※本稿は複数の匿名関係者の証言に基づいて編集した仮名報道。
SNS越しに「一緒に稼ごう」と煽り、大勢の若者を引き込む“カリスマ投資家”M氏。
だが画面を閉じると、そこにあるのは投資ではなく、半グレ的な力と暴力で資金を集め、統制する“現代の集金屋”の姿だった。
出自――暴走族、闇カジノ、振り込め詐欺の影
関係者によれば、M氏の若い頃は典型的な“荒くれ”の系譜だ。十代で暴走族に属し、二十代で振り込め詐欺グループの末端役を経て、やがて闇カジノの出入りを通じて顔を作ったという。
周囲は「腕っぷしがあって口がうまい。いつの間にか金を集める役に回っていた」と語る。
表舞台に出るきっかけは、SNSの隆盛とコロナ禍の“巣ごもり需要”。
M氏は投資を看板にしたオンラインサロンを立ち上げ、月額会費や出資名目で数千人規模を集める“仕組み”を作った。写真には高級車や豪華ディナー、海外のリゾート写真──若者が憧れるイメージが並ぶ。
勧誘と統制――“兄貴肌”の演出
元参加者はこう振り返る。「最初は面白半分で入った。相談に乗ってもらえるのが嬉しかった。
彼は“兄貴肌”を演じるのがうまい。飲み会を開いて、参加者を仲間にする。そこで“恩”を作るんです」。
仲間意識を植え付けたうえで、会費や追加出資を募る流れが生まれる。
飲み会や合宿、ツアーなどイベントを多数運営し、参加費や“VIP枠”で現金が集まる。
関係者は「月の会費だけで数千万、年単位なら数億に届くこともある」と語る。細かい内訳は多様だが、会費と高額な“出資枠”が主な収入源だ。
金の流れ――誰がどれだけ抜くのか
繁栄のピーク時、サロンは会費収入に加え、会員を募っての“仲間内ファンド”や、仮想通貨・NFTへの共同投資といった名目でまとまった資金を集めるようになった。
関係者は「実際に投資でまとまった利益が出ることは稀。大半は運営費と“上の取り分”に消える」と明かす。
具体的な金額感はこうだ――月1万円の会費が2000人集まれば月2000万円、年間で2億4千万円。
ここにVIP会員の高額枠(数十万〜数百万円)やイベント収入が入ると、表から見える収入は膨らむ。運営側の取り分、仲介役や“相談役”へ回る取り分、オフショア口座や現金化ルートを通じた抜き取り──関係者は「分配はブラックボックスだ」と語る。
※ここで注意だが、本稿は手口の指南ではなく、構造の解説に留める。
暴力の実態――見せしめと統制
もっとも衝撃的なのは、資金回収や内部統制における暴力の実例だ。複数の元参加者・関係者が以下のエピソードを証言する。
・ある若者が返金を求めたところ、夜に呼び出され、繁華街の駐車場で数人に取り囲まれて殴られた。翌日、顔面骨折で入院したという。周囲は「示談で済ませろ」と圧力をかけられたと口をつぐむ。
・サロン内でトラブルになった幹部候補の男が、グループリンチに遭い重傷を負った。同行していた側近の一人は「シノギ(儲け)の取り分の揉め事だ」と話す。
・内部告発を試みたメンバーが夜道で待ち伏せされ、スマホを奪われSNSアカウントを消された。恐怖を見せつける“見せしめ”が常套手段になっているという。
いずれのケースも、被害者は示談で済ませるか、沈黙を強いられることが多く、真相が表に出にくい。元側近は「暴力で黙らせるのは簡単。広告や投稿で夢を見せて、裏で脅す。両方が機能してる」と語った。
偽装と演出――“成功者”の澱(おり)
M氏のSNSは常に演出だらけだ。高級腕時計、ブランドのロゴが入ったスーツ、貸切のパーティー。
だが関係者の一人は「写真の多くはレンタルか借り物。豪遊の大半は一時的な演出だ」と暴露する。
実態は運営費やイベントの前払い金が使われ、実際の投資利益は限定的。だが“見せること”で新たな会員を引き入れ、資金を回転させるサイクルが出来上がっている。
側近と“番人”――刺青と忠誠
M氏の周辺には、元暴走族や闇カジノの顔役といった“側近”が数名いる。
彼らは表には出ないが、現場での統制、呼び出し、見せしめといった実務を担う。ある元参加者は「彼らは刺青を隠してスーツを着ているが、裏に出れば違う顔になる」と話す。表のソフトさと裏の硬さが同居する構図だ。
現状と余韻――画面の向こう側に何があるか
関係者の話では、M氏は現在もSNS活動を続け、表向きの“成功者”の顔を保っている。
だが、その周囲には傷ついた若者と、説明のつかない金の流れ、そして沈黙を強いられた者たちが残る。
「彼の言う『一緒に稼ごう』の裏で、泣いている人がいる」と元参加者はため息混じりに言った。画面の光に照らされた笑顔の向こうで、誰かが殴られ、誰かが金を失い、誰かが沈黙を選ぶ。その構図は、今もどこかで繰り返されている。