スモーク

 

ニューヨークの街角に、タバコ屋がある。

店にやって来る客、持ち込まれる事物。

そのさまを定点観測するような物語だ。

 

フィクションだけれど、ドキュメンタリーのよう。

人が息づいて見えるからだろう。

 

チャプターごとに、様々なエピソード。

その光景が時に可笑しく、時にハラハラとして。

劇場がシリアスな空気だったので控えたのだけれど、笑いどころがアチコチに。

クスクスしたり、ニヤニヤしたり。

 

スクリーンを往来する人々に通い合うのは、血のようなもので。

彼らは他人同士だけれども、近い。

そして、温かい。

 

 

 

ハーヴェイ・カイテルがタバコ屋主人なのだけれど、素晴らしい。

肝になるセリフは、この人だからあの効果を生んだ。

同じニューヨークで、若い頃はポン引きだったのに・・・などと思う楽しさよ。

 

ウィリアム・ハートは書けなくなった作家役。

猛烈に僭越で恐縮ながら、シンパシー。人との触れ合いで彼がどう変わっていくか。

 

フォレスト・ウィテカーは毎度ながらズルいので、目が離せない。

対する若者ハロルド・ペリノー・ジュニアの表情が、実にいい。

実は、この2人の実年齢の差は2歳。

それを知った今、宇宙規模の衝撃を受けてます。

 

監督は香港出身のウェイン・ワンであった。

組み立て方が北野武監督に通じるなあと思ったら、去年公開された『女が眠る時』で一緒に仕事していたのじゃないかー!見逃したああ!

 

 

 

日本人が製作に加わっていることもあり、何やら近しい空気感も。

派手な展開ではなく、面白味を振り撒いていく作り。

そうしてまとめ上げた時に立ち現れる光景に、涙がホロリこぼれた。

 

ポーランド系ユダヤ人の出自の影響があるのか不明ながら、ポール・オースター原作脚本は、マイノリティへの目線が温かい。

誰もが抱える傷に、そっと手当てをするような。

 

クリスマスに素敵な物語を勧めるなら、本作を推したい。年初だけれど。

角のタバコ屋で聞いたんだけどね、と人に話したくなる。

いつまでも燻る煙草みたいに、消えない炎の温かさ。

 

スクリーンには、こういう温度がある。

その炎が新年の劇場をポッと照らしてくれた。ありがたい。

 

 

 

映画 スクリーン(秋田・週末名画座シネマパレ/Twitter

 

『スモーク』
Smoke
1995年・アメリカ・日本・ドイツ
監督: ウェイン・ワン
原作・脚本: ポール・オースター
出演: ハーヴェイ・カイテル、ウィリアム・ハート、ハロルド・ペリノー・ジュニア、フォレスト・ウィテカー

 

[関連作品]
ハーヴェイ・カイテル⇒タクシードライバー/グランド・ブダペスト・ホテル
ウィリアム・ハート⇒シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ
フォレスト・ウィテカー⇒ラストスタンド/エクスペリメント
ハロルド・ペリノー・ジュニア⇒ゼロ・ダーク・サーティ

 


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