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緊急速報!新型コロナウイルス「指定感染症」2020.2.1へ前倒し、感染を防ぐ対策とマスクの効果
政府は1月28日、新型コロナウイルス(2019-nCoV)感染症を感染症法上の「指定感染症」と検疫法上の「検疫感染症」に指定する政令を閣議決定した(関連記事:政府、2019-nCoV感染症を指定感染症に指定)。2月7日に施行となる。2019-nCoV感染症が指定感染症になると、これまでとどのように対応が変わるのか、国立国際医療研究センター国際感染症センターの忽那賢志氏に聞いた。
感染症法では、感染力や重症度などに応じて1類感染症から5類感染症まで分類されている。例えば、今もコンゴ民主共和国で流行しているエボラ出血熱は1類感染症、2019-nCoVと同じコロナウイルスによるSARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)は2類感染症に定められている。これらの感染症は、診断されれば管轄の保健所に届け出ることになっており、国が全体の発生数の把握をし、必要に応じて対策を講じることができる。
さらに、感染性や病原性の強い1類感染症、2類感染症については、感染の拡大を防ぐために都道府県知事が必要と判断した際には入院措置を取ることができる。1類感染症、2類感染症は、診療する医療機関も定められている。2類感染症を診療するのは第2種感染症指定医療機関(348施設)、1類感染症と2類感染症を診療するのは第1種感染症指定医療機関(55施設)となっており、さらに「未知の病原体による感染症」と認定された新感染症を含め1類・2類感染症を診療する特定感染症指定医療機関(4施設)が指定されている。指定感染症とは?
今回、新型コロナウイルス(2019-nCoV)感染症が指定される「指定感染症」は、感染症法に以下のように定義されている感染症のこと。
「指定感染症」とは、既に知られている感染性の疾病(1類感染症、2類感染症、3類感染症及び新型インフルエンザ等感染症を除く。)であって、第三章から第七章までの規定の全部又は一部を準用しなければ、当該疾病のまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあるものとして政令で定めるものをいう。
(出典:感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律[平成十年法律第百十四号])要するに、「これまで感染症法に指定されていない感染症のうち、緊急で患者の行動を制限することが必要な場合に、一定の期間に限って措置を行えるようにする」というものだ。さらにかみ砕くと、「特定の感染症を、臨時で感染症法の中のいずれかのカテゴリーに一時的に当てはめることができる」ということになる。一時的とは、通常1年、必要に応じてさらに1年延長し2年、その後も必要であれば審議され、1類~5類のうちのいずれかに指定されることになる。
2019-nCoVの病原性や感染性を考慮すると、2類感染症相当とされる可能性が高そうだ。これまでに指定感染症になった感染症としては、2003年7月のSARS、2006年6月のインフルエンザ(H5N1)、2013年4月の鳥インフルエンザA(H7N9)、2014年7月のMERSがある。いずれも指定感染症になった後には2類感染症として定められており、今回も2類感染症に指定される可能性が高いだろう。指定感染症になるとどうなる?
指定感染症になることによるメリットとしては、以下が挙げられる。
(1)患者に対する入院措置を取ることができる
これまでは2019-nCoV感染症の患者において入院が必要だと医師が判断しても、患者が拒否すればそれ以上は強制力がないという状況だった。指定感染症となると、法に基づいて隔離措置を取ることができるようになる。これにより、感染性の強い患者からの伝播を防ぐことが可能になる。
(2)入院費が公費負担となる
これまで、2019-nCoV感染症の患者が入院になった場合、比較的軽症で入院を望んでいない場合も、患者自身が自費で医療費(の自己負担分)を支払う必要があった。指定感染症になることで、公費から医療費が賄われるようになり、患者の負担なく隔離措置を取れるようになる。つまり、「お金がないから入院したくない」というようなトラブルを防げるようになる。
(3)届け出が必須となり発生動向調査が容易となる
現時点では、2019-nCoV感染症が疑われた場合も保健所や行政に届け出ることは義務ではないことから、取りこぼしが生じる可能性がある。指定感染症となることで、診断時に届け出る必要が生じることから、全数把握がより正確になるという利点がある。
(4)接触者の把握が容易になる
患者と濃厚接触をした人が、今後2019-nCoV感染症を発症しないかどうか追跡することは非常に重要だが、今の状況では接触者に協力をお願いするしかなく、法的強制力はない。指定感染症になることで、接触者の調査をより確実に行えるようになる。
(5)おそらく医療従事者の感染リスクが減る
感染症指定医療機関は、SARS、MERS、エボラ出血熱などの感染性・病原性の強い感染症の診療に備えている医療機関だ。2019-nCoV感染症と確定診断された患者の診療は、新興感染症の診療の備えが十分ではない病院を含めた全ての医療機関で対応するよりも、感染症指定医療機関のみに絞った方が、医療従事者の感染リスクは下げることができると考えられる。指定感染症になるデメリットは?
一方、2019-nCoV感染症が指定感染症になるデメリットとして私が想定するのは以下である。
(1)感染症指定医療機関に負荷がかかる
現時点では全ての医療機関が2019-nCoV感染症の診療を行うことになっているが、指定感染症になることで、確定診断された症例は感染症指定医療機関のみで診療することとなる。患者数が多くない現時点では対応可能と考えられるが、今後国内でも流行が広がった場合、指定医療機関のキャパシティーを超える可能性がある。
万が一症例数が感染症指定医療機関のキャパシティーを超える場合には、早期に感染症指定医療機関以外の医療機関でも診療できるように仕組みを変える必要があると考える。
(2)感染症指定医療機関以外の病院での警戒度が下がる
同様に、2019-nCoV感染症が指定感染症になることで、「うちの病院はこれで関係ない」と考え警戒を緩める医療機関があるかもしれない。しかし、2019-nCoV感染症の患者は最初から感染症指定医療機関を受診するわけではない。疑い例と判断されるまで、あるいは確定診断されるまでは、それ以外の医療機関も診療する可能性がある。指定感染症になることで、かえって警戒が緩み医療従事者の感染リスクが高くならないことを願っている。
(3)人権に関わる問題
強制力を持って人を病院に入院させるということは、人の行動を制限する行為となる。もちろん、感染症の広がりを防ぐために必要な行為と考えられるからこそこのような措置が取られるわけではあるが、そのために自由な行動を制限される人がいることに、我々医師は自覚的である必要がある。
以上、2019-nCoV感染症が指定感染症になることに関するメリットとデメリットについて挙げた。個人的には、指定感染症になることでデメリットよりはメリットが大きいのではないかと考えているが、今後の国内での症例数の推移次第で、指定医療機関の医療従事者の負担が大きくなり過ぎた際は、現場を含め柔軟な対応が求められるところになるだろう。
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胃腸良子