数回の裁判が続き、判決が確定。刑務所に送られる――。


その瞬間に感じるのは、日本でも海外でも同じく「ここから日常が断ち切られる」という絶望だった。
ただ、門をくぐった先に広がる光景は、国ごとにまるで別世界だ。
私が身をもって体験したのは、規律に縛られる日本の刑務所と、暴力や無秩序が支配する海外の刑務所

 

同じ「刑務所」でありながら、そこにはまったく違う現実があった。

 

 

▶日本の刑務所 ― 規律と沈黙の世界

日本の刑務所でまず驚かされるのは、徹底した規律だ。
起床時間、食事、作業、入浴、就寝――すべてが細かく時間割で管理され、囚人同士が無駄口を叩くことも許されない。

刑務官の号令に従って一糸乱れず動く日々。そこには暴力も派手な争いも少ないが、代わりに「無言の重圧」がある。
私はこの規律を守る生活の中で、心まで石膏で固められていくような窒息感を味わった。
外に出たときよりも、むしろ中での沈黙に精神を削られた、と言っていい。

 

 

▶ある国の刑務所 ― 集団と監視の中で

私が海外で収監されたある国の刑務所では、日本とは全く違う景色が広がっていた。
高い塀の内側には広い運動場があり、囚人たちは決められた時間になると一斉に集められる。
そこでは会話や笑い声も飛び交い、日本のような「沈黙」はない。

囚人同士が小さなグループを作り、互いに牽制し合う。看守は表面上は穏やかだが、監視の目は鋭い。
規律と自由が奇妙に入り混じり、気を抜くとすぐに孤立する危うさがあった。

だが、ここで感じたのは貧富の差だ。お金があれば比較的なんでも購入でき、豊かな生活が送れる。上下関係も、お金があれば難なく解決できる。

これを買ってやるから、これをしてくれ、などの取引なんていうものは日常茶飯事だ。

 

 

▶世界各地の刑務所 ― 聞いた話から見えた差

ここで、ほかの収監者から聞いた話も書いておこう。世界中の刑務所は、いったいどのようなものなのか。

 

●北米

・アメリカでは「ギャング文化」がそのまま刑務所に持ち込まれる。

・肌の色や出身地ごとに派閥が分かれ、命の危険を避けるためにはどこかに属さざるを得ない。

・暴力が日常化しており、「生き残ること」が第一の目的になる。

 

●中南米

・刑務所の中が実質的に囚人の支配下にあるケースも多い。

・武器や麻薬が流通し、看守も買収される。

・まるで「塀の中にもうひとつの街」が存在するような混沌とした環境だ。

 

●東南アジア

・収容人数が多すぎ、ひとつの部屋に何十人も押し込められる。

・食事や衛生状態が劣悪で、病気が蔓延することもある。

・生き延びるには、看守や他の囚人との「関係づくり」が不可欠。

・必要不可欠な備品(トイレットペーパーなど)がないのが当たり前。犯罪者には人権もない。

 

●欧州

・比較的「更生」に重きが置かれている国が多い。

・教育プログラムや職業訓練が充実しており、再び社会に戻ることを前提とした仕組みが整っている。

・ただし国によって差は大きく、東欧の一部には劣悪な環境が残っている。

 

 

▶刑務所は「国の姿」を映す鏡

日本の刑務所が「規律」を体現しているように、ある国の刑務所では「集団と監視の均衡」が日常を形作っていた。
北米では暴力が、南米では無秩序が、東南アジアでは過密が、欧州では更生が――刑務所にはその国の社会の縮図が現れる。

 

私が実際に味わった感覚も、他人から聞いた現場の声も、ひとつの結論に行き着く。
刑務所という“別世界”は、単なる隔離施設ではなく、その国の価値観や矛盾を最も濃く映し出す場所なのだ。

 

 

そして今も、海外の刑務所で生きている人々の声を集めている。
それをまた順次更新していきたいと思う。