背景
コイン収集は趣味を兼ねた資産保全ですが
資産保全として気になることは自分が落札したコインを改めて出品した場合の落札価格です。
この落札価格の変動に影響を与える要因は何か?
落札価格の変動、A.W.主催第17回マンスリーeオークションで
2022年5月開催オークションにおいて履歴が判明した10枚の落札価格変動を検討したところ
保有期間(5年を超えているかどうか)とコインの種類(モダンコインかどうか)
が重要な要因でした。
しかし、一つのオークションで10枚のケース(事例)を検討しただけでは不十分です。
今回のレポートでは複数のオークションにおいて履歴が判明したコイン・メダルのケースで
落札価格を変動させる要因を更に検討してみました。
なお、人気・見映えは落札価格に影響を与える重要な要因であるものの
数値化が困難ですので今回の検討では除外しました。
但し、検討対象となったコイン・メダルは自分自身が興味を持って履歴を調べたものですから
人気はともかく、見映えは自分にとって魅力的なものでした。
対象
2020年1月~2022年4月に自分が参加した国内オークションにおいて
自分が興味を持ち調べたコイン・メダルのうち履歴が判明した42ケースが検討対象。
この期間中にも3枚のコインが落札→出品となっていて
3ケースが同一コインによる履歴であるため検討対象の総数は39枚。
元を取ることができた採算ラインは+25%。
海外で落札されたものは1ドル111円・出品手数料10%・消費税10%とすると
ドル建手数料込落札価格x100が 円建手数料抜落札価格に相当し
採算ラインは円建手数料抜落札価格から+35%。
参照:海外→国内での採算ライン
結果
変動%が高い順
金貨は黄、メダルは緑、海外落札→国内出品は薄青、採算が取れていないものは赤字
42ケースのうち採算が取れたものは28ケース、ちょうど2/3(約67%)に相当します。
また、2倍以上、つまり、+100%以上高騰したものは10ケースありました。
下落したものは意外と少なく3ケースのみ、最大で38%の下落に留まりました。
そして、この金貨は翌年にも出品されて、その際は54%も高騰しています(*1同一)。
採算が取れたものを個々の要因で検討しますが
%が全体での67%を下回ったものは赤字にしました。
保有期間
1年未満11ケース中5(約45%)、2年未満8ケース中6(75%)
3年未満11ケース中8(約73%)、4年未満7ケース中4(約57%)
5年未満2ケース中2(100%)、5年超3ケース中3(100%)
コインの種類
モダンコイン5ケース2(40%)
アンティーク・古代コイン&アンティークメダル37ケース中26ケース(約70%)
金貨21ケース中13(約62%)、銀貨14ケース中11(約79%)
メダル7ケース中4(約57%)
MS(SP)60以上23ケース中16(約70%) *古代コインのMSも含む
MS(SP)60未満15ケース中11(約73%) *古代コインのAU以下も含む
非スラブ入2ケース中1(50%)、Details2ケース中0(0%)
海外→国内28ケース中22(79%)、国内→国内14ケース中6(43%)
落札20**年
20年8ケース中4(50%)
21年13ケース中9(約69%)、22年21ケース中15(約71%)
考察
採算が取れたものが2/3、取れなかったものが1/3。
驚いたことに、この比率は自分の経験とほぼ一致します。
出品の2/3による利益で残り1/3による損失を補填して少し利益が出たという感じでした。
落札価格は競合で決まりますが
オークションで競合する参加者がいるかどうか、これは運によるでしょう。
したがって、落札価格は確定的なものではなく確率的なものと言えます。
あくまで今回の結果からの推測にすぎませんが
オークションで落札したものを再び出品して採算が取れる確率は2/3
(採算が取れない確率は1/3)
なのかもしれせん。
確率的なものを制御することは不可能と思うかもしれませんが
そんなことはありません、大数の法則があるからです。
確率的な事象は試行回数が増えるほど理論値に近くなるのです。
保有数を増やし出品機会を増やすことで
1/3で損をしても残り2/3で利益を出せばよいのです。
極めて高価なコイン1枚保有すべきか?それなりのコインを多数保有すべきか?
という議論が時々ありますが、資産保全を図るなら後者ということです。
確率的な落札価格に影響を与えるであろう要因を更に検討します。
保有期間に関しては想像していた通り、長いほど有利と言えそうです。
特に、4年以上保有したものについては全て採算が取れています。
保有期間が5年を超えれば税制上の優遇が認められるので
参照:コイン売却と税金
長期保有は資産保全にとって極めて重要です。
対照的に、1年も経たないうちに出品したケースの結果は悲惨です。
モダンコインとアンティーク・古代コインでは圧倒的に後者が有利に見えますが
モダンコインは5ケースしかないので精度は不十分です。
とは言え、モダンコインは初登場時に高値を付ける傾向があるので、要注意でしょう。
参照:モダン金貨のルーツ?スイス現代射撃祭記念金貨、パート3
銀貨は金貨やメダルより採算を取れたケースの%が高かったこと
これは金貨とメダルが大好きな自分にとって驚きの結果でした。
MS鑑定のコインは高値がつきますが、資産保全に有利かどうか?
今回の結果ではMS未満、つまり、AU鑑定などと比べて差がほとんどありませんでした。
つまり、MSだから価格上昇が起きやすいわけでもなければ
MS未満だから価格上昇が起きにくいわけでもないようです。
なお、非スラブ入・Detailsのものはそれぞれ2ケースしかなく検討するに足りません。
海外コインは海外から国内に入ってきますので、海外落札→国内出品のケースが多く
国内落札→国内出品にしても元を辿れば海外落札になるはずです。
そして、海外落札→国内出品の方が国内落札→国内出品よりかなり有利という結果ですが
これには注意が必要です。
今回対象となった海外落札は円安が進む前、1ドル110円程度の時期です。
したがって、採算ラインは+35%となります。
しかし、円安が進み1ドル130円となった今、採算ラインは+59%まで跳ね上がります。
参照:海外→国内での採算ライン
また、*1のような海外→国内で-38%(最低記録)、その後、国内→国内で+54%
となっているケースもあります。
オークション開催時期、これも極めて重要で
コインが高騰した2021年以降、採算が取れたケースの%が高くなっています。
結論
オークションで落札したものを再び出品して採算が取れる確率は2/3。
採算を取るため明らかに重要と思われる要因は長期保有とオークション開催時期。
モダンコインでは採算を取ることが難しい可能性あり。
円高であれば、海外オークションでの落札が有利。