀にふさわしい憲法論と安全保障論を提起する必要がある。大前提としては、ポツダム宣言を踏まえた憲法論・安全保障論であることが必要。新国際政治経済秩序建設のための外交的イニシアティヴと志を同じくする国々との連携が求められている」と述べた。


 続く質疑応答では、憲法第9条とは逆行する事態にどうしたらいいのかという問いに対して、「千里の道も」と答えた。

60集「集団的自衛権で「殺し殺される」自衛隊へ」(清水雅彦)

国連・憲法問題研究会報告第60集
集団的自衛権で「殺し殺される」自衛隊へ
解釈改憲が戦争につながるカラクリ
清水雅彦

 2014年11月発行
 500円


■2014年7月1日、安倍政権は歴代政権が違憲としてきた集団的自衛権の行使を「合憲」とする閣議決定を強行。戦後平和主義、立憲主義を根底から覆そうとしている。集団的自衛権行使によって自衛隊は海外で「敵」を殺傷する「殺し殺される」軍隊へと変質しようとしている。清水雅彦さん(日本体育大学教授、憲法学)が講演。

◎目 次
着々と進む「戦争する国」への道/安保法制懇の設置/集団的自衛権へ六事態を追加/集団的自衛権へ「基本的方向性」/一五事例で武力行使を拡大/ゴールにある自民党改憲案/九条をどう解釈するか/自衛隊合憲とした政府解釈/幸福追求権口実に集団的自衛権行使へ/戦争違法化への世界の流れ/自衛権を制限した国連憲章/日本国憲法と国連憲章の断絶面/侵略の口実は集団的自衛権/集団的自衛権の憲法上の問題点/安保条約上の問題点/改めて考える日本国憲法の平和主義/集団的自衛権に反対を

○質疑応答
○資料






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