橋下、竹中の露払いで菅政権が病院への責任転嫁開始!「医療崩壊は病院のせい」は嘘、最大の戦犯は公的医療を弱体化させたお前らだ
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無為無策によってコロナ患者を自宅死に追い込んでいる国と東京都が、自分たちの失策を反省するでもなく強権発動に出た。
昨日23日、田村憲久厚労相と小池百合子都知事が揃って、改正感染症法に基づいて都内すべての医療機関に病床確保と人材派遣を要請。
正当な理由なく応じなかった場合は勧告し、それでも従わなければ医療機関名を公表できる。
菅政権にしろ小池都知事にしろ、医療資源の限界を冷静に判断することも変異株の影響を加味することもせず、東京五輪開催のために新規感染者数の抑え込みを放棄したことによっていま医療崩壊は起こり、多くの人たちが命の危険に晒されている。
ならば、まずは自分たちの判断の甘さ、対策の失敗を詫びるのが道理だ。
ところが、そうした自分たちの誤りは認めず、さらには追加のインセンティブも提示せず、ただ「病床を用意しろ。人材をよこせ。応じなければ公表するぞ」と恫喝をかけるとは、いったい何様のつもりなのか。
だが、じつはこうした流れになることは数日前から予想されていた。
というのも、菅義偉首相の息がかかった“応援団”たちが最近になって一斉に、医療崩壊の原因を「医療側」に押し付けるキャンペーンを開始していたからだ。
たとえば、菅首相に近い橋下徹氏は18日に〈政治が重症・中等症ベッドを増やすよう医療界に「命令」を出し、従わなければ強烈な制裁を加えるしかない〉とツイート。
つづけて、菅首相のブレーンである竹中平蔵・パソナグループ会長も22日に〈コロナ問題最大の課題は、病床不足で医療逼迫すること。病床を増やせというと、医療関係者は「出来ない」理由を並べたてる〉〈「医療ムラ」を解体しないと、日本は良くならない〉と投稿していた。
安倍・菅政権の約1年半の失策は無視して、「命令」だの「強烈な制裁」だの「医療ムラの解体」だのと医療界に全責任を擦り付けるこの露骨さ……。
だが、このような強権発動をしても、「拒絶すれば名前を公表するぞ」などと脅迫しても、問題の解決にはつながらない。
まず、前述したように要請の対象は都内すべての医療機関、診療所であり、これでは一般診療にさらに制限をかけることになり、コロナ以外の患者に大きな影響が出てくることになる。
さらに、『報道1930』(BS-TBS)の取材に対して都の担当者は「眼科の先生にコロナ患者を診てくださいとシフトをお願いすることも」などと回答しているようにハナから専門性を無視しており、実行性も疑わしい。
また、大阪府の吉村洋文知事は政府や都に先行し、13日に同じく改正感染症法に基づいて約80の医療機関に計約490床の確保を要請していたが、これに応じた医療機関はゼロ(読売新聞21日付)。
そして要請に応じなかった医療機関側には「看護師が足りない」「コロナ患者の動線確保が難しい」と、いずれも“正当な理由”があった。
本来、この1年半のあいだに政府は、確保できない理由を解消するために尽力するべきだったのにそれもせず、今回の政府と都の要請は大阪の例を見ても「焼け石に水」に終わる可能性が高い。
コロナ病床確保しろという一方で、菅政権は消費税でご褒美出して全体の病床を削減する「地域医療構想」を推進
ようするに、今回の政府と都による要請は菅政権の支持率低下へのテコ入れとパラ開催に合わせた「やってる感」の演出、パフォーマンスでしかない。
それどころか、橋下氏や竹中氏のツイートからも明らかなように、本当の目的は病床の確保ではなく「悪いのは患者を受け入れない医療機関」と印象づけたいだけだとしか考えられない。
だいたい、「名前を公表するぞ」などと医療機関を恫喝するまえに、政府と都にはやるべきことがある。
大前提として今回の政府と都による要請は、一般病床を大幅に減らしてコロナ病床に転用しようというもので全体の病床を増やすものではない。
恫喝をかけるまえに、まずは効率的に患者を診ることができる野戦病院のような施設を早急に用意し「増床」をすべきなのだ。
ところが、田村厚労相も東京都もオリパラ競技会場や関連施設の野戦病院への転用を検討しつつも、本日から開幕するパラリンピックが5日まであるため〈転用は早くても同月(9月)6日以降〉(産経新聞22日付)だという。
この災害クラスの非常事態にパラリンピックを予定どおり開催すること自体が異常だが、さらに都民の命を救うための施設の整備を「パラ開催」を理由に先延ばしにしようというのである。
いや、そもそも国にも都にも、医療機関に「病床を確保しろ」などと強権発動する資格はない。
菅政権はこのコロナ禍にも病床削減のために補助金までつけて推進しているからだ。
本サイトではこれまで繰り返し言及してきたが、2014年に安倍政権が医療費を削減するため、公立・公的病院の統廃合を進めて病床数を20万床減らすという「地域医療構想」なる制度を開始し、2019年9月には「再編統合の議論が必要」だとする全国400以上の公立・公的病院を名指ししたリストを公表。
また、統廃合や病床削減をおこなう病院には全額国費で補助金を出すとし、2020年度予算で84億円を計上。
この制度は「病床削減支援給付金」と名付けられているが、ようは病院側に「ベッドを減らしたらご褒美にお金をあげる」と持ちかけて病床を削減しようというものだ。
言うまでもないが、その「ご褒美」の原資は我々の税金である。
わざわざ税金を使って医療をカットするとは意味不明としか言いようがないが、もっと愕然とするのは、2020年にコロナ感染が広がり、医療逼迫が叫ばれるようになっても政府はこの政策を撤回せず、2021年度予算では2020年度の2倍以上になる195億円を計上。
さらにその財源を消費税で賄うために法改正までした。
これにより、今年度は消費税を195億円も使い、なんと1万床を削減するというのである。
人工呼吸器やECMOを導入した川崎の民間病院が「地域医療構想」のせいで救急センター運営できず
周知のとおり、コロナ患者の多くを受け入れてきたのは公立・公的病院だが、自民党政権の医療費カット政策によって公立・公的病院の感染症病床は削減されつづけ、さらにこの「地域医療構想」によりコロナの重症患者を受け入れることができるような高度急性期病床も削減されてきた。
つまり、感染症対策という国家の安全保障を軽視して社会保障をカットし防衛費を増額させてきた結果、いまのような危機に陥っているのだ。
実際、この「地域医療構想」による悪影響は、コロナ治療にあたる最前線の現場にあらわれている。
今年6月27日に放送されたNHKスペシャル『パンデミック 激動の世界(12) 検証“医療先進国”(後編)なぜ危機は繰り返されるのか』では、神奈川県川崎市の民間病院である新百合ヶ丘総合病院がICUを備える救命救急センターを開設するべく、感染症に対応できる個室病床を増設、人工呼吸器やECMOも導入し、今年4月の運用開始を目指したものの、病床を削減するための「地域医療構想」がネックとなって地域の医療機関や行政が参加する会議で合意が得られないという実情が報告されていたからだ。
だが、菅政権には何の反省もなく、6月に閣議決定された「骨太の方針」でも、社会保障費の削減や「地域医療構想」の推進を掲げているのである。
いや、これは政府だけの問題ではない。
小池都知事はこの「地域医療構想」に乗っかり、コロナ対応の重点医療機関となってきた都立広尾病院や公社豊島病院、公社荏原病院をはじめとする公社・都立病院の独立行政法人化を計画しているからだ。
いまこそ公的病院の重要性がはっきりとしたにもかかわらず、この期に及んでもコストを優先し、独法化を進めた結果コロナによって医療提供体制の脆弱さが顕になった大阪府のあとを追いかけようというのである。
このような医療崩壊を招くような政策を取り下げることもせず、挙げ句の果てに「病床を確保しなければ名前を公表するぞ」と脅す。
そして、大阪の医療をボロボロにした張本人である橋下氏や自民党政権下で医療費カットを進言してきた竹中氏といった連中が「強烈な制裁を加えろ」だの「医療ムラを解体しろ」と叫ぶ──。
ようするに、菅政権も小池都知事も菅首相の応援団も、命の危険に晒されている市民を救わなければならないという危機感はまるでなく、たんに医療機関をスケープゴートにして自分たちの責任から目を背けようとしているだけなのである。
当然だが、こんな連中の言うことを信じ、「患者を受け入れない病院が悪い!」と叫んでも、この危機を乗り越えられるわけがない。
それよりもいま必要なのは、菅政権は「地域医療構想」に基づく病床削減政策を、小池都知事は公社・都立病院の独法化を方針撤回することであり、パラリンピックの中止および競技会場・関連施設を使用した野戦病院の開設であることだと強く指摘しておきたい。
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