ECDの全レコード「2004~2018」 | KillerKiller Records 覚え書き

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ECDの全レコード4回目、最終回。今回は2004年~2018年。
アル中から復帰して一切の酒を断ち、メジャーと決別してからの自主製作期。
デモなどへの積極的参加や結婚して2人のお子さんができたり、
これまでのさんピン世代を引っ張ったHIPHOP兄さんとしてではなく
より個人、ECDとしての色を強めながらラップミュージックを模索した時期だと思います。
ガン闘病中から亡くなるまで最後までアーティストとして生涯を貫いた軌跡、
レコード媒体のリリースは少なくなったものの常に新しくあり続ける姿が輝かしいです。

※2018.4.12 「墓場のディガー」追記
※2021.9.22 「Straight Outta 138」写真追加
※2023.8.8 「Hungry Ghosts」追加


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ECD [言うこと聞くよな奴らじゃないぞ] 7"

A1:言うこと聞くよな奴らじゃないぞ (YEYE VERSION)
B1:言うこと聞くよな奴らじゃないぞ (MIDNIGHT VERSION)
B2:言うこと聞くよな奴らじゃないぞ (LIVE AT WATTS VERSION)

03年、円盤からの7インチ。03年ですが自主盤でまとめたいのでこちらで。
渋谷サウンドデモのために作られたテーマソング。
いきなりメジャーでは絶対に出せないものを出してくる姿勢、素敵です。
朱里エイコ「イエイエ」まんま使いは今聴いても衝撃的。
以前に記事を書いてるのでこちらもご参照。
ECD 「言うこと聞くよな奴らじゃないぞ」
円盤は番外編で紹介したDVD-Rなどもありますがライブでの異色セッションなど
ECDの前衛的な部分をより引き出していたように感じます。


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ECD [軽いハズミで] 12"

A1:軽いハズミで (Album Version)
A2:軽いハズミで (Instrumental)
A3:軽いハズミで (Acapella)
B1:関係ねーっ! (Album Version)
B2:関係ねーっ! (Instrumental)
B3:関係ねーっ! (Acapella)

04年、アルバムFINAL JUNKYからのシングルカット。
自主製作の始まった前作「失点in The Park(03年初版と04年ピンク版)」と「ECDVD(初版)」は
自主レーベル「RECORDS」からでしたがこのアルバムからは生涯使い続けるレーベル名「FINAL JUNKY」
レコードではJETSET絡みになることが多いです。
軽いハズミでは不安定な手押しループのアシッドトラック上で不安定な生活を歌い
House Music All Night Long と歌い上げアングラなディスコ感を感じさせる一曲。
裏は爽やかさのあるシンセのループ上で社会の納得できない色々に中指を立てる「関係ねーっ!」
サウンドデモをはじめ市民からの発言に関わりだした時期なのもあり
「関係ねえって言ってやれ!生憎ご期待に沿えません」はその現場から発せられる叫びのよう。


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U.G.MAN & CHARM [SOME SECRET] LP

 

B1:U.G.MAN / ガラクタ feat.石黒景太、工藤キキ、阿部周平、ECD

B6:U.G.MAN / セシオン feat.ECD

 

06年、 ハードコアバンド2組のUSツアーのスプリット。

U.G.MANサイドに2曲参加しています。

以前に記事を書いてるので詳しくはこちら。

U.G.MAN & CHARM「SOME SECRET」

17年のベスト盤「21世紀のECD」にはセシオンが収録されました。

 

 

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ECDイルリメ [ブレイクダンスは頭で回る] 7"

 

A:ECDイルリメ / ブレイクダンスは頭で回る

AA:ECD / 実在のひと

 

06年、イルリメとのコラボアルバム「2PAC」とアルバム「CRYSTAL VOYAGER」からのダブルサイダー。

これまで共作や共演を重ねた二人の待望のコラボアルバムでした。

イルリメが絡むとECDのソロでは見れない部分がググっとひねり出されて

不思議な曲が出来上がる、不思議な魅力のコンビでしたね。

ライブでも何度か見ましたがほんとに楽しそうにラップしてます。

裏はまたガラッと変わってシンプルなトラックでの自己証明。

アルバム通してTB-303とTR-808のみを使ったアルバムからなのでビキビキなアシッド感が魅力的。

 

 

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ECD [L.A.M.F.] 7"

 

A:L.A.M.F

B:ナイトトレイン feat.イルリメ

 

08年、アルバムFUN CLUBからのシングルカット。

L.A.M.F.はビキビキしながらもアッパーなトラックで楽しい!

ECDのフロウもどこかネトついた一筋縄ではない強烈な曲。

「リズムだリズムだリズムだリズムだリズムだリズムだリズムだリズムだリズムだ

リズムだリズムだリズムだリズムだリズムだ調子に乗るぞ」

と執拗に繰り返す歌詞も小気味いいです。

裏では再びイルリメを迎えてのナイトトレイン。

これまたアッパーなファンキートラックでイルリメがサイドで煽るパーティトラック。

こういう素直に踊れるような曲と実験的な曲が混在したアルバムでした。

 

 

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ECD [FINAL JUNKYのテーマ] 7"

 

A:FINAL JUNKYのテーマ

B:FINAL JUNKYのテーマ Original Ver

 

08年、FUN CLUBからの2枚目のシングルカット。

アッパーでグルーヴィーなサンプリングが効きまくるキラーロッキンチューン!

DJではまった時に高揚感が半端ない必殺の一枚。

当時イベントで自分でかけといて感動したことがあります。

ラップも歌心を混ぜつつ「FINAL JUNKY~!」の叫びには感涙もの。

裏はそのオリジナルバージョン。同じ曲と思えないくらい印象が全く逆転。

CRYSTAL VOYAGERの地続きでビートとシンセのみのズブズブな暗黒エレクトロ。

アッパーとダウナーの2極を同じ曲で味わえるとは、、、

 



Filastine「Hungry Ghosts」7”


A:Hungry Ghosts

B:Hungry Ghosts (Cauto Remix)


高円寺での街宣ライブでも知られるFilastineとのコンビ、CDでは2曲組んでるのは知ってましたがレコードあるの知らなかったので追加です。(2023年)

グローカルなベースミュージックで知られるアーティストですがこちらではDubstep的なアプローチ。

WireMCのラップに続いて「L.A.M.F.」から重く歌い直したヴァースをEditedに配置。

印象が大分違いますね。

Cauto Remixではもはや声素材として細切れEDITされてます。

翌年のEP「Extra Dirty Bomb」にはPhowa Remixが収録されてますがこちらも声素材的な細切れEDITのようです。


 

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ECDPOPO [ECDPOPO] 10"

 

A1:ECDECADE × myouga no hana

A2:トニー・モンタナ × pine

A3:Can't Go For That × hello studio one

A4:Rock In My Pocket × blackbean

B1:Born To スルー × toumei kousoku

B2:天国ROCK × rock'in J

B3:関係ねーっ! × bye bye bye

B4:地球ゴマ × light

 

10年、円盤からの企画盤。

円盤絡みだとやはり異色コラボものですが、こちらは神戸の室内楽バンドPOPOとのセッション。

新旧合わせたECDの曲をPOPOの曲の上でラップした全く新しい音楽。

オルガンとトランペットという構成でのただただ優しい温かい音楽に

優しいばかりでなく激しさを持つリリックをこれまた優しい口調でラップしていて

歌詞の内容がまた変わって聞こえてくるような化学変化。

およそ穏やかとは言えないトニー・モンタナなんかが可愛らしく聞こえてくるほど。

こうもあっさり聴いたこともないような音楽をやられると痛快です。

 

 

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ECD [TEN YEARS AFTER] 2LP

 

A1:I CAN'T GO FOR THAT
A2:REST IN PEACE
A3:ALONE AGAIN
B1:今日の残高
B2:HOW'S MY RAPPIN
B3:TIME SLIP
B4:MONEY IS BITCH
C1:TONY MONTANA
C2:PAID IN FULL
C3:透明人間
D1:PLAY THE GAME
D2:AND YOU DON'T STOP
D3:ECDECADE

 

11年、アルバムTEN YEARS AFTERのLP。CDは10年。

と言ってもただのアナログカットではなく、全編ILLICIT TSUBOIの手が加えられて

所々にネタが追加されています。挙句エンドレスループまで。ただじゃ済まさない男。

今までに比べ音楽的にも変化がみられ、今作はHIPHOPに回帰したアルバム。

一時期傾倒した808と303の影響もあってサウスのヒップホップサウンドが中心になっています。

そして前作あたりから特に私生活に根付いたリリックになってきていたのがここでさらに顕著になり

私小説的な著書と地続きになり一個人としての曲が多くなったように思います。

「I CAN'T GO FOR THAT」では仕事があるから遠くにはライブに行けないこと。

「REST IN PEACE」は抽象的な言葉を使いながらも苛立ちを隠し持ち。

「ALONE AGAIN」では家から職場までの通勤時間の過ごし方について。

「今日の残高」はミュージシャンと仕事の2足の草鞋を。
「TIME SLIP」ではアル中時代を振り返り

「MONEY IS BITCH」では万引きの経歴を自白。

「TONY MONTANA」では悪さにあこがれながらそうはならなかった自分を赤裸々に。

「PAID IN FULL」では最も生活の荒れた時代の自分を。

「透明人間」では職質などで目を付けられる事の苛立ちを。

「PLAY THE GAME」ではイリシットツボイと奥さんという二人の相方との関係を。

「AND YOU DON'T STOP」ではさんピン以前のBACK IN THE DAYS。

「ECDECADE」では50才も過ぎて結婚し子供を持てたことに。

今日の残高はのECDのブログと同タイトルで実際に貯金残高を載せていました。

それに対して奥さんの植本一子さんのブログではECDの使った出費が掲載されたり、、、

これまでもメジャーからの曲で現住所を入れるなどプライベートを晒す感じはありましたが

この辺が最もそこに踏み込んでいた時期に感じます。

 

 


田我流 [Straight Outta 138] 12"

 

A1:田我流 / Straight Outta 138 feat.ECD (Album Version)

A2:田我流 / Straight Outta 138 feat.ECD (Instrumental)

A3:田我流 / Straight Outta 138 feat.ECD (A Cappella)

 

12年、田我流のソロアルバム「B級映画のように2」からのシングル。

前年の大震災を受けて原発を主題に社会を切るリリック。

仁義なサンプリングに鬼気迫るものがあります。

言うこと聞くよな奴らじゃないぞから「言うこと聞かせる番だ俺達が」に変わり

何度も繰り返されるこの言葉はデモの時のコールとしても繰り返し叫ばれました。

う~ん、今回の記事書くにあたってこのレコード持ってないのが一番悔しい、、、

※21.9.22 入手したので写真追加しました

 

 

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田我流 [墓場のDigger] 7"

 

B:田我流 / 墓場のDigger (ECD Remix) feat.Big Ben

 

13年、田我流のソロアルバム「作品集-JUST-」から5年越しのシングル。

同じくStillichimiyaのBig Benを迎えてレコードディガーのアンセム。

墓場堀士名義でのMIXにも繋がる餌箱漁り賛歌。

ECDのリミックスはそれに答えての怪しくもスムースな和物使い。

こちらも、買えてません、、、前のと同じくちょうど新譜全く買えなかった時期でした。

絶対掘り当ててやる~!

※2018.4.12 追記
ECDレコードバザーにて購入。
写真追加しました。
和物スクリュー使いが怪しい!
MIX CD「四次元墓場」が和物スクリューMIXだったのを考えると
墓場繋がりでのリミックスでしょうか、渋い。 

 

 

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ECD [ECDのロンリーガール] 7"

 

A:ECDのロンリーガール feat.K-DUB SHINE

B:NO LG

 

13年、「BIG YOUTH」から16年目にして初の表題シングルカット。

と同時にB面は12年のアルバム「The Bridge-明日にかける橋」からのカット。

ロンリーガールに関しては第2回でさんざん触れたのでそちらに譲るとして。

B面「NO LG」ではロンリーガールをラップでやらないことに対して

「やるかボケカスどうせK-Dubのヴァースだけだろ聞きたいのは」と一喝!

ベテランでありながら現役のラッパーであるということを主張。

この組み合わせでカットしたのは本当に快挙だな~、、、

レア曲としてのロンリーガールを目当てで買った人にガツンと食らわせる一曲。

 

 

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ECD [憧れのニューエラ] 12"

 

A:ECD / 憧れのニューエラ (Extended 12" Version)

B:soakubeats / ラップごっこはこれでおしまい feat.ECD

 

13年、ECDとsoakubeatsのスプリット的なダブルサイダー。

A面は「The Bridge-明日にかける橋」からカットの「憧れのニューエラ」

壮大なサンプリングに高速なビートを配しながらどこか郷愁のあるトラックに

昔の自身のファッション遍歴を当時のHIPHOPの時代性に当てはめたリリック。

アルバムよりも長いExtendバージョンでの収録。

最後に90年代のHIPHOPに欠かせないあの擦りネタが入ってるのにこだわりを感じます。

裏は12年のsoakubeatsのアルバム「Never Pay 4 Music」から。

表からぐるっと変わってダークなTRAPにのせて「将来の夢は犯罪者」と歌うクライムソング。

偽悪的なリリックがトラップとの雰囲気をばっちりとらえた意外な名曲。

近年、現実的なものばかりでなく何者かを演じる曲が増えてましたがこのあたりからですかね。

 

 

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Sunaga t experience [DIRTY30] 12"

 

A:Sunaga t experience / DIRTY30 feat.Zeebra . MURO . RINO LATINA Ⅱ . ECD . YOU THE ROCK☆ . SDP

 

 

15年、クラウドファウンディングのみで販売された須永辰緒のアルバム「STE」からのカット。

後の追加分と合わせて200枚のみという、このメンバーにしてはプレスが少なすぎるレア盤。

生演奏のジャズにのせて須永絡みのレジェンドたちによるマイクリレー。

活動30周年に送るリリックはそのまま日本語ラップの歴史にもリンク。

ECDの「レコードレコードレコードレコードレコードをかけている今日も」にはグッときます。

スチャダラパーのニンニキニキニキのバックでGet Up And Danceが演奏されるのも最高。

 

 

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加山雄三 [君といつまでも (Together Forever Mix)] 7"

 

A:君といつまでも (Together Forever Mix) feat.ECD × DJ Mitsu the Beats

 

17年、加山雄三の生誕80年記念Remixアルバム「加山雄三の新世界」からのシングルカット。

前年にPUNPEEのお嫁においで2015が発表されてから期待の高まっていた作品で裏にはそちらも再収録。

加山雄三のあの有名な曲をMitsu The Beatsが料理したトラックで

音楽に対しての愛を甘く語ったラブソング。

常に作品の中で音楽への愛を表現してきていましたがその集大成ともいえる一曲。

最後の最後で奥さんの一言で現実に引き戻されるユーモアもあり、本当にいい曲。

闘病中には加山雄三から写真のドネーションTシャツ使用が許可されたり

訃報には自身でコメントを発表したりと何かと気にかけられていたようです。

 

 

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ECD [LUCKY MAN] 7"

 

A:LUCKY MAN

B:LUCKY MAN (for Fans & Relatives REMIX)

 

18年、というか本日発売。

15年のアルバム「Three Wise Monkey」からのシングルカット。

ILLICIT TSUBOIの手による再マスタリングで7インチ仕様にブラッシュアップされてます。

「ラップごっこはこれでおしまい」でも触れた自分以外の何者かを演じた曲。

こちらでは全能感のあるキャラクターを演じながら

そういうスターを同時代的に目の当たりにできることを喜ぶとてもポジティブな歌。

最後には自分をJ-RAPを殺した男としてダークヒーローに。

裏には「21世紀のECD」からのカットになるILLICIT TSUBOIの手によるREMIXを収録。

フォークロックをぶった切ってプログレばりに再構築した大胆な仕事。

後半は歌もネタ元から引っ張ってきてエフェクト乗せまくり感動の大団円です。

 

 

以上、ECDの全レコードでした。

こうして改めて聴き返してみるとその時期によってやっていることが常に変わり、

その先を見据えた姿勢が常に自分にとっての憧れのようなものだったのかもしれないと思いました。

いつだってHIPHOPの話をして好きなラッパーと聞かれるとまずECDと答えてこれたように

派手さこそなくても一瞬の輝きではなくずっとスターのような存在です。

ありがとうございます、ECDに感謝を。