国連・憲法問題研究会ブログ -15ページ目

講演会 福島原発告訴団は何を訴えるのか

国連・憲法問題研究会講演会
福島原発告訴団は何を訴えるのか


講師
片山薫さん
(小金井市議会議員、福島原発告訴団関東事務局)


日時
2012年10月15日(月)午後6時半~9時


会場
文京シビックセンター4階会議室A
(後楽園駅・春日駅・水道橋駅)
http://www.city.bunkyo.lg.jp/sosiki_busyo_shisetsukanri_shisetsu_civic.html


参加費 800円(会員500円)


国連・憲法問題研究会
東京都千代田区富士見1-3-1上田ビル210研究所テオリア
TEL・FAX03-3230-3639
http://ameblo.jp/kkmk-blog
http://www.winterpalace.net/kkmk/
peaceberryjam@gmail.com



福島原発告訴団は何を訴えるのか


6月11日、福島の市民たち1324人の福島原発告訴団は「3・11福島原発事故」の加害者である東京電力役員、官僚、御用学者など33人を刑事告訴しました。

 2011年3月11日の「福島原発事故」によって16万人以上がふるさとを追われ、その何倍もの人々が日常生活・生活基盤を奪われました。「3・11」は「原発安全神話」にもとづいて、原発を押しつけてきた原子力ムラの面々が引き起こした「人災」=権力犯罪・企業犯罪そのものです。

 原発告訴とは、「司法の力で原発事故の責任を明確にすることが、被害者である私たち被災者が前に進んでいく第一歩。刑事告訴で一人ひとりの被害を明らかにし、責任を明確にしていく」(武藤類子・福島原発告訴団団長)ことです。責任明確化なくして、「再生」も「脱原発」もありえません。

 人災の責任の明確化を求める世論に押されて、検察はようやく告訴を受理しました。この動きを拡大して刑事責任追及を実現するために、福島原発告訴団は全国に呼びかけて、1万人の第二次告訴をめざしています。関東事務局として活動する片山薫さんにお話ししていただきます。


片山薫 かたやまかおる。小金井市議会議員。福島原発告訴団関東事務局

紹介・グローバル資本主義の行方とグローバル対抗運動の課題

「研究所テオリア」発足記念シンポジウム
グローバル資本主義の行方とグローバル対抗運動の課題


パネリスト
 田原牧さん(東京新聞特報部デスク)
  「ジャスミン革命・フクシマ・東京――民衆闘争の国際的同時代性」

 白井聡さん(現代政治思想)
  「激動の時代の始まり、いま何をなすべきか?」


司会 中村勝己(20世紀イタリア思想史)

日時 9月22日(土)午後1時~4時(開場12時半)

会場 文京シビックセンター4階ホール(後楽園駅・春日駅)
http://www.city.bunkyo.lg.jp/sosiki_busyo_shisetsukanri_shisetsu_civic.html

参加費 1000円(テオリア会員500円)


パネリスト紹介
田原牧(たわら・まき)さん 東京新聞特報部デスク。同志社大学一神教学際研究センター共同研究員。著書に『中東民衆革命の真実』(集英社新書)ほか

白井聡(しらい・さとし)さん 現代政治思想。文化学園大学教員。著書に『未完のレーニン』(講談社)


主催 研究所テオリア(仮称)準備委員会
東京都千代田区富士見1-3-1上田ビル210
TEL・fax03-3230-3639


テオリアは古典ギリシャ語Θεωριαに由来する観察・省察などを意味する言葉。理論(theory)の語源です。


報告・「生活保護バッシング」から問う私たちの社会

国連・憲法問題研究会講演会
「生活保護バッシング」から問う私たちの社会


8月4日、講演会『「生活保護バッシング」から問う私たちの社会』を行いました。
講師は村田悠輔さん(生活保護問題対策全国会議幹事、東京自治問題研究所研究員)。



村田悠輔さんの講演


「芸能人の親族の生活保護受給などをきっかけに生活保護へのバッシングが行われている。
バッシングの背景には、生活保護制度とは何かが知られていないということがある。

生活保護制度とは「日本国憲法第25条に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする」(生活保護法第1条)。保護実施は自治体の第1号法定受託事務。


保護はどうやって開始されるか。申請による保護の開始というのが原則。窓口で追い返されて餓死にいたったというケースで、行政は申請がなかったと言うが、仮に申請がなくても急迫している時は保護しなければならないという制度がある。


そして、保護の申請権は絶対的に保障されている。行政手続法第7条では「行政庁は、申請がその事務所に到達したときは遅滞なく当該申請の審査を開始しなければならず」と定めていて、「申請を受理したとき」ではなく「申請が到達したとき」となっている。だから、申請は決められた形式で行わなければならないわけではなく、自分で作った用紙でも口頭でも申請は有効。
生活保護は無差別平等が原則。生活困窮に至った理由は一切問わない制度。いい人か悪い人かは関係ない。


生活保護に関するウソはたくさんあり、マスコミの記者も信じていることが多い。

1つは「ホームレスは生活保護の対象外」というもの。
「生活扶助は、被保護者の居宅において行うものとする」(同法30条1項)とあるが、これは保護開始後のこと。生活保護を受けて、アパートに入ればいい。
「借金があれば生活保護は受けられない」「家賃の高い家に住んでいると生活保護は受けられない」「65歳以上でないと生活保護は受けられない」などはいずれもウソ。要件を満たしていれば誰で受けられる。


 では、保護の要件は何か。「保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる」(同法4条1項)とある。
 
 よく稼働能力を活用しているかどうかが問題になるが、働けても働く場所がなければ稼働能力を活用してないとはいわないわけで、就労できないことを排除の理由とすることはできない。資産の活用で問題になるのは自動車。基本的にダメだったが、最近は要件緩和の方向になっている。だが、一般生活用品としての自動車の保有は原則として認められていない。持ち家も、東京の場合は売却額が約3500万円以内なら、家を持ったまま保護を受けられる。保護の要件に親族の扶養は入っていない。


生活保護は高いか


生活保護を理解するためには、最低生活費を自分で計算してみるといい。
 東京(級地一)で20~40歳の一人暮らしなら、生活扶助Ⅰ類(一般生活費4万270円)+Ⅱ類(光熱水費などで4万3430円)+加算(母子加算など)+住宅扶助+教育扶助からなる。マスコミは住宅扶助は5万3700円支給されるように報じているが、これは上限。支給されるのは実費で家賃4万なら4万。ミスリードされている。

また一時扶助として、生業扶助、医療扶助、介護扶助、出産扶助、葬祭扶助、臨時的一般生活費がある。高校の学費は教育扶助ではなく生業扶助になる。

 教育扶助は小学生なら、2150円+学級費等640円以内+学習支援費2560円
中学生なら、4180円+学級費等780円以内+学習支援費4330円
他に教材費、給食費、通学交通費がある。

生業扶助高校就学費5300円+学習支援費5010円

高校の費用が出るようになったのはようやく2005年から。昼の大学に行くと保護費からは除かれる。

生活保護基準は高いか低いか。生活保護法2条は「この法律により保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない」と定めている。生活保護基準は「食べていくのがやっと」という額ではいけない。

 日本の貧困観は貧困。生活保護は極貧の人が受けるものと思っているが、そうではない。

生活保護の原則は「原則収入認定の原則」。生活保護は、最低生活費より収入が少なければ、その分を補うという制度。生活保護基準に足りない分が給付される。働いて収入があれば、その分は引かれることになる。

ところがマスコミ関係者もそのことすら知らず、収入がゼロでないと生活保護は受けられないと誤解している人もいる。給料が生活保護以下の人は、その分生活保護を受ければいい。そういう制度。収入があれば、収入認定されて、その分が減額される。
働いていると勤労控除されて手元に残る金額は増えるが、勤労控除があることを福祉事務所がをきちんと伝えていなく、不正受給扱いされたりする。


日本の場合は貯金が最低生活費を下回らないと生活保護を受けられないが、ヨーロッパだと百万円貯金があっても収入がなければ生活保護を受けられる。日本の制度では、困窮者を受け止めるのが遅くなる。

保護を受けるとどうなるか。保護費は差し押さえ禁止で課税されなくなる。ケースワーカーが訪問調査に来る。保護費はその人の状態によって変動する。
保護が廃止されるのはどういう時か。一番多いのは、死亡など。

実際は被保護者の無知に付け込んで、保護が必要な状態なのに辞退届を書かせて、辞退に追い込む違法行為が横行している。いくつも裁判になっている。

もうひとつ、「指導指示違反」による廃止がある。稼働能力が一番の問題になる。若い人などが求職活動をしない場合、それを理由に保護を廃止する。まず、文書で就職活動しろと出して、従わなければ廃止する。

最近問題になっているのは、何日までに就労して何万円以上稼がなければ保護廃止だと、生活保護を打ち切る。本人の努力だけでは実現できない指示は違法。

生活保護を受けると、国民健康保険から抜けなければならない。国民健康保険法で定められている。それ以外の社会保険は加入していられる。

医療費は医療扶助で全て支給される。医療費無料がおかしいと盛んに言われているが、そもそも最低生活基準は医療費がかからないことを前提に定められている。

生活保護が必要な外国人に対しては、国の政策として予算措置として生活保護法を「準用」するとなっている。「準用」の範囲は、九〇年に特別永住者、永住者、日本人の配偶者等、定住者、難民に限りとなった。

では、留学生やオーバーステイの外国人が重病で死にそうになったらどうするのか。自治体の質問に、厚生省は知らないという態度だった。


生活保護制度の現状と課題


現行の生活保護法は1950年制定。旧生活保護法(1946年制定)では「素行不良な者」「扶養義務者が扶養をなしうる者」は保護しないとあり、旧法には国籍条項はなかった。
その後も生活保護制度は変遷している。国が財源八割を負担していたのが、現在は七五%になったり、老齢加算、母子加算が廃止されて、民主党政権で母子加算が復活したり、昔は自転車やミシン保有が認められたのが一九六〇年。エアコンが一九九五年。


よく言われる「水際作戦」とは何か。要保護者に申請されると保護を開始しなければならない。申請をさせずに追い返せば保護しなくてよい。だから、申請をさせなければ保護率を抑えられて、自治体財政に寄与すると。

だから、受給要件と申請権について虚偽の説明をして追い返す。「あなたは申請ができない」というのは二重の嘘。一億円持っていても申請はできる。
受けられる人に嘘の説明をして追い返す。


生活保護法には「他法他施策優先の原則」があるのに、なぜこれほどまでに保護世帯が増えているのか? 使える他法他施策が何も無い人たちが激増している。無年金・低年金の高齢者、ワーキングプアが増えている。国民年金や最低賃金が生活保護基準より低いのはなぜか。

厚労省の考え方では、国民年金で生活する人はいない想定で、高齢者は多額の貯金や養ってくれる子どもがいるとされている。実際は国民年金だけや国民年金すらない高齢者があふれている。最低賃金も、主な稼ぎ手が最低賃金で働くことは想定されていない。


 日本は捕捉率が低い。保護が増えたというが、受けられる人で受けているのはスウェーデン82%、ドイツ64%、イギリス47%。日本は20%以下で保護を受けられるのに受けていない人がたくさんいる。
 
 保護を削ろうとする側は「一般低所得世帯との均衡」という言い方で「低い方に合わせろ」と主張する。これとどう闘うか。生活保護を受けないで苦しい生活をしている人が生活保護を受けている人を非難するいびつな構造になっている。

でも、生活保護基準引き下げれば、保護を受けていない低所得層の生活はよくなるのか。よくなるはずはない。生活保護は現に受けている人だけの問題ではない。

生活保護基準は課税最低限など様々な基準と連動している。生活保護が引き下げられれば、様々な制度も引き下げられる。課税されてない低所得者に課税されたり、減免制度も引き下げられたりする。貧困世帯がさらに打撃を受ける。


そして、劣悪な貧困ビジネスがはびこるのは、公的な施設がないことが原因。
いまバッシングの理由になっている扶養義務だが、そもそも扶養は要件ではない。
現行民法でも強い扶養義務を負うのは配偶者間と未成熟の子に対してだけ。ヨーロッパでは公的扶助との関係では弱い義務すら課せられない。

そもそも、先進国で子どもが親を扶養する義務があるのは、日本、ドイツ、アメリカの一部の州だけ。世界の潮流からは遅れている。ドイツも、高齢者の貧困が問題になって子どもが親を扶養する義務は緩和されている。

北欧では子どもが親の扶養を求められることがないので、日本のようなバッシングはありえないし、理解されない。

日本の民法も改正して子どもが親を扶養する義務は早急に廃止すべき。この規定は貧困の再生産に寄与している。

親の扶養義務というのは、事実上貧乏人の子どもにだけ課される。金持ちの親は扶養する必要がない。貧乏人の親は扶養しなければならない。このどこが平等なのか、貧困を再生産することだという議論をしていかなければならない。
高所得者の役割は親を養うことではなく、税金をたくさん払って社会保障を支えることだ。日本では社会で支えると意識が弱すぎる。


今の国会では逆の方向への制度改革への動きが強い。自民党、民主党の一部、大阪維新の会など社会保障切り下げ競争が起きている厳しい状況。自民党の現物給付の主張は非現実的。

生活保護を解決するためには生活保護だけを見ていてはダメ。必要としている人がこれだけいる以上、対象を狭めたり、保護費を下げても、貧困者は減らない。どうやったら困窮者を減らすことができるのか。生活保護以外の制度がない、仕事がない状況を変えていかないといけない。一番確実なのは、年金を引き上げ、賃金を引き上げること。そうすれば年金や賃金だけで生活できる人が増える。実際は真逆な事態が進んでいる。


最後に餓死さえしなければいいのか。日本社会では貧困観が貧困。食べるだけ、生きているだけがやっという保障では自立から遠ざかることになる。」


講演を受けて質疑応答が行われ、参加者からは自らや身近な人が体験した生活保護に関する様々な意見、質問が出された。