アルバムでは「Melting Pot」~「MASTER」、いわゆるアル中時代から入院、復帰するまでにあたり
ちょうどメジャーレーベルから決別するまで。
本人の状態もあり音楽的にも最も混沌としていた時代ですね。
HIPHOPというものから完全に逸脱しながら、意図するかは別としてラップの可能性をグンと広げ
一リスナーからしてみるとあまりに衝撃的な時期でした。
※18.4.12 「MISSION4+ YAMATAKEMANIA REMIX PARADE 1999」追記
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ECD [MELTING POT [PART-1]] LP
A1:RUDE BOY SUTRA feat. HOWLING UDON
A2:DIRECT DRIVE
A3:BEAT FOLK
A4:テレコ
A5:APACHE
B1:YOUR LAND
B2:ECD’S CHANT
B3:巣
B4:HELP
B5:グラジオラス
B6:SHIBUYA ANTHEM feat. HOWLING UDON
98年、MELTING POTのプロモLP。CDは99年になってからになります。
CDではオリジナル音源のPART-1とそのリミックスにあたるPART-2で構成されてましたが
こちらはその内PART-1のみ。
なによりまず、最初と最後に登場するHOWLING UDONこと故カオリンタウミの存在。
渋谷の路上詩人で他にもMuddy Stone Axelなどいろんな名前を名乗っていた浮浪のポエトリーリーダー。
その濁声で吐き出される路上からの声に抑揚が付くととんでもなく音楽になる。
以前カオリンタウミ名義での詩が音源で公開されてたサイトがあったんですが今見つからず、
この稀有な朗読がちゃんと聴けるのは今はこのアルバムくらいというのも貴重ながら残念な話。
後にMASTERに収録されたRUDE BOY SUTRAのフルバージョンでは
当時の録音の状況を記したECDの著書にもあるトラックが終わっても言葉を止めなかった様子が収められてます。
DIRECT DRIVEはこのアルバムの代表曲。
ジャジーなおしゃれトラック上で「やりきれない事ばっかりだからレコードレコードレコードレコード
レコードレコードレコードレコードレコードレコードレコードレコードレコードを聴いている、今日も」
どこか投げやりな言葉に交じって何度も繰り返されるこのフレーズにただならない雰囲気を感じる一曲。
BEAT FOLKでやけっぱちに繰り出される言葉もどこか浮世離れしていてどこか不安が煽られ、
テレコの、ラップ不在の中焦燥感を煽られるトラックに繰り返される「お前はプレイバックする」
ただ、そんなめちゃくちゃ不気味な曲なのにめちゃくちゃダンスミュージックとして機能してる!
かと思うとAPACHEではダウナー極まりない様子を見せ、本当に落ち着かない、、、
YOUR LANDでは「ラップは俺のモノじゃないんだロックも俺のモノじゃないんだ」と言い出す始末。
ただ、この言葉は前作あたりからの規範から外れた曲作りの決意表明のようにも聞こえて頼もしい。
ECD'S CHANTでは「いないはずだぜマインドコントロール!」
ただただこの言葉を声高らかに繰り返し繰り返し歌い上げる姿は、、、ちょっと解らないです。でも楽しい。
路上生活者の視点で歌われる巣もノイジーなトラックで不穏な空気を残し、
極めつけは「誰かタスケテー!!」と叫ぶ女性の声をサンプリングしてひたすらリピートさせるHELP。
アルバム全体に言葉が散文的で掴みどころがなかったりしますがグラジオラスも流れるような言葉に反して流れ去る。
最後のSHIBUYA ANTHEMにもHOWLING UDON登場。
路上に座り込んだ視点からのボランティアに対する姿勢。
ただ管を巻いてるように聞こえ挙句「僕って詩人だからさ」なんてかましてるのにこのかっこよさって何なんだろうな~、、、
YOU TUBEではいくつかその姿が見れます。こちらの後半ではRUDE BOY SUTRAの朗読も。
ECD [DIRECT DRIVE the readymade remix (promo)] 12"
A1:DIRECT DRIVE the readymade all that jazz~あるいはコニシの猟盤日記ミックス
A2:DIRECT DRIVE the readymade all that jazz~あるいはコニシの猟盤日記ミックス instrumental
B1:DIRECT DRIVE audiomusica Nº2 remix
B2:DIRECT DRIVE audiomusica Nº2 remix instrumental
B3:DIRECT DRIVE original
98年、MELTING POTからDIRECT DRIVEのシングルカットその1。
小西康陽とSunaga T Experienceのリミックスとオリジナルを収録。
「やりきれない事ばっかりだからレコードを聴いている、今日も!」のフレーズはやはりレコ好きにはたまらんフレーズ、
それをこの二人がリミックスするってんだから意味を持ってきますね。
小西Remixはファニーなネタ使いになだれ込むようなファンキービーツが荒立てる
お洒落ながらも勢いのあるカットアップ仕事。
対する須永Remixはジャジーな生演奏上に韓国語女性ナビゲーターを配置した渋くも気持ちよく盛り上がる仕上がり。
両方とも甲乙つけがたい名盤!
ECD [DIRECT DRIVE] 12"
A1:DIRECT DRIVE original
A2:DIRECT DRIVE audiomusica Nº2 remix
A3:DIRECT DRIVE instrumental
B1:テレコ
B2:DIRECT DRIVE audiomusica Nº2 remix instrumental
98年、DIRECT DRIVEのシングルカットその2。
オリジナルをメインに、もう一回須永Remixを収録。大人気ですね。
裏にはテレコを収録。よりにもよってこんな焦燥感を煽られるトラックをシングルで!
実際クラブ映えする曲ではあるので嬉しい収録ですが
こういう盤の切り方の方向性がラッパーのそれではなくて素敵。
ちなみに前回ラフ状態だったILLDOZERの怪しいジャケは無事完成したようですね。
後日談として、Audiomusicaリミックスでもパーカッションを担当したキュビズモグラフィコの松田岳二が
2013年にCHABE A.K.A CHATRUN VS KAN名義でDIRECT DRIVEのカバー7インチ出してます。これも良作。
ECD [DIRECT DRIVE ECD attacks DEE JAY PUNK-ROC] 12"
A1:DIRECT DRIVE dee jay punk-roc remix
A2:DIRECT DRIVE dee jay punk-roc remix slight vocal instrumental
A3:DIRECT DRIVE dee jay punk-roc remix instrumental
B1:DIRECT DRIVE dee jay punk-roc remix with lounder vocal
B2:BEAT FOLK go-go king recorders dub
B3:YOUR LAND 43rd version
99年、DIRECT DRIVEのシングルカットその3。
ブルックリンのDEE JAY PUNK-ROCによるビッグビート的なブレイクビーツREMIX。
なんとこの人の名前だけ聞いて気に入って依頼したという逸話もあります。
普通のインスト以外にダブっぽいのとボーカルミックス違いも収録。
そしてMELTING POT PART-2からやっとDIRECT DRIVE以外のトラックも2曲。
BEAT FOLKはCDでは會田茂一による「BEAT FOLK 15/NOV/'98 17:19.59~17:25.15」でしたが
こちらではその曲のDubを會田も所属するGo-Go King Recordersの加納尚樹が担当。
ただでさえラウドな激暴れトラックがさらに凶悪な仕上がりになってます!
YOUR LANDは高木完によるダークなリミックス。CDでは42ndでしたがこちらではバージョンアップ。
部分的に使われてたノイジーな声のエフェクトを増幅しまくった
怪しさ倍増の極悪トラックになっててさらに良いですね。
MELTING POT PART-2からはこれで大体アナログ化されてますが、
HAIR STYLISTICSによるRUDE BOY SUTRA -exodus ecd extended versionだけは未カット。
中原昌也のリミックス仕事って自分は大好物だけに結構未収録なこと多いのが残念。
スチャダラのアニソロRemixとか秀逸だと思うですよ。
VA [PUNCH THE MONKEY!2] 2LP
A3:ECD / ルパン三世のテーマ (Vocal Version) Theme From Lupin The 3rd Theme From Lupin "E"
99年、Readymadeからのルパン3世リミックス&カバー集第2作。
ECDは代表的なあの曲をリミックス。「真っ赤な~薔薇は~♪」の方のやつ。
ビートとハモンドオルガンを強調したクラブ仕様な仕上がりになってます。
Starring - ルパン三世:ECD、次元大介:TSUTCHIE、石川五ェ門:イリシットつぼい、峰不二子:松崎真琴、銭形警部:渡辺佳紀
との表記がクレジットにあるのも小粋ですね。実際に声が入ってるわけじゃないですよ。
VA 「MISSION4+ YAMATAKEMANIA REMIX PARADE 1999」 2LP
D1: ジャイアントロボ -ジャイアント・ロボ 第27話「ジャイアント・ロボ 対 ECD」-
※18.4.12 追記
99年、TV音楽を中心に数多くの作品を残した山下毅雄のリミックス集。
多くの有名主題歌を豪華メンバーがラウンジ映えするお洒落リミックスに仕上げる中に
ジャイアントロボの主題歌のイントロコーラス部分のみをピッチ上げて
ブレイクビーツ上で延々ループするというなんともやけっぱちな豪快仕事。
展開もほぼ無くひたすらワンループで突き進みます!
これ、ちょうどアル中期であることも知ってる今ならハハンと思えますが
当時聴かされたヤマタケファンは怒ったのではないかと想像できますね。
ECD [THRILL OF IT ALL] LP
A1:大脱走
A2:オレは喋るSAXは叫ぶ
A3:typography Pt.1
A4:typography Pt.2
A5:ROCK IN MY POCKET
A6:もうひとつ
B1:MY TCM 59
B2:地球最後の日
B3:1964
B4:スケルトン
B5:トランポリン
00年、アルバムTHRILL OF IT ALLのプロモLP。
アル中期も末期、閉鎖病棟での入院前から作られ退院後に完成させたという迷作。
ILLDOZERの手掛けたCDジャケからして不安を煽ります。
CDで最後に収録の大脱走 (FORCE OF NATURE REMIX)だけ未収録。
1曲目の大脱走が流れた時点で何事かと思わせる奇妙な雰囲気。
この曲に関しては後述するとして、俺は喋るSAXは叫ぶでは初めてのSAXを披露。
後のライブでの定番となったSAXも最初聴いたときは正直意味不明でした。
ラウドなトラック上で「それは薔薇より美しいタイポグラフィ滲まないエッジ」と叫ぶtypography2部作も
1ではILLDOZERの事を歌っていたかと思えば2でいよいよ電波じみてきたり。
ROCK IN MY POCKETは後々までライブでの定番曲になりましたね。
基本、昔の曲はやらないECDが長いことやり続けていた重要曲。
ラッパーのライブで初めてモッシュを体感したのがこの曲でした。
Lee Dorsey / Four Cournersの2枚使いが定番でアルバムとはずいぶん雰囲気が変わります。
もうひとつはスチャダラパーのドゥビドゥWhat?に通じる物忘れソング。
ぼんやりした雰囲気だけどこの物忘れがアルコール由来なのが決定的な違い。
MY TCM 59はテープレコーダーについての曲。前作のテレコとは関係が?
かかってる気になる曲をテレコで即RECしてレコ屋で聞く、ディガーの鏡のような光景ですね。
お次は問題曲、地球最後の日。シリカゲルをばらまいて地球が滅亡する謎曲。
無駄にブルージーで渋いトラックで熱弁されるのがたまらなく魅力で、当時一番好きでした。
1964はサディスティックミカバンドのタイムマシンにおねがいを引用した気持ちのいい曲。
当時4歳のECDからの視点での東京オリンピックソングです。
スケルトンは監視社会に対してのアンチテーゼ。
少し被害妄想気味なのにファニーなトラックでもっていかれます。
最後はトランポリン。なんかもうふわっふわで、妙な多好感と不安を感じます。
当時まだ本も書いてないのでリアルタイムではアル中の事は知らなかったけど
このアルバムを聴くだけで十分に何かしらの危うさを感じます。
不思議な感じのCDに当時夢中になって、多分知り合いに一番多く貸したのがTHRILL OF IT ALLでした。
こんな音楽があるってことを知ってほしい、ってくらいエポックメイキングに感じたアルバムです。
ECD [大脱走] 12"
A1:大脱走
B1:大脱走 (FORCE OF NATURE REMIX)
00年、THRILL OF IT ALLからのシングル。
アルバムジャケの仮面の男が車で逃げるECDの背後から迫るジャケからも謎の緊迫感が伝わります。
THRILL OF IT ALLの冒頭を飾る曲にしてアルバムの混沌さを体現してる一曲。
手押し感のあるループの不安定なアッパートラックに「勉強なんて嫌だ」「外へ遊びに行ってきます!」と
執拗なまでに繰り返される子供声のサンプリング、
しばらくたってやっとラップしたと思えば不可解に煽る言葉を残してまたしばらくループと手押しEDIT。
最後になって「やっと出てきたECD!」と繰り返し叫ぶのはアル中から抜け出したことの宣言でしょうか?
「なんだかよくわからないけどすごく不思議な音楽」として興味を持つには十分キャッチーな謎に楽しい曲。
最後にアルバムの次の曲の冒頭が少し入っちゃってるのは意図してなんですかね?
裏にはLPでは未収録だったFORCE OF NATUREによるスペーシーなブレイクビーツREMIXを収録。
ECDのなかなか出てこない焦らし感倍増です。
![{73C97E39-3D9F-485D-A604-6D1A0F1C5CEB}](https://stat.ameba.jp/user_images/20180131/19/killerkillerrecords/5a/21/j/o0480048014122625011.jpg?caw=800)
ECD [君は薔薇より美しい] 12"
ECD [君は薔薇より美しい (promo)] 12"
A1:君は薔薇より美しい feat.ARICHIKA MASUMI FROM TV JESUS
A2:君は薔薇より美しい (INSTRUMENTAL) feat.ARICHIKA MASUMI FROM TV JESUS
AA1君は薔薇より美しい (AUDIOMUSICA N'11 MIX)
01年、アルバムSEASON OFFからの唯一のレコード、と言っていいんですかね?
退院後の復帰作で突き抜けた気持ちよさのあるCDなので他が出てないのがほんとに悔やまれます。
そのアルバムに収録するつもりがうまく入れることができなくて12"のみで発表された一枚。
同時に自分が一番戸惑ったレコードでもあります。
というのもECDは一切歌っていなく、歌っているのはTV JESUSの有近真澄。
昔ECDも所属していたキラキラ社からの古馴染の方です。
曲自体も布施明の和製ソウル、君は薔薇より美しいのカバー。
曰くプロモ盤で同曲のインストを見つけたのがきっかけらしいですが、
そのインストを軸にしてるのでRemixというほどにもいじっておらず、
ECD名義ではありながらほとんどプロデューサー的な立ち位置。
正直ECDの新譜!と息巻いて買った自分は買ったもの間違えたかと思いました。
最初こそ戸惑ったものの、これがほんといい仕事で中性的な有近真澄の声が
原曲も圧倒するくらいの気持ちのいいノビを聴かせる名カバー。
裏の須永辰緒リミックスはDIRECT DRIVEに通じるボッサラウンジカバーといった趣で
歌は無いもののコーラスと韓国語ナレーションも効果的な爽やかトラック。
ECD [S.S.S.] 12"
A1:S.S.S.〈南の島 宇宙 スラム街〉 対セントラル・セッション
A2:S.S.S.〈南の島 宇宙 スラム街〉 対セントラル・セッション (Instrumental)
A3:S.S.S.〈南の島 宇宙 スラム街〉 オリジナル・セッション
B1:俺達に明日は無い -RAP VERSION Pt.2 クボタタケシ UNRELEASED REMIX-
B2:俺達に明日は無い -RAP VERSION Pt.2 クボタタケシ UNRELEASED REMIX- (Instrumental)
B3:俺達に明日は無い -RAP VERSION Pt.2 クボタタケシ REMIX- (Instrumental)
B4:イ百景 feat.モユニジュモ
03年、メジャーから最後のリリースとなるベスト盤MASTERからのカット。
S.S.S.は元々はSEASON OFFというタイトルで前作に収録予定だったとか。
オリジナルはシーケンスを全力で拒むような手打ちサンプリングがビート、上物共に炸裂する
アヴァンギャルドなガッチャガチャしたトラックがすごい!
この後あたりから始めたキーボード手打ちでのノンシークエンスサンプリングのライブを
一足早く体現しているような感じですね。
ただ、そのドラムを足したのが当時自身で納得いかなかったようで作り直されたのが対セントラル・セッション。
サルサバンドCENTRALを迎えたバージョンは全く方向性が変わってノンビートの南国使用!
SEASON OFFにも相応しかっただろう突き抜けた明るさがECDだけでは出てこないものを引き出してます。
数々のバージョンがある俺達に明日は無いはクボタタケシの未発表バージョンと発表済みバージョンのインスト。
やたらと焦燥感を煽られるフリーキーなクボタタケシREMIXに対して、未発表バージョンは
スピード感のある情熱的なラテンジャズが鳴るおしゃれトラックに大変身。
そして最後は個人的にECDのトップ5にも入れたいくらい大好きなイ百景を収録!
SEASON OFFからこれが収録されたのは本当に最高だと思います。
この後多く共演する盟友、イルリメからモユニジュモをFeat。
サンプリングネタはECDからの提供らしいですがトラックはモユニジュモとマツ&タケなので
当時のSPOTLIGHT勢の雰囲気もあるEDITの効いた抜けが気持ちいいトラック。
SEASON OFFへの収録自体をためらうほどセンスを超越していたと語られるほど突き抜けた化学反応。
歌われる内容も「デパートに行く」ことを極端に拡大解釈して多好感でさらに膨れ上がらせた挙句夢落ち。
こんなに楽しさに満ち満ちたラップは滅多にないしそこにいるのがECDという違和感が本当に最高な一曲。
ここまでがCUTTING EDGEで活動していたメジャー時期になります。
活動時期としては前半という感じですが年代的にも、この先が自主制作になるのと合わせて
ここから先はグッとレコードのリリースは少なくなります。
プロモなんか作れるのってやっぱりメジャーの力って感じもありますしね。
ですが活動としてはむしろ濃厚になるので未聴の方はCDの方でもぜひ追っていただきたい。
そして、今月28日にはECD生前に発表されていた最後の7インチ、Lucky Manが発売されます。
皆様ご購入お忘れなきよう!
そちらを入手してから次の第4回、04年以降のレコードを公開予定です。