報告 講演会「福島原発告訴団は何を訴えるのか」
講演会「福島原発告訴団は何を訴えるのか」
10月15日、国連・憲法問題研究会講演会「福島原発告訴団は何を訴えるのか」を行いました。
講師は片山薫さん(
6月11日、第1次告訴として福島県民1324人が福島原発事故の刑事責任追及を求め、東電役員、官僚、御用学者など33人を告訴。
福島県民による第一次告訴に続いて、全国1万人による第2次告訴(11月15日)をめざしている、
罪名としては業務上過失致死傷罪、公害犯罪処罰法、激発物破裂罪。
講演で片山さんは、なぜ告訴運動に取り組んでいるかについて、昨年3・11の後、福島の佐藤和良さん、蛇石郁子さんの呼びかけにこたえた地方議員の取り組みから、告訴団に取り組み、小金井では放射能測定に取り組んできたことを話した。
続いて、8月19日武藤類子さん(告訴団長)の講演DVDを上映。
武藤さんの静かな語り口の3・11後の思いと告訴を説明する映像を見た後、片山さんが改めて講演。
9月22日のいわきでの告訴団の全国集会では、事故調がいずれも福島原発事故が人災であることを認めており、起訴になるのではないかという弁護士の見通しだった。
福島の告訴団本部からは、全国1万人のうち関東で5000人集めてほしいといわれている。告訴の書類は既に1万セット配った。
小金井ではチェルノブイリの後、放射能測定室の活動が続いてきた。3・11後は全国から問い合わせが殺到した。関東も原発事故による放射能の影響を受けている。内部被曝は避けられない。
測定結果がND(不検出)でも、ゼロかどうか分からない。
関東在住者も、内部被曝の被害を訴えていくべき。
告訴のためには、委任状+入会申込書+入会金(1000円)が必要。記入・押印して関東事務局に送ってほしい。
検察は告訴人の人数を気にしている。陳述書の提出は任意だが、検察を動かすために、多くの人が告訴し、ぜひ陳述書を出してほしい。
これだけの事故を起こしたのだから、本来警察・検察が捜査、逮捕すべきなのに、行われていない。
検察に起訴させ、有罪にするためにも、この問題で世論が渦巻いているというのを告訴で示す必要がある。
告訴は告訴状を出したら終わり。福島以外の事務局は解散するが、起訴を実現するために、署名運動など様々な形で世論喚起をしていきたい
質疑応答では
「福島の被害が大きいので、それに比べれば自分たちの被害は小さい。被害を訴えるのが気後れするのでは」
→3月当時に被曝を避けるために、食品・飲料水に気をつけたりしたのもすべて原発事故による被害。福島はもちろんだが、全国の人が被害者。
PTSDを被害として認めた例もあり、精神的被害も含めて、ぜひ陳述書に書いて出してほしい。
「脱原発集会には10万人集まっているのに、どうして告訴人が1万人にまだとどかないのか」
→理由のひとつとして裁判と誤解されている。
告訴なので、今回は弁護士に依頼したら、終わり。告訴権があるというのをもっと宣伝する必要がある。
「どうして被告訴人に政治家がいないのか」
→政治家の責任は別な形で追及していく。
「外国人は告訴できるのか」
→事故当時に日本に住んでいればできる。
「子どもはできるのか」
→小さい子どもは保護者が代理人になってできる。事故当時、胎児でも可能。
「告訴と告発はどう違うのか」
→告訴は被害者、告発は第三者が行う。なるべく告訴にするようにお願いしている。
最後に片山さんは、告訴運動は草の根民主主義。下からやっていくチャンスと、月内の締め切りに間に合うように出してほしいと、改めて呼びかけた。
【紹介】阪上 武 原発事故避難問題から見える福島の現状』発行
【紹介】
阪上 武
原発事故避難問題から見える福島の現状』発行
国連・憲法問題研究会報告第53集発行
原発事故避難問題から見える福島の現状
阪上 武
2012年9月発行
■3・11福島第一原発事故から1年以上がたった。事故はいまだに収束していない。福島では、いまだに疎開、避難への補償、除染、健康管理など被曝低減化のために必要な措置が十分とられていない。3・11前から福島老朽原発の問題に取り組み、3・11後は避難の権利の運動に取り組んできた阪上武さん(福島老朽原発を考える会代表)が原発事故避難問題から見える福島の現状について講演。
◎目 次
三・一一から避難問題へ/学校二〇ミリ基準問題/上がり始めた声/政府側の動き/文科省の内情と継続する問題/渡利地区問題/避難の権利を/南相馬との違い/選択的避難区域の設定を/除染の問題点/県民健康管理調査の問題点
○質疑応答
○資料
◎定価1冊 500円(送料80円)
◎5冊以上購入 1冊当たり400円
※表紙は薄い赤色です。
◎ 購入申し込み
郵便振替[00180-5-567296 研究所テオリア]
*通信欄に「講演会報告第53集」と明記してください
・ 国連・憲法問題研究会
東京都千代田区富士見1―3―1上田ビル210研究所テオリア
・℡・FAX03-3230-3639 (変更になりました)
URL http://www.winterpalace.net/kkmk/
peaceberryjam@gmail.com
研究所テオリアが発足シンポジウム
研究所テオリアが発足シンポジウム
9月22日、研究所テオリア発足総会とシンポジウムを東京・文京区内で開かれた。
22日午後は、発足記念シンポジウム「グローバル資本主義の行方とグローバル対抗運動の課題」が開催された。
最初に午前中発足した研究所テオリアの吉田和雄所長から主催者挨拶が行われた。
続いて司会の中村勝己(20世紀イタリア思想史)がシンポの問題意識について、「リーマンショック以降、世界全体が厳しい、日本社会も毎年3万人以上の自殺するように社会の解体状況が進んでいる。日本では311以降の厳しい状況がある。その中で日本の政治・社会のあり方、私たちの生き方が問われている」。
報告した田原牧さん(東京新聞特報部デスク)は
「革命後、抑圧に転化する革命より、革命を語らず、死ぬまで叛逆し続ければいい。
「アラブの春」と3・11後の「紫陽花革命」はどう違うのか。革命を再定義すると、革命は文学的に解釈して「命を革める」。エジプトの革命青年たちの行動が示したように、旧来の革命の青写真は役に立たない。
エジプト革命青年は、革命後政権が抑圧的な存在になれば、また革命をすればいいと言っていた。エジプト革命は前衛党、革命後の青写真、カリスマ指導者など革命の3点セットがない革命。
官邸行動が盛り上がったのは「俺をなめているのか」という気分、自己決定での参加はエジプトの革命とよく似ている、
違うのは、6・29官邸行動で主催者が機動隊指揮官車から解散を呼びかけた事件が示すように、秩序優先という「オマワリの論理」=「世間の論理」=「支配の論理」を疑わないほど、骨の髄まで支配されていること。
現代はヤクザ映画が成り立たない時代。
3万人の自殺が示すように、日本社会の人間が悲惨なことになっている。新しい社会を構想する前提が崩落している。
まず人を≪洗濯≫しないといけない。今の生地のまま縫い物をやると裂けて、形にならない。
そのためには体を動かして経験しないといけない。これはしばしば改良主義とレッテル張りされるが、それは革命観の貧困。
フランスのNPAに来ている動物愛護活動家は『我が家のような空間だから来ている』と発言していた。
反体制運動を考えるときに『我が家のような空間』を醸成していくことが必要。
昔『人民の核心として党』という言葉をあり、いい言葉だと思ったが、今は欲望を喚起することが必要。
人間回復の欲望をどんどん喚起する存在が社会に増えてくると、次の段階の話ができる。永遠に権力を覆すための社会的土壌が必要。2010年代は土を起こす段階。一生懸命土を起こしていきたい」
続いて、白井聡さん(現代政治思想)は
「『未完のレーニン』など著書で述べてきたのは、レーニンはすごい、革命が必要なときがあるということ。3・11を経て、レーニンに関する仕事は過去のものになった。僕がしつこく言ってきたことをポスト3・11は露呈させた。
「永続敗戦論」(「atプラス」13)で書いたように、敗戦で生じた問題が、戦後そのまま積み残されている。ポスト冷戦20年でごまかしが効かなくなった。我々が敗戦した事実を直視できないゆえに、逆に敗戦状態が続いている。日本の領土問題も、この敗戦の問題につながっている。
『紫陽花革命』という言い方はおこがましいと田原さんは言ったが、77年生まれの私にとっては、『革命』という言葉がリアルタイムで上ってきたことが衝撃でうれしかった。
大学で学生を教えていると、理解を超えているところがある。原発問題などを教えると、こんなとんでもない国に生まれてしまったのかと思うようになる学生がいる一方で、こんなに学生は反応がないのかと感じる面もある。反原発デモに参加すると大学生の参加者は少ない。
運動を大きくするためにはと、運動側が多数派の論理=「オマワリの論理」=「支配の論理」を内面化してしまう。
中国に対する日本の見方では、擾乱が年10何万件も起きているような国だから反日を口実に暴動が起きると。しかし、中国は不正に対する抗議行動、民衆の権利要求が盛んに起きている国だと見ることができる。
ところが、日本の見方は10何万も擾乱が起きている中国はダメな国だと。これが日本で内面化されている秩序が一番というオマワリの論理」
さらに白井さんは永続敗戦論の立場から3つの領土問題などについて、政府やマスコミが流布している主張の問題性を詳しく述べ
「領土問題をどうすべきか。私は解決しなくていいと思う。
流動的な状態から新たな権力者が出てくる。それがよくないかもしれないが、そうしたら、エジプトと同じでまたやるしかない」
2人の報告を受けて質疑応答が行われ、グローバル資本主義の問題をどう考えるのか、男子学生にナショナリズムの傾向が強いこと、謝罪主体論争など様々な意見・質問が出された。
※国連・憲法問題研究会は連絡先を置いてきた工人社の解散に伴い、新しく立ち上げる研究所テオリアに協力し、そこで活動していくこととしました。
同日午前中には、同じ会場で研究所テオリアの発足総会が開かれた。
発足総会では、準備委員会から研究所テオリアの事業計画、名称案、予算案、会則案の提案、新事務所についての報告が行われた。
報告を受けて、事業計画についての討論が行われ、出席した会員からは、「世界の枠組みをとらえ返す」「隅っこでがんばる」など、今後の活動への抱負や意見が出された。
最後に名称をテオリアに確定し、第1期運営委員など役員選出、予算、事業計画など提案を出席者全員の拍手で承認。「研究所テオリア」が正式に発足した。