日本の賃金は「時給」で見ると増加している理由について調べていこうと思う。

 

そもそも大前提として、日本はずっと低成長が続き、賃金も伸び悩んできた。しかし、働き方改革や

雇用の多様化によるもので、年間労働時間が7%減った。これが、単純な時間だけでみるならここ10年間で

日本の賃金が12%増加している理由である。

実際に厚生労働省の調査にて分析したところ、2022年の現金給与総額は月32万6000円と4%しか伸びておらず、物価上昇を考慮すると、4%しか伸びていないため、実質賃金はマイナス6%である。

このことから、日本は賃金の伸びに対して、物価上昇の方が大きいのが、生活を苦しめる大きな要因である。

 

また、時給が伸びているのは、1人当たりの賃金の変化というからくりである。「時給」だけなら12%増と3倍の伸びになり、年間実労働時間も1633時間と132時間少なくなる。

 

時間が短くなった原因は雇用の多様化が挙げられる。雇用者558万人増えたうちのパートが310万人と比率にして32%である。これは、以前の29%から3%増である。このことから、女性や高齢者など短時間で働く人が増加したと考えられる。

 

働き方の変化としても、フルタイム労働者が83時間減少した。逆に有給取得率が58%となり9%増加。総務省の労働調査においても、正規雇用で181時間以上働く人は22年で1242万人と、13年前より2割減った。18年に働き方改革関連法が成立し、長時間労働の是正が進んだ。

一見働き方改革は良さげに見えるが、東京大学の渡辺教授は「労働者が働く時間や密度を減らし、実質的な賃上げを起こしている可能性もある」と指摘。このような賃上げを「ステルス賃上げ」と呼ぶ。

事実、小売業やサービス業では、仕事の密度を減らすことで、表面的には賃上げを起こしているように見えるが、実態はサービス残業でまかなわれていることもあると思う。

 

経済協力開発機構による調査だと、日本の労働生産性の1人あたりの変化率でみると、先進国で最下位。時間でみるなら4位である。大正大学の小峰特任教授によると「付加価値の増加を伴わない守りの生産性向上だ。時間短縮には限界があり、持続可能ではない」とのこと。

 

そもそもステルス賃上げでは、量や質を下げることで仕事を終わらせるという後ろ向きの工夫である。これではイノベーションも生まれない。それどころか、次の日の業務に支障が出るのではないか?という懸念さえある。

 

本当の意味での賃上げはAIを使うことによる自動化や付加価値の高い製品やサービスの創出をすることで生産も消費も増加することが理想的である。