夕方、町の公民館に集まる子どもたち。ランドセルを背負ったまま駆け込み、カレーライスの香りに笑顔を見せる。
食器を抱えて並ぶ姿はどこにでもある微笑ましい光景だ。
無料で温かいご飯を食べられる――地域の「子ども食堂」は、いまや日本各地に広がる善意の象徴となっている。
だが、その裏で驚くべき事実が明らかになった。
近年、ある子ども食堂を運営していたNPO法人の実態が、反社会勢力の資金源だったということが分かったのだ。
NPO法人を立ち上げたのは、表向きは「地域貢献」を掲げる人物A氏。
しかし警察の内偵によって、背後には暴力団関係者の影があることが判明した。
集められた寄付金や行政からの補助金の一部は、子どもたちの食事や学習支援ではなく、裏社会に流れていたのである。
なぜA氏に対して内偵が始まったのか。きっかけは、資金の流れに不自然さがあったからだ。
NPOの代表理事が高級車を乗り回し、繁華街で豪遊している姿がたびたび目撃された。
また、寄付金の収支報告に曖昧な点があり、「活動規模の割に金が余りすぎている」と金融機関から不審情報が警察に寄せられていた。
さらに、ある下請け業者を通じて、過去に反社との接点がある人物の名前が浮かび上がったことも、捜査を動かす決め手となった。
地域の人々は信じられなかった。
子どもたちが「おかわり!」と声を弾ませ、ボランティアが笑顔で給仕をする――その光景の裏で、黒い金の流れが潜んでいたなど、誰が想像できただろうか。
なぜ反社が子ども食堂に目をつけたのか。
その理由は明快だ。NPO法人は設立のハードルが低く、「社会貢献」という看板は世間の信用を得やすい。
銀行口座も簡単に開設でき、寄付金や補助金は堂々と合法的に動かせる。つまり、資金洗浄や裏金の隠れ蓑にうってつけなのだ。
もちろん、ほとんどの子ども食堂は善意によって支えられている。だが、ごく一部に“裏社会の手口”として利用されるケースがあることは、現実として押さえておかねばならない。
無邪気にスプーンを握りしめる子どもの笑顔と、背後に潜む反社の影。
その落差は、あまりにも大きい。社会の善意の象徴すら、裏社会は食い物にしてしまうのだ。