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スローフードな人生! ・・・イタリアの食卓から始まる 島村奈津著

 大昔の話です。

 特別支援学級にいた頃。

スローフードな人生!―イタリアの食卓から始まる (新潮文庫)/島村 菜津

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 スローフード運動というのはイタリアの田舎町を拠点に起こった運動だそうです。食文化のNPO。その宣言・・・


引用開始
(前略)
 我々の穏やかな悦びを守るための唯一の道は、このファーストライフという全世界的狂気に立ち向かうことです。この狂乱を、効率と履き違えるやからに対し、私たちは感性の悦びと、ゆっくりといつまでも持続する楽しみを保証する適量のワクチンを推奨するものであります。
 我々の反撃は、”スローフードな食卓”から始めるべきでありましょう。
(後略)
引用終了

 てなわけですが、単なるファーストフード反対運動ではないようです。
 ゆっくり楽しんで食べる、そして自分で作る。

 私自身は、先日syunさん邸で頂いたお食事(おいしい、手間暇かかったフランス料理)を思い出す部分がたくさんありました。

 この運動に興味を持った著者が関連するイタリア各地の活動を尋ねたルポです。

 著者がハイキングに出かけた時、山の麓で何の変哲もない、ちょっとうらぶれたバール(バーやけど、お酒もあるけどエスプレッソなどコーヒー(エスプレッソやカプチーノ)が基本となる場所なんかな)を見つけて入ります。そこのカレンダーに人名がずっと書かれているのに興味を持って主人とおぼしき人に尋ねます。

 すると彼は「ここはチルコロなんだよ」と答えます。
 チルコロとは寄り合い所といったところでしょうか。そしてカレンダーは

(引用開始)
「つまり、これは当番表なんだ。村にはバールが必要だろう」
 村にはバールが必要だ。バールがなければイタリアの朝は明けない。雑貨屋やパン屋はなくとも、まずはバールだ。村人が日に一度、顔を合わせる場所を作らねばならん。ところが、過疎化の進む山岳地帯の村では、下手をすればバールを経営していけるだけの利用者の数がない。観光客がしょっちゅう来る場所もない。そこで村人がみんなで少しずつ出し合い、アルチ(スローフード協会のもともとの母体)がこれをバックアップしてできたのが、このバールだった。しかし、村によってはバールで働く人間を雇うほどの資金はない。そこで村人自らが当番制で、ここで店番をしているという。それがチルコロだった。表に出てみると、確かに看板にはチルコロと書いてあった。そして基本的に会員には割引などの特典があるが、ただの通行人も、普通のバールのように利用できる。
(引用終了)

 なるほどな。人が集まる場。コミュニティ・・・

 「川を渡る」
http://ameblo.jp/kingstone/entry-10518381185.html

の中でも、障害のある人が地域で生きていくために、地域の人が集まる場(でも実はファーストフードの店なんかだろうけど)の大切さを書いてはったですね。

 またある村の農家にしてワイン醸造家を尋ねます。
 その村はかつて作るワインの評判は落ち、ぶどうは買いたたかれ、過疎の危機に瀕します。エリオはなぜブルゴーニュのワインは大金で買われるのに、自分たちのところはダメなのだ、という危機感からブルゴーニュを尋ねます。

(引用開始)
「まず驚いたのは、ブルゴーニュでは誰もが葡萄の生産量ではなく、質の向上に努めていたことだ。(中略)70年代になっても、バローロ農家の多くは、化学肥料を使って、さらに量産体制に乗り出していた。
(中略)
 2つ目に驚かされたのは樽だ。バローロの醸造家は、古い大樽が自慢だった。親父は50年から100年以上もたった樽を、ろくに洗いもせずに使っていたんだ。ところがフランスではセラーは実に清潔で、しかも樽は数年置きに買い替える。(中略)」
「それに・・・」エリオが、こちらに向き直る。
「僕は、ブルゴーニュで、ある実験をしたんだ。メンタリティーの違いさ。ブルゴーニュのある生産者に、別の生産者をどう思うかと尋ねる。すると”いいね、最高だよ”という返事が返ってきた。別の農家でも同じだ。”最高だよ。ベストだね”そうして4~5軒の農家で同じ質問をしてみたが、どこでも同じような答えが返ってきた。ところがこの辺りで返ってくる返事といえば、”ああ、いい人だよ。ただ、ワインはいただけないね”とか下手をすると”ありゃひどいね、ここだけの話、あいつは砂糖を混ぜてるんだよ”といった調子だ。(後略)」
(引用終了)

 で、エリオは葡萄を剪定したり、大樽を斧でたたき壊したりして、父親からは気が触れたように思われます。また、地域の仲間を作りお互いに情報交換し、地域全体の水準を上げていきます。

 一緒に取材していた人がアンジェロ・ガヤをどう思うかを尋ねました。アンジェロ・ガヤはイタリアワインの水準を引き上げた功労者なのですが、取材者にとっては秘密を他人に教えない人と見えていたのです。

(引用開始)
「いや、アンジェロは、やっぱり偉大だよ。彼は、僕らの何年も前に、ランゲの問題点が何であるかを的確につかみとっていたんだからね」
(引用終了)

 そしてエリオ自身、時々アンジェロに電話して相談することがある、という話が出てきます。つまり・・一見秘密主義と見える人が、実は関わりようによってはちゃんと力になってくれる人だということですね。

 そして現在、エリオたちが作るワインは有名になり、経済的にもうるおっています。

 スローフード的な生活そのものは、なかなか難しいとこもあるし、ファーストフード自体には私もすごくお世話になっています。でも、地域で暮らすこと、障害児教育やネットワークについて、すごく関連づけて考えさせられる本でした。ヒントがいっぱいありそう。

参考
 スローフード協会は日本にも支部ができててホームページもありますね。
http://www.slowfoodjapan.net/

 今日のお昼ごはんは家族でマクドナルドです。

1月6日(木曜日)

 おはようございます。

 今朝、起きてきたら、パソコンが勝手に再起動、しかもちゃんとデスクトップ画面までいってました。
 ???ハードディスクのチェック場面で、必ずフリーズしてたのに・・・
 不思議だ・・・

 まだ外は暗いです。
 でもおだやかないい天気かな。


 

知的障害特別支援学校高等部ではIEPを引き継げません、と言われたらしい話

 Twitterにてある方がこんなつぶやきをされました。

「息子の学校では高等部に上がるに際して中学部までのIEPの引き継ぎができないとのこと。全国的な話なのかな。」

 私がこう返しました。

「なんで?めっちゃ不思議?引き継ぎなしに何の授業も生活も成り立たないと思うのだけど。それともIEPを「保護者から学校がさせられること」とか勘違い?」

 それに対して

「制度的にできないようなことを言われたらしいですよ。義務教育じゃないからとかなんとか」

 で、私が返したのが

「んな制度あるわけない。学校独自の勝手な(言い過ぎ失礼)決まり事に過ぎません。」

 伝聞なので確かなことはわからないのですが、頭に浮かぶことがあります。

 ここにはいくつかの問題がからまっているようです。もう少し詳しく書きます。なお、この方はブログでの公開された情報からは、お子さんは千葉県の知的障害特別支援学校に通っておられるようです。

 まずこの学校の小学部・中学部ではIEPという名前のものがある、ということがわかります。

 ただし、これがどういうものかはわかりません。実のところ、私の現役時代、IEPという名前で呼ばれるものは「個別教育計画」「個別の教育計画」「個別の教育指導計画」「個別支援計画」とかいろんな名前がありました。そして文部科学省は「こんなもの」という定義はせず、各教育委員会・各学校に実行するかどうか、どんな形式でするかなどを含め、任せました。(注・私はそれ自身は良いことだったと思っています。現場の人間が頭を絞って考えればいいことですから。当時も現場で「そんなこと(現場で考えろ)どないしたらええかわからへんやないかあ」と文句を言う人が居ましたが、あほかいな、です)ですからIEPがどんなものであるかは、教育委員会、学校、教師、保護者、専門家を含めイメージがばらばらである可能性があります。

 私のイメージとしては

・(あれば)診断名
・その人の様々な特徴(特性)
・何を教育活動で目指すのか(大方針)
・そのためにはどんな教育活動(授業)が必要か
・細かいやり方も(どうやれば参加できるのか)

について、保護者・教師・(できれば)専門家の協議の上で確認し、作っていくものです。専門家との協議が難しければ、専門家にあらかじめ作っておいて頂いた意見書などを添付し、参考にするだけでもいいでしょう。埼玉県でのサポート手帳のような感じで。

 指導に関する記録と言えば昔から通知票・指導要録があるわけですが、これは実のところ翌年の担当教師が指導の参考にできるようなものではありませんでした。参考になるようなことを書くには欄があまりにも狭いですから。(その割に教師はある意味、全精力を傾けて書くのですが。労多くして益の少ないものでした)

 もちろん、それでも必要に感じる教師は(私もその一人)は前年度までの通知票(本物は本人に渡しているがコピーはあるはず)や指導要録を読み、また文の裏を読み、参考にするわけですが、私の周囲を見回してもそんなことをする教師はほとんどいなかったです。

 IEPについては私も過去にたくさんのエントリを書いています。ブログ内を検索して頂ければいっぱい出てきます。

 あと、これはIEPでは無いですが、「高等部入学前検診」の日にどんなことをやるべきか、で私が提案したことをこちらに引用しておきます。

引用開始
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LDT-Rについて」からの一部引用

私は知的障害特別支援学校高等部の入学の公式発達検査にLDT-Rを入れました。
 (後年どうなったかは知りませんが)その時の意見書です。

先生方へ
                発達検査について
                               kingstone

 入学生についての発達検査についてどんなことをすればいいのか、相談を受けました。私の考えを書きますので、またみなさんからご意見が頂ければありがたいです。

 学校で行う発達検査は、その後の教育活動において、こちらがどのような手だてを取ればより充実した活動ができるか、そして子どもたちが「安心」して「自信」を持って「自由」に活動できるか、これらについて必要な知識を得ることができことを目的とする。

 そこで

 音声言語を頭の中でどれだけ道具として使えるか。(LDT-R)

 目と手の協応動作や手の巧緻性がどれだけあるか。
    ・持つ ・つまむ ・はさむ ・入れる ・差す
 上記のことを入れながら下記のことを検査する
    1対1対応ができるか?
    色のマッチングができるか。
    色を音声で認識できるか。
    形のマッチングができるか。
    形を音声で認識できるか。
    文字のマッチングができるか。
    文字を音声で認識できるか。
    絵や写真と単語のマッチングができるか。
    絵や写真と音声とを一致させられるか(LDTにも一部あり)
    数字の順序がわかるか。
    数字を音声で認識できるか。
    数字と量のマッチングができるか。
 
 ぐらいがわかればいいのではないか。
 また、ではどんな教材(検査器具)を用意すれば良いか、も相談に乗って下さい。

参考

LDT-R(太田のステージのテスト。めちゃ簡単)を高等部入学検査に入れた
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(引用終了)

 この公式検査の日に、身体健康診断・精神科診断(?要するに校医さんに合う)・感覚遊具(トランポリン・ボールプール・ゆれ木馬などで遊ぶ・・・好きなものを探すため)・課題学習(上で書いた項目がわかるようにわかるように組み立てました)などをします。

 地元中学から「有用な」情報が上がってくることはまず無かったです。

 このように「具体的に何ができるか」がわからないと、授業や生活を組み立ててはいけないはずなのですね。

 引き継ぎについては、やはり私のブログ内で「引き継ぎ」で検索して頂けば、昔の特別支援学校や特別支援学級の引き継ぎの当時の現状が出てきます。はっきり言って「無かった」です。私は非公式に時間を取って何とかしていましたが。

 なお特別支援学校小学部から中学部への引き継ぎの時間というのは私の勤務していた特別支援学校ではありました。しかし2時間ほどで全員の引き継ぎを全職員が集まってやるのですから、まともな引き継ぎにはなりませんでした。

 引き継ぎで、上に書いたような項目がわからないと困るわけです。しかし、情報を出す側が「何が大切か」がわかっていないと、もちろん引き継ぎができるわけがありません。例えば私が通常校の特別支援学級に異動した時の例で言うと

トイレで床におしっこをまきちらしていた子への対応

では、そもそもおしっこをまきちらす、ということが報告されていなかった。

通常校でまずやめさせたこと

では、「(教室や必要な所への)移動はできる」という話でしたが、実情は「友だちがごぼう抜きにして無理矢理押したり引っ張ったりして連れて行く」というこでした。また一人のお子さんは体重が重くなってそれもできなくなってきていました。

叩かれていた子の例1

では「勉強が嫌い」という引き継ぎ内容でしたが、要するに担任教師が「その子に楽しい授業を組む」力が無かっただけであることは1日でわかりました。

給食、ある時

では、「私の指導で牛乳が飲めるようになった」というのは要するに威嚇し、怒鳴り上げて飲ませていたのでした。(口につけて無理矢理押し込んだ可能性もありますが、そこは確認できません)

 つまり、情報を出す側の教師にどんな情報を出したら役に立つのかがわかっていなければ有効な情報が出てきません。(こちらが聞いても、そこに注目していないからよう答えない)

 逆に言うと、情報を受け取る側が「何が大切か」がわかっていないと、聞きようが無い、ということもできる。

 で、IEPというのは、本来、そういう不都合を無くそうというものです。



 先ほど文部科学省の学習指導要領を調べてみたのですが、なんと高等学校には特別支援教育という項目が無い!!そうだったのか。

 だから高等部の教師が「IEPは制度として無い」という言い方をしたのかもしれません。文部科学省が規定しているわけでは無い。

 しかし、同じ学校内の小学部・中学部で作られていて・・・

 また特別支援学校高等部の場合、特別支援学校中学部の学習指導要領を参考にする、という話では無かったかな?

平成21年度「高等学校における発達障害支援モデル事業」研究概要(PDFファイル)
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/21/06/__icsFiles/afieldfile/2009/06/08/1268884_2.pdf

の中では11校で「個別の支援教育計画」(名前はいろいろですが、同じようなことを考えていると思われる)を作ることが書かれています。中には千葉県立船橋法典高等学校もあります。

 通常の高校でこうなのです。特別支援学校高等部においておや。

 おっと、あった、あった。

特別支援学校高等部学習指導要領

の中の

特別支援学校高等部学習指導要領 第1章 総則

第2節 教育課程の編成

第4款 教育課程の編成・実施に当たって配慮すべき事項

5 教育課程の実施等に当たって配慮すべき事項

(16) 家庭及び地域や医療,福祉,保健,労働等の業務を行う関係機関との連携を図り,長期的な視点で生徒への教育的支援を行うために,個別の教育支援計画を作成すること。

とちゃんと書いてあるじゃないですか。これで「IEPは作らない」という話ではないことは明らかになりました。もしそう言ったらその教師、そしてその学校の不勉強です。



 しかし、本来、高等部の方でも「こちらから中学部に頭を下げてでも引き継ぎをお願いしたい」と考えて当たり前だと思いますが、「いえしません」と言うなら、ひょっとして「めんどくさいだけで、役に立つ情報が出て来ないじゃないかあ」と考えている可能性があります。

 ここでもとの発言をされた方のお子さんのIEPの文言を少し見てみます。引用しようかと思ったけど、やめておこう・・・

 実のところ、文言を読むと、「どんな特性があるのか」「具体的に何ができるのか」「それを組み合わせてどんな活動ができるのか」があまり書かれていません。

 イメージとしては昔からの通常校通常学級通知票の所見欄をたくさんに増やした、そんな感じでしょうか。「ちょっといい」「ちょっと困る」と教師が判断したエピソードの羅列ですね。その時とられた具体的方法はあまり出てきません。(と言うか、音声言語でやってる)

 たぶん音声言語は少々わかりづらいところのあるお子さんであるはずなのに、音声言語で「わかった」「できた」「納得した」という記述が多くあります。つまり教師の価値観がそこにあるわけです。しかしおそらくはそれでうまくいかない面が多々あるのじゃないかなあ・・・

 これは・・・たぶん、情報を受け取る側(高等部側)が「役に立たない」と判断する可能性はあるなあ、と思います。でその結果「引き継ぎはしない」ということになっている可能性もあります。


 制度・仕組みに魂を入れるのは人なのですが・・・


 まとめると

1.その書式にどういう名前を与えるのか(IEP?個別支援計画?個別の教育支援計画?etc.)
2.そういう書式を作っているのか
3.引き継ぎに意義を認めているのか(有用な情報を書く力があるか。有用な情報を聞く力があるか)

の3つくらいの問題かな。


 まあ、上では「指導要領にこう書いてあるやないかあ、やらんかい」みたいな書き方になっていますが、本当のところは、私は「文部科学省が言うからやる」というスタンスは嫌いで、現場から文部科学省に対して「俺らはこれが必要やからやってるんや!四の五の言うな!」という立場でありたいとは思っていましたが。

IEP(個別支援計画)はみんなを楽にするためにあるんだけどなあ