MOMENT/SPEED 1998.12.16
90年代の邦楽が大好きな自分にとって、結構特別な1枚。SPEEDの「MOMENT」。
「Body & Soul」でのデビュー以来出す曲全てが大ヒット、シングルの平均売り上げが100万枚を超えていた(!!)1998年。人気絶頂を飾るベスト盤であり、実に230万枚を売り上げる大ヒットになった今作。
(ちなみに、日本のアイドルグループでは男女含めて一番のヒットアルバムである)
まず「MOMENT」ってタイトルが好きなんですよね。デビューから短期間での、歴代のアイドルと比較不可能なハイペースでのブレイク(先輩の安室MAXみたいな潜伏期も皆無)、小中学生というリアルに子どもな年齢で登場した4人が、少しずつ目に見えて成長していく過程、その年齢でしか醸し出せない''何か''。
さらに、音楽シーンの変化が早かった90年代という時代のスピード感(洒落じゃない)も手伝ったヒット曲がズラッと並ぶ、圧巻の内容。
それらの要素が一本の光になったような、そんなアルバム。
だから、「MOMENT」(瞬間)ってタイトルは当時のSPEEDそのものって感じ。何より、発売当時のSPEEDってデビューから2年4ヶ月しか経っていないんですね。
-そう思うと、夜もヒッパレで一般公募により命名された「SPEED」という名前も予言的、とか言ってみる。
内容は当時の8枚の全シングル曲、加えてアルバム曲やカップリングから数曲、という実に安心安全、親切設計。更に年末発売だからか「White Love」クリスマスバージョン収録、テレビでもちょいちょい歌ってプロモーション。ファンも聴きどころいっぱい、学生のみんなもお年玉で買ってね的な感じでね。
これぞベスト盤の鑑。
ってな訳で、ちょいと全曲レビューもどきしてみた。
書いてるうちに、我やっぱSPEED好きだなーって、ちょっと引いた(なぜ)
1.White Love
SPEED5枚目のシングルにして最大のヒット曲(なんと売上枚数184万枚!!)、冬の名曲として高い人気と知名度を誇る1曲。自身初のバラードシングルでもありました。
SPEEDってヒップホップ、R&Bの香りやマナーを散りばめつつ、メロディーラインとかは日本人の琴線に触れる情緒的なメロディアスさが特徴的だったと思うけど、それが顕著な曲だと思う。この傾向は同時期のEvery Little Thingなんかもそうだったね。流行のサウンドを纏いつつ、日本人に染みる歌謡曲由来のウェットな部分もあるっていう。
この曲と言ったらスタンドマイクで、サビの「果てしない~」のところで両手をふわっと上げる振り付けが非常に印象的で、流行った(よね?)
自分は当時小学1年生なんだけど、クラスのちょっとませた女子はやってた・・・と思う。うん、おぼろげな記憶。
2.ALL MY TRUE LOVE
当時の最新シングルだった8thシングル表題曲。凜としてる、スポーティーという当時のSPEEDの健康的で最大公約数的なイメージを、そのまんま形にしたような曲。加えて、時代を担っているトップアイドルの勢いや聴衆の熱狂を反映しているというか、その時期の勢いが封じ込められたようなエネルギッシュさ。
なんと言っても2段構成のサビがどこまでも盛り上がる感じの曲で、アガりますですよこれは。後半のサビメロディーはもうダメ押しって感じでキーが上がるんだけども、男の自分はこれを原キーでカラオケで歌います。ええ。
無茶なハイトーンの女性曲に原キーで挑むことを我は’’スポーツ’’と呼んでいます
3.STEADY
デビューした1996年発売。2枚目のシングルにしていきなりミリオンセラー(128万枚)を達成。平成のJ-POPで、小学生がいるグループで唯一のミリオンセラーなのでは(当時島袋寛子が小学6年生の12歳)。
我はSPEEDのアップナンバーならこれが一番好きかな。サビのキャッチーさは90年代のJ-POPでも随一だと思う。一方で歌詞の世界観は背伸び(これも初期SPEEDの特徴)だよねえ、「経験を嘆くよりちゃんとしたい」とか、当時のglobe(KEIKO)ならしっくりくるレベルですよ。
でもそういうのどうでも良くなる勢いと魅力が詰まってる名曲だ。
ちなみにこの曲は我にとってもSPEEDにハマったきっかけの曲でありんした。保育園の年長だったんだけどね、「White Love」歌って踊ってる小1女子に負けず劣らず、我もませてたよねえ。
おまけにこの時、テレビの人間に対して初めて恋したのがこの時の上原多香子(当時13歳)である。
かわいい顔して知らんがな( ´Д`)y━・~~我もませてたよねえ(2回目)
そのお多香さんは昔歌番組で「この曲が100万枚売れたら、メンバーを憧れのニューヨークに連れてってあげるよ」と事務所の人間に言われ、「絶対連れてってくださいね」と約束していたら、実際にミリオンセラーになりニューヨークに連れてってくれたと話していた。
おもちゃ屋にリムジンで買い物行ったとかなんとか。。CDバブルだなー。。
4.Wake Me Up!
4枚目シングル。ラテンノリもひとつまみ入れつつ、パキパキっとした活きの良いサマーソング。この辺りから、絵理子ちゃんと寛子ちゃんの歌の役割がはっきりした印象がある。絵理子ちゃんのお姉さんチックで安定した声質が曲のイメージを担い、寛子ちゃんの強烈なハイトーンで曲にタッチをつけ、聴き手に音響的な刺激をもたらすってな具合に。
SPEEDのシングルの中でもアイドル性の高い曲でもあり、最後の「もう泣かない」という台詞も印象的でした。
5.ALIVE
7枚目のシングル。SPEEDのバラードだったらこれが一番好きだ。ファンの中でも人気曲だと聞きます。
暗く、重めなトーンの平メロと、空間を広げるようなサビのコントラストが見事で、ピアノが趣味の自分はよく中学生の時弾いてました。メロディーが本当に綺麗なのが好きかなあ。
メッセージソングは大人のミュージシャンが歌えば、歌詞を咀嚼したり自意識や実存を反映させた重さが出るだろうし、普通のアイドルならキャラクターやポジションに依存した部分が大きくなるもの(いずれも魅力だけどね)
でも必要以上の干渉がなく物凄く澄み切って、それでいてメッセージの重みに押されない力強さで曲を成立させられるのが、当時のSPEEDなんだなあと。
トップアイドルにメッセージソングというのはある種のお約束だと思うけど、実力派で、かつ日本でトップクラスにCDが売れているアイドル(ミュージシャン)だから表現できる感動が詰まった1曲だと思うなあ。
6.Body & Soul
今でもSPEEDといえば?という問いにこれが出てくる人は多いだろう、そんな衝撃のデビューシングル。
とにかく攻撃的に捲し立てる曲調、加えて歌詞は、いわゆる女の子が自らの性を持って男子に迫るっていういかがわしいモノ。それを当時12歳の女子二人が凄まじい気迫、訳わからない故無邪気に歌い切るっていう逸品。
そう、SPEEDって元はかなりシュールなんだね。
でも「同じステップの毎日じゃ 生きてる事さえ 忘れちゃう」みたいな歌詞は、個人的には中学生くらいなら身に染みてたか。性の暗喩みたいなとこを除けば、自己主張を強め始めるティーンって感じのフレーズと解釈もできる。
壮大なお遊びというか実験だった気もするけど、結果はいきなり63万枚を売り上げる大ヒット。ここでイロモノ(まあそんな印象に着地しようがなかったけど)やら一発屋になるどころか、以後どんどん飛躍したのがSPEEDの凄さ。
7.ナマイキ(愛♡♡♡Version)
「White Love」のカップリング曲。クールなサウンドだけど(平メロでぶりぶりしたループするベースがお気にいり)アイドル色の強い、非常にキャッチーな1曲。「あなたは5コも年上だから」「彼の助手席 すべりこむ」ってことで、当時平均年齢14歳の本人たちからすると、推定19歳の車持ってる彼氏って事だよね。うーん歌詞通り「かなりヤバイね」な曲だなあ。
とりとめもなく「カワイイもすごく嬉しいけどね たまにはキレイねって言わせたい!」(言われたい、じゃなくて言わせたいってのが確かにナマイキである)とか歌ってて、可愛い曲だなあ。
当時デビュー2年目、SPEEDのそういう意味での''危なさ''は表題曲ではなくカップリング曲で引き継がれております(爆発的な人気によって、背徳的な事をやり辛くなったんでしょう)
あとこの曲、ラストサビ前に原曲にはない「あいしてる」ってセリフが挿入されるという一工夫があって、これも可愛くて良い。
8.Go!Go!Heaven
3枚目のシングルにして、初めてのオリコン1位を記録。ロック色の強い1曲で、これも「Body & Soul」以上に中々な歌詞と迫力。ただこの路線、シングルでは早くも最後。加えて、ここまでロック調で攻めたシングル表題曲もこれが唯一かも。
B’zの松本孝弘がこの曲を気に入っていて、この年のB’zのシークレットライヴのタイトルに使ったなんて話も。確かに、何かわかるなあ。
メロディーのキレといい、音の隙のなさといい、J-POPはこうであって欲しい、っていう個人的な美学そのまんまな曲です。
後半のサビのゴリゴリ進行する感じとか本当好き。
9.熱帯夜
「Wake Me Up!」のカップリング曲。3分少々の小品ながら、ミスティックで暗く迫力のあるミディアム調ナンバー。
ゆるいラップ調?語り?で、好きな人への少女の胸のうちを独白。澄みながらちょっと鬱屈としたサウンドはまさに「熱帯夜」って感じ。曲詞共に、好きな人の元に抑えられない胸に任せて、いきなり突撃しそうな危うさがたまらん。
間奏では4人の台詞があって、ファンとしても嬉しい仕様ですね。
「Wake Me Up!」が朝の健全なシーン。対してカップリングは夜で、歌詞通り「いい娘じゃいられない」って世界観。シングルでこの対比を作るってのが、洒落てます。
SPEEDってそういう音楽的なバックアップ、アーティスティックな仕掛けもしっかりしてたよねえ。
10.Luv Vibration
1stアルバム「Starting Over」収録曲。PVも作られた実質リード曲で、確かにシングル曲に匹敵するキャッチーな1曲。
改めて聴いたけど、曲のキャッチーさと歌詞の際どさのアンビバレンスさはSPEEDでもトップレベルかも。
ちょいちょい情事を想像させるフレーズが出たり、「無精ひげが似合うね 大人だね ドキドキする」ってフレーズもまあ相手中高生じゃないし(こういうフレーズを、可愛らしい弾けっぷりと妙にお姉さんな落ち着きの同居した絵理子ちゃんが歌うのが余計危なく聴こえる。妙に艶かしい早熟な女子ってイメージで)
今改めて聴くと「ヒョエー」って思ってしまうw 当時のMAX姐さんでもちょっと大人っぽい、歌詞だけ取ったら。
「ハート愛撫して」「Vibして」とかけてたり(ハートとはいえ''愛撫''って言葉を10代前半に歌わせるってのもなかなか)、一方で「ケイタイ きっとhitoeだわ」なんてアイドル丸出しなギミックなフレーズもあり。
いやあ・・・結論、良い曲です( ´Д`)
11.my graduation(Album Version)
卒業ソングとしても人気を博した6thシングル。この曲も静かに過去を振り返る平メロと、抑えてた胸が張り裂けるのをそのまま音にしたように、ぶちぎれ気味に展開するサビのコントラストが凄い。これもJ-POPのお手本みたいな1曲かなと。本当の意味で「切ない」曲。
それでいてサビのメロディーがとことん歌謡曲っぽいのが最高。当時小学1年生の我的には、前作「White Love」よりこっちの方が印象強い。
関係ないけど、この曲のスマートな振り付けすごく好きで、我もカラオケなら完璧にできます(誰得)
披露したいけど披露する相手がいません(でしょうね)
12.White Love(Christmas Standard)
ストリングスをフィーチャーした「White Love」別バージョン。結構音は派手目。元が名曲なので、華やかで豪華に召し替えてもやっぱ良いなーって感じ。ベスト盤のおまけとしてかなり嬉しい1曲ですね。
間奏でギターが奏でてたフレーズをフルート(かな?)に変更されてるのが地味に好き。
ちなみにこの後シークレットトラックで12のインストバージョンも収録。アイドルのベスト盤なのに、なんてゴージャスな作りなんでしょう( ◠‿◠ )
改めて聴いたけど、やっぱ名作ですわ。。
我の個人的90年代殿堂入りアルバムの一つに、キラッキラ輝く1枚なのであります。
あと議員先生にはぜひ歌の世界に戻って来て欲しいと、今でも思っておりますまだ若いんだし(蛇足)