さて

前回の話の続き。

 

 

 

前の話はこちらからどうぞ。

12年前の君へ #01 高校2年生

12年前の君へ #02 ファーストコンタクト

12年前の君へ #03 入部決定

12年前の君へ #04 異変

12年前の君へ #05 水曜日

12年前の君へ #06 法則性?

12年前の君へ #07 アプローチ

12年前の君へ #08 土曜講座

 

 

 

~~~~~~~~~#09 そして2人に~~~~~~~~~

 

月曜~金曜まで

毎日部活動で赤池くん、植田くん、渡辺さんと顔を合わせ

たまに雑談して過ごした。

 

 

 

 

そして、土曜日

 

先週と同じように校舎の玄関で待っていると

 

 

赤池くん、渡辺さん、酒井さんは集まったのだが

植田くんが、また少し遅れてやってきた。

 

 

 

「すみません。僕、先生に質問したいことがあって、今日はパスします。」

「僕抜きで4人で行ってきてください。」

植田くんが私たちに向かって、そう話した。

 

 

「あぁ、そうなんだね。別に、待つよ?」

 

「うん、待つよ」

 

私たちは、そう返答したが

 

「いや、結構時間かかると思うから、4人で行ってきてください。」

 

彼は引かなかった。

 

 

 

「そう?それじゃあ、そうするね」

 

植田くんは、ぺこりとお辞儀をして校舎の方に引き返していった。

 

 

 

 

 

 
 
 

今週は4人で街をまわった。

 

 

 

歩く時の並びは

最初

 

渡辺さん・赤池くん

私・酒井さん

 

 

だったが

 

 

後半は

 

渡辺さん・私

赤池くん・酒井さん

 

 

という並びになっていた。

 

 

 

4人で話すこともあれば

隣同士で話すこともあり

 

 

先週よりも、隣同士で話す様子が多かった。

 

 

 

 

後ろを歩く二人の会話で

「前の二人、お似合いじゃない?」

「いい感じだよね」

 

なんていう言葉が聞こえた。

 

 

 

私が後ろを向いて「何か言ったー?」と聞くと

 

「なにもー」

「先輩、前見ながらじゃないと危ないですよー」

 

なんて言われたりした。

 

 

 

はぐらかされたので、仕返しに

「君たちもいい感じだと思うよー?」と微笑みながら言い返してやった。

 

 

 

そんな中、渡辺さんは特にリアクションせずに、黙々と歩いていた。

 

 

 

 

 

 

一通り街を歩いて、駅に着いた。

 

また、来週も街に来よう。という話になって解散した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

また、月曜~金曜は部活動で3人と顔を合わせて会話する日々を過ごして

次の土曜日になった。

 

 

 

 

今回は、私の方が到着が遅かった。

 

 

すでに校舎の玄関には、赤池くんと渡辺さんが待っていた。

 

 

「遅れてごめんね」

と2人に声をかける。

 

 

「いえ、全然大丈夫です。まだ酒井さんを待ってるところですから」

「大丈夫です」

 

2人の隣に並んで、生徒たちが流れてくる方向を向く。

 

 

 

「ちなみに先輩。植田くんはまた質問があるってことでパスだそうです」

 

「あ、そうなんだね」

 

『まぁ、進学クラスだから、勉強大事だよねぇ』と考えていると

酒井さんが小走りでやってきた。

 

 

 

「すみません。私、今から部活に行かなくちゃいけなくなりました。」

「これから土曜講座の後は、毎回吹奏楽部の部活があるので、もう参加できないです。」

 

酒井さんは少し息を切らしながら、申し訳なさそうにそう話した。

 

「そっか、分かったよ」

「あぁ、そうなんだ」

「部活頑張ってね」

 

 

「すみません。楽しんできてくださいね!」そういって、小走りで校舎に戻っていった。

 

 

 

 

「どうする?」

メンツが減って、

赤池くんと渡辺さんがこの3人でも良いと思うのか分からなかった私は、そう切り出した。

 

 

 

「行きます?」

赤池くんは、行っても良いという表情をしていた。

 

 

「渡辺さんはどう?」

 

「私は別にいいですよ?」

彼女も行くことに反対はしていないようだった。

 

 

 

 

そうして、3人で街に遊びに行くことになった。

 

 

 

 

 

 

街では、ほとんどずっと

渡辺さん・私

赤池くん

 

という並びだった。

 

 

彼が疎外感を感じないように、たびたび話を振った。

 

 

 

「あ、そうだ。ゲーセン行ってもいいですか?」

 

「あぁ、うん。良いよ」

「はい」

 

「いやー、植田くんと酒井さんは、まじめだからあの二人がいるときに切り出せなかったんすよねー」

 

「そうだったのか 笑」

 

ゲームセンターでは、主にクレーンゲームを見て回った。

 

 

 

 

街をまわり終えて、駅へと着いた。

また来週街へ行こう。と決まり、解散した。

 

 

 

 

 

 

 

5月第4週の土曜日

 

 

校舎の玄関で、私は赤池くんと渡辺さん、植田くんを待っていた。

 

 

 

まず、渡辺さんが到着した。

 

 

 

「お待たせしました~」

 

「ううん、大丈夫だよ」

 

 

 

彼女とともに残りの男子2人を待っていると、赤池くんがやってきた。

 

 

「先輩、渡辺さん、すみません。

植田くんと俺は、先生に質問があるので、今日は俺と植田くん抜きでお願いします。」

 

「あ、あぁ、そうなんだね」

「そうなんですね」

 

 

「はい!じゃあ、また!」

彼は軽く会釈して、校舎の方へ小走りで戻っていった。

 

 

 

 

『毎週1人ずつ減っているとは思ったけれど、まさかついに2人になるとは』

私は少々驚いたが、

それ以上に、渡辺さんと2人で街に行けることを少し嬉しく感じている自分がいた。

 

 

 

 

 

「じゃあ、行く?」

隣にいる、おとなしめで可愛らしい子にそう尋ねた。

 

 

 

「んー、人数減っちゃいましたね」

彼女は、少し遠くの地面を眺めながらそう言った。

 

 

 

そうですよね。そう返しますよね。

『あっ、これは行けないパターンか?』と思いつつ

 

 

「そうだねぇ、人数減っちゃったね」

とりあえず、言葉を返す。

 

 

 

 

「どうします?」

彼女は私を見ながら、そう投げかけた。

 

 

 

その問いに少しホッとした。

 

もし ”やめます?” なんて聞かれたら

”やめようか” と返さざるを得なかったからだ。

 

 

でも、まだ気は抜けない。

私が行く方を提案しても彼女が渋ったら、やめる方向に話が進むからだ。

 

 

 

 

「行く?」

恐る恐る聞いてみた。

 

 

 

「はい」

 

 

 

嬉しい返事が返ってきた。

 

 

~~~~~~~~~続く~~~~~~~~~