2020年以降、ヒットした楽曲にボカロ調の曲が増えて来ているように感じる。

(20年は夜に駆ける、春を告げる、うっせえわなど)

今回はちょうどボカロが発売されて15年なのでボカロの歴史を見ていきたいと思う。

 

1、概要

主にボカロが普及し始めたのは、2007年にクリプトン社から初音ミクが発売されたことに起因する。それ以前にもKAITO、MEIKOなどのボーカロイドは存在していたが初音ミクほどの人気は集めていなかった。初音ミクの発売以降、ニコニコ動画にボーカロイドを用いた楽曲をアップロードしていくのである。また、時代区分をざっくりと黎明期、革命期、全盛期、衰退期、再生期、第二革命期、第二全盛期と分けた。

 

2、黎明期(主に2007〜2008)

ボカロの時代分けには様々な意見があると思うが、個人的にこの時代を黎明期と定義した。

この時代の特徴は、ボーカロイドのキャラクター(初音ミク、巡音ルカ)そのものに価値があり、ボーカロイドをアイドルとして捉える傾向にあった。また、歌詞もボーカロイドの気持ちを描いたものが多く、MVにもボーカロイドが登場することが多かった。「みくみくにしてあげる」や「メルト」、「初音ミクの消失」などが流行った。上記に書いた通りボーカロイドに価値があり、みくみくのようなネタ曲が多かった。メルトはこの時代には珍しい純情な恋愛ソングであり、流れを大きく変えた(メルトショックとも呼ばれた)ため「原点にして頂点」などというコメントも見受けられる。

個人的な感想に過ぎないのだが、原点はみくみくで、頂点はメルトだと思う。また、メルト以降も消失のような曲(早口)が多かったのも特徴である。

この時代は、ryo(supercell)、CosMo@暴走p、livetuneなどが活躍しており、ryoはブラックロック★シューターをリリースした。この時代に後の時代で卒業式で歌われるようになる「桜ノ雨」がヒットした。

 

3、革命期(主に2009〜2010)

この時代になると、2008年後半「炉心融解」、2009年「ルカルカナイトフィーバー」、「ロミオとシンデレラ」がヒットする。

 

(アニメーションMVの一例)

また、2010年に3強時代と呼ばれるwowaka、DECO*27、ハチがヒット曲を生み出し、wowaka「ローリンガール」、DECOは「相愛性理論」がヒット、ハチは「結ンデ開イテ羅刹ト骸」でデビューした。また、ハチは2010年後半に「マトリョシカ」でヒットする。この3強時代が後の全盛期の礎となる。この頃にEasyPopの「ハッピーシンセサイザ」もヒットする。この時代の特徴としては、初音ミク以外のボーカロイド(巡音ルカ、鏡音リン&レン、GUMI)の楽曲が増えてきたことや「歌ってみた」の投稿が増えたこと(歌い手の登場)、革命~全盛期に主流となるアニメーションMVを用いた楽曲(例:炉心融解)の登場が挙げられる。

 

4、全盛期(主に2011~2013)

遂にボカロは全盛期に突入する。全盛期の特徴は、主に革命期の特徴を引き継ぐものだが、大きな違いはMVにボーカロイド以外のオリジナルキャラクターが登場するようになったことである。「千本桜」のようにボーカロイドががっつり登場する楽曲も多いが、じん(カゲロウプロジェクト)やkemuといった物語形式の楽曲を作るボカロpが登場したのがこの頃であり、これがボカロMVのオリジナルキャラクター到来の原因とも言える。ボカロは作者が作った曲を歌うための楽器として使う価値観が浸透していったと考えられる。

 

この時代に活躍したボカロpは黒うさp、じん、kemu、Neru、Last Note.(セツナトリップ)、164(天ノ弱)、40mP(革命期でも活躍している)などである。

中でも2011年には、黒うさpが「千本桜」を投稿し、発表当初はそこそこのヒット曲ではあったが、その後も勢いを伸ばし、ボカロを聴かない一般層にも認知されるほどの楽曲になった。また同時に社会にボカロを浸透させるきっかけにもなった。(これは、全盛期を過ぎた2014年に和楽器バンドがカバーしたことや2015年に小林幸子がカバーしたことから人気度が分かる。)恐らく「千本桜」はボカロにおいて1番有名な楽曲だと思う。

 

また、kemuがこの時代に活躍し、kemu voxxと呼ばれるkemu主催のボカロサークルが発足。物語形式の楽曲に加え、今見てもクオリティの高いイラスト、MVが特徴だった。「人生リセットボタン」がデビュー作で「六兆年と一夜物語」が最大のヒット曲である。この時代は、初音ミク以外のボーカロイドが主流となりkemuやLast note.はGUMIを使用している。(kemuはこの他にIAを使用している。)

 

2013年にはNeruが鏡音リンを用いて「ロストワンの号哭」がリリースされ、自身最大のヒット曲となった。この楽曲は爽快なロック調の曲でそれがヒットした要因だと考えらえる。また、Neruはこれよりも前の時代に「東京テディベア」でヒットしている。

 

このようにボカロ文化は勢いに乗っていき、2012年には12万本近くの楽曲が投稿されるも、2013年後半以降、ボカロや物語形式の楽曲(カゲロウプロジェクト)に飽きてきた人が多発。また、kemuも2013年の敗北の少年以降楽曲をリリースすることなく、2014年以降ボカロは勢いを落とすこととなる。