1,はじめに
2020年流行った曲は何だろうか?2020年にヒットした曲は「香水」(瑛人)や「夜に駆ける」(YOASOBI)、「snow jam」(Rin音)、「チューリングラブ」(ナナヲアカリ)、「春を告げる」(yama)、「Make you happy」(NiziU)などが挙げられる。中でも、前者2つが爆発的な大ヒット曲となった。今回は「夜に駆ける」で大ヒットしたYOASOBIに注目して考察していく。
2,YOASOBIとは
YOASOBIは2019年11月に結成されたコンポーザーであるAyaseとボーカルの幾田りら(Ikura)からなる音楽ユニットである。また、YOASOBIのコンセプトは「小説を音楽・映像に具現化する」である。また、AyaseはボカロPとしての顔を持ち、特に「幽霊東京」という曲がボカロの要素がよく表れていると感じる。また、「夜に駆ける」以外にも「ハルジオン」という曲ではサビに入る部分で「夜に駆ける」と一瞬重なる所があり、Ayaseの特徴が表れている。幾田りらは透き通る声が持ち味であり、ぷらそにかのメンバーでもある。代表曲は「夜に駆ける」であり、週間再生数646.5万回(6,464,693回)を記録し、8月19日発表の最新「オリコン週間ストリーミングランキング」で1位を獲得、6週連続、通算12週目の1位となったほか、再生数が1億回を突破した。ストーリミング1億回再生を突破したのは8作目である。「夜に駆ける」はソニーミュージックエンタテインメントが運営する小説投稿サイト「monogatary.com」の「モノコン2019」でソニーミュージック賞を受賞した星野舞夜の小説「タナトスの誘惑」を原作に作られている。
3,YOASOBIヒット理由
YOASOBIのヒットした理由の1つはボカロメロディーのJ-POPを生み出したことである。コンポーザーのAyaseによるボカロを主体としたメロディーが今までにないものであり、人々に音楽業界の新鮮さをもたらした。ボカロミュージックはパソコンなどで打ち込まれた音楽で電子音が特徴である。更に女性ボーカルの幾田りらにしたことがヒットの要因であると考えられており、昔から「女性ボーカルのバンドは成功する」と言われてきた。確かにJUDY AND MARYやZARDなんかはその典型的な例である。本来ボカロミュージックは初音ミクなどのボーカロイドが歌うので人間味がない。しかし、高い歌唱力かつ透き通る声の女性が歌うことにより人間味を出すことができる。その上、ボカロ特有の電子音が主体のメロディーと考えれば、とても新鮮である。また、独特のメロディーがとても耳に残り中毒性がある。
次に考えられる要因は何と言ってもYOASOBIの小説を音楽にしたことである。小説を音楽にしたことで本来の「聴く」という楽しみ方に加え「想像する」という楽しみ方を可能にした。これが今までにない音楽の新しい楽しみ方である。これにより、音楽を聴いた後に世界観を想像し原作を読んで内容を解釈することができる。先に小説を読んだ人はその世界観をもう一度音楽を聴くことで楽しむこともできる。「夜に駆ける」の歌詞にある「信じていたいけど信じれないこと」や「ハルジオン」の「知りたくないほど知りすぎてくこと」という歌詞は小説が原作故に表現できる歌詞だと思う。「夜に駆ける」の「チックタック」という表現も焦燥感を時計に見立てていてとても表現力があると言える。
3つ目の理由として考えられるのは、「夜に駆ける」の世界観がメンヘラである。2019年に大ヒットした鬼滅の刃においても「鬼の悲しい過去」や「死への恐怖」などといったメンヘラ要素(心の闇)が組み込まれており、これが多くの人の心を掴んだ(共感を得た)のである。また、2020年は新型コロナウイルスにより、自粛する人が多かったため家で過ごす時間が多かったこともヒットの要因である。
その他の要因としては、YOASOBIの曲全般はそこまで音域が広いわけではなく、リズムも4拍子である。その上、ボカロ主体の曲は全般的にBPMが早い傾向にあるがYOASOBIの曲は全般的にBPM130とごく一般的な早さである。ヨルシカやずっと真夜中でいいのにと比べると歌いやすく、演奏もしやすいので普段の「口パク動画」や「MAD動画」、「踊ってみた」に加えて、「歌ってみた」や「演奏してみた」の動画もより多く投稿されるようになった。
個人的にYOASOBIはSNSのプロモーションが上手だと思う。そう思う要因はtwitterにありYOASOBIには公式のYOASOBIのアカウント、Ayaseのアカウント、幾田りらのアカウントと3つある。また、3つのアカウントでは、それぞれ違う内容がツイートされているため面白い。さらに、YOASOBIはテレビ出演した際や再生回数がある一定数を突破した際にツイートをすることが多い。これらのツイートには、「聴いて下さい」や「応援お願いします」などといったことがツイートされている。(YoutubeにアップロードされているTHE FIRST TAKE「夜に駆ける」で幾田りらが「それでは聴いて下さい、夜に駆ける」と言っている点から分かる)また、これらのツイートは比較的多くツイートしておりYOASOBIは目的が明確なアーティストである。これらのことから、何が言えるかというと応援したくなる人が増えるということだ。また、ツイートに動画のURLも添付しているので視聴者は無駄な手間がなく快適に動画を視聴できる。これがYOASOBIのSNSプロモーションの強みだと思う。更に、YOASOBIはユニット名や曲名、メンバー名が含まれたツイートにはいいねを押しており、カバーなどをしてくれた人達を自身のSNSで紹介したりとファンを大切にしていることが伺える。
元々と言えば、YOASOBIはコンポーザーであるAyaseがソニーミュージックが運営する「monogatary.com」のスタッフの方から「小説を音楽にしてみては」と打診されたことがきっかけで結成に至っている。この点に関して言えば、ある意味YOASOBIはソニーミュージックエンタテインメントによる意図的な策略とも見れる。YOASOBIは売れるべくして売れた音楽アーティストである。
4,終わりに
今回はYOASOBIが大ヒットした理由を考察してきた。結論を言うとYOASOBIは2020年を代表するアーティストである。ここまでのことを簡潔にまとめると、YOASOBIがヒットした理由はコンポーザーのAyaseの圧倒的カリスマ性とボーカルの幾田りらの透き通る声による圧倒的歌唱力があったからであるのはもちろんだが、ボカロとの融合文化で小説を音楽にしたこと、メンヘラを題材とし多くの人の心を掴んだことこそが大きな要因である。また、SNSのプロモーションやストーリミングなどを上手く活用したことが更にヒットを加速させたのだろう。YOASOBIは「夜に駆ける」のイメージが強いが「あの夢をなぞって」や「ハルジオン」、「たぶん」と他の曲もボカロの特性を生かした独特のメロディーが癖になる曲となっているので、皆さん是非1度聴いて下さい。