いつでも行けるからと行っていない、近場の山。沢は多いのではないだろうか?僕にとって「乙女の滝」は、その一つ。

 だって駐車場から20分もしないで到着するなんて、お散歩コースではないか。林道から「乙女の滝0.2km」の看板。近い、近すぎる……と思いながらも歩く。川音が心地いい。

 目の前に現れた乙女の滝は、なんというか奥ゆかしく、そして美しかった。

 

趣がある、といったほうがいいかもしれない。苔むした岩々も実に味がある。右岸に渡り、木々の枝をたよりに崖を登る。おお、遠目ではわからなかったが、カマ持ちの立派な滝ではないか!

 

 発寒川といい滝ノ沢川といい、手稲山水系を馬鹿にしてはいけない。この4ヶ月、病院通いということもあって「トイレから30分で行ける絶景」ばかり撮ってきたが、カメラ女子(写ガール?)やトイレを気にする観光客も多い現在、意外とこのタイトル、ウケる気がする。出版関係のお知り合いがいるという方、どうかよろしく。

 崖を下り、カマから溢れ出す流れを写す。

 

おや、左の枝は楓、まわりは落葉樹だ。このアングルで紅葉……ひと月後にまた来よう。ひと月後……そうか、大雪は初雪の頃か。

 豊滝のAさん、本当にありがとうございます。サイズピッタリです。

 思い起こせば20数年前、空沼岳への雪の上をかんじきで歩いていた僕の後ろに人の気配。厳冬の1月、まさか僕以外に山を目指すやつが……!と振り返ると、そこにスキーを履いたお兄さんが。スキーを履いたまま(横ラッセルでも逆ハの字でもなく、まっすぐ山頂へと向かって)ずんずん登ってくる。訊けばそれは山スキーと言って、板の裏にはアザラシの革が張ってあり、ブーツのかかとは自在に浮くようになっていて……お兄さんとは万計山荘で別れたので詳しくその仕組みを見せてもらったわけではない。

 だから僕はそれからしばらくの間、あれはかかとが上がる「歩くスキー」だと思い込んでいて、中島スポーツセンターに通い訓練を積んだ(本当)。へえ、こんなに細い板だったんだ。どうやってアザラシの革、貼るんだろう……そんな疑問を抱えながら。

 今、その憧れの山スキーが目の前にある。ブーツを履いたり脱いだり。ビンディングにセットしたり外したり。ブーツのかかとが浮く……なんかかっこいい。

 

 H・Y・M・L編「北海道スノーハイキング」を開く。悦っちゃんオススメの蓬莱山に、まずは行ってみよう。帰りは中山峠スキー場を滑降だ。今冬の目標がひとつ増えた。

9月4日「勇払原野に日は昇る……って、今原野って呼ばないの?」の巻

 

 カメラの調子が悪い。十字キーの表示が出ないのだ。うーん、昨日の「3mの滝落下事件」の後遺症か。しかしライブビューにすると何とかなりそうなので、確かめに行こう。

 というわけで朝3時、札幌を車で発つ。狙いは勇払原野の朝日。お腹の調子のこともあるので、駐車場にトイレのある樽前山に決めた。山頂付近は強風だった。三脚にカメラを設置、目を離した隙に三脚ごとバタン!と立入禁止ロープの向こうに倒れてしまった!いかん!急いで抱き起こすも、PLフィルターは傷だらけ。このショックでもしかしてカメラの調子が戻ったりして!なんて無理だよね。叩けば直る昔のテレビじゃないんだから。一式をかかえすぐ風のない中腹に撤退。

 お、日の出だ。

 

だましだましライブビューで粘る。

 さて、中学の頃から地図を見るのが好きで、自転車一人旅をしていたのは以前に書かせてもらったが、記憶では確かこのあたりは勇払原野(ユーフツゲンヤ)と呼ばれていたはず。地図には勇払川はあったが「原野」の文字が見当たらない。苫東地区開発(40年ほど前)あたりから、もしかして原野ではなくなってしまったのだろうか。

 今日はここまで。10時から東札幌の授業だ。そうそう、東札幌の知的障害者劇団は、ここ勇払にも関係する。劇団名はハスカップ。ハンデキャップを持つ者のHを頭にもってきた。今、芝居を作っている。

 おお、雲間からオレンジの光!美しい。

 

……って、帰るよ、ほら!

9月3日 「おお、まさに六段の滝!」の巻

 

 朝4時起きのバイトを終え、用意してあったカメラバッグを背に9時30分、バイクで出発。目指すは岩魚沢左股、標高660mにある六段の滝だ。ganさんの「北海道沢のぼりガイド」によると「その風景には、谷に驚嘆の声が響くだろう」とある。まってろよ、六段の滝!ちなみに、そのガイドにしてもらったサインがこれ。沢・酒・命……命、三番目かい。

 

 ゲートの前にバイクを駐め沢装備に。2kmの林道を歩いて入渓する。美しい小滝がいくつもあったが、全て撮って(カメラを取り出して)いると日が暮れる。セコマのパンをほおばりながら、ズンズン進む。定山渓天狗岳がすぐそこに見えてきた。肉眼で山頂の木々の枝葉まではっきり見える。

うー……登りたい。でもいかん、お腹の調子のこともあるし、かえって明日の仕事の準備もせんと……。おお、小滝の前のムラサキの花が美しい。写欲にかられてパチリ。

 

(家にある「北海道の花」で調べたら「ヒダカトリカブト」とそっくりだったが、違うよね?第一ここ、日高じゃないし……。知っている方、教えてください)

 高度計は660を越えた。あれ?先に見えるのは……滝だ!上から1、2、3、……うん、まさに六段の滝!美しい。秋色に染まった頃は格別の風景だろう。

 

 今日はここまで。下山を決める。さすがに膝に疲れが出たか、3mほどの滝から滑り落ち全身びしょ濡れになる。この沢、下りに難あり!柱状節理の岩盤が多く、登る時にはらくらく!なんて思ってたけど、いかん、山を甘く見ちゃいかん!

8月24日 
 8月も終わりに近づいた。体調のこともあり、いろいろな事を考えるようになった。もしかしたら神様がくれた「考える時間」なのかもしれない。
 若い頃(高校時代は)「どう生きるか」ばかり考えていた。だから「俺は北海道で、児童演劇で食っていく!」と宣言。友人の大森君は「お前がそんな道を進むんなら、俺はお前と絶交する」と言い、本当にこの40年、一度も連絡を取っていない。
 しかし58歳の今、考えるのは「何者で死ぬか」である。
 演劇研究所からNHKの札幌放送劇団、そして独立、テレビの世界へ……他から見れば「成功した男」かもしれない。しかし違う。今の自分に高校の頃に夢見た「児童演劇で食う」は無い。それでも今年、岩見沢の幼稚園で僕の脚色、演出で「3枚のおふだ」を上演させていただいた。ありがたい。



 これを続けていけるか?ペープサートと腹話術、シルエットシアターと演劇……子供達に喜んでもらえることだけを考えて書いた作品だ。



 どう死んで、いや「何者で死んで行くか」。演劇でも大きな賞を頂いたし、テレビ番組は21年も続いた。STVの週一の「Sチョイス」はありがたいことに今も続いている。
 役者として死ぬか?テレビキャスターか?司会者か、写真家か、それとも……俺は高校時代に自分で決めた「児童演劇」で死にたい。それは作でも演出でも、腹話術でもかまわない。何者で死ぬか?……下痢腹を抱えながら、今夜も考えている。
 

8月22日

 休みたい。だが一般の方はご存じないかもしれないが、この時期、僕ら大学講師はレポートの点数付けで夜も眠れないのだ(本当)。なんたって3クラス、150名いるからね……。夜が明けた。もうろうとした頭で、ポストに採点表を投函。仮眠するも太陽の光が眩しくて熟睡できない。近所の北海道神宮には包丁塚というアジサイの美しい場所があるので、いろんなモードで写す。ああ、夏も終わりだな、とつぶやきながら……。


 この日、同じ公園の池で、今年はじめて赤とんぼを見た。僕のカメラではこれ以上近づくことができない。小さな小さな赤とんぼだった。ああ秋はすぐそこまで来ている。

7月18日「最悪の夜」の巻
しまった!—昨日の薬の効きがよく、調子に乗って禁止されているビールを飲み、餃子まで食ってしまった!いずれもNG食品「麦関連」である。
FODMAP(食べて良いもの悪いもの)表を見るとつらくなる。
大好きなビール(ホップが下痢の誘引剤)をはじめ、パン、ピザ、ラーメン、うどん、そうめん、豆類、キムチ、フライドポテトから山の携行食で或る缶詰の魚、ソーセージまで。つまり大好物のほとんどがNG!まさかご飯とソバだけで生活しろってかい・・・。

そして約束をやぶり、食ってしまったのだ。そのツケは大きかった。何と10分に一度のトイレ通い。朝のバイトはたまたまの休みだが、9時には大学に行ってなくてはならない。つらい・・・
実は先週、胃カメラ、大腸内視鏡カメラでの検査が終わり、診断結果が出たのだ。やはり「過敏性腸症候群」である。精神的理由以外、考えられないということだ。「何でも自分が自分がと考えず、オレ一人くら居なくたって地球は回るんだって思うぐらいがいい」とは担当の宮下医師。いや、そうはいかんのだ。この診断がでるまで僕は待合室でテレビの台本を書いていた。今も頭の半分は明日〆切の新作「ノラ犬たちのブルース」の台本のことでいっぱいだ。今週は21日が講演会、22日はテレビの収録。次週25・27日で大学の授業(前期)を終え、30日はいよいよ夏の一大イベント「ジャズダンスナウ」(ナレーションと出演)のリハーサル。「オレ一人いなくても」なんてどうやっても思えないよなぁ・・・昔の人は言った「役者は、声のかかるうちが花」そう考えよう。
よし、やらなきゃならないことは元気にやって(なんとかお腹治して)明日は冒険に行くぞ!というわけで明日は年に数度の全休!

 

 

7月19日
朝11時近くまでかかってこの文章をまとめた。今日は漁岳を川から登ってみよう!とバイクを飛ばす。ところが!札幌は晴れていたのだが、恵庭岳公園線を過ぎた辺りから急に冷気が!メッチャ寒い。こりゃ一発で下痢るな、と感じ、「ようこそ支笏湖へ」の看板から引き返す。今日は恵庭渓谷を歩こう。
ゲートの前に車を止め、川へ。ちっとも面白みがない。遡るも途中であきる。おにぎりを岩の上で食べ、林道へ。お、大木の根が林の中にあるぞ。やぶをこいでパチリ(写真)

しばらく歩くも、滝の音すらしない。橋だ。そばに行ってみると・・・何とアスファルトの道が渡され、橋に渡る事は出来ない。

しかたがない。引き返そう、こういう日もあるさ。ラルマナイの滝のトイレに寄ろうと橋から下を見る。いつも上からしか見る事の出来ない滝だ。まてよ、あそこに行くことは出来ないのだろうか?せいぜい崖をおりて100mだ。(これから先良い子はぜったいにマネしてはいけません)ラルマナイの滝の手すりの隙間から滝へ降り、ロープがないので、クマザサをつたって崖下へ。沢靴なので水を気にせずズンズン上流へ進む。深みを右から巻く。イラクサばかりでかなりキツイ、倒木をつたって再び川床へ。公園線の橋の下を通ればあの滝だ。
水量が多い、手前の岩に水をかけてムードをだし、4分の1秒でパチリ。うーん、いいんじゃね?(写真)

 

10枚程写した頃にトイレ生きたい症候群だ、来た道を戻っては間に合わない。残るは・・・鉄橋の下の崖、直登である。ロープなしでの直登は子どもの頃の遊び場(オホーツクの崖)でなれている、と甘く考えていた。ここは岩がちがう。つかんだ先から、くずれ落ちるのだ。
数少ない植物の根は残く、すぐに抜けるのでアテにならない。岩が露出しているところをさけ、可能なかぎり植物のあるところにへばりつき、上へとむかう。手でつくった凹みに足をかけ、のくりかえしだ、八合目あたりで大崩落となった。落ちたらまちがいないく大けがだ。ついでに誰も気づいてくれないだろう。かろうじて橋の手すりにしがみつき、トイレも間に合ったが貧血の皆さんにはけっしておすすめできないルートである。でも秋にもう一度行こうっと!

 

 

 

 

7月11日「脚立on三脚、大活躍」の巻
いつか画面いっぱいに知床半島から昇る朝日を、そして屈斜路湖の全体を写したい、と買ったのが超広角レンズSIGMA8-16㍉である。
その活躍の時がついに!もうひとつ、このポイントではどうしても足元の笹が写り込んでしまい、ちょっと雑多な感じになってしまうので、秘密兵器を開発した。(会社から持ち出した)アルミ三脚に木製のアームをとりつけ、三脚のアシの入るカップを2カ所取り付けた。脚立on三脚略してK・O・Sである!(写真)

 

開発費は100均のペン立て2ヶ(216円)だけだから、かなり安価な秘密兵器といっていいだろう。
ここは津別峠、美幌峠よりも標高がある。もっと言えば駐車場に夜も開いている立派なトイレがある。ありがたい!
急に入った北見の講演会のため、前日からレンタカーで峠に泊まり、朝3時からの撮影となった、百枚以上写したが、朝焼けにはならず思ったような写真は撮れなかったが、面白いものも(写真)

 

ほら雲海の下の湖が反射して雲の中に何かいるみたいでしょ?この写真もいいなぁ、強くはないけど雲間からの太陽光がふりそそぎ、・・・そう、どんな風景だって一期一会。僕にとっては大切な出逢いだもの。(写真)


その足で北見へ。打ち合わせ後スグにスタンバイ。10時から16時の講座、終って外に出たら夕方だというのに気温はプラス32度!
のんびりしてはいられない。22時までにレンタカーを返し、明日朝の大学の授業の準備をしなければ。んーお腹いたいのは変わらないけど、やっぱ冒険のこと考えている時が一番!だよね〜

 

 

7月10日「空沼岳湯の沢ルートへ!」の巻
お薬手帳を見る。薬がきかないこともあり、「もしかしたらウィルス性かも」と治療方法が変わったのだが、下痢は治まらない。「今までの考えを一度リセットして、膵臓を調べさせて下さい。」と急遽造影剤を注入。CTスキャンのベッドの上の人となった。結果から言うと、「何ともない!!」のである(前回の内視鏡検査から数ヶ月しかたっていないが、それは他の病院だったので)来週は胃と腸、つまり上から下からいっぺんにカメラを入れて調べるという。う・う・う・・・病院から戻り時計を見る。夕方の仕事まで6時間。腹を押さえ横になっても、本を読んでも6時間、ならばとリュックを背に沢へ向かう。
空沼岳(万計沼)へと続く湯の沢ルートだ。4月の下見では雪が多すぎて入渓ポイントすらわからなかったが、一言で言う。素晴らしい沢である。
まずこの写真を見てほしい(写真)。

蛍光灯モードで写しているからだけではない。滝の下の一枚岩が乳白色なのだ!そこに木漏れ日が落ちて・・・いっぺんにファンになってしまった。

次々と小滝が現れる。カメラをしまう暇がない。この三段の滝などは中段(左)のたまりに森の木々が映り込み、まるで緑の沼のようだ。(写真)


お腹の調子と夕方からのスケジュールをかんがみ、万計沼までの遡行は無理としても15mの大滝はみてみたい。だがすでに登り始めて2時間が経過。どこかであきらめをつけなければ、しかし依然、15mの滝の気配(音)はない。

 ふと前を見ると、大岩にたおれかかった大木の上で僕の方をふりかえりながらシッポを上下させている黒い鳥がいる。チーチージョイジョイという声からしてカワガラスだろう。なぜあんな高所に?しかもあのシッポの振り方はどうみても「ここにおいで」である。
よし、あそこまで行って滝が見えなんだらあきらめよう。そう思っておそるおそる大木の橋を渡った。すると・・・50mほど奥の崖の上から流れ落ちる滝が!あった!カワガラスが教えてくれたのだ。いそいで沢を詰める(時間がない!)とてもファインダーには収まらない高さだ。リュックと三脚を足元に置き、カメラだけをタスキがけにして僕は向かいの土壁を登った。木の根にぶら下がって写したのがこの一枚だ(写真)

よし、今日はここまで。16時からの打ち合わせに間に合うよう、駆けるように沢を降りた。

 

6月25日「ああ、あこがれの七重岳!」の巻
もうレンタカーを借りてしまったのだ。行くしか無い。道南の七重岳である。天気は雨だけど・・・15時、町役場から左に折れ、ガード下をくぐって城岱牧場へ。山頂は雲の中だが、明るいうちに一度登っておこう。
 牧場を通っての登山だ。めずらしいのか牛たちが寄ってくる、いやずうっとついてくる!

(写真)

 

牧棚が終わり牛たちと別れをつげると、すでに雲の中だ。
山頂の看板(写真)

だけは何とか写すが、長居はできない。つめたいミストシャワーの中である。はたして明朝。あこがれの雲海にうかぶ駒ヶ岳と羊蹄山は望めるのだろうか?
いったん車に戻り、展望駐車場へ。まったく霧の中だが、函館山からとは逆の裏夜景がここから見えるはずだ。駐車場の左スミにテントを張る。ペグは打たなかった。僕という重石があるのだから。(一人用テントなので)大丈夫だろう。とタカをくくっていた。ところが・・・。22時ぐらいから風雨が強まる。深夜1時半、強風でテントが底から浮いた。マズイ。ここは崖の上である。身につけられるものはすべて身につけ時計を見る。どうやら3分に一度、ほんのわずかだが、風が弱まるようだ。その時を待つ。今だ!大急ぎでテントをたたみ、車の荷室にすべてをつっこむ。かろうじて運転席に滑り込み一息つく。
すっぽりと雲につつまれている。時折強い風で雲に隙間が出来ると、函館の夜景が見えた。美しい(写真)

中央線が函館山のシルエットだ。
朝4時、再登山をあきらめ下山を開始。途中、道南特有のスギの林にからまるツタ類に花が!(写真)

 

上空の厚い雲とあいまって幻想的な一枚となった。その足で大沼公園へと向かう。湖畔に無料トイレがあったはずだ。用を済ませ、湖畔から一枚、(写真)雲が厚い。

 


残念だが、札幌へ向かおう。今日からM女子短大の夏期特別授業が始まるのだ。ああ、責任感だけが僕を動かしている。